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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epic10-Aゲームセンター☆なのは『魔法少女の挑戦』~The EmperoR~

 
前書き
The Emperor/皇帝の正位置/行動することが必要だ。自分自身の意志・決定・行動が、事態を動かす。

申し訳ないです。前回の予告で出した、三つ巴のバトルですが、次回へと持ち越しになりました。
 

 

†††Sideなのは†††

放課後、私とユーノ君、そしてすずかちゃんは、アリサちゃんのお家にお呼ばれしていて、ユーノ君が張ってくれた結界内――広いお庭に居て、そこで私たちは魔法の練習をするためにバリアジャケット姿で居る。
まずは、ハムスター姿のセレネちゃんとリス姿のエオスちゃんによる、アリサちゃんとすずかちゃんのデバイスの機能のおさらいから。私たちは丸テーブルの周りにある椅子に座って、テーブルの上に立ってるユーノ君、セレネちゃんとエオスちゃんを見る。

「じゃあ、すずかからね。あなたのデバイス、スノーホワイトの特性を言ってみて」

「うん。スノーホワイトは補助系の魔法に優れていて、私は後衛タイプの魔導師に向いてる・・・んだよね」

「イエス!」

「そんじゃ次はアリサだよ。フレイムアイズの特性を言ってみて」

「ええ。あたしのフレイムアイズは、近接中距離戦に優れてて、あたしは前衛タイプの魔導師、なんでしょ」

「そーゆうこと」

アリサちゃんとすずかちゃんの回答に満足そうに頷いてるセレネちゃんとエオスちゃん。2人のデバイスは、元は“クレイオスソウル”っていう1つのデバイスで、それが2つに分かれて“フレイムアイズ”と“スノーホワイト”に・・・ううん、正確には3つだって聞いた。

「で、もう1つのデバイスの3つを合わせてクレイオスソウルっていう名前なんでしょ」

「そうだよ。クレイオスソウルは3つのAIコアを持ってる、特殊なデバイスなの。中遠距離のペルセース、近距離のパラースはフレイムアイズ、補助のアストライオスはスノーホワイトになったんだ」

「私とエオスは正直魔導師としての才能がないんだよね。だから全機能の50%分を同時に扱えるクレイオスソウルのままで扱ってたわけ」

“クレイオスソウル”の説明を終えた2人を眺めてると、ユーノ君が私の袖を引っ張ってきた。私はコクンと頷いて、今度は私の“レイジングハート”の特性、というか私のタイプを話す。

「私のレイジングハートは、射撃や砲撃に優れてて、私は中距離と遠距離タイプの砲撃魔導師、だよね」

「うん。それに、なのはの防御力も練習で格段に上がったから、前みたいにそう簡単に撃墜されないはずだよ」

そんな私は遠距離系、アリサちゃんは近距離系、すずかちゃんは後衛の補助系。アリサちゃんが急に「これはいいわ♪」って笑いだして、テーブルに立てかけてあった“フレイムアイズ”を手に椅子から立ち上った。そしてテーブルから離れて、「最高のチームじゃない、あたし達っ♪」って“フレイムアイズ”をブンブン振るった。

「確かにメンバーの特性が綺麗に分かれてるから、それぞれの魔法のレベルを上げれば、チーム戦になったら最強かも」

「けどね、アリサ。この中でまともに魔法戦を経験しているのはなのはだけ。今の状態でジュエルシードの暴走体や、フェイトやテスタメントって子との魔法戦をしたら、絶対に負けるから」

エオスちゃんに凄まれた私たちは海鳴温泉での経験を思い返す。圧倒的な数で攻めて来たお猿さん。私ひとりじゃどうにもならなかった。アリサちゃんとすずかちゃんのおかげで何とかなったけど、でも結局はフェイトちゃんにジュエルシードを取られちゃった。
テスタメントちゃんとはまだ戦ったことはないけど、たぶん今の私たちよりは強いはず。確かに今のままじゃ勝てない。お話も出来ない。だからこそお話を聴いてもらうために・・・。

「判ってるわよ。だからこうして集まって魔法の練習をするんでしょうが。だからあんたもあたしに力を貸してよね、フレイムアイズ!」

≪おうよ! やるからにはとことんだぞっ、アリサ!≫

「私も頑張るから、スノーホワイトもよろしくね」

≪ええ、わたくしも全力でお力添えいたしますわ≫

アリサちゃんと“フレイムアイズ”、すずかちゃんと“スノーホワイト”。心が通じ合ってみてるみたいで、2人のことがすごく羨ましいなぁ。そう思っていると、“レイジングハート”が≪マスター。私たちも負けてはいませんよ≫って言ってきてくれた。

「レイジングハート・・・。うんっ。負けていられないもんねっ♪」

そうだよ、私たちだって負けないもん。一緒に過ごした時間は負けてないし、築いた絆だって。私たちが相棒(デバイス)ともっと絆を深めるためにお話ししていると、エオスちゃんが「はーい。練習、始めま~す」って打ち切ってきた。そうだった。魔法の練習を始めるために集まったんだった。というわけで、練習開始です。

「フレイムアイズ。あたし、もっと攻撃の魔法をやってみたいわ。近距離タイプって、自然と敵とガチンコの殴り合いでしょ?」

≪馬鹿。まずは移動魔法だよ、アリサ。攻撃は今ん所フレイムウィップだけで十分だ。前衛っていうのはキッチリ自分の身も守らないと務まらねぇんだよ。出る時は出、引くときは引く≫

アリサちゃんと“フレイムアイズ”は移動魔法の練習をするみたい。一緒に空とか飛べたら最高だろうなぁ~。もちろんすずかちゃんもだし、出来ればフェイトちゃんやアルフさん、テスタメントちゃんとも仲良く飛んでみたい。

≪スズカ。あなたは後衛ですわ。補助を担当するのですから、その類の魔法の練習となりますわ≫

「うん。ビシバシお願いね♪」

すずかちゃんは補助関連の魔法の練習みたい。そして私は、「なのはは射撃の精密操作だね」ユーノ君から練習内容を聞く。“レイジングハート”も≪大切な事です。頑張りましょう、マスター≫って応援してくれる。
私の練習は、空き缶を操作したシューターで打ち上げて、地面に落ちないようにするっていうもの。同時に操作して小さな的に当て続けないといけないから、誘導操作能力を鍛える事が出来る。用意しておいた空き缶を5本、地面に置いて「レイジングハート!」シューターを5基作り出す。

「よし。始めよう。シューット!」

――ディバインシューター――

一斉に撃ち放って、空き缶を宙に打ち上げる。意識を集中して、クルクル舞う空き缶5本にシューターを当て続けているところに、

「のわぁぁぁあああああああッ!!?」

「にゃぁぁぁあああああ!?」

ずざざざざーー、と私の足元にアリサちゃんがヘッドスライディングしてきた。突然すぎてビックリしたから後ずさりして、「どうしたの!?」って、顔面を押さえて唸ってるアリサちゃんに尋ねる。でもアリサちゃんが答える前に、シューターの操作を打ち切っていたから空き缶が揃って、「あたっ、あたっ、あいたっ!?」アリサちゃんの頭に落下。

「ご、ごめんねアリサちゃん!」

「いたた・・・い、いいわよ。あたしも悪かったし。空を飛ぼうとしたんだけど・・・やっぱ無理! 人間が空をすいすい飛べるわけないじゃない!!」

≪頭固過ぎだぜ、アリサ≫

“フレイムアイズ”がそんなアリサちゃんに呆れて、「うっさい」って返すアリサちゃん。でも、そっか、残念だなぁ。アリサちゃんとも空を飛びたかったのに。アリサちゃんの手を取って立つのを手伝っていると「どうしたの? アリサちゃん」って頭上からすずかちゃんの声が。

「あ・・・」「んな・・・」

すずかちゃんが空を飛ぶなんてどうってことないって感じで浮いていた。すたっと静かに地面に降り立って、改めて「どうしたの?」ってアリサちゃんに訊くととアリサちゃんは俯いて、ぷるぷる体を震わせたと思えば、

「べ、別に空なんか飛べなくてもいいわよーーーっだ!!」

――ブレイズロード――

そう言いながら走り去って行くんだけど、アリサちゃんの脚から炎が噴き上がっていて、それがロケットみたいだから速さが跳ね上がってる。もう走ってるって言うよりある意味飛んでるよ、空じゃなくて地面スレスレだけど。アリサちゃんの背中を見守っていると、いきなり脚の炎がドカンと爆発。

「なんでよぉぉーーーーーーッッ!!」

「「アリサちゃぁぁーーーーーーん!!?」」

アリサちゃんがスペースシャトルみたいに空に打ち上げられちゃった。ポカーンとしちゃう私たち。でもアリサちゃんが落下し始めたのを見て、再起動。すでに空に上がっていたすずかちゃんが「アリサちゃん!!」真っ先にアリサちゃんの元へ。

――フライアーフィン――

私も少し遅れて空に上がって、アリサちゃんを抱き止めたすずかちゃんの側に。アリサちゃんは溜息を吐いた後、「あー、ありがとう、すずか、なのは」って気まずそうに苦笑い。

「ううん。アリサちゃんが無事で良かったよ」

「すずかちゃんの言う通りだよ、アリサちゃん」

気にしないでもらうために笑顔で応じると、「ありがとう」今度は笑顔でお礼を言ってくれた。改めてそれぞれの魔法の練習をしていると、ピリッと感じる、例のアノ気配。

「なのはっ!」「なのはちゃん!」

離れていたところで練習していたアリサちゃんとすずかちゃんが駆け寄って来た。やっぱり魔導師になったから気付いちゃうんだね、ジュエルシードが発動した気配が。時間は5時前。今から市街地へ向かうとなると、夕ご飯には間に合わないかも。でも、そんなことを言っていられない。アリサちゃんに車を出してもらうことになって、私たちは市街地へ向かう。

†††Sideなのは⇒ルシリオン†††

イレギュラーナンバーである22から31の全てを回収し終えた今、正規ナンバーを手に出来るのはなのはとフェイトのみ。しかし最終的に管理局に回収され、そのまま保管という結末になってしまうのは勿体ない。だから回収しに来た。そういう考えに至ってしまっている私は、かなりまずいレベルで魅かれているな。“堕天使エグリゴリ”を救うために必要不可欠な魔力供給源、ジュエルシードに。

「一応だ・・・一応、見に行こう・・・」

市街地にある一軒のアミューズメント施設からジュエルシードの気配を感じる。先の次元世界では無かった場所。ナンバーは正規だが、落下地点がイレギュラーというパターンだ。店内に入り、正確な場所を探し当てるために探索開始。施設内にはボーリング・ビリヤード・卓球・バッティング・バスケットスローが出来るエリアがある。そして問題のジュエルシードがあるエリアは「ゲームセンター、か」色々な思い出がある場所だった。

「15歳未満は18時まで。あまり時間は無いな」

とりあえず結界だな。男子トイレへと向かい、個室に入ってすぐに封牢結界を展開。“界律の守護神テスタメント”の聖衣型の騎士甲冑へと変身して、ゲームセンターへ。無人と化している施設内を歩く中「もう来たか。フェイト、アルフ」彼女たちの魔力を探知した。
遭遇する前にゲームセンター内へと入ってみると、「店内全てがジュエルシードの影響を受けているのか」結界とは別の異空間に入り込んだような感覚を得た。当たり外れの1台の筐体探しじゃなく全部が対象だ。ならば・・・。

「力を借りるぞ、リオ」

――ワールド・オブ・ディバインスヴァスティカ――

私とシェフィの子供である“戦天使ヴァルキリー”の1体、リオ・ランドグリーズ・ヴァルキュリアの魔術を発動。元々は私が有していた未完成の下級術式の1つだから、“英知の書庫アルヴィト”より引っ張り出す必要がない。
まぁ、リオが自らの学習能力で完全に昇華させたこの術式の場合は、“アルヴィト”からの発動となるが。リオに譲った時は名無しで、ワールド・オブ・ディバインスヴァスティカはリオの命名だ。聖鉤十字の世界、という意味を持つこの技は名の通り、卍型に閃光のオーロラを発生させ、接触した物質にダメージを与える。広域攻撃だからこそ使ってみたが、筐体には傷ひとつとして与えることが出来なかった。

「あんたは・・・!」

「テスタメント・・・!」

入口からフェイトとアルフの声が聞こえてきたが、無視して店内を徘徊。戸惑いの気配を感じるが放置だ。下手に言葉を交わして、フェイト達との生活を懐古して腕を鈍らせるわけにはいかない。交わすとしても、まずは問答無用で撃破するしかない。でないと、私が私でなくなる。そう、初邂逅の時のような失態は、もう二度としない。

「待ちな! この前はよくやってくれたね! あん時に奪って行ったジュエルシードを渡しな!」

「吠えないで。ここで戦っても何もならないんじゃない?」

声を少女のものに変声し口調もまた変える。本当に窮屈だな、自分を偽るのは。フェイトから「どういうこと?」と訊き返され、さっきみたいに筐体へ魔力弾を撃ち込む。また完璧に防がれた。というより「キャンセルされるんだね」フェイトの言う通り、魔法の効果をキャンセルされる。あの懐中時計みたいに特別な条件があるようだな、コイツにも。

「で? どうすればジュエルシードを封印出来るんだい?」

アルフが敵である私に向かって馬鹿な質問をしてきたから「は?」呆けてしまう。堪らずアルフとフェイトの方へと振り返り、「敵にそれを訊く?」と嘲笑で返す。フェイトは何も言わずひたすらに私を見詰め、アルフだけが敵意をぶつけてくる。

「何か条件があるのかもね。そう、たとえば・・・ゲームをクリアする、とか」

「「ゲームをクリア・・・?」」

きょとんとするフェイトとアルフ。今までの生活環境からしてそうなるよな。手近な筐体の前に立つ。それはクイズゲームの筐体だ。傍にはメダルが積み上げられたプラスチック製のケースが置かれている。推察通りだな。クリアすることがジュエルシードを封印する条件だ。しかも試されている。クリア出来るものならクリアしてみろ、と。だからメダルを堂々と置いているんだろう。

(上等だ。2万年分のあらゆる世界と時代の知識を持つ私に、勝てるゲームなんてない)

とは言え実際に必要なのはこの世界の知識だけだが。とにかくクイズゲームをプレイ。私の両側にフェイトとアルフが立ち、画面内に映るゲームを眺める。

「どんな難問でもかかって来なさい」

で実際にプレイし、難易度がラクショーなものから激ムズまでの4コースを全部ノーミスで瞬殺。すると店内のスピーカーから『クリアおめでとー♪ クリアおめでとー♪』軽快な音楽と共に流れてきた。

「クリアなの・・・?」

「クリアなの」

「フェイトの真似すんじゃないよ。噛み殺すよ?」

「はいはい。っと、出て来たね」

「「っ!」」

ゲームセンターの中央に突如現れたのは半透明な道化師。思念体ですらない幻影か。フェイトが“バルディッシュ”を道化師に向け、アルフは牙を剥いて臨戦態勢を取った。どうせ無駄な行為。とは言え、制止しても聴かないだろうから見守る。

――フォトンランサー・キャリバーシフト――

「「ファイア!!」」

フォトンスフィアをそれぞれ6基、計12基を展開させ、ランサーを何十発とマシンガンのように連射。ランサーは踊り続ける道化師をすり抜け、天井に当たるというところでバチッと弾かれ消滅した。道化師が宙で側転しながら『ここではゲームの勝敗が全て♪ ゲームのクリアこそ勝利☆』今回のルールを説き始めた。

『ゲームでボクに勝ったらクリア♪ ボクに多く勝かった子に、ボクを封印する資格を与えよう♪ さあ、ボクと遊ぼう、みんなで遊ぼう☆』

歌うように説明した道化師が『さぁ、最初は誰からだい?☆』と踊りだす。話が通じるか判らないが、「今のクイズゲームの勝ち星に入るの?」と確認してみた。

『いいよ☆ まずは君が一勝だ♪』

ありがたいな。フェイトとアルフからは僅かな焦りのようなものを感じるが。もう1つの質問である「ゲームの選択はこちらが貰っても?」とさらに確認を取ると、道化師は『どれでもいいさ♪』と笑う。得意なゲームで攻めればいいんだが、向こうの実力が判らないな。最高難度のNPCと思えばいいか・・・?

「今回も面倒だねぇ。フェイト、どうする?」

「魔法が通用しないならしょうがない。クリアするよ」

アルフに答えた後、フェイトは何故か私をチラチラ横目で見てくる。嫌な予感がする。気付かないフリをして早速別の筐体へと向かうと、フェイト達がついて来る。私は小さく溜息を吐き、「苦手なら今回は諦めたら」と言葉で突き放す。明らかに不機嫌な顔つきになったフェイト。いや、だからって敵を頼るってどうだよ。

「あなた達、こういう経験は?」

「ない」「ないねぇ」

「だったら・・・ガンシューティングでもやる?」

手近にあった筐体を指さす。返答を聴く前に、銃型のコントローラーを手に取る。どうやら2人で協力してクリアするモードと2人でスコアを競い合う対戦モードのあるゲームのようだ。

『まずはソレからかい?♪ じゃあボクと対戦だっ☆』

道化師がもう一挺のコントローラーを握った。私は銃身を持ち、「ほら。やるでしょ?」とグリップの方をフェイトに向けて差し出す。フェイトはおずおずと手に取り、「ジュエルシードの為、母さんの為」そう呟き、モニターに向かい合った。
で、道化師とのスコア競いの結果だが「瞬殺されたね、フェイト・テスタロッサ」それはもう酷いものだった。魔導師ゆえに優れている動体視力のおかげで、襲い来る敵の動きには対応できたが、リロードで躓いて即ゲームオーバーとなった。

「・・・・むぅ」

「うっさいよテスタメント! そう言うならあんたがやってみな!」

というわけで、フェイトからコントローラーを受け取り、「次は私だよ」道化師に挑戦。ド素人なフェイトとは違い、私はこういった経験をいくらか積んでいるため、道化師を余裕で打ち負かしてやった。

『クリアおめでとー☆ クリアおめでとー♪』

よし。2勝目だ。魔法戦ではないから、競争相手を傷つけることもないから楽だ。チラッと横目でフェイトとアルフを見る。アルフはギリギリと歯噛みし、フェイトはすでに別のゲームを物色。私も次のゲームを物色しているところで、

「やっと来たか」「っ・・!」

なのはとユーノ、スクライア姉妹の魔力を探知。フェイトと同時に店の入り口へと振り向く。プレイ中からなのはの気配には気付いていたが、どうも魔力反応の数が合わなくておかしいと思っていた。管理局、クロノかと思ったが違うようだし。そもそも局が介入してきたら即気付ける。ということは、イレギュラーが紛れ込んでいる。しかも「まさか、な」そのイレギュラーには嫌な予感がする。脳裏に過ぎった、ある2人の少女の笑顔。頼むから、彼女たちであってくれるな。

「あの子たちだ」

「知っているの?」

「この前、会った。名乗っていたけど・・・」

(この前、か。ということは・・・海鳴温泉)

最悪の予感が現実味を帯びてきた。店の入り口を注視しながらフェイトの声に耳を傾ける。だが、フェイトの口からイレギュラーの名前が出る前に、「何故だ・・・!」その姿を視界に捉えた。信じられない光景だった。なのはを左右から挟むようにして佇んでいるのは、絶対に魔導師になりえなかったはずの人物。

「フェイトちゃんとアルフさん、それに、テスタメントちゃんも・・・!」

「うわ・・・。あの子が、テスタメントって子? マジで仮面とか付けて超怪しいじゃない」

「ア、 アリサちゃん。失礼だよ? 確かに怪しいけど・・・」

アリサ・バニングスと月村すずか。なのはの親友で、確かな一般人だったはず。2人はバリアジャケットを身に纏い、アリサはアームドデバイスのような剣を持ち、すずかのはグローブタイプで、“ケリュケイオン”や“アスクレピオス”、“アストライア”のようなブーストデバイスだと思われる。

「・・・?」

フェイトから訝しんだ視線を向けられるが、気を取り直すので精いっぱいだから反応できない。嫌な予感はものの見事に的中。しかしショックを受けるのは後だ。気をしっかり持て。アリサとすずかは魔導師になった。それはもう変えられない現実だ。だったら受け入れるのみ。唾を呑み、口を開く。

「高町なのは。ユーノ・スクライア・・・」

「テスタメントちゃん・・・。どうしてフェイトちゃんとアルフさんと一緒に・・・?」

「偶然に過ぎないよ。私が真っ先に来て、フェイト達が後で来た。最後にあなた達が来た。遅刻だよ」

なのは達の前にまで歩み寄り対峙すると、「やる気!?」とデバイスを構えるアリサ。アリサの肩に乗るリス、すずかの肩に乗るハムスターも「今度は負けない!」とファイティングポーズを取る。すずかが遅れて身構えると、なのはが「待って!」と前に躍り出て彼女たちを制止する。なのはと1対1で相対し、息を呑んでいる彼女を指さし、クルッと回れ右をして店内の筐体を指さす。

「今回のジュエルシードは、コイツに多く勝った方が封印出来る。というわけで、あなた達もゲームクリアに勤しむように」

「「「「「「はい??」」」」」」

†††Sideルシリオン⇒なのは†††

半透明なピエロさんに改めて説明されて、私たちもゲームをクリアするために行動開始。まず最初にアリサちゃんが格闘ゲームで、増殖したピエロさんと対戦中。

「なんていうか早速魔法で活躍できると思ったのにさ。おっとと。うりゃっ!・・・まさかゲーセンで遊ぶことになるなんてね。って、結構やるわね、コイツ」

「でも、私はこれでもいいかな。あ、アリサちゃん、必殺技来るよ」

「あんま~い!! カウンター!」

アリサちゃんは不満そうだけど、すずかちゃんはホッとしながら応援。アリサちゃんから預けられた、私の肩に乗るリスのエオスちゃんは「私はすずかに賛成」って平和的で、すずかちゃんの肩に乗るハムスター、セレネちゃんは「ガッツリ暴れてほしかったよ2人には」ってガックリ肩を落としてる。

「こいつでトドメよっ!」

アリサちゃんのキャラクターが必殺技を繰り出して、ピエロさんのキャラクターを撃破。するとピエロさんが消滅して、『クリアおめでとー☆ クリアおめでとー♪』って店内に流れた。

「よしっ、次! 急ぐわよっ」

「そうだね。テスタメントちゃんはすでに2勝してるみたいだし」

私たちが来る前にテスタメントちゃんはすでにポイントを稼いでる。早く追いつかないと。すぐ近くのスノーボードの筐体で対戦してるテスタメントちゃんとピエロさんを見る。体を前後に揺らしながらボード型のコントローラーを操って、コースの障害物を避けたりスコアを稼ぐ技を繰り出してる。

「じゃあ私は・・・このパズルゲームで!」

『次は君だね☆ その挑戦、受けて立つ♪』

すずかちゃんが落ちゲーって呼ばれるパズルゲームで対戦開始。アリサちゃんにエオスちゃんを戻して、すずかちゃんからセレネちゃんを預かる。そしてみんなですずかちゃんを応援していると、アリサちゃんが「ねえねえ」って突いてきた。

「テスタメントってさ。セレネ達と同じ異世界人なわけ? それとも地球人? フェイト達ってゲーム苦戦してるけど、アイツはメッチャ上手いじゃない」

「えっと、どうだろう」

フェイトちゃんとアルフさんの方を見ると、別のピエロさんとクレーンゲームで対戦中。ピエロさんは次々と景品を取って山を作ってるけど、フェイトちゃんは苦戦していて取った景品は数えるほど。

「異世界人だと思う。なのはは特別で、アリサさんとすずかさんは完全なイレギュラー。この世界のゲームが上手くても、魔導師としては完成されてるっぽいからこの世界の原住民じゃないのは確かだよ」

ユーノ君がそう言うなら、テスタメントちゃんも異世界の人なんだ。

『クリアおめでとー☆ クリアおめでとー♪』

「ま、こんなもんでしょ」

テスタメントちゃんが3勝目を上げて「余裕余裕♪」って私たちのところに来た。そして「景気はどう?」って私の肩に乗るセレネちゃんとユーノ君の頭をそっと撫でた。ユーノ君もセレネちゃんも振り解こうとしたけど、すぐに大人しくなって受け入れてた。

「ぼちぼちよ。あんたは順調そうね」

「まあね。ゲームは割と得意な方。で、フェイト・テスタロッサは苦戦中なわけか」

テスタメントちゃんの仮面の下の表情は実際には見えないけど、どこか楽しそうな笑顔だって思えた。

「このまま行けば、私とあなた達の頂上決戦か。けど、それじゃ面白みに欠けるか。そうだ、面白ことを思いついた。あなた達、彼女たちと協力したらどう?」

テスタメントちゃんがいきなりそんなことを言い出したから、私たちは戸惑うばかりで。なんでそうなるのかってユーノ君が尋ねたら、テスタメントちゃんが信じられないことを言った。

「私の当初の目的だったジュエルシードの捕獲数は無事に10個になったからね。別段、今回のジュエルシードがどうしても必要なわけじゃないんだ。だから今回はあなた達か彼女たちに譲ろうと思う。でも、ただ譲るだけじゃつまらない。
それで考えてみた。私がジュエルシード側に立って、あなた達と戦ってみようかなっと。私たちが負けたらジュエルシードはそっちで好きにしていい。勝ったら、今回も貰う。さ、敵同士で協力して、さらに強敵である私に挑んで来なさい。道化師、それでもいい?」

『いいさ♪ それも面白そうだし☆』

「10個・・・もうそんなに集めて・・・!」

ユーノ君から絶望の声。私でもまだ4つなのに。明らかな差を見せつけられた。ジュエルシードの探索も封印も大変なのに、テスタメントちゃんはそんなにも・・・。フェイトちゃんの方を横目で見ると、負けちゃったようで悔しそうに俯いていて、アルフさんに慰められてた。そして「やった! 22連鎖♪」すずかちゃんがすごい連鎖を繰り出して、ピエロさんを撃破。

「なのは。どうする? あたしはどっちでもいいわよ」

「お話は聴いてたよ。なのはちゃんの意見に、私は付き合うよ」

2人に見詰められた私はすぐに答えが出なくて、ついテスタメントちゃんの方へ目を向ける。すると「あなた。フェイト・テスタロッサと友達になりたいんじゃない?」なんて、私でも最近解った感情を言い当ててきた。ビックリして口を噤むと、テスタメントちゃんは「良い機会じゃない、距離を縮めるのに」って小さく笑い声を上げた。

「フェイト・テスタロッサっ、アルフっ!」

「今度はなんだい。こっちは1つもクリア出来なくてイライラしてんだよ」

「あなた達はこれから高町なのは達とチームを組み、私やジュエルシードと戦ってもらうから」

「「っ!?」」

そりゃ驚くよね。しかもテスタメントちゃんからその理由(友達云々は無し)を聴いてさらに「はあっ!?」ってアルフさんが驚いた。フェイトちゃんは「必要ない」って一言で拒否してきたけど、テスタメントちゃんから「1つもクリアしてないのに?」って明らかな挑発を受けると、

「判った。確かに私とアルフにとって、今回はあまりにも不利。だからその子たちと協力してもいいと思う」

「フェイトちゃん・・・」

「決まりね。さぁ、どれから行く? 私は基本苦手なゲームが無いから、どれでもOKだよ」

「タイム! ちょっと作戦会議の時間ちょうだい」

「もちろん。終わったら呼んで」

テスタメントちゃんが私たちから離れて、アリサちゃんが手招きして私たちを集める。佇んでいるままのフェイトちゃんとアルフさんの手を取って、「行こう♪」一緒に円陣を組む。戸惑っていたけど、少しでも仲良く出来るきっかけを作りたいからその手を離さない。

「そんじゃ作戦会議ね。テスタメントは、明らかにあたし達以上のゲーマーよ。しかもジュエルシードを短期間に10個も回収するだけの魔導師としての実力もある。そんなアイツが、わざわざ敵対するあたし達を協力させようってんだから、何か裏があると思う」

「そんなことないと思うよ、アリサちゃん。テスタメントちゃんは優しいだけだよ」

「馬鹿ね。たとえばこの一件であたし達が勝ってジュエルシードを譲られても、結局はあたし達とフェイト達との争奪戦でしょうが」

「私も君と同じ意見だ。もしかすると、あの子は私たちが潰し合うのを待ってるのかもしれない」

「うわぁ、性格悪いねぇ」

一瞬にしてテスタメントちゃんが悪者扱いに。嫌な空気になっちゃった。でもテスタメントちゃんはきっとそんなこと考えてないって思う。だから「純粋に楽しみたいだけだよきっと!」擁護する。甘い考えかも知れないけど、信じたい。

「・・・ま。どっちにしろやることは変わりないわよね? フェイト、アルフ」

「「え?」」

「今はとにかく余裕こいてるアイツの鼻っ面をへし折る。真実は後回し。あんた達と協力するとなった以上、あんた達の参加は絶対条件になるってこと。だったらあたし達の誰かが対戦している時に、他の子があんた達を鍛えるわ」

というわけで私たちは協力して、テスタメントちゃん、ジュエルシードとゲームで戦うことになった。


 
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