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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epica3-Dマリアージュ事件~Pool~


†††Sideスバル†††

ティアが今担当してる事件の手伝いをすることになったあたしとエリオとキャロ。ミッドに来てるティアや、エリオとキャロを泊めるためにあたしの部屋を貸していて、そのこともあってある種の集合場所になってるわけだけど・・・。

「ごめんね、スバル。こんな大勢で押しかけちゃって・・・」

「やはり場所を変えよう。すまなかったな、スバル」

「ですね。この人数で、しかも女性の部屋に集まるのはよろしくないかと。ルシル様がそう言った類の男性ではないとは言え・・・」

「ルシルさんであるなら、スバルも心配ないよね?」

「近くのお店でも貸し切りますか? 確か喫茶店があったかと・・・」

リビングダイニングには今、ギン姉、シャルさん、ルシルさん、さらに教会騎士団の騎士トリシュタンさんと騎士アンジェリエさんが居て、ダイニングテーブルに座ってる。そしてリビングのソファにはエリオとキャロ、それにアイリが座っていて、「どうしましょうか?」って困惑中で、アイリは「スバルがどう思ってるかだよね?」ってあたしを見た。

「うん。ギン姉の言う通り、あたしは気にしませんから。ルシルさんとは古い付き合いですし・・・」

そんなこと言うあたしだけど、ほとんどが喧嘩別れ(しかもあたしから一方的だった)していて、仲直りしたのも4年前だ。でももっと小さな頃には1日一緒に過ごしたし、そう言ってもおかしくないはず。とにかく、お客さん分のお茶を用意していると、ピンポーンとインターフォンが鳴った。

「はーい!」

『あ、ランスター執務官の補佐、ルネッサ・マグナスです』

モニターに映るのは、長年の夢だった執務官に無事なったティアの補佐を務めてる女の人、ルネッサさんだ。あたしは「どうぞ~!」と入室許可を出してルネッサさんを招き入れた。ルネッサさんはティアの執務官だけど、あくまで臨時らしくこの事件が終われば元の所属先へ戻るみたい。

「お疲れ様です、マグナス執務官補」

「お疲れ様です、ナカジマ防災士長」

エントランスから上がって来たルネッサさんと敬礼をし合って、リビングに入ろうとするのを見送ろうとしたら、「・・・っ!?」ルネッサさんが足を止めた。続けてピンポーンとまた鳴って、「入るわよ~?」ってティアが入って来た。

「あ、ティア。お疲れ~♪」

「ええ。悪いわね、家を提供してもらって」

「ううん。こうして六課の時みたく集まれて、逆に嬉しい♪」

ハイタッチを交わしてると、「そう。・・・ん? ルネッサ? どうしたの、そんなところに突っ立って」って、ティアがリビングに続くドアの前に佇むルネッサさんに訊ねる。

「あ、いえ。話には聞いていたのですが、局や騎士団の中でも特に有名な方たちが一堂に会しているのを目の当たりにすると、やはり緊張をしてしまいます」

「「あー・・・」」

ティアと2人で納得する。ルシルさんやアイリは、六課時代で同じ時間を過ごしたからそうは思わないけど、シャルさんや騎士トリシュタンさん達には、あたしでも緊張する。ティアもそうみたいで、「まぁ理解できるわ」って苦笑した。

「でも突っ立ってるままじゃ話にならないから。行きましょ」

「はい」

「お茶菓子、お茶菓子は~っと」

キッチンでのお茶淹れを終えて、「ティア~。クッキー持ってって~」と用意したクッキーが盛られたお皿を指差す。ティアは「ん~」返事をして、お皿を持ってルネッサさんと一緒にリビングに入った。あたしも遅れて入って、ルシルさん達にお茶を出した。

「えっと、では、マリアージュ事件(仮)の捜査会議を行います」

ティアが1人席を立ってそう宣言した。展開したモニターには「これがマリアージュとなります」って、あたし達の敵となるマリアージュが表示された。

「騎士トリシュタンさん達に伺ったところ、マリーアジュは死体を用いられた戦術兵器であること、作成と運用を行うのは古代ベルカの王の1人、冥府の炎王イクスヴェリアであることが判明しました」

プライソンのLASと同じように死体から造られてるマリアージュは、なんと人語を解することが出来るみたい。体を武器に変えたり熱線を発したり、燃焼液に変化して自爆したりと、戦い方はLASにそっくりだけど。別モニターにティアがマリアージュと闘って、そして自爆されたシーンが流れる。

「戦闘力で言えば、今のあたしやスバル、エリオでも十分撃破可能と思われます。ですが・・・」

「教会本部図書館の資料をすぐに漁ってみたところ、マリアージュには先兵や分隊長、軍団長などの役割があり、軍団長の戦闘力はさらに強大との事です」

ティアの視線を受けた騎士アンジェリエさんがそう報告した。冥王イクスヴェリアから軍団長へ、軍団長から先兵へと指令が下りるみたいなんだけど・・・。

「ランスター執務官から伺った話だと、マリアージュはどうやらイクスヴェリアを捜索しているようです。つまり指揮官が軍団長になっているので・・・」

「ソレを撃破すれば本件の被害は新たな軍団長稼働まで猶予を得られます。ですので軍団長との遭遇時は、真っ先に撃破することが優先でしょう」

とのことらしい。マリアージュが何を以って殺人事件を繰り返してるかは未だに判っていないけど、とにかくその軍団長を倒せば、イクスヴェリア保護までの時間稼ぎが出来るみたい。

「それと、マリアージュにはもう1つ捜しているモノがあるらしく、それはトレディアと呼ばれる、人名か地名か、あるいは物名か。それは判らなかったんですが・・・。ルシルさん」

「ああ。トレディアというキーワードで色々と調べた結果、おそらくアタリだろうと思われる人物を発見した。・・・それが彼、トレディア・グラーゼ。第60管理世界フォルスの、オルセア戦線の活動家。辺境世界の一般人と言うこともあって、捜し当てるのに苦労はしたが・・・」

ティアに促されたルシルさんが展開したモニターに1人の中年の男の人が表示された。続けてルシルさんが「死体兵器繋がりで、アルファ達に尋ねた来たよ」って言ったから、「え?」ってあたし達みんなが首を傾げた。だってアルファや他の“スキュラ”達は、もうこの世には居ないから・・・。

「あぁ~、エインヘリヤルか~。プライソンの複製権限を奪われてたのに、よくヴァルハラに居たね~」

シャルさんがそう言うと、「複製物を顕現できないだけで、複製はされていたんだと思う」ってルシルさんが返した。ルシルさんには他の人の武器や魔法やスキルなどを複製する能力があって、その本来の持ち主の分身を使い魔として造り出すことも出来る。それなら“スキュラ”達と話せる理由も判る。だったらもう一度デルタと話してみたいな~。

「まぁ俺のスキルについては今は置いておいて、だ。アルファ達にマリアージュやトレディアの事を知っているかどうかを尋ねたところ、その事についてはペラペラと話してくれたよ。どうやら彼もプライソン一派に協力していたようだ」

ルシルさんの話によれば、LASはマリアージュからヒントを得て開発されたらしく、マリアージュとLASの量産を一度に行ってたみたい。でもプライソン戦役が始まるずっと以前に「彼はマリアージュに殺害されたらしい」とのことだ。

「トレディア・グラーゼの死亡については残念ですが、憂慮が無くなったと思えばいいです。問題は、イクスヴェリアの居所と・・・コイツ」

ティアが新たに展開したモニターに、“スキュラ”暗殺犯と同じ仮面に学生帽と学生服、それにマント、デバイスは短いロッド。使う魔法は氷結系で、リイン曹長やアイリの短剣型射撃魔法と似た攻撃を放った。

「なぜ彼らがマリアージュを拉致したのかは判りませんが、彼らもまたイクスヴェリアを狙っているのでは?と推測しています」

「悪用されることだけは必ず回避しなければなりません」

騎士トリシュタンさんの言葉にあたし達は力強く頷いた。そして問題はティアの言う「イクスヴェリアの居場所ですが・・・」だ。ルシルさんに視線が向かうけど、「お手上げだ。スキュラも知らないらしい」と両手を上げてのお手上げポーズ。だから今度は騎士トリシュタンさん達に向く。

「教会に残された古い資料に、こういう一文がありました。冥府の炎王、その役目より解き放たれ、騎士の世界を離れ、始まりの世界にて再び眠りに就く。そこは深き母なる海の底・・・と」

「海底に居る、ということでしょうか?」

「だとしたら、どうやって保護しましょう? ミッドの海底を捜索するなんて、1日2日では終わりませんよ?」

キャロとエリオの疑問も当たり前だ。あたしだってそう思うし。アイリが「ヒントとか無いの?」って聞いた。

「さすがに生身や棺に入れられての封印とは考えられませんから、おそらく遺跡などに安置されているはず。で、ミッドチルダの海底に存在する遺跡に類する建築物を調べた結果・・・」

騎士アンジェリエさんが展開したモニターにミッドの世界地図が表示されて、海のところに5つの光点が生まれた。話によるとそこに海底遺跡があるとのことなんだけど・・・。

「どこが本命なのか、もしくは全てハズレなのか、確信が持てないのが心苦しいです」

「ポイント付近でマリアージュの目撃情報などが無いか、調べてみます!」

ギン姉が席を立つと、「こちら陸士108部隊、ギンガ・ナカジマ准陸尉――」ってどこかに通信を繋げつつ、リビングを出てエントランスへ向かった。

「・・・7ヵ所かぁ。・・・あ、そうだ、こっちも念のために兵隊を召喚しておこうっと♪」

そう言うとシャルさんも通信をどこかに繋げる。モニターが展開されて、その相手の顔が表示された。

「ヤッホー、ルミナ♪ 特騎隊前線組・・・みんなって今ヒマ?」

『暇と言えばまぁ暇だけど。今、前線組だけじゃなくて後衛組揃って本局のショッピングモールで揃ってショッピング中なの』

相手はルシルさんやシャルさんと並ぶ神層騎士の1人で闘神と謳われる、騎士アルテルミナスさんだった。背後には『おーい!』って他の騎士の皆さんが居た。そして話題は「休暇満喫中に悪いんだけど、ボランティアをお願いしたいの」っていう本題へ。騎士の皆さんが『ボランティア・・・?』って少し嫌そうな顔をした。

「内容は、冥府の炎王イクスヴェリア陛下の保護、んで殺人・破壊を繰り返すマリアージュの迎撃。イクスヴェリア陛下は現在、スキュラ暗殺犯組織にも狙われてる可能性大。局員としても教会騎士としても、それを見過ごすわけにはいかない」

シャルさんのその言葉に皆さんの表情が引き締まって、『了解です!』っと頷いた。それからどこのポイントにどのメンバーが向かうかを決めて・・・

「では、私とスバル、ルネッサ、ルシルさんとアイリがマリンガーデンの遺跡へ。ギンガさんとシャルさんが北部の・・・――」

本事件の指揮権を担ってるティアが最終確認をした。そして「行きましょう!」の号令で、あたし達はそれぞれの目的の遺跡のあるポイントへ向かった。

†††Sideスバル⇒シャマル†††

「楽しかった~♪」

「うんっ♪」

遊園地の締めのアトラクションとして選んだ大観覧車に乗った私たち。ヴィヴィオとコロナが2人掛けシートに膝立ちして、窓から外の景色を眺めながら満足そうに笑った。私も隣に座るフォルセティに「楽しかったわね♪」と微笑みかける。

「うんっ!」

「あ! ねえねえ、フォルセティ君! アインスさんが手を振ってくれてるよ!」

「え、どこどこ!?」

「こっちだよ、フォルセティ!」

ゴンドラが揺れないように注意しながらフォルセティは席を立ち、ヴィヴィオとコロナちゃんの間に座って、アインスとザフィーラの乗った遅れて来るゴンドラに向かって「おーい!」って3人で手を振った。そしてゴンドラは頂上にまで到達。

「「「わあ♪」」」

窓から見える景色に3人が歓声を上げた。私もその綺麗な景色を見て、「これは残しておかないと」って端末をショルダーバックから取り出して、笑顔で景色を眺める3人をパシャっと写真に収める。そうしてゴンドラは地上へと戻って、遅れて「待たせた」アインスとザフィーラと合流。

「よし。ではもう乗り残しは無いな?」

「うんっ」「「はいっ」」

アインスの確認に3人はビシッと挙手して答えた。これで遊園地を離れるから、その前に噴水広場で、「あの、写真をお願い出来ますか?」と付近に居たご家族にお願いしてみる。父親らしき男性が「いいですよ」と快諾してくれた。

「ありがとうございます! はーい、みんな並んで~」

前列に子供たちを、後列に私たちが並び、「はい。ピース!」の掛け声で笑顔をつくる。これでもう思い残すことは無いわね。写真を撮っていただいた男性に「ありがとうございました!」と改めてお礼を述べ、端末を返していただく。

「本日はありがとうございました! またのご来場をお待ちしております!」

入場ゲートの係員さんに手首に巻いたフリーパスを取ってもらって、遊園地を退場した。次は「プールね」ということで、遊園地とは反対側に在るプール施設へ向かう。プールの入場ゲートの立つ係員さんに・・・

「大人3人、子供3人。水着6着と浮輪3つのレンタルをお願いします」

そう伝えて、提示された料金を支払う。そして「ありがとうございます。それでは、ロッカーのカギをお渡ししますね」と、首に掛けられるようにビニール紐の付いた鍵と、水着や浮輪とを交換するチケットを渡してくれた。みんなでお礼を言いながらゲートを潜って、大きな建物へと入る。

「ではザフィーラ。フォルセティの事を頼む」

「ああ。我らは男性用だ、フォルセティ」

横に長い通路の両端に女性用と男性用のドアがある。フォルセティ達と「また後で!」と手を振り合って一旦お別れ。そして女性用のドアを潜ると、これまた広い部屋があって、右手にはレンタル用水着などを貸し出すお店、左側にはロッカーがずらりと並んでいる。

「すみません。水着と浮輪をレンタルしたいのですが」

「あ、はい、いらっしゃいませ! チケットを頂きます~!」

入場ゲートで渡されたチケット2枚を渡すと、「はい。確認しました。どうぞ~!」とカウンター横にある遮断機のようなゲートを通って、ハンガーに掛けられた何百着って言う水着を見る。

「それじゃあヴィヴィオ、コロナちゃん、好きな水着を選んでね。見つかったらそのまま着替えに行っても良いけど、プールにはまだ行かないこと♪」

「「はいっ!」」

私の注意に返事をした2人は「こっち、こっち♪」と子供用水着の列に駆けて行った。私とアインスもそれぞれ水着選びを始める。私はミントグリーンのトライアングルビキニ。子供たちが居るから出来るだけ派手さを出さないように、露出を抑えつつボトムの両側にリボンをあしらった物を選ぶことで可愛らしさを出す。

「よしっ。色も私好みだし。アインス~? そっちは~?」

「うむ。私も決まったぞ」

隣の列で選んでたアインスと合流。アイスの手にしている水着は、黒のホルダーネックのビキニ。胸元には大きなリボンがあしらわれてて、「あら。あなたが選ぶにしては可愛い水着」だった。

「ああ。私もそう思う」

ニッコリ笑うアインスと一緒に「ヴィヴィオ、コロナちゃん~?」の姿を捜す。呼ぶとすぐに「はーい!」と顔をひょこっと出した。

「お前たち、水着は選べたか?」

「「はいっ!」」

ヴィヴィオが手にしてるのは、薄いピンク色のワンピースタイプ。フリルのスカートが付いていて、とっても可愛らしいわ。コロナちゃんもワンピースタイプで色は白。肩紐にフリルが付いていて、この水着も可愛い。

「じゃあ着替えましょう♪」

ヴィヴィオとコロナちゃんを先に行かせ、私とアインスでしぼんだ浮輪を3つ手に取って持って行く。鍵に刻印された番号のロッカーを探して、早速水着に着替え始めるんだけど・・・。

「「わぁ~・・・」」

2人からの熱視線に私とアインスが首を傾げると、「すごく綺麗です!」と私たちの裸を褒めてくれた。ちょっと照れくさいけど、褒められるのも悪い気はしないから「ありがとう♪」とお礼を言った。

「さて! お前たち、プールでは私かシャマルかザフィーラの誰かの側に居ること。何かあればすぐに声を掛けること。いいな?」

「「はいっ!」」

水着に着替え終えて、ご利用自由なエアーを使って取っ手付きの浮輪を膨らませつつ、アインスがヴィヴィオ達に注意を促した。そうして浮輪を膨らませ終えて、いよいよプールへ向かう。施設のドアを潜って、プールに入る前のシャワーを浴びて・・・

「おーい!」

「フォルセティ~!」

同じくシャワーを浴び終えたばかりなフォルセティやザフィーラと合流した。2人とも膝丈のトランクスタイプね。フォルセティはニコニコ笑顔のヴィヴィオと、もじもじと照れているコロナをジッと見た後、「ヴィヴィオとコロナの水着、とっても似合ってて可愛いよ!」って、2人の水着姿を褒めた。

「うん、ありがとう♪ フォルセティも似合ってるよ~♪」

「あの、ありがとう、フォルセティ君」

仲の良さを見せてくれた子供たちを優しく見守りつつ、目の前に広がるプール各種に「おお!」って私たちは歓声を上げた。プールはいろんな種類があるんだけど、まずは「スライダー!」からとのことで、今のフォルセティ達の年齢・身長でも利用できるスライダーへ。

「ザフィーラ、浮輪を預かっていてくれ」

「ああ」

持ち込みの出来ない浮輪を預けて、私たち5人でスライダーの列に並ぶ。順番はすぐに回って来て、「5名様ですね。ではどうぞ浮輪に!」と係員がとても大きな浮輪に入って座るように私たちを促した。浮輪の中心に向かって座り込んで、浮輪のふくらみの方にある取っ手を掴み、流水に乗ってチューブ状のトンネルへ進みだす。

「「ひゃああああ♪」」

トンネルを抜ると幅の広いコースを右に左にと揺られながら進んで、ジャンプ台のようなところでさらに大きく左右に揺られて、最後はすり鉢状のステージをグルグル回りながら中心点に流される。

「3人とも! 気持ち悪くない? 気分が優れなかったら、終わった後でちゃんと言ってね?」

「大丈夫です~♪」

「私もなんとか・・・」

「僕も平気~♪」

そうして最後のチューブを通ってゴール。コロナちゃんがちょこっとフラついたけど、「楽しかったです♪」って楽しんでくれたようで何よりだわ。だけど一応、大事を取って「次は流れるプール!」になった。レンタルした浮輪の上に座ったフォルセティ達と一緒に、私たちも流れるプールに入る。

「ヴィヴィオ、コロナ。次はどこに行こうか~?」

「アスレチックプールとかは?」

「噴水広場でゆったり?」

「どっちも面白そうだね~」

残り半日で回るにはあまりにも大きな施設だから、やっぱり迷っちゃうわよね。それから3分くらい流れるプールでお話しして、次の噴水広場へ一休みしに行く。直径60mほどの円形の舞台があって、その中心に大きな傘状の噴水。傘に沿って水が滝のように流れてる。さらに傘のてっぺんからも放射状にシャワーのような放水が行われてる。

「わぁ♪ 気持ちいい~♪」

「つめた~い♪」

頭上から降り注ぐ水にヴィヴィオとコロナちゃんが歓声を上げる。フォルセティも「わわっ? 下からも噴水が・・・!」って足元から放射されるシャワーに驚いては笑い声を上げた。

「シャマル、シャマル、こっちへ」

「アインス・・・?」

アインスに手招きされて、噴水広場内にあるジャングルジムのような大きな舞台の近くに移動。そしてアインスに「少し待っていてくれ」って言われて、あの子が離れていくのを眺めてると・・・

「え?・・・わひゃああああああーーーーっ!?」

いきなりザバァーッとトンデモない量の水が頭上から降って来て、不意打ちだったこともあって押し潰されそうになった。顔に張り付いた前髪を指で払いながら頭上を見ると、ただのセットだと思ってた物が実は「鹿威し・・・?」だったことを知る。上に在るチューブから水が流れ落ちて、バケツのような筒に溜まる。そして溜まった水の重みで筒が傾き、下に居るプール利用客に振って来る、と。

「あっはっはっは♪」

「シャマルお姉ちゃん、ビショビショだ~♪」

「「大丈夫ですか?」」

「アインスぅ~?」

楽しそうに笑うアインスとフォルセティ。心配してくれるのはヴィヴィオとコロナちゃんだけ。ザフィーラは相変わらず無言なんだけど、どこか笑うのを耐えてるようにも見える角度で顔を背けてるのが若干むかつくわ・・・。

「すまない、シャマル。ついイタズラ心が働いたのだ、許せ」

「もう」

10年前では考えられない程に満面の笑顔を浮かべるようになったアインス。それにイタズラだなんて、普段が真面目なだけあって新鮮でもあるから許しちゃうのよね。でもやられっぱなしと言うのも悔しいから・・・

「じゃあ次はアインスの番ね♪」

アインスの手を引っ張って、水の落下するポイントへと連れて来る。そして「逃げちゃダメよ? うふふ♪」ってアインスの両肩に手を置いて忠告する。アインスは「判った、逃げない」って両手を挙げてのお手上げポーズをとった後・・・

「お前ももう一度浴びようじゃないか」

「ひゃん!? ちょっ、アインス・・・!」

いきなり両腰を触って来るものだから変な悲鳴を上げちゃった。そして次の瞬間、「~~~~っ!」滝のような水が降って来た。

「気持ちが良いな、シャマル」

「・・・ふふ。そうね♪ フォルセティ達もいらっしゃい。あ、ちょっと小さめな方でね♪」

筒は大・中・小と3種類あるから、小さなフォルセティ達には一番小さい筒の方をお勧め。そして私とアインスは中サイズへ移動。大きいのは水量があり過ぎて、トップが下にずれ落ちちゃいそうになるから。

「「「「「せぇ~の!」」」」」

みんな揃ってバッシャーンと水を浴びて笑いあった後は、普通の25mプールでフォルセティ君たち3人の自由形レースを応援したり(コロナちゃんが思いの他速かった事に驚いたのは秘密)、アスレチックプールのコースでゴールタイムを競いあったり、いろいろなプールを楽しんだ。
夕方の4時半になったところでプールを上がり、ロッカーで私服に着替え、夕食を摂るためにアーケードからレストラン街へと向かう中・・・

「なんか騒がしいわね・・・」

テーマパークなんだから騒がしいのは当たり前な話なんだけど、和気あいあいとした騒がしさじゃなくて、こう・・・不安から来る騒がしさというか。コロナちゃんが「あっ、ルシルさんとアイリさんだ・・・!」ってある方を指差した。

「ホントだ! でも局の制服だからお仕事・・・?」

「それにスバルとティアナまで・・・」

ルシル君とアイリがミッドに降りて来てるって言うのは、昨日の朝の内にルシル君から連絡を貰っていたけど。でもティアナにスバルも一緒だなんて。これは事件の匂いがするわね・・・。

「どうする? 手伝いを申し出に行くか?」

「いや。私たちは今日、この子たちと楽しむためにやって来たのだ。やめておこう。それに、ルシルとアイリが居るのだから、私たちの助力など要らんだろう」

ザフィーラの提案に対してそう返したアインス。私も「ティアナとスバルも居るし」と続く。六課解散から3年。あの子たちもそれぞれの現場で研鑽を積んでいるはずだもの。だから私たちはルシル君たちを信じて、レストラン街へと改めて向かう。

「何アレ~?」

「コスプレ?」

「何かのキャラクター?」

何を食べようかって話してたところ、そんな会話が聞こえてきた。気になった私はそのコスプレ?をしてるらしい人の方へと目を向ける。バイザーを付けた女性で、服装は確かにラフな格好とは言えないようなもの。

「何か用か?」

先を往くアインスがそう言ったのが聞こえて前を向くと、アインス達の前にもう1人のバイザーの女性が立っていた。彼女は無言だけど、フォルセティとヴィヴィオを見ているよう。ザフィーラが2人を護るように躍り出た時・・・

「聖王オリヴィエと魔神オーディンの遺伝子を確認。確保します」

女性がザフィーラを避けてフォルセティとヴィヴィオへ手を伸ばそうとした。でも咄嗟にザフィーラがその腕を捕まえ、私とアインスで2人とコロナちゃんを女性から遠ざける。周囲のお客さんがザワザワとしだしたから、私は「管理局員です!」ってモニターに局員IDを表示させる。

「何者だ!?」

ザフィーラが問い質すけど、女性は無言のままザフィーラに殴り掛かろうとした。でもすぐに地面に叩き伏せて、両腕を背後に回してギチッと締め付けた。

「答えてもらおうか。何故、この子たちの事を知っている。名前と出身世界諸々も教えてもらうぞ」

アインスがそう言って近付いた時、女性がドロッと液状化した。ザフィーラも「む・・・?」と体勢を崩す。すんすんと臭ってくる嫌な臭いに「待って、ちょっと待って!」私は慌てる。

「皆さん、離れて! 今すぐ! クラールヴィント!」

すぐさま騎士服に変身。そして結界魔法の「隔絶する防封!」を発動して、女性を閉じ込めて隔離する。さらに念のために「アインス!」にも結界を発動してもらえるようにお願いする。

「ああ!」

――ズィーゲル・シュレッケン――

私の張った半球状の結界と女性を閉じこめるようにアインスの六角柱の結界が展開された。直後に女性は自爆をしたけど、私とアインスの結界のおかげで被害はアインスの結界内部の石畳だけだった。でもここで「もう1体居るわ!」ってことを思い出す。もう1体を見た方へと目を向けると、今まさにこちらへ向かって駆け出していた最中。

「させん!」

――鋼の軛――

地面から突き出した拘束杭に貫かれたもう1人の女性も、「また・・・!?」液状化をし始めた。もう一度、結界に閉じ込めてしまおうって考えたその時・・・

――氷結の軛――

さらに拘束杭がドロドロになって地面に落ち始めた彼女を貫き、一瞬にして凍結された。今の魔法は「アイリちゃん!」だ。

「おーい!」

こっちに駆けて来たのは「アイリちゃん! ルシル君!」の2人だった。
 
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