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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epica3-Eマリアージュ事件~Marin Garden~

†††Sideエリオ†††

ティアナさんの担当してる事件の手伝いをすることになった僕とキャロは今、古代ベルカの王様の1人であるイクスヴェリアが眠ってるかもしれない海底遺跡、その候補の1つにやって来た。

「入場料を払えれば入れる観光地ということもあって、マリアージュや暗殺者が姿を見せたら大事だ・・・」

マリアージュはすでに何人もの人を殺害しているし、暗殺者も高ランクの魔導犯罪者だ。マリーアジュくらいなら今の僕たちでも十分倒せるって話だけど、暗殺者を相手にすればおそらく負ける。だけど、たぶん・・・大丈夫だ。

「近隣の陸士隊や運営の方々に協力してもらって、遺跡の展覧時間を早めに切り上げさせてもらえましたよ、モンディアル先輩、ルシエ先輩」

そう言って僕たちの元に駆けて来たのは、シャルさんの部隊である特務零課――通称・特殊機動戦闘騎隊、略して特騎隊に所属する局員で騎士のミヤビ・キジョウ陸曹。特騎隊の前線メンバーの皆さんはそのあまりの強さに神層騎士と謳われて、それぞれを示す通り名もある。ルシルさんは軍神、シャルさんは剣神、カローラ一尉は氷神、マルスヴァローグ一尉は闘神、ヴィルシュテッター一尉は獣神。そしてキジョウ陸曹は・・・。

(鬼神・・・)

そんなキジョウ陸曹と僕とキャロとフリードはチームを組んで、遺跡の南出入り口を監視する役目を担うことになった。

『ねえ、エリオ君。やっぱり言った方がいいと思う・・・』

『あ、うん、そうだよね・・・』

キャロと念話でそう話し合う。僕たちの視線を受けたキジョウ陸曹が「どうしました?」って小首を傾げる。

「あの、僕とキャロに対する先輩呼びについてなんですが・・・」

「階級と年齢でいえば、キジョウ陸曹の方が上なので、先輩と言うのはちょっとおかしいかな~、と」

13歳で一等陸士である僕とキャロに対し、キジョウさんは陸曹で、年齢は聞いてないから正しい数は判らないけど、明らかに年上。そんな人から先輩って呼ばれると、何ていうか居心地があまり良くないと言うか。僕たちより歳も階級も下の後輩局員からなら、先輩、って呼ばれてみたいけど・・・。

「ですが局員としての経歴であれば、お2人は私より1年先輩ですし」

「それはそうですけど・・・」

「それでも止めて頂ければな~と・・・」

「「お願いします」」

先輩呼びを止めてほしいことをお願いすると、「判りました。では何とお呼びしましょうか?」ということで、「出来ればファーストネームで呼んでくれると嬉しいです」ってキャロがお願いした。

「えっと・・・エリオ君、キャロちゃん・・・?」

「あ、それでいいです! ね? エリオ君!」

「うんっ! ごめんなさい、キジョウ陸曹。本当はこういうのは良くないとは思うんですけど・・・。あの、前所属の六課でも今現在所属してる自然保護隊でも、階級も役職も付けずに名前で呼び合っていたから、それに慣れてるからそうしたいって・・・」

今にして思えば緩かったんだな~って思う。でもキジョウ陸曹は首を横に振った後、「実は特騎隊もそうなんですよ♪」って微笑んだ。シャルさんが隊長だから、なんとなくそんな気はしてた。

「では私のことも名前で呼んでください、ミヤビ、と」

「「はいっ! ミヤビさん!」」

3人で笑顔で居ると、「それにしてもすごいですね」ってミヤビさんが漏らしたから、「え?」って聞き返す。

「あなた達2人はまだ13歳。局入りは10歳。それなのにこんな危険な最前線で戦って・・・。すごいです。立派です。尊敬します。けれど・・・他には選択肢が無かったのですか? 管理局は実力あれば幼くても入局できる。万年人手不足で、優秀な魔導師はのどから手が出るほどに欲しい人材。でも・・・。私はそんな管理局はあまり好きじゃないです。平和のためとはいえ、子供たちを前線で戦わせるなんて・・・」

笑顔から一転、とても悲しそうな表情を浮かべるミヤビさん。確かに僕とキャロは、六課時代に比べればまだ平和な自然保護隊で活動してはいるけど、密漁者などを相手に戦ってる。危険度は抑えられてるけど、それでも怪我をすることだってある。

「でも、それでも僕たちはこの道を選んで、進もうって思ってます」

「何かを、誰かを守れる力を持っているのなら、それの力で守ってあげたいって・・・。私とエリオ君は守られてきましたし、今も遠くからですけど守られてます。ですけど守られてるだけじゃダメだって思うんです」

「力を持つ者としての覚悟と意志。それを胸に秘めて、僕たちは局員を続けていきます」

願いと思いは巡り巡っていく。フェイトさん達の意思を受け継いだ僕たち。その意思がまた誰かに受け継がれたら嬉しいなって思う。

「ごめんなさい。余計なお世話でした。とても素晴らしいと思います、その考え。でも、無理だけはしちゃダメですよ? 大人に頼ることも忘れないでくださいね」

「「はいっ!」」

それから続々と駐車場やレールウェイステーションへと向かうお客さんを見送っていると、『こちら東出入り口のアルテルミナス。そちらは状況は?』って通信が入った。ここから800mと離れてる東出入り口の監視を担当するマルスヴァローグ一尉からだ。

「こちら南出入り口のミヤビ。民間の方たちは順次帰路に付いています。マリアージュや暗殺者の姿は確認できません」

『了解。他の遺跡に回ったチームからも連絡は無いから、まだ警戒は怠らないように』

「「「了解!」」」

マルスヴァローグ一尉との短い通信も終わり、お客さんの数がまばらになって来たその時、「きゅくるー!」空から周囲を警戒してくれていたフリードが大きく一鳴きして、キャロの元に戻って来た。そしてある方角に頭を向けて、さらに「きゅくるー!」強く鳴いた。

「来ましたね」

ミヤビさんが騎士甲冑に変身しつつ、僕たちの前に躍り出た。僕たちの目の前に姿を見せたのは4体の「マリアージュ・・・!」だ。僕とキャロも「セットアップ!」と防護服に変身して、僕は“ストラーダ”を構えた。

「こちら南出入り口! マリアージュを4体視認しました! これより迎撃に入ります!」

『了解。こちらも4体を視認し、交戦に入る。勝とうね』

マルスヴァローグ一尉の方にも出現したようだけど、何も心配は要らないと思う。あのルシルさんと同格の騎士なのだから。

「エリオ君とキャロちゃんとフリードリヒ君は民間人の避難誘導と周囲警戒を!」

「「了解!」」

お客さんがまだ帰りきっていない今、誰かが護りに行かないといけない。ミヤビさんに応じた僕とキャロは、「我われも手伝います!」って応援に来てくれた陸士隊の人たちと一緒に、「慌てないでください!」って避難誘導を始めた。

「やっぱりすごく強い・・・」

その最中にキャロがそう言ったから、その目線の先を見る。それでミヤビさんが“鬼神”と呼ばれる所以を見た。クリスタルのような半透明の角を額から2本と生やしたミヤビさんの姿。物語の挿絵などでしか見たことのない鬼の姿そのものだ。そんなミヤビさんは、魔力付加していないただの裏拳で、1体目のマリアージュの頭を事も無げに吹っ飛ばした。

「えいっ!」

――光劉烈破――

薄い水色の魔力を右前腕部分に付加させたミヤビさんは2体目のマリアージュの胸に貫手を突き入れると、直後にマリアージュの上半身がドォン!と吹っ飛んだ。

「てーいっ!」

両手を組んでの振り下ろしを3体目のマリアージュの頭部に打ち込むと、マリアージュは顔面から地面に叩き付けられた。あまりの威力だったのか僅かにバウンド。上半身が反り返ったところでミヤビさんは「でい!」と組んだままの両手を振り上げて、マリアージュを空高く吹っ飛ばした。かと思えば、ミヤビさんもジャンプして、錐もみ状態のマリアージュの片足を掴み取って、4体目のマリアージュに向かって放り投げた。

――紅蓮蹴波――

激突して地面に転がった3体目と4体目のマリアージュ。ミヤビさんの角が半透明から真っ赤に変色すると、右脚に同じような真っ赤な炎が噴き上がった。そして宙に展開したベルカ魔法陣を蹴って、起き上がろうとしてたマリアージュ2体の元へと飛び蹴り態勢で突っ込んで行った。

「どぉ~っせぇ~いっ!」

2体のマリアージュの間に突き入れられたミヤビさんの燃える右脚。炎が周囲に広がると、すぐに半球状に大爆発を起こした。それですでに戦闘不能な1体目と2体目も巻き込まれて、消失し始める炎の中から「撃破完了です」ってミヤビさんが歩き出て来た。真っ赤な角2本も元の半透明に戻っていて、ミヤビさんが「はふぅ」と一息吐く(なんか蒸気のような物が見えたような・・・)と、角がシャァン!と綺麗な音を立てて霧散した。

「避難誘導の方は引き続きお願いします。エリオ君、キャロちゃん、フリードリヒ君。誘導が終わった後はまた周囲警戒をお願いしますね」

それからお客さんの避難誘導を終えた僕たちは、ミヤビさんと一緒に出入り口を護り続けた。

†††Sideエリオ⇒ルシリオン†††

「――というわけなんだ。マリンガーデンは最悪戦場になる。当然、そんな事にならないように俺たちも、それぞれの海底遺跡に戦力を割り振っている」

マリンガーデンに遊びに来ていたシャマルとアインスとザフィーラ、それにフォルセティとヴィヴィオとコロナの6人。昨日、八神邸に帰れはしないがミッドに降りて来たと連絡した際、フォルセティがシャマル達と遊びに行く、と言ってはいたが。まさかマリンガーデンとは。

「でもマリアージュが、フォルセティとヴィヴィオに反応したのは気になるよね」

「イクスヴェリア陛下は、オーディンさんやオリヴィエ様と直接お会いしているから、それがマリアージュの行動にも反映されている可能性もあるわよね」

シャマルの言う通りだと思う。暗殺者がマリアージュ1体を拉致したと聞いてはいるが、あくまでマリアージュに指令を下せるのはイクスヴェリアと軍団長のみ。暗殺者組織が関与しているとは思えない。拉致されたのが軍団長とは思えない、というのがティアナやトリシュ達の言だ。

「とにかくだ。シャマル、アインス、ザフィーラ。フォルセティとヴィヴィオ、もちろんコロナも、家に送り届けるまでちゃんと護ってあげてくれ」

「無論だ。必ずや護り抜こう」

「ルシル君、アイリちゃん。気を付けてね」

「んっ♪」

シャマル達と別れようとする中、『本日、マリンパークにお出で頂きましたお客様方にご連絡いたします』と放送が流れ始める。内容は、今日の営業を終了するというものだ。ここアーケードはすでに陸士隊の面々が避難誘導を始めている。短時間ながらも魔法戦が繰り広げられたんだ。とても理解が早く、慌てず、しかし早歩きでマリンパークの出口へと向かう。そんな中で俺を携帯端末でパシャリと写真を撮る客も居る。俺は客寄せパンダじゃないぞ~?

「じゃあフォルセティ。お父さんはまだ仕事があるから」

「うんっ。頑張ってね! アイリお姉ちゃんも!」

「ありがと~❤」

俺とアイリでフォルセティとハイタッチを交わし、他の客と共に出口へ向かう彼女たちの背中を見送ろうとしたその時、ガシャァン!とアーケードのアーチガラスが砕けた音が響いた。

――暴力防ぎし(コード)汝の鉄壁(ピュルキエル)――

アーケード全体にシールドを張って、ガラスの破片をすべて防ぎはしたが。ガラスを割った張本人である「マリアージュ!」3体の着地は防げなかった。一斉に騒然となるアーケードだったが・・・

「皆さん、ご安心を! 本局のルシリオン・セインテスト一尉がいらっしゃいます!」

「ですので慌てず騒がず、避難しましょう!」

陸士隊員が俺の名前を出すと、みんなが一様に「おおおお!」と歓声を上げた。悪い気持ちじゃないが、「まずは避難を優先してください!」と告げ、フォルセティとヴィヴィオの元へ駆け出そうとしていた3体のマリアージュへ突っ込む。

「アイリ!」

「ヤヴォール! そっから先は通せんぼ! 氷結の軛!」

アイリが石畳の地面から突き出させた氷の拘束杭が、フォルセティ達や客たちとマリアージュを隔てる壁となった。マリアージュは燃焼液と変化して自爆する術を持つ。下手にダメージを与えて自爆されることだけは避けなければならない。なら凍らせてしまえばいい、となる。

――舞い振るは(コード)汝の麗雪(シャルギエル)――

「ジャッジメント!」

氷槍6本と展開し、号令を下して一斉射出。マリアージュ達も俺の攻撃に気付いて回避しようとするが、単純に動きがノロい。6本全てが3体のマリアージュに突き刺さり、一瞬にして凍結した。

「スバル。アーケードに出現したマリアージュ全5体の対処を完了した」

『了解です! ティアもすぐに戻るって話ですし、あたし達でやれる事はやっておきましょう!』

「イクスヴェリアの捜索だな」

マリンガーデンの運営会社に問い合わせたところ、海底遺跡もマリンガーデンの目玉アトラクションにする予定だったらしいが、局や建設会社などの関係各位から立ち入り禁止令を受けたそうだ。そして遺跡は今、結界などで封印されているとのことだが、施設の中央管理室から起動・解除が出来るようになっているとのことだ。

『はい。マリアージュが姿を見せたということは、こっちが当たりかもですし』

「暗殺者の中には転移スキルを持つ者も居るからな。一応、警戒しておくがもし遭遇したら無闇に交戦しないように。冗談じゃなく強いからな」

『判りました! ではあたしはポイントBからの出入り口から入りますので、ルシルさん達もお願います!』

「「了解!」」

俺は管理室のあるスタッフオンリーの城の地下から入れるという一番遠いポイントDで、アイリはここアーケードにある遊園地、プール、ショッピングモールの交差点である円形状の中央広場、その側にある管理棟からの出入り口・ポイントAからの突入だ。

「アイリ。1人で大丈夫か?」

「大丈夫! アイリは、特騎隊のエイダー2! 何度も前線に参加したし、AAA+の実力だし、氷結系だしね!」

そう言って胸を張るアイリには、実際に何度も助けられているからな。エイダーチームは名前通り後衛支援担当だ。特騎隊の前線組の中で怪我をするメンバーはまず居ないが、任務先での民間人や、俺以外のメンバーが被疑者をボコり過ぎた際に治療に当たってもらう。エイダー1のティファレトを含め、2人は俺たちの生命線だ。

「そうだよな。単体戦力としてもう十分強いからな。じゃあお互いに・・・」

「健闘を!だね♪」

――我を運べ(コード)汝の蒼翼(アンピエル)――

施設内の飛行許可を取っていることで、俺は剣翼を展開してマリンガーデンの奥へと向かいつつ、サーチャー術式の「イシュリエル」を施設内にバラ撒く。これでいつどこにマリアージュや暗殺者が出ようが判る。

――舞い振るは(コード)汝の麗雪(シャルギエル)――

前後左右50m間隔で氷槍を1000本と空に展開し、それを空に維持する。そうして目的の城の前に着地すると、「お待ちしておりました!」とスーツ姿の男性が数人と俺を出迎えてくれた。

†††Sideルシリオン⇒アイリ†††

スバルやマイスターと別れた後、アイリは1人アーケードの中央広場に残って、アーケードの隅っこにある塔型の管理棟へ向かって走る。管理棟の地下3階へと降りて、遺跡へと繋がるハッチから進入するみたい。管理棟の入り口に辿り着いたその時、ドォーン!と大きな爆発音と振動が襲ってきた。

「わわっ!? なになに!?」

音の出所を見れば、「ちょっ、あそこって・・・!」シャマル達が居るはずの駐車場付近だよね。アイリは「シャマル、アインス!?」って通信を繋げてみる。でも「ノイズが・・・!」酷くて、なかなか繋がらない。思念通話はどうかなって思って、そっちも繋げてみるけどダメだった。爆発によるある種の妨害かも・・・。

「マイスター!」

今度はマイスターに通信を入れると、『イシュリエル越しで見ていた!』ってすぐに繋がってくれた。状況は、駐車場が大きく爆発したとのことで、被害の方は煙の所為でよく判らないみたい。

「アイリが見に行ってこようか?」

『いや、アイリは任務を続行だ。付近には陸士隊や警備隊も居てくれるし、それに何よりシャマル達も一緒だ。今は様子を確認できないがきっと無事だ。だからマリアージュには後れを取らないだろうし、アインスなら暗殺者とも真っ向から戦える』

「・・・そう、だよね・・・。うん、了解」

マイスターとの通信を切り、管理棟ヘ入る。待っててくれたスタッフから「こちらです!」って案内されたのは地下深くにあったメチャクチャ広い倉庫。その隅っこの床にスライド式のハッチがあった。遅れて、ビーッてサイレンと警報ランプが機能して、ハッチが左右にスライドして開いてく。ハッチを覗き込むと底が見えない程の縦穴があって、昇降用のハシゴが備え付けられてた。結界はもう解除されてるみたいだね。アイリは腰に白翼を展開して、「よいしょっ」と縦穴を飛び降りる。

『アイリ。遺跡への突入は済んだか?』

「うん。たった今、遺跡内部に進入したよ~」

『了解。念のために隔壁を閉じ、結界を再展開するることになるが、問題は無いか?』

「う~ん、いま問題が無いかどうか聞かれると返答に困るかも・・・」

これから起こるかも知れない。けど今は起こってない。だから答えられないんだよね。マイスターもすぐに『そうだな。すまない』って謝ってくれた。他の侵入者が現れないとも限られないってことで、ハッチも結界も再び機能するとのこと。そのやり取りの中で、真っ暗だった遺跡が明るくなった。人手が入ってるってことで、ちゃんと光源が用意されてた。

『・・・それでな、アイリ。先程の爆発の件だが、状況が判明した。目撃者の話によると、地面からマリアージュが出現し、そのまま自爆したそうだ。被害状況だが、複数人が火傷や転倒時の擦過傷を負い、車両も何台か廃車行き。そして・・・』

マイスターが口を閉ざした。それだけで「シャマル達に何かあったの!?」って察することが出来た。

『シャマルとフォルセティとヴィヴィオ、それに民間人10人ほどが崩落に巻き込まれて地下、さらに遺跡内部にまで落下したそうなんだ』

「民間人からも!? アイリも救助に向かった方が良いかな!? というか、行った方が良いよね!」

『そちらは応援を呼んで対処する。地上では新たなマリアージュや暗殺者までもが姿を見せた。ここが当たりと見て間違いない。俺は暗殺者とマリアージュの迎撃に移るが、クララ先輩の転移スキルで、各地に散っている他のメンバーを今まさに連れて来てもらっている最中だ。っと、ジャッジメント』

マイスターが何かしらの術式を発動させるための号令を発した。今も戦っているんだ。他の特騎隊メンバーが集まって来てるなら、アイリは何も憂うことなく遺跡を進めばいいんだ。管理局一の治癒魔導騎士のティファレト先生も居るはずだから、即死級の怪我を負っていない人なら治せる。

「マイスター。アイリは先を進むよ。シャマル達は遺跡内に落ちたんだよね? まずはシャマル達を捜してみるつもり。良いよね?」

『ああ、頼む。崩落現場からすでに地下や遺跡へとアインスとシャルとティファレト、それに陸士隊数名が降りているが、人手が必要かもしれない。・・・アイリも十分に気を付けてくれ』

「ヤー!」

マイスターとの通信も切れて、アイリは駐車場方角へと伸びる通路を飛んで進むことにした。遺跡内部はレンガ造りで、所々が崩れちゃってる。よく何千年も海底に在りながらこれだけの損壊で済んでるなぁ~。

「っ!? おおっとっと。早速お出ましだね、マリアージュ」

目の前の壁を突き破って来たマリアージュ2体と目が合った。結界再展開までの間に侵入を許しちゃったんだ。というか、さっきからドォーン、ドォーン!って爆発音が続いてるけど・・・。ああもう、嫌な予感しかしないんだけど・・・。

「あなた達さぁ、生き埋め上等で遺跡を破壊してイクスヴェリアを捜してるの? 馬鹿なの? 死ぬの? あぁ、もう死んでたんだっけ? アイリ、生者にしか興味無いから。ちょこっと残酷だよ?」

あ、マイスターだけは特別ね。オリジナルのマイスターは今現在、半死人状態だって言うけど、完全には死んでないからカウントしないよ~。

――コード・シャルギエル――

――フリーレン・ドルヒ――

氷槍1本を作って携え、氷の短剣25本を周囲に展開。氷槍の柄を両手で握りしめて、「まぁいいや。さぁ始めようか」って腰の白翼を大きく羽ばたかせて、臨戦態勢に入ったマリアージュに突っ込む。2体とも右腕を砲塔のような物へと変化させて、直射砲撃を放ってきた。

「せいや!」

氷槍を1体に投擲すると同時に、本来の30cmほどの身長形態である「フェー・フォルム!」へと戻って、「おーっとと」砲撃のやり過ごす。2射目が放たれる前に、「行って!」って待機させてた短剣を一斉射出。氷槍は当たらずに2体の間を通り過ぎようとしたけど、「どっかーん!」と号令を下す。氷槍を炸裂させて、小さな破片をマリアージュに叩き付ける。

「ヴァクストゥーム・フォルム!」

すぐに150cmまでに変身し直しつつ、両手に羽根型の氷のナイフ「クリンゲ・フェーダー!」を作り出して、体の所々が凍りついて動きがぎこちないマリアージュの首を撥ね飛ばした。

「完全に機能停止する前に他の個体に連絡しておいて。次にアイリ達の邪魔をしたら承知しないってね~」

ドサッと倒れ伏してビクビクっと痙攣してた2体のマリアージュは、そのまま動かなくなった。それを確認したアイリは、すぐにシャマル達が居るだろう地点へ向かって改めて通路を飛んだ。
 
 

 
後書き
2017年最後の投稿となります。次話の投稿はちょい間が空きます。古い家柄、長男、後継ぎ。この3つのキーワードで、年末年始がとんでもなく忙しくなってしまいますので。とはいえ、1月の前半には必ず再開する予定ですが・・・。というわけで・・・

皆様、よいお年をお迎えください!

ではでは! 
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