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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epica3-Cマリアージュ事件~Amusement park~

†††Sideアインス†††

「「今日はよろしくお願いします!」」

私とシャマル、それに狼形態のザフィーラに向かって礼儀正しくお辞儀するのは、なのはの娘であるヴィヴィオ、それにうちのフォルセティとも特に仲の良いクラスメイトで友人であるコロナ。今日は私とシャマルとザフィーラとフォルセティ、そしてヴィヴィオとコロナの6人で、中央区画の港湾地区に在るマリンガーデンという公共施設へと遊びに行くのだ。

「ああ、よろしく頼むよ」

「はーい、お願いね♪」

「うむ」

私とシャマルもお辞儀を返して、「さぁ車に乗ってくれ」と私の車に乗車するように促す。私のお給料で購入した車は大型ミニバンタイプで、3列シートで8人乗りとなっている。家族みんなで出かける際には重宝する。私が運転席へ乗り込み、シャマルは助手席だ。シャマルはこの車よりサイズの小さい八神家の共有車の運転も少し怪しいレベルの運転技術の為、シャマルにはこの大型車の運転は任せないようにしている。

「楽しみだね♪」

「うんっ♪ 今日はお誘いありがとう、フォルセティ!」

「どういたしまして、コロナ!」

フォルセティはヴィヴィオだけでなく、コロナも一緒に誘ったようだ。男友達も居るようなのだが、やはりどうもヴィヴィオやコロナと言った女友達を優先する節がある。それが少しばかり気がかりなのだが・・・。ヴィヴィオ、フォルセティ、コロナの順で中間座席に乗り込み、後部座席に図体の大きなザフィーラが乗り込むのを確認し、運転席に座る私の操作でドアを閉める。

「では出発するぞ」

「「「しゅっぱーつ!」」」

そして私の運転する車は一路マリンガーデンを目指して走り出す。その道中、後ろの席に座るフォルセティ達の会話を聞く。

「フォルセティ君、ヴィヴィオ。改めて今日は誘ってくれてありがとう。でも良かったの? 私も一緒で・・・。ヴィヴィオとフォルセティ君って本当に仲が良いから、私お邪魔かなって・・・」

「ううん、そんなことないよ。コロナにはいつもお世話になってるから。ね? フォルセティ!」

「うん。コロナは、僕やヴィヴィオにとって初めての友達だから。だから一緒に遊びに行きたかったんだよ」

「フォルセティ君、ヴィヴィオ。あの、これからもよろしく!」

「「うんっ!」」

フォルセティもなかなかに罪な男だ。後ろの3人の様子にシャマルが『プレイボーイなのはルシル君・・・もそうだけど、オーディンさんにそっくりね♪』と思念通話でそう言ってきた。オーディンもエリーゼ卿やアンナ、それに私やシャマル、守護騎士みんなからも慕われていた。オーディンと同一人物であるルシルも、現代では主はやてやシャル、トリシュタンから慕われている。

界律の守護神(テスタメント)となる前の、神器王ルシリオンだった頃には相思相愛の恋人が居り、戦友や戦天使たちからも慕われていた。彼の優しさがそうさせるのだろう)

ルシルには幸せになってもらいたい。そう強く願うが、それはつまり主はやての幸せを失わせるということに繋がる。ルシルにとっての幸せとは、“堕天使エグリゴリ”を救い、“テスタメント”から解放され、元の人間へと戻り、人間として死ぬ事。しかもこの次元世界での交戦が彼にとって最後の機会。それの妨害は、彼自身の否定に繋がる。そんな真似、出来るわけがない。しかし・・・。

「あ、アインス! 路を1本通り過ぎたわ!」

「っ! す、すまない!」

考え事していたため、本来は左折するところを通り過ぎてしまった。慌てて近くの駐車場に入り、改めて「すまなかった」とフォルセティ達に謝る。

「あ、大丈夫だよ、アインスお姉ちゃん」

「「はい!」」

フォルセティ達のフォローに感謝しつつ、「事故だけは起こさぬようにな」ザフィーラからの忠告に、「ああ」と頷き返した。それからは何ら問題なく順調に車を進ませ・・・

「「「とうちゃ~く!」」」

マリンガーデンに辿り着いた。続々と降車する中、ザフィーラが人型形態へと変身。ザフィーラは我々の護衛として、そして荷物持ち(これは奴が買って出た提案だ)として同行してもらうからな。狼形態では何かと不便、かつ入場できない。

「皆、はぐれないようにな」

この人込みでは一度はぐれたら合流するのは困難だ。フォルセティ達も思念通話くらいは使えるだろうが、合流するまでにあの子たちに何かあっては自害ものだ。

「ヴィヴィオ、コロナ!」

「うんっ♪」

「え?・・・あ、うん」

フォルセティがヴィヴィオとコロナに手を差し出すと、ヴィヴィオは一切迷うことなく満面の笑顔で手を取り、コロナは少し顔を赤らめて僅かに逡巡した後、その手を取った。

「ふふ♪ 将来、ルシル君みたいに苦労しなければいいんだけど♪」

「その時はその時だ。見守ってやろう」

私とシャマルで先頭を歩き、その後ろをフォルセティ達、最後尾にザフィーラが付く。やはり休日ということもあり、駐車するのも一苦労するほどの賑わいだったが、こうして無事に施設内に入場することが出来た。アーケードの両側に土産屋や衣類店、各食事処が並んでおり・・・

「まあ! 可愛いお洋服もたくさん!」

店頭前に飾られている夏服のディスプレイを見たシャマルがはしゃぎだす。サイズ的にフォルセティやフルフォーム状態のリインやアギトの物だろう。その様子にザフィーラが「待て、シャマル」と制止した。

「え? あ、そうだったわね」

「お前たちの決めたスケジュールでは、まずはアミューズメントパークで遊ぶのだったな」

「うん、アインスお姉ちゃん。次にプール、最後に買い物、だよ」

「じゃあこっちから行くのね」

アーケードの天井付近に展開されているモニターには、このマリンガーデンのマップが表示されている。真っ直ぐに行けばショッピングモール街、左に行けば巨大プールと水族館、右に行けば遊園地やゲームセンターなどのアミューズメントパークだ。そういうわけでまずは遊園地へ向かう。

「マリンファミリーパークへようこそ!!」

凱旋門のようなアーチをいくつも潜り、辿り着いたエントランスエリアにある入場チケット購入所で人数分のフリーパスを購入。手首に巻くタイプで、それを付けている間はどのアトラクションも利用できる。ゲートを通過して視界に広がるのは数種類のコースターやカルーセル、観覧車などなどのアトラクション、全部で28基ある。

「あっ、マリン君とアクアちゃんだ!」

ゲートに隣接する広大な噴水広場には、この遊園地のマスコットである水色のペンギンのマリンと、ピンク色のイルカのアクアが、子供たちと戯れていた。フォルセティ達も「行こう!」と駆け出した。

「シャマル」

「ええ、写真ね♪ 」

シャマルがショルダーバッグより携帯端末を取出し、きゃっきゃ♪と黄色い声を上げてマスコットに抱きつくフォルセティ達に「3人とも、そのまま!」とシ声を掛け、端末を目の前に掲げた。

「はい、ピース♪」

「「「ピース!」」」

写真を何枚か撮った後は、早速アトラクションに乗ることに。まずは定番のティーカップから。フォルセティたち子供らだけがカップに乗り込み、私たち大人組は外で端末を構えたり、手を振ったりと見守る。

「きゃああああ♪」「ひゃあああああ!」

「それそれー!」

フォルセティがカップ中央のハンドルを回し、ヴィヴィオは遠心力で体を揺らして歓声を上げ、コロナは両手を胸の前でギュッと握る。フォルセティは「あっはっは!」と大声で笑い声を上げ、ヴィヴィオを楽しませようとしている。やはり今のところはコロナよりヴィヴィオを優先するか。

「め、目が回ります~」

「あはは! 大丈夫、コロナ? フォルセティ、調子乗り過ぎ~♪」

「あぅ~。ごめん、2人とも」

ティーカップより降りてきた子供たち。足元の覚束ないコロナの腕を抱くヴィヴィオと、小さく頭を下げて謝るフォルセティ。そして3人は「あはは♪」と大声で笑いあった。改めて3人は手を繋いで、「次!」と他のアトラクションへと目指す。待ち時間が短いアトラクションから済ませるようで、「ミラーゴーストハウス!」に入るようだ。

「ゴースト・・・」

「あら? コロナちゃん、幽霊とか苦手だったりする?」

「ちょっとだけ、ですけど・・・」

体を縮こませているコロナに、フォルセティとヴィヴィオが「大丈夫!」とコロナを安心させるようにニッコリと笑顔を向け、握っている手の力をさらにギュッと強めた。それで安心できたのかコロナは「うんっ!」と頷き、3人が入口に入って行く。私たちも続き、鏡で作られた通路を歩く。

「暗いから気を付けてね、ヴィヴィオ、コロナ」

「「うん、ありがとう」」

日本のお化け屋敷のように薄暗く、さらに鏡張りだということで「あいたっ」と子供たちは額をよくぶつけ、「あわっ!?」と蹴躓く。鏡にぶつからないよう、手を前に突き出して歩くように伝えつつ、前へと進んでいたところに、「あ゛あ゛あ゛!」と鏡の向こうからモンスターがぶわっと現れ、鏡に張り付いた。

「「きゃああああああああ!」」

「おうふ!?」

ヴィヴィオとコロナが悲鳴を上げてフォルセティに抱き付いた。その様子を私とシャマルでニヤニヤしながら見守る。フォルセティが「大丈夫、大丈夫だから!」と2人の背中をポンポンと優しく叩く。

「ひゃっ!? ご、ごめんね、フォルセティ君!」

するとコロナが顔を真っ赤にし、慌ててフォルセティから離れる。で、背後に鏡にドンッとぶつかり、「あいたた・・・」と鏡に振り返ればまた、「あ゛あ゛あ゛!」と別のモンスターが鏡に張り付き、コロナを恐がらせる。

「~~~~~っ!!」

そしてまたフォルセティに抱き付いて顔を赤くする。なんというか可愛らしい女の子だな。ヴィヴィオがフォルセティの右腕に抱き付きながら「コロナもこのまま行こう♪」と誘うと、コロナは僅かに逡巡した後・・・

「フォルセティ君。いいかな?」

そろそろとフォルセティの左腕に両手を伸ばしつつ、上目遣いで尋ねるという連撃を発動。これは男心に堪らないものだ。が、「うん。いいよ」フォルセティはまだ7つになったばかり。慌てるような反応は起こさなかった。それからヴィヴィオとコロナは悲鳴を上げては、「うむぅ・・・!」と腕がきつく締め付けられていることでフォルセティが痛がる、を繰り返した。

「外だー!」

「やっと終わった~!」

迷路のようだったこのゴーストハウスの出口をようやく見つけ、ヴィヴィオとコロナがフォルセティの両手を引っ張っての駆け足で、「ゴール!」と出口から外へと飛び出して行った。私たちも続いて出たところで、「おかえりなさい!」と係員の女性に声を掛けられた。

「よろしければ、場内での写真データをプレゼントいたします。写真データそのものの贈与しますし、残りデータも責任を持って削除するので、本パークには残りません」

係員が複数のモニターを私たちだけに見えるように展開し、ゴーストハウス内での写真データを見せてくれた。それらを見たコロナが「あぅ・・・」とまた顔を真っ赤にした。まぁフォルセティと密着している姿を、第三者視点で見たのだから。

「コロナは、どのデータ貰う? 僕はコレ~♪」

フォルセティが選んだのは、ヴィヴィオとコロナが口を大きく開けて絶叫しているシーンの物。だから2人から「ダメー!」と猛反対を受けた。そのため、「じゃあコレ」とハウスに入った直後の、私たち皆が映ったデータを選んだ。ヴィヴィオとコロナ、私たちもそれぞれデータを貰い、自身の端末にデータを移動させてから、次のアトラクションへ。

「次はシューティングコースター!」

とのことで、今度は速度の遅いコースターに乗り、備え付けのライフル型のアイテムでコース上に登場する投射された3Dモンスターを倒す、というものだ。このパークのアプリケーションをダウンロードしていれば、各種アトラクションの待ち時間を知ることが出来るため、即座に行動に移せるというわけだ。

「早く早く!」

「混んじゃう前に行きましょう!」

「待って、ヴィヴィオ、フォルセティ君!」

駆け出すフォルセティ達に私たちも続く。大きな施設に到着し、3分待ちと表示されたモニター前の列に並ぶ。3分という話だったが2分もせずに私たちの順となった。2列シートの銃座6基付きのコースターがあり、前列に子供たちが乗り込み、後列に私たち大人が乗り込む。

「ではいってらっしゃいませ~!」

コースターがゆっくりと動き出し、目の前のトンネルを潜る。フォルセティ達は目の前に備え付けられているライフルを構え、いつでもモンスターを狙えるようにキャッキャ♪とはしゃいでいる。トンネルを抜けるとそこは薄暗く、奇抜な色彩の光で溢れた大きな空間。コースターはレールの上をのんびり走り・・・

『オオオオオ!』

「「出たぁぁぁーーー♪」」

「撃て、撃てぇぇーーー♪」

レールの両側に設けられた廃墟などのセットや、向かう先の天井や床から半透明で多種多様なモンスターが数体と出現。フォルセティ達が一斉に光線を放ち、モンスター達を迎撃して行く。

『フォルセティ。オーディンさん譲りの射撃の腕ね。百発百中だわ』

『ああ。しかもヴィヴィオ達の獲物まで獲らない気の配りようだ』

さらに言えば、ヴィヴィオ達が狙い撃ちしやすいモンスターを残している。だからヴィヴィオ達のライフルから放たれる光線も、次々とモンスターに当たるようになった。子供たちに攻撃を任せていると、モンスターからの攻撃が強くなり、あの子たちが「わわっ!」と可愛らしく慌てふためく。

「バリア! フォルセティ、バリア!」

「うんっ!」

ライフル脇に設置された手の平サイズのボタンを押すと、コースターを覆うような光エフェクトが展開され、モンスターの攻撃を防ぐという演出が発生する。被ダメージとモンスター撃破の総合ポイントで、賞品レベルが上がるらしい。

「あぅ~。アインスお姉ちゃん達も手伝って~!」

「「お願いします!」」

必死にお願いされては答えねばなるまい。私たちもライフルを構え、トリガーを引いて光線を放つ。シャマルも「きゃあきゃあ♪」とはしゃぎながら、百発百中とは言えずともモンスターを撃破して行っている。私も負けじと放ち、「アインスさん、すごい!」とコロナに称賛されるレベルでの撃破数を叩きだす。ザフィーラはサポートに徹し、撃破数は一番少ない。
そうして全長約700mのアトラクションを終え・・・

「おかえりなさーい! 獲得ポイントはなんと・・・1万8000ポイント! 開園以来歴代1位のポイントです!」

出口付近のゲートの係員数名から拍手を送られた私たち。高得点の隠れモンスターを撃破したことが大きいらしい。どうやら私やザフィーラが集中的に狙っていた襲って来ないモンスターがそうだったらしい。

(これならば前半、手伝いを乞われる前から姿を見せていた隠れモンスターも撃っておくべきだったか)

気付いてはいたのだが、フォルセティ達が楽しんでこそ、と考えていたために手を出さなかった。

「では賞品の、マリンガーデン内のお店であればどこへも使用できる商品券3万クレジット分です!」

係員から商品券データを端末に転送してもらい、「すげー!」や「おめでとう!」となどという称賛の声と拍手を他の客から受けながら、私たちはその場を後にした。

「それで次はどうする?」

「えっと。今なら水上コースター、空中ブランコ、垂直落下のスカイフォール、あと――」

「「「水上コースター!」」」

というわけで、次に乗るのは海上にレールが敷かれた水上コースター。掛け足で向かうフォルセティ達の後を追い、乗車するための行列に並ぶ。順が回って来るまで、次の予定であるプールで、どの種類から入るかをフォルセティ達が話し合っているのを聞いていると、「並び順はどうする? 1シート2人乗りだけど・・・」とシャマルが尋ねてきた。

「1シート2人乗りか。フォルセティ、ヴィヴィオ、コロナ。お前たちで決めると良い」

普通に考えれば大人と子供で1組を作るべきなのだろうが、フォルセティとヴィヴィオの事を考えると2人をペアにしてやりたいが、それではコロナが溢れてしまう。だからと言ってあの子たちの意見を聞かずに決めることもしたくはない。

「どうしよっか?」

「ヴィヴィオはフォルセティ君と一緒に乗りたい?」

「え!?・・・えー、あー、わたしは・・・」

「わたしはアインスさん達と乗るから、気にしないでいいよ?」

「・・・僕はザフィーラと、ヴィヴィオはアインスお姉ちゃんと、コロナはシャマルお姉ちゃんと。これでけって~!」

ヴィヴィオとコロナのやり取りに割って入って告げたフォルセティ。ビシッとしたその佇まいに2人も「う、うん」と反論することなく頷き応えた。スムーズに乗るために並んでいる今から乗るペア同士で並ぶ。

「あの、お願いします、シャマル先生」

「ええ。恐かったら言ってね」

「あ、はい」

シャマルとコロナがそう会話しているのを見、「ヴィヴィオ。恐ければ手を繋ごうな」と声を掛けると、「その時はお願いします!」と笑顔を向けてくれた。そしてとうとう順番が回って来た。

「レインコートをどうぞ~!」

コースターに乗車するためのホームに上がったところで、係員の1人より半透明なレインコートを頂いた。水上コースターと言うことで水飛沫が掛かることもあるのだそうだ。レインコートを私服の上から着て、定員10名のコースターの前へ移動する。

「一番前はザフィーラとフォルセティ、次に私とヴィヴィオ、最後にシャマルとコロナの順だな」

事前に決めた席順で乗車し、『それでは安全バーを降ろします!』という係員のマイク越しでの言葉の後に頭上から落下防止用のバーが降り、隣に座るヴィヴィオはギュッとバーを握り締めた。

『水上コースター・アクアドラゴン、Standby ! Ready ! 5、4、3、2、1、Go !』

「「ひゃっ!」」

スタート直後から時速110km/hまで急加速をし、そのまま高度50mまで上昇。私の前に座るフォルセティが「来た来た来た・・・!」と興奮した声を漏らした。そしてコースターは上り坂の頂上に到達し、ゆっくりと折り返しを始める。

「ひぅ・・・!」

空から地上――レールの先へと視界が移り、一瞬の浮遊感の後、「ひゃああああああ!」ヴィヴィオとコロナの絶叫が後部へと高速で流れながら急降下するコースター。右に曲がり、左に曲がり、上昇しては下降し、大きなループに小さなループと続き、いよいよ海上レールへと突入する。

「海の上だからか涼しいわね!」

「ああ!」

後ろの席に座るシャマルが大声でそう伝えてきたが、なぜ思念通話を使わないのか、と思う。しかし海上スレスレを走ってはいるが、レインコートが必要なほどの水飛沫は上がらないが・・・。

「む・・・!?」

「「きゃあああああ♪」」

「冷た~い!」

レール両脇に噴水が等間隔で設けられており、通過する直前に噴射するため、顔に水霧が掛かる。水量は多くなく、小雨程度と言うこともあってレインコートでも十分防げる。夏だからこその可能なアトラクションだな。こうして全長3,5kmという長さを誇った水上コースターも、「面白かった~!」そう笑い合うフォルセティ達の様子から、好評だったようだ。

「時間的にお昼前にもう1つ行けるわね。それとも少し早いけど、お昼にしようか?」

シャマルがそう尋ねたところ、きゅ~、と可愛らしい腹の鳴る音がした。出所は子供たち3人。ヴィヴィオとコロナは顔を真っ赤にするが、フォルセティは「あはは、お腹空いた~!」と恥ずかしがることなく両手を腹に置いた。

「ふふ♪ いろいろと叫び過ぎたものね♪」

「そうだな。ではまずは腹ごしらえだ」

「「「はーいっ!」」」

こうして私たちは、次のアトラクションに乗る前に昼食を摂ることになった。
 
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