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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
神聖剣VS神速
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第55層にある主街区《グランザム》。別名《鉄の都》と言われている。他の街が大抵石造りなのに対して、グランザムを形作る無数の巨大な尖塔(せんとう)は、全ての黒光りする鋼鉄(こうてつ)で作られているからだ。鍛冶や彫金が(さか)んということもあってプレイヤー人口は多いが、街路樹(がいろじゅ)(たぐい)はまったく存在せず、深まりつつある秋の風の中では寒々しい印象を隠せない。

そんな街中に、一際(ひときわ)高い塔が存在する。巨大な上部から何本も突き出す銀の槍には、白地に赤い十字を染め抜いた(はた)が垂れ下がって寒風にはためいている。ギルド《血盟騎士団》の本部だ。

その本部に呼ばれた1人の剣士。

幅広の階段を昇った所にある大扉は左右に開け放たれていたが、その両脇には恐ろしく長い槍を装備した重装甲の衛兵が控えていた。剣士がコンバットブーツの(びょう)を鳴らしながら扉を潜っていくと、衛兵達は何やら気に食わない目つきで剣士を睨んでいた。正直、気味が悪かった。しかし彼は慣れているから大した問題にはならない。

問題なのは、これから会う人物のことだけだ。

街並みと同じく黒い鋼鉄で造られた塔の1階は、大きな吹き抜けのロビーになっていた。人は誰もいない。

街以上に冷たい建物だという印象を抱きつつ、様々な種類の金属を組み合わせた精緻(せいち)なモザイク模様の床を横切って行くと、正面に巨大な螺旋(らせん)階段があった。

金属音をホールに響かせながら階段を昇っていく。筋力パラメータが低い者なら絶対途中でへばってしまう高さだ。いくつもの扉の前を通り過ぎ、剣士は無表情な鋼鉄の扉の前で足を止めた。

やがて意を決したように右手を上げると扉を開け放った。内部から溢れた大量の光に、思わず眼を細める。

中は塔の1フロアを丸ごと使った円形の部屋で、壁は全面透明のガラス張りだった。そこから差し込む灰色の光が、部屋をモノトーンに染め上げている。

中央には半円形の巨大な机が置かれ、その向こうに並んだ5脚の椅子の中央に、1人の人物が座っていた。あの顔、忘れるはずがない。《血盟騎士団》団長にして、このアインクラッド最強と(うた)われている男、《ヒースクリフ》だ。

「キミと会うのはこれで二度目だったかな、《ネザー》君」

「三度目だ。67層のボス攻略会議で顔を合わせただろ」

ヒースクリフは軽く頷くと、机の上で骨ばった両手を組み合わせた。

「あれは辛い戦いだったな。我々も危うく死者を出すところだった。トップギルドなどと言われても戦力は常にギリギリだよ。……その上、このアインクラッドに招かれざる客が紛れ込んでいる」

「……アスナから聞いたのか」

今の台詞を聞いて、アスナが74層の出来事を報告したことは容易に想像できた。
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