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不老不死の暴君

作者:kuraisu
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第四十六話 記憶

ここは・・・どこだ・・・?
・・・?

「「「「万歳!」」」
「「「グレキア王国万歳!!」」」

馬に跨り、俺は道を進んでいた。
そして後ろに武装した兵士が何万も続いている。
ああ、戦に行くんだったか。

「今回の戦は勝ち戦だろう」
「ああ、なんたってあの国は南部諸国を併呑し続けていると言っても未だに我がグレキアを始め、シュターン、キャメロットと言った大国と比べれば小国という括りからは抜けられんわ」
「そうだ!それにあのキャメロットも今回ばかりは手を貸してくれるらしいしな」
「ああ、むしろ今回はそっちの方が要注意だろう。戦闘中に牙を剥きかねんしな」

ええと、何処に戦をしにくんだっけ。
確か・・・
ん?なんか光景が歪んで・・・
全く別の光景に・・・
なんだここは?会議室か?

「申し訳ありません・・・王都に追いつめられるまで敗北を重ねることになろうとは」
「だが、まだ残存兵力を結集すれば勝ち目はあるはずだ」
「しかしキャメロットが寝返ったこの状況で誰が軍を率いるのだ?」
「確かにあんな小国とキャメロットが休戦を合意したなど予想外だったからな。大国の面子というものがあるだろうに一体あの国はどんな条件を提示したのだ?」
「それよりも前線の兵士が言っていた化物とは一体?」
「そんなもの腰抜けの戯言だ!!」
「戯言?大陸西部に覇を唱え、他国と何度も戦ってきた我が軍の精鋭が戯言を抜かしたというのか!!」

負けたのか・・・?
我々が・・・?

「父上」

うん?

「いくさ、まけちゃうの?」
「いや、私がいる。何も心配することはないよ」

そうだ、息子がいたんだった。

「あなた・・・」
「お前も心配するな。大丈夫だ」
「ならいいのですが、私の相手はしてくださらないのですか?相変わらず女心がわからないのですね」

俺から言わせればお前の方が相変わらずだ。我が妻よ。

「悪いが忙しいのでね」

そしてまた場面が変わる。
ここは・・・王宮の一室だな。
なにやら黄色い霧のようなものが出ているが・・・
呆然としているとなにかが飛び掛ってきた。
思わず俺はそのなにかを斬り捨てる。
だが、その斬ったなにかの顔に俺は見覚えがあった。
これは・・・俺の息子の・・・・・
また場面が変わる。
今回はまるで宙に浮いているかのようだ。
そして眼下に広がる世界は凄惨としか言いようのない光景が広がっている。
不気味な黄色い霧が出ており、動く屍共が美しい王都を徘徊している。
その中で動く屍の返り血を浴びながらどこか悲しげでありながらも獰猛な笑みを浮かべ剣を振り続けている。
その者は激怒や絶望、狂喜・・・この世で激情と言えるものを詰め合わせたような狂ったような叫び声を上げている。
やがてその者以外に動くものはなくなり、王都は赤色に塗りつぶされ、切り裂かれ原形を留めていない屍がそこら中に転がっていた。
王都を朱に染めたその者は涙を流しながら返り血に染まった赤黒い剣を自分の腹に何度も刺しながら狂ったように嗤い続けている。
そして唐突に分かった――否、思い出した。























あれは俺だ。






















「・・・・っ!」

まず目に入ったのが血だまり。
俺はベルガに斬られたんだったな。
それにしても俺は気絶して夢を見ていたのか?
最後に気絶したのは確か二百年以上前だ。
いや、そんなことは後でいい。
まずさっきから戦っている仲間を助けに行かなくては。
夢のせいで最悪の気分だ。
鬱憤晴らしだ。思いっきり派手に暴れよう。
俺の体からミストが溢れ出した。



ジャッジが吹っ飛んでいく。
バルフレアが銃の先端部分を持って、思いっきり殴りつけたのだ。
そういう使い方をすると銃は鈍器として結構優秀だったりする。
最もあまりやりすぎると銃が変形して弾を撃てなくなる可能性もあるが、命に比べたら安いものだとバルフレアは割り切っていた。
それにそれなりに銃火器について知識を持っているので簡単な修理は自分でできるからでもある。
イヴァリースでは銃の生産法が確立しておらず、大金持ちが道楽で開発する以外は遠方の国からの交易品くらいでしか手に入らない。

「ちっ、次から次へと面倒だな」
「自分から首を突っ込んだんでしょ?」
「ああ、そうだな」

バルフレアはそう言うと目の前のジャッジを睨みつけた。
するとそのジャッジの首に刃が生えた。
正確にはヴァンが後ろから突き刺したのだが。

「お前意外とえげつねぇな」
「そうか?」

ヴァンは不思議そうな顔をしてバルフレアの方を見る。
バルフレアはその様子をみてため息をついた。
まだ10代の子どもがここまで割り切ってしまっていのかと思ったからだ。
しかしヴァンからしたら意味不明なことこの上ない。
何故ならヴァンに実戦で鍛え上げたのはセアなのである。
セアの敵に対する容赦ない攻撃に比べれば自分の攻撃は甘すぎるとヴァンは思っているのだ。
はっきり言って比べる対象が悪すぎるのだがヴァンは全く気づいていない。
実はそのせいでパンネロから若干引かれてた次期があったのだが、パンネロも数ヶ月も似たような光景を見ていたらなれてしまった。
案外、家畜を殺すのになれるのと似たようなことなのかもしれない。

「そういや、セアは・・・」

そう言ってヴァンは入り口の方を見た。
そこには血で鎧が赤くなったベルガが立っていた。
そしてそのベルガの背後に黄色い霧が立ち上っていた。  
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