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勇者番長ダイバンチョウ

作者:sibugaki
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第3話 喧嘩終われば今日からダチ公!男の鉄則に常識は無用!

 ゴウリキ星人との激闘を無事に終えた番とバンチョウ。二人は今回の戦いで轟宅にあった一台のデコトラと合体し、勇者番長ダイバンチョウとなったのだ。
 その時のパワーと言ったら正に凄まじいの一言でもあった。あのゴウリキ星人をパワーで圧倒し、更には必殺技も多数内臓されているのだから。
 恐らく、今回の戦いではまだまだダイバンチョウのスペックを全て発揮した内には入らないだろう。まだまだダイバンチョウは奥が深いようだ。
「しっかしあのダイバンチョウってのは凄かったなぁ。あのゴウリキ星人をあっさり倒しちまうんだからよぉ」
【あぁ、俺自身でも驚いてるぜ。まさかあんな合体があるとは、俺自身気付かなかったからな】
 どうやらバンチョウ自身知らなかったらしい。とにかく、これでバンチョウは格段にパワーアップを果たした事になる。
 これならゴクアク星人が幾ら凶悪な敵を送り込んできたとしても問題あるまい。
 そう思えていた。
「そう言えば、何でダイバンチョウに合体するのに家のデコトラを使うんだ?」
【それは俺にも分からん。って言うか、これは何だ?】
 バンチョウは自分の隣に佇んでいる巨大なトラックが気になっていた。其処には大型トラックなのだが、荷台のところには所々男らしい絵が書かれており、デカデカと【喧嘩最強】と書かれている。明らかに趣味が悪いトラックであった。
「あぁ、それは死んだ爺ちゃんが昔乗ってたデコトラなんだ」
【デコトラ?】
「あぁ、昔はこれで良く爺ちゃんと色んな所を回ったもんだぜ」
 番がふと、昔を思い出す。それは輝かしきセピア色の風景だった。




 ~此処から先は番の過去の語りとなります~


「どうだ、番。爺ちゃんのトラックはカッコいいだろう?」
「すっげぇカッコいいよ爺ちゃん!」
 それは、まだ番が4~5歳位の頃、番の祖父が自分のデコトラに乗せて高速道路を走っている光景であった。
 そのデコトラのデザインは今のデザインと全く変わった様子がない。
 それ程までにこのデコトラを大事にしていたのか、はたまた曰く付きの為に誰も触りたくなかったせいなのかは轟家にしか分からない秘密だったりする。
 そんな訳で、番の祖父は初孫である番を自慢のデコトラに乗せて高速道路を走り回っていたのであった。
 回りには一台も車が走ってなど居ない。祖父の走るデコトラの天下であった。
 番がそう思いながら車窓から見える光景を眺めていた時、突如としてその景色を遮るかの様に別のデコトラが現れた。
 若い女の水着姿をバックに塗った感じのアダルトなデザインのデコトラであった。
 そのデコトラが祖父の乗ってるデコトラと速度を合わせるようにして横を走っていた。明らかにわざとやってる様子であった。
「爺ちゃん、あれは?」
「ふん、ここら一帯で爺ちゃんに喧嘩を売る奴ってのは余所者だな? あんな破廉恥な絵柄を男の勲章とも言えるデコトラに塗りつけるとは趣味が悪い奴だ」
 祖父は横目で趣味の悪いデコトラを睨んでいる。そのデコトラを運転していた男もこれまた趣味悪そうな男だった。
 此処で書き記す程の外観じゃない位の男だったと言える。
 その男もまた同様にこちらを睨んでいる。そして、主室に級ハンドルを切って体当たりを始めたのだ。
 車体と車体がぶつかり合い火花を散らす。祖父のデコトラに多少の傷が出来上がってしまった。
「舐めるんじゃねぇ! この道うん十年のこの爺ちゃん相手にそんなしゃばい攻撃でどうこう出来る訳ねぇだろうが! 本当の喧嘩ってのはこうやるんだ!」
 お返しにと祖父もまた急ハンドルを切った。祖父が運転していたデコトラの体当たりは、趣味の悪いデコトラのそれとは比較にならない程に強力な一撃であった。
 たった一撃のそれを食らっただけで趣味の悪いデコトラはバランスを崩し、やがてコースアウトし横転してしまった。
 そんなデコトラを尻目に祖父の運転するデコトラは悠々と走り去って行く。
「はっはっはっ! どうだ、爺ちゃんは強いだろう?」
「すっげぇ強いよ爺ちゃん! 僕も爺ちゃんみたいに強くなれるかなぁ?」
「なれるに決まってるだろうが。お前はこの爺ちゃんの孫だぞ? なれない筈がない! 絶対になれる。その為にもいっぱい強くなる努力をしろ! いっぱい喧嘩をして、いっぱいダチを作れ! それが真の漢になる道なんだからな!」
 そう言ってくれた祖父の顔はとても輝いて見えた。その祖父の顔を、番は今でも覚えていた。




     ***




「あれから……もう11年も経つのか」
【中々漢気のある爺さんだったんだな】
「あぁ、あんなに強くてカッコいい爺ちゃんだったのに、数年前に逝っちまってな」
 何所となく寂しげな表情を見せる番。普段の番なら絶対に見せない表情でもあった。
【出来る事なら、俺もその爺ちゃんって男と一回喧嘩してみたかったな】
「あぁ、俺もだ。だけど、今の俺が爺ちゃんと喧嘩したって、多分足元にも及ばないだろうな」
【何時になく弱気じゃねぇか、普段から強気の番とは思えない言い草だな】
「それだけ、俺の爺ちゃんは強かったのさ……俺の憧れであり、俺の夢でもあった存在……」
 そう言い、番は青い空を見上げた。かつて祖父が運転するデコトラに乗り見上げたのと同じ青い空を。




     第3話 喧嘩終われば今日からダチ公!男の鉄則に常識は無用!




 その日、地球にまた別の光が流れ落ちていく。だが、それはゴクアク星人の手下とはまた違った光であった。
 果たして、その光は一体何なのか?
 それはもう少し先で分かる事でもある。
 丁度その頃、我等が轟番と言えば……




「が~~、ぐぉ~~~」
 此処は轟家の中にある番の部屋。床は畳を敷き、勉強机の代わりにちゃぶ台を使用している所など、何所となく古臭いイメージの部屋である。
 そして、そんな部屋のど真ん中に布団を敷き、その上でいびきをかいて眠っている番が居た。
 今日は誰が決めたか日曜日。学校も休みでやる事もないので未だに眠っている次第なのである。
 しかし、何時までも寝ていられては話が進まない。一体どうした物かと悩んでいる時、ドタドタと駆け足で近づく音がする。
 そして、その音が近くに来た時、思い切りふすまを開いた。
「番兄ちゃん! 朝だぞぉ、起きろぉ!」
 開いたふすまの奥から元気の良い少年が現れた。そして、その少年は主室に眠っている番に向かい跳びかかってきたのだ。
「ぐふぅっ!!」
 幾ら子供と言えどもそんな事をされればこんな声もあげるだろう。
 突然の衝撃に腹の中にある内臓が飛び出すのではないかと思える程でもあったとか。
 しかし、そんな番の心境などお構いなしの如く眠っている番の上でじたばた暴れ続けている。
「兄ちゃん、朝だぞぉ! 起きろよぉぉっ!」
「いででで! おい、真! 少しは兄貴を労われってんだよぉ!」
 因みに、今番の上で暴れている少年の名は轟真(とどろき まこと)と言い、番の弟である。
 小学3年生であり元気爆発中の暴れん坊である。
「早く起きてよぉ兄ちゃん! 母ちゃんが飯作って待ってるよぉ」
「お、お袋がぁ? そいつぁいけねぇ! 男は身だしなみはサボっても三度の飯はしっかり食うべし! って死んだ爺ちゃんが言ってたしな」
 これまた死んだ祖父の格言であった。そんな訳で部屋を後にし、居間に行くと、これまた和風の古臭い部屋があり、その真ん中に丸いちゃぶ台が置かれており、その上には和風の献立が並べられている。
 そして、其処にはそれらの献立を用意したであろう一人の女性が座っていた。
「真、番は起きた?」
「あぁ、起きたよお袋」
 大欠伸をしながら番はちゃぶ台の前に座る。この女性は轟恵(とどろき めぐみ)と言い番と真の母である。
 因みに今日の献立はほかほかのご飯に熱々の味噌汁、それに納豆と生卵にアジの開きと、これまた御馴染みの献立であった。
 それらを囲みながら、轟家の朝食は始められる。
「ねぇ兄ちゃん」
「何だよ?」
「最近兄ちゃんさぁ、何で父ちゃんの軽トラの前でぶつぶつ一人言いってるの?」
 真の問いを聞いた途端、番は思い切り喉にアジの小骨を挟んでしまいむせってしまった。
 胸の辺りを必死に叩いて骨を流し込み、味噌汁を啜って落ち着くと、真の方を見る。
「べ、別に何でもねぇよ」
「そうかなぁ? だって兄ちゃんが一人言いうなんて今までなかったじゃないか。変だよぉ」
「確かに変ねぇ。何か悩みでもあるの? 番」
 真と恵に睨まれて番の額に冷や汗が流れ出す。別に隠す理由はないのだが、何故か番は黙ってしまった。家族に危険が生じるとかそう言う類ではなく、単に恥ずかしかったからだと思われる。
「い、いやぁあれだよ! 俺も将来車の免許を取るだろ? それのイメージトレーニングとか? そんな奴をやってたんだよ」
「本当にぃ?」
「本当本当!」
 番は必死に嘘で押し通そうとした。番の弟である真は年の割りに感が鋭い面がある。下手な嘘ではすぐにばれてしまうのがオチだったりする。
「そ、そうだ! 朝なんだしニュースでもやってるんじゃねぇのか?」
 話を逸らす為にと、番はリモコンを片手にテレビの電源を入れた。電源の入る音と共にこれまたご期待通りにニュース番組が行われていた。
 真と恵が未だに睨みを利かせているがそんな事を気にしないように努めつつ番は食事を勧めた。
【次のニュースです。地底開拓用として開発された最新式ドリル戦車が本日実践投入される事が決定されました。このドリル戦車は地下資源を採掘するだけでなく、地下トンネルの開通や地底探査にも用いられる万能車両として開発されており、これからの期待が高まっていると言っても過言では御座いません】
「み、見ろよ真! ドリル戦車だってよぉ! カッコいいよなぁ」
「本当だぁ! すっげぇ!」
 真と恵もすっかりテレビで報道されているドリル戦車に目が行ってしまっていた。
 それを見てホッとなる番だったりした。




     ***




 その頃、番町から近くの工事現場に置いて、例の万能ドリル戦車が実践投入される事となった。
 今回の内容は地下500メートルまで掘り進んでの耐熱、強度調査にある。
 これが終われば晴れて現場への投入が行える事となるのだ。その為、周囲の期待の目も高まると言う物でもあった。
「木村君、この名誉ある仕事に就けた事を社員一同羨ましがっているよ」
「任せて下さい工場長! 必ずこのテストをやり抜いてみせますよ!」
 所員一同の期待を胸に、木村と呼ばれる作業員はドリル戦車に乗り込み、早速地底へと掘り進んだ。大型ドリルを先頭に取り付けている為、堅い岩盤でも難なく掘り進んでいける優れものだった。
「凄いぞ! これなら500メートルといわず1000メートルだって掘って行けるんじゃないのか?」
 思わず木村はそう呟いた。耐熱計や強度系、それに駆動系も今の所異常は見られない。素晴らしい出来であった。これならテストも良好となるだろう。
 そう思っていた正にその時であった。
【足りねぇ……こんなんじゃ足りねぇ!】
「な、なんだ?」
【こんなんじゃ……全然堀り足りねぇんだよぉぉぉぉ!】
 突如、ドリル戦車が言葉を発したかと思うと、今度は勝手に走り始めたのだ。
 木村の操縦を無視して縦横無尽にい堀りまくるドリル戦車。これは正に一大事と言えた。




 丁度その頃、朝食を終えた番は爪楊枝を口に咥えながらバンチョウの元を訪れていた。
【番、ヤバイ事になったぞ】
「やばい事? 一体どうしたんだよ」
【俺と同じ流浪の異星人が地球にやってきたんだ! 今、無機物に憑依して暴れまわっているらしい】
「丁度良いぜ! 喧嘩したくてうずうずしてた所だ! そいつん所へ案内しろ!」
 早速バンチョウに乗り込み現場へと急行する。番もバンチョウも根が同じな為か、喧嘩がとても好きなのだ。 
 その為、喧嘩の匂いを嗅ぐと居ても立ってもいられなくなってしまうのである。
 現場は案外近くであった。番町を抜けたすぐ近くの工事現場。其処で暴れ回る最新型のドリル戦車があった。
「ありゃぁ、テレビでやってた最新式のドリル戦車じゃねぇか!」
【へっ、最新式だろうと喧嘩は喧嘩だ! 買ってやろうぜ番!】
「当然だぜ! 男チェンジ!」
 番の叫びと共に軽トラは飛翔し、男形態へとチェンジする。
【番町の番長のバンチョウ! 此処に参上!】
 噛みそうな名乗り向上を終えるバンチョウ。そして、目の前で暴れ回るドリル戦車に向かい指を指す。
【やいやいぃ、其処のドリル野郎! この俺とタイマン勝負しやがれ!】
【望む所だ! 俺のドリルも回りまくってきた所だぜぃ!】
 何時の間にか搭乗者である木村を放り出し、ドリル戦車が空中へと飛び上がる。
 そして、その姿をバンチョウと同じ男形態へと変形させたのだ。
 大きさはバンチョウとほぼ同じ、両肩に大型ドリルを取り付けた何所かで見た覚えのある姿のロボットであった。
【けっ、そんな馬鹿でかいドリルでびびるバンチョウ様じゃねぇや! 男の勝負は腕っ節と相場が決まってるんでぃ!】
【だったらきやがれ! てめぇのドテッ腹に風穴開けてやらぁ!】
 互いに啖呵を切り合い、そして喧嘩が始まった。最初に攻撃を仕掛けたのはバンチョウであった。
 堅く握り締めた拳をドリルロボットへと叩き付ける。
 響いてきたのは金属音と腕の痺れであった。恐ろしい程の強度だったのだ。
【がっ! う、腕が痛ぇ……なんて頑丈な野郎だ!】
【そんなもんかよ! だったら今度は俺の攻撃を受けて見やがれ!】
 ドリルロボットの両肩のドリルが高速で回転しだす。その回転するドリルを思い切りバンチョウに突き出してきたのだ。
 初撃はどうにか回避する事が出来たが、その拍子に背後にあった堅い岩盤が粉々に砕け散ってしまった。
 その光景を見るとゾッとしてしまう。
【な、何て威力だ! あんなの食らったらマジでバンチョウの腹に穴が開いちまう!】
 油断ならない相手であった。一撃でも貰えばお陀仏は必死だと言えるだろう。
 恐ろしい相手だった。
【ちっ、上手く避けやがったな! だが次は外さないぜ!】
 ドリルロボットのドリルが更に早く回転しだす。今度こそ貫く為にだ。
 そのドリルの突きをバンチョウは必死にかわし続けていた。掠っただけでも装甲が剥ぎ取られてしまう程の強力なドリルだ。まともに食らえばそれこそ終わりである。
(どうする、どうやればこいつに勝てる……どうすれば……はっ!)
 ふと、番は気付いた。自分は喧嘩をしているのではなく戦いをしている事に気付いたのだ。
 一体自分は何を考えていたのか? これは喧嘩だ。戦いじゃないのだ。ならば、喧嘩ならば下手な小細工など不要。
【何をビビッてたんだ俺は! ドリルが何だ! 風穴が何だ! そっちが風穴を開けるってんなら。こっちはそのドリルより強い武器を叩き込むだけだ!】
 一直線に突進してくるドリルロボットに対し、バンチョウは何の策もないまま猛スピードで突進したのだ。一見すると自滅行為にも見えるだろう。
 だが、これがバンチョウ最強の武器だったのだ。
【これで仕舞いだぁ!】
【バンチョウの必殺、超ぱちぎ! 受けてみやがれぇぇぇ!】
 ドリルロボットの大型ドリルとバンチョウの頭突きが猛スピードで激突した。その衝撃は辺りに振動と衝撃波を放ち、轟音が辺りに響いた。
 そして、それはやがて閃光となり辺りの視界を白い闇が覆っていく。
 閃光が止むのはそれからほぼ数秒の後の事でもあった。闇が晴れた後、その場に立っていたのはバンチョウだけであった。
 そして、その目の前でドリルロボは仰向けとなり倒れていた。どうやらこの勝負はバンチョウが勝ったのだろう。
【き、効いたぜ……お前のぱちぎ】
【へっ、お前のドリルも中々だったぜ……お陰でこうして立ってるのがやっとだからなぁ】
 そう言うと番町も膝をついてしまった。どうやら立っているのも限界だったのだろう。
 だが、喧嘩は終わったのだからもう大丈夫だろう。そう思っていた正にその時であった。
 突如バンチョウとドリルロボに向かい数発の爆発が起こる。
【な、何だ!?】
【はっはっはっ! 良いタイミングだぜ! 今のバンチョウなら俺達だけでも倒せる筈だ! 其処のドリルロボ諸とも叩き潰してやらぁ!】
 現れたのは以前地球で暴れたゴクアク星人のチンピラ達であった。そのチンピラ達が動けないバンチョウとドリルロボを纏めて倒しにやってきたのだ。
【ちっくしょう……こんな奴等相手に何もできないなんて情けねぇぜ】
 横たわり動けないドリルロボは悔しがっている。よりにもよってこんな雑魚に倒されるのが本当に悔しかったのだろう。
 だが、どうする事も出来ない。すっかりボロクソになってしまいエネルギーも底を尽いてしまったのだ。もう一歩も動けない。
【がははっ! これでこの星は今日から俺達ゴクアク星人の物だぜぃ!】
【ま、待ちやがれぃ!】
 そんな時、立つのがやっとだった筈のバンチョウがドリルロボの前に盾となって立ちはだかったのであった。
【な、何で俺を庇うんだよ? 俺とお前は喧嘩した仲の筈だろ?】
【へっ、俺の爺ちゃんは言ってたぜ! 喧嘩終われば今日からダチ公、男の鉄則に常識は無用! ってなぁ!】
【だ、ダチ公……俺が、ダチ公……】
 ドリルロボはバンチョウの言葉に胸が熱くなるのを感じていた。今まで、ただ感情の赴くままにひたすらに暴れまわっていた自分をダチと呼んでくれる者など居なかった。
 そんな自分をこのバンチョウはダチと呼んでくれたのだ。
 その言葉にドリルロボは感動していたのだ。
【泣かせてくれるじゃねぇか! だったらそのオンボロロボットの為にくたばれや、バンチョウ!】
 ゴクアク星人達の銃口がバンチョウに一斉に向けられる。
【うおおおぉぉぉぉぉぉ!】
 突如、後ろの方で雄叫びが聞こえた。そして、その雄叫びは後ろの方で横たわっていた筈のドリルロボが突如起き上がり雄叫びを挙げていたのだ。
【ド、ドリルロボ! お前……動けるのか?】
【あぁ、お前の熱い友情魂が俺の男魂に火を点けてくれたのさ! 魂に火が点きゃエネルギー200パーセントオーバーだぜぇ!】
 両肩のドリルが物凄い勢いで回転している。明らかに先ほど以上にパワーが上がっている。
 そして、それに呼応してドリルロボの目もまた烈火の如く燃え上がっているのが見える。
【元々暴れ者だった俺をこいつはダチと呼んでくれた! そのダチを守るのは男の鉄則だぜぇ!】
【その通りだぜドリルロボ! 嫌、今日からお前は第二の番長、ドリル番長だ!】
【ドリル番長……良い響きだ! その名、頂くぜ! バンチョウ!】
 バンチョウとドリル番長との間に熱い友情が芽生えた。勿論、その間ゴクアク星人達は放って置きっぱなしだったのだが。
【やいやい! 俺達をほっぽって友情ごっこしてんじゃねぇ! まとめて仲良くスクラップにしてやるから覚悟しやがれ!】
【あぁん? 覚悟するのはてめぇらの方だろうが! 今の俺達はエネルギー200パーセントオーバーなんだからよぉ!】
 バンチョウが叫ぶ。そして、バンチョウの両目が烈火の如く真っ赤に燃え上がった。
 すると、再び背後から祖父が残したデコトラがこちらに向ってやってきたのだ。
【来たか爺ちゃんのデコトラ! 略してバントラ!】
 その略し方はどうなのか? と言う言葉はこの際気にしないで置く事にする。
【根性合体!!】
 バンチョウとバントラが合体を行う。3メートル程度のバンチョウから30メートル強の勇者番長ダイバンチョウへと合体を果たした。
【が、合体しちまった!】
【見りゃ分かるだろうが! 良いか、よく聞けてめぇら!】


”喧嘩一筋十数年!
 女にゃ弱いが喧嘩は最強!
  ダチの命を守る為、漢は惜しまず命を賭ける!
   漢の喧嘩を邪魔する根性の捻じ曲がった野郎は、
    このダイバンチョウがその性根を叩き直してやる!!”


 今回も今までに増して長い名乗り口上を終え、ダイバンチョウがゴクアク星人達の前に現れた。
【す、すげぇ、それがお前の真の姿なんだな?】
【おうよ! お前の熱い男魂のお陰でこうして合体出来たぜ! 行くぜダチ公! 男と男の喧嘩に横槍を入れるようや根性の捻じ曲がった野郎共の性根を俺達が叩き直すんだ!】
【おう! やったろうぜぃ!】
 ダイバンチョウとドリル番長のタッグマッチが開始された。こうなってしまってはもうゴクアク星人達に勝ち目などない。
 今回は楽勝と踏んで単体でやってきてしまったので思いっきりワンサイドゲームとなってしまっていたのだ。
【くそっ! こうなりゃ破れかぶれだぁぁぁ!】
 最早やけっぱちの如くひたすらに撃ち続ける。そんなのに当たるダイバンチョウ達の筈がなく。
【ロケットゲタァァァ!】
【ドリルミキサァァァ!】
 ダイバンチョウとドリル番長の前に呆気なくボコボコにされ見事に修正されてしまったのであった。
 そして、日は傾き夕焼け空となっていた。
 そんな茜色の空の下で、ダイバンチョウとドリル番長は友情の固い握手を交わしていた。
【ドリル番長、これから俺達は拳を交えあったダチ同士だ! 宜しく頼むぜ】
【おう、何時でも呼んでくれ! 何所へだってすっ飛んで来るぜ!】
 かくして、勇者番長ダイバンチョウの仲間に新たな番長が加わった。
 その名はドリル番長。熱いハートと強力なドリルでどんな敵も一撃粉砕。猪突猛進で融通の利かない面もあるがダチ思いの心優しい熱い男気溢れるナイスな番長なのだ。
 これからもこの星の平和を守ってくれ。頼むぞ!
 勇者番長ダイバンチョウ! そして、ドリル番長!




     つづく 
 

 
後書き
次回予告


「またゴクアク星人が新しい宇宙人を連れてきやがったぜ。ダイバンチョウでこらしめてやるぜ!
って思ってたらこいつにはダイバンチョウのどんな武器も通用しないってのかぁ?
えぇい、こうなったら新必殺技を編み出すまでよ!」

次回、勇者番長ダイバンチョウ

【跳べ、ダイバンチョウ!炸裂、東京タワーキック!】

次回も、よろしくぅ! 
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