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魔法戦史リリカルなのはSAGA(サーガ)

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【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
 【第6章】なのはとフェイト、結婚後の一連の流れ。
   【第4節】アインハルト、大叔母との会話。



 明けて、新暦84年。
 この年には、アインハルトも17歳となり、法律上は「成人」になりました。
 祖父エーリクと祖母イルメラが死んでから、大叔母(祖父の下の妹)のドーリスがずっとアインハルトの「保護責任者」を務めて来ましたが、それももう必要ありません。
 もっとも、ドーリスは本当に「形だけ」の保護責任者で、アインハルトもこの五年間、彼女から何かをしてもらった記憶など全く無いのですが、法律の上では必要な手続きなので、アインハルトは仕方なく地元の法務院からの指示に従って、高等科の卒業試験も無事に終わった2月の下旬に、その庁舎の一室に定刻よりも少し早めに(おもむ)き、その部屋で五年ぶりに彼女と会って、定刻までの間、二人で少し話をしました。
 しかし、案の定、ドーリスの口から出て来たのは「兄エーリク」を(ののし)るような言葉ばかりでした。エーリクは、あえて良く言えば「高邁(こうまい)求道者(ぐどうしゃ)」でしたが、普通に言えば「明けても暮れても覇王流のことしか考えていない変人」だったのです。

「だからね。あなた自身に何の落ち度も無いことはよく解っているつもりだけど、正直に言って、私も姉さんも、もう『覇王流』とか『イングヴァルト家』とかには(かか)わり合いになりたくないのよ。あなたって、その業界ではもう有名人なんでしょ? 一人で普通に生きていけるわよね?」
 ドーリス(62歳)は、格闘技やIMCSなどには全く関心の無い人物で、どうやら、アインハルトからも少し距離を取りたがっているようです。
 しかし、実のところ、それは「お互い様」でした。
「ええ。大丈夫ですよ。必要なら、法定絶縁制度を使っていただいても構いませんが?」
 アインハルトは『相手の気持ちを察して、言いづらい話を自分の方から切り出してあげた』ぐらいのつもりだったのですが、どうやら、ドーリスには「相当にキツい返し方」のように受け取られてしまったようです。
「あなたって、本当に『あの』兄さんの孫娘なのね」
 それが『ドーリスの語彙(ごい)の中では決して「誉め言葉」では無い』ということぐらいは、アインハルトにも容易に想像がつきました。

「誰も、そこまでは言ってないわよ」
「それは、失礼しました」
 アインハルトが殊勝に頭を下げてみせると、ドーリスはひとつ大きく溜め息をついてから、こう愚痴をこぼしました。
「あなたも女の子なんだから、兄さんやラルフよりも、もう少し義姉(ねえ)さんやローザさんに似れば良かったのにねえ」
 ラルフとローザは、アインハルトの両親の名前です。そこで、アインハルトはふと思い立って、この機会にひとつ()いてみることにしました。
「ところで、ひとつお訊きしてもよろしいですか?」
「え? ……何?」
 ドーリスはあからさまに何かを警戒するような表情を浮かべましたが、アインハルトの次の言葉で、その警戒心は一気に解け落ちます。
「私の母というのは、一体どういう人だったんですか?」
「……そうか。まだ四歳だったから、あなたはもうほとんど覚えていないのね」

 アインハルトが小さくうなずくと、ドーリスはたっぷり3秒ほど考えてから、こう答えました。
「いい人だったわよ。少なくとも、あのラルフには勿体(もったい)ないぐらいの女性だったわ」
「素性などは御存知ですか? 私は祖父からも祖母からも、父系の話はよく聞かされましたが、母や祖母や曾祖母については、出自などを全く聞かされていないのです」
「あら、そうだったの」
 彼女も決して「根が悪い人」ではないのでしょう。ドーリスはまたちょっと考えてから、自分の孫姪(まごめい)に向かって親身(しんみ)な口調でこう答えました。
「そうね。ローザさんは……平たく言うと、身寄りの無い孤児だったわ」
「孤児、ですか?」
「私もそれほど詳しく聞いてはいないんだけど、生まれは自治領の奥の方で、血筋も純血のベルカ人だったそうよ。確か……新暦35年にごく普通の家庭に生まれたけど、三歳の時に両親が事故で亡くなり、すぐに教会系列の孤児院に預けられて……そこで育ってそのまま教会に入って、一度はシスターになったけど、『運命の出逢い』を経て26歳で還俗(げんぞく)して同い年のラルフと結婚した、という話だったんじゃないかしら」
「還俗……。なるほど、そういうのもあるんですね」

「それから、イルメラ義姉(ねえ)さんも『天涯孤独』の身の上でね。確か、ずっと母子家庭で育って、ようやく教職に()いて兄さんと結婚した直後に、その母親とも死別したんじゃなかったかしら。あなたもよく知っているだろうけど、本当に、あの兄さんには勿体(もったい)ないぐらいの、いい人だったわよ。父さんだけは最初のうち、『家格が違い過ぎる』とか言って、結婚に反対していたみたいだけど」
「では、ニコラスという(かた)は、『家格』とか『王家の血筋』とかに、割と(こだわ)りのある人だったんですか?」
「そうね。私も父さんのことまで悪く言うつもりは無いけど、確かに、若い頃には、そういう時代錯誤的なところもあったと思うわ。でも、ラルフが生まれた頃から……だったかしら? 言うことが随分と丸くなって、そのうちに『今の世の中で、覇王流を次の世代に継承させてゆくことになど、一体何の意味があるのだろうか』とか言い出しちゃって」
(ええ……。ニコラスって記憶継承者ですよね? そんな人が、何故(どうして)そういうことを……。)

「兄さんは小さい頃から覇王流をガンガン叩き込まれて、なまじ才能があったから、それ一辺倒に育っちゃった人で……。だから、父さんがそんなことを言い出した時には、『父親に裏切られた』みたいに感じたんでしょうね。兄さんは父さんと大ゲンカをした後、妻子を連れて家を飛び出し、故郷から遠く離れた首都近郊に引っ越しちゃったのよ。
 それで、『首都圏に道場を開き、覇王流の名を広く世に知らしめる!』とか言い出して……若い頃には、用心棒とかで随分と危ない橋も渡って荒稼ぎをしていたみたい。
 でも、『息子のラルフには、自分ほどの才能が無い』と解ったからかしら。それとも、ただ単に『充分には資金が()まらなかった』というだけのことだったのかしら。結局、『道場を開く』という夢は(かな)わなかったみたいね」

 アインハルトが(おぼ)えている限りでは、祖父エーリクも祖母イルメラも、家の外で働いたことなど一度もありませんでした。それにもかかわらず、八年間も三人で「それなりに」余裕のある生活ができていたのは、察するに、道場開設のために()めた資金をゆっくりと食い(つぶ)しながら暮らしていたからだったのでしょう。
 残った資金は、当然ながら「遺産」として、アインハルトが五年前に相続した訳ですが、それは相続税などをすべて差し引いても、『彼女一人なら、まだ十年や二十年は余裕で暮らしていける』というほどの額でした。
(私も自分で『何故こんなにも多額の遺産があるのか』と不思議に思っていましたが……さては、そういうことだったんですね。)
 アインハルトにとっては「長年の疑問」がひとつ解消された形です。

「あと、(かあ)さんは……この話は、あまり他人(ひと)には言わないようにしてほしいんだけど……(とう)さんの従妹(いとこ)だったそうよ。苗字も最初から『ストラトス・イングヴァルト』で……。
 あえて悪く言うなら、あの頃すでに『もう同族ぐらいしか、結婚相手が見つからない』といった状況だったんでしょうね。やっぱり、今時(いまどき)はもう家格なんて気にしてちゃいけないのよ」

 イトコ婚は、古代ベルカではごく一般的なものでした。ミッドチルダでも、これが法的に規制されたことは一度も無く、現在でも、法律で禁止されているのは「三親等以内の近親婚」だけです。
 それでも、近年は「近親婚による遺伝的な弊害(へいがい)」が過大に喧伝(けんでん)された結果、多くの管理世界において、一般に『イトコ婚は近親婚の一種であり、避けた方が良い』と考えられるようになってしまっていました。要するに、「法律的にはセーフでも、世間的にはアウト」という感覚です。
 だからこそ、ドーリスは、あたかもそれが恥ずかしいことであるかのような言い方をした訳ですが、アインハルトには、クラウスの記憶のおかげでしょうか、幸いにもそんな感覚はありません。
 実のところ、アインハルトが(いだ)いた感想は、全く別種のものでした。
(もしかして、私の「先祖がえり」も、祖父の代から少しずつ準備されていた、ということだったのでしょうか?)
 あるいは、エーリクやラルフたちが気づいていなかっただけで、イルメラやローザもハインツの遠い子孫だったのかも知れません。

 そこで、アインハルトは「五年前のファビアとの会話」なども思い起こしながら、再び大叔母にちょっとした要望を伝えました。
「それから……念のために、もうひとつお()きしますが……ニコラスさんか、ハインツか、あるいは誰か「ハインツの直系の子孫」にあたる(かた)の、『手記』のような『直筆(じきひつ)の文書』は何処(どこ)かに残ってはいませんか?
 あなたたちが、姉妹そろって『もう「覇王流」にも「イングヴァルト家」にも(かか)わり合いにはなりたくない』と(おっしゃ)るのなら……そして、もしそうした『直筆の文書』や『イングヴァルト家の系図』のようなものが現存しているのなら……是非とも、私にお譲りいただきたいのですが」
 すると、ドーリスは少し困ったような表情を浮かべてから、こう応えます。
「譲るのは、一向に構わないんだけど……それって、急ぐ話かしら?」
「いえ。特に急ぎませんが?」
 アインハルトが疑問形で話の先を(うなが)すと、ドーリスはひとつ大きく溜め息をついてから、こう白状しました。

「身内の恥をさらすような話になっちゃうんだけど……私たちの実家には今、姉さんが独りで住んでいてね。ちょうど、父さんたちが亡くなる前の年だったかしら? 姉さんは五十を幾つも過ぎてから、突然、夫に先立たれて一人で実家に戻って来ちゃったのよ」
「お子さんとかは、いらっしゃらなかったんですか?」
 アインハルトの「当然の質問」にも、ドーリスは思わず顔をしかめながら、どっと溜め息をつきます。
「姉さんは『ちょっとした小金(こがね)持ち』と結婚して、男の子ばかり三人産んだんだけどね。その息子たちというのが、また揃いも揃って、父親に似て欲の深い子たちで。父親が死ぬなり、母親をも巻き込んで遺産の相続額でモメ始めたのよ」

「それで、姉さんも仕方なく、法務官を(まじ)えて『公式の話し合い』の席を(もう)けたのだけれど、そこで息子たちが共謀して、母親の取り分を削る方向に動いたものだから……多分、前々からいろいろと息子たちに対する不満や鬱屈(うっくつ)()まっていたんでしょうね。姉さんもとうとうその場でキレちゃって。
『そんなに父親の遺産が欲しいのなら、いいでしょう。私はこの場で夫の遺産の相続権を放棄するから、あとはお前たち三人で話し合って、好きなように分け合いなさい。
その代わり、私の個人財産も私の両親の財産も、お前たちのような親不孝者には一切(いっさい)分け与えません。私はこの場で「法定絶縁制度」を利用し、お前たちとは親子の縁を切ります。そんなにも多くの取り分が欲しいのなら、三人とも今すぐに絶縁のための書類に署名をしなさい』
 そう言って、法務官に法律の上で必要な書類をすべて用意させて、本当にその場で縁を切って、自分だけ一足先に家へ戻ると、すぐに引っ越し業者を呼んで、自分の持ち物だけを手早くまとめて実家に送らせて、もう息子たちとは二度と顔を合わせないように、その日のうちにレールウェイで実家に戻って来ちゃったのよ」
(ええ……。)
 実際にそういう先例が身近にあったのなら、先程、アインハルトが絶縁の話を持ち出した時に、ドーリスが本当に嫌そうな表情を浮かべたのも納得できます。

「うちの実家は、アンクレス地方の中でも少し田舎の方で……もう70年ちかくも前に、先祖伝来の土地に、父さんが新たに建て直した『それなり』のお屋敷なんだけどね。
 父さんと母さんも当時、相当に余裕のある老後を送っていたから、いい(とし)をした居候(いそうろう)が一人増えたところで何も困りはしなかったみたいで……。
 結局のところ、『その土地と屋敷は、(ほか)に行き場が無くなった姉さんに単独で相続させる』という話になったのだけれど……まあ、私も夫のおかげで『親の金など当てにしなくても大丈夫』と言える程度の生活は一応できていたし、兄さんも常々(つねづね)『自分は親不孝者なので相続権を放棄する』みたいなことを言っていたし……私も兄さんも、その話それ自体には特に不満など無かったわ。
 でも、次の年には、兄さんに最終的な確認を取るために……あと、ラルフやゲオルグ君にも何か伝えておかないといけないことがある、とか言い出して……父さんと母さんはエアルートで首都圏に飛んで、いきなりあの空港火災事故に巻き込まれたのよ」
 どうやら、ドーリスは記憶継承に関しては、特に何も聞かされてはいなかったようです。察するに、イングヴァルト家では、ハインツ以降、男系の男子だけに語り継がれて来た「秘密」だったのでしょう。
 アインハルトは、あくまでも例外的な存在であり、「男性であるクラウスの記憶を、女子が継承する可能性」など、誰一人として真面目に考慮して来なかったのです。

「あれだけの事故を起こしておいて、医療費以上の補償金は何も出ないって言うんだから、管理局の経理も(しぶ)いわよねえ」
 ここで不意に、ドーリスは話の本筋には何の関係も無い愚痴を差しはさみました。
(原則として、『ロストロギア関連の話は、局の情報統制により、一般市民には知らされない』ということになっているのです。この時点では、アインハルトもまだ、あの事故の原因がレリックであったことを知らされてはいません。)

「前置きが長くなっちゃったけど、そんな訳でね。父さんと母さんが亡くなってから、あの実家には、姉さんがもう13年もずっと一人きりで住んでいて……やっぱり、一人暮らしが長く続くと、だんだん人づきあいとかも億劫(おっくう)になって行くのかしら? 何だか性格も、年を追うごとにますます気むずかしくなっちゃって……今ではもう、ずっと家に閉じこもって、私以外の人間は誰も家に上げてもらえない、という状況なのよ」
「他の人は、みな門前払い、ということですか?」
 ドーリスは小さくうなずき、言葉を続けました。
「今も食材だけは週二回、宅配業者に玄関脇まで運ばせているという話だけどね。姉さんは料理が趣味だから、今でもきちんと食べてはいるはずなんだけど……もう掃除や片づけをする気力は無いみたいで……。
 私も、今いる家から実家まではとても歩いて行ける距離じゃないから、週一回ぐらいしか顔を出せていないんだけど……最初は庭が荒れ始めたと思ったら、数年前からはもう部屋の中も平気で散らかすようになっちゃって。今では……決して『ゴミ屋敷』というほどの状況ではないんだけど……もう部屋も廊下も階段も足の踏み場が無いほどなのよ」
 ドーリスは、もう本当に困っている、という表情です。

「だから……もし本当にあなたに譲るべきモノがあの家に()るのだとすれば、それは必ず『父さんの書斎』にまとまった形で在るはずなんだけど……あの書斎にたどり着こうと思ったら、二階の奥だから、まず、あの階段を攻略しないといけなくて……」
(攻略って……。それは、やはり、すでに「ゴミ屋敷」なのでは?)
 アインハルトはごく自然に、そう思いました。彼女はまだ「本物のゴミ屋敷」がどれほどのモノかをよく知らないのです。

「それでは、今はもう誰も二階に上がれないような状態なんですか?」
「ええ。姉さん自身も、もう何年も前に二階からは撤退して、ずっと一階だけで生活しているわ。私も一人でたどり着けるとはとても思えないけど、私以外の誰かが家に入ろうとすると、姉さんは狂ったように叫び始めるし……」
「では、本当に誰も入れないと?」
「あそこは法的にも姉さんの私有地だからね。姉さんの許可なく入れば、たとえ身内のあなたでも不法侵入になるわ。法的な根拠に基づいた強制執行でも無い限り不可能よ」
(ええ……。そこまで……。)
「嫌な言い方をすると、あの姉さんが入院でもしてくれれば、私も業者を呼んで掃除させることができるんだけどね。姉さんもまだ67歳だから、少し足腰が弱って来ているとは言うものの、正直なところ、一体あと何年かかるのかは、私にもまだちょっと見当がつかないわ」
「そういう事情では、『なるべく急いでくれ』とも言えませんねえ……」
「ごめんね。確かに困った人ではあるけれど、私も小児(こども)の頃は本当に世話になったし……私も、この(とし)になったからと言って、姉さんの気持ちを土足で踏みにじるという訳にもいかないのよ」
「それは……まあ、そうでしょうね」

「その代わり、約束するわ。もし業者を呼べる状況になったら、あの書斎に在る本やノートやメモの(たぐい)は、全部まとめて一つ残さず、あなたの家へ送ってあげる」
「全部ですか?」
「だって、あなたが欲しいモノと欲しくないモノの区別なんて、私には解らないもの」
「いや、そういうことではなく……お姉さんの方は、それで大丈夫なんですか?」
「ええ。姉さんは昔から本なんて読まない人だし……それに、『姉さんが亡くなったら、あの土地も家屋もその中に在るモノも、すべて私が単独で相続できる』ということで、もう遺言状は出来ているから……姉さんがまだ病院とかで生きているうちに、私があなたにそれらのものを勝手に譲ってしまったとしても、姉さんは事後報告で了承してくれるはずよ」
「解りました。それでは、その線でよろしくお願いします。あと……火災にだけはよくよくお気をつけください」
「そうね。それは本当に気をつけないと。……それじゃ、悪いんだけど、そういうことで、気長に待っていてくれる?」
「はい。そうします」
 互いの住所や連絡先は、すでに解っています。
 約束を取り付けることができただけではなく、こうした一連の対話で、お互い心理的にも、ある程度まで(あゆ)み寄ることができたのは、とても良いことでした。

 また、そうした対話の後、担当の法務官が定刻より少し遅れてその部屋に到着し、二人は「必要な書類への署名」など、法律上の手続きを手早く済ませました。
「はい。これで、お二人の『保護者と被保護者という関係性』は円満に解消されました。本日は、お二人ともご苦労様でした。どうぞ、お気をつけてお帰り下さい」
 法務官の形式的な言葉に従って、アインハルトとドーリスはそれぞれの帰途に()きました。

【そして、結論から先に言えば、アインハルトは『ニコラスの手記』を手に入れるまで、これからさらに7年あまりもの間、待たされることとなったのです。】


 
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