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冥王来訪

作者:雄渾
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第二部 1978年
ミンスクへ
  ベルリン その2

 
前書き
アスクマン少佐の容姿は、原作では媒体によって描写がガバガバなので、困惑しております 

 
 時間は遡る
場所は、ベルリン市内のリヒテンベルク区にある国家保安省本部
その一室に関係者が集められた
プロジェクターの前に立つ男は、灰色の勤務服に、長靴
髪の色は赤みを帯びた茶色で、それなりの美丈夫であった
年の頃は40前後であろうか。
 ドアが開き、数名の男達が入ってくる
年齢はバラバラで、階級は一番高位の物で大尉、下は曹長であった

 男は改まった声で言う
「諸君、今回の作戦は、謂わば要人護送と同じだ。
準備期間も短い中で、各人とも適切に対応してほしい」
 プロジェクターが回り、スクリーンに映像が映る
少佐の階級章を付け、指示帽を手に、映像を説明している
白色の大型ロボットの画像が表示される
「先ず、諸君等も知っての通り、支那で日本軍が新型兵器のテストをしたのは記憶に新しい。
この大型戦術機のパイロットであるが、未だ詳細は不明な点も多い。
それ故に、今回の作戦を通じて、いかに正確で確実な情報を得るかが重要視される」
映像が切り替わり、新しい画像が映し出される
「判明しているのは、二点
先ず、新型戦術機は50mを優に超える点で、操縦席は複座であること。
そして、男女混成のペアである事だけだ」 
彼は、スクリーンから顔を士官達の方に向ける
「また標的以外に、注意すべき点がある。
大使、駐在武官は考慮(こうりょ)の他と考えてほしい。
其方は、外務省、人民軍に一任させる」
二人の画像が映り込む
「この右の黄色い服を着た男が、篁 祐唯(まさただ)
日本の貴族で王の血筋を引く人物。
相応の態度をもって、任務に当たらせよ。
左の黒服の男が、巖谷榮二。
技師でもあるが、パイロットとしても優秀な人物だ。
両名とも、王の身辺を護衛する親衛隊の隊員である事を付け加えて置こう」

 プロジェクターが止まり、室内に明かりが点く
男は指揮棒を畳み、全員の顔を見回す
「他に質問は、あるかね」
小柄で金髪の少尉が、勢いよく挙手する
「KGBはどう動くでしょうか」
彼は、眉一つ動かさずいう
「良い質問だ、同志ゾーネ少尉。
KGBとモスクワ一派は、本件に対して策謀を図る事が予想される。
それを考え、交通警察に助力を仰ぎ、我が方の協力者で周囲を固める様、要請した」
交通警察とは内務省傘下の警察組織で、人民警察の一部門である
この様な発言は、保安省の他省庁への浸食の一端を示す事例であった
「了解しました」
彼は、頷く

 顔を動かし、周囲を窺う
「言い足りないことがあれば、申しても良いぞ」
壮年の曹長が、挙手し、質問した
「ブレーメの件ですが、如何致しましょうか」
男は、真剣な顔つきで、彼に答えた
「同志曹長、その件であるが、目ぼしい女学生を潜入工作員として採用してある。
彼女(ベアトリクス)と、ベルンハルト嬢を穏当な手段で篭絡せしめれば、この件は最良であろうと考えられる。
極力我々は、関知しない」
「アスクマン少佐、彼女等の愛国心や民族愛に沿う様な自発的行動を待たれると言う事ですな」
指揮棒で、手袋をした左手を叩く
「そうだ。通産官僚と外務官僚の娘。
下手に粗暴な手段を使えば、党や他省庁からの信用失墜に繋がる。
それに、ベルンハルト嬢の背景は、すでに私の方では、把握済みだ」
曹長は、身を乗り出して尋ねた
「如何様にして知り得たのですか」
彼は、腕を組んで背中を後ろに倒す
「貴様等には、特別に話してやろう。
実はな、ベルンハルト嬢の生母は、わが方の協力者として、すでに篭絡させている」
一同に衝撃が走った
アスクマン少佐は、不敵な笑みを浮かべながら、続けた
「10年ほど前、彼女(メルツィーデス)に職員が不倫相手として接触し、情報を入手したのだ。
その際、外交官であった彼女の夫を、酒漬けにさせ、精神分裂病と言う事で収監させた。
彼女は体制批判をしたと言う事で通報してきたが、本心でダウム君に惚れ込んだと私は考えている。
それ故に、かの令嬢(アイリス)も、その兄君(ユルゲン)の空軍中尉も(つぶさ)に状況が分かっているのだよ」
ゾーネ少尉が、問うた
「詰り、遠くから丸裸の姿を覗き見ていると言う事ですか」
彼は冷笑を浮かべる
「その通りだ。
そして、アーベル・ブレーメは我が方を利用しているつもりでいる愚か者故、自在に奴の動きが判る。
あの天香国色(てんこうこくしょく)御令嬢(ベアトリクス)も、裸体を曝け出して歩くが如く状態である事を奴は知らなんだ。
我等は、その天女の舞を特等席で楽しみ、愛でているという状態なのだよ。
諸君!」
狭く、静まり返った室内に、彼の嘲笑が響き渡る
その眼光は鋭く、まるで獲物を狩る獣の様であった



 
 

 
後書き
2000字程度の投稿を休日複数回するのと、纏めて6000字ほどにして、土日各一回にするか。
本サイトや他サイトを見ると6000字前後が一般的なので悩んでます。
個人的には今のスタイルで良いかなと思いますが、どうなんでしょうか
皆様は、どちらの方は良いのでしょうか

ご意見、ご感想、よろしくお願いいたします  
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