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冥王来訪

作者:雄渾
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ミンスクへ
  我が妹よ

 2月下旬のある夜、極秘電文が第一戦車軍団司令部に届く
「緊急帰国せよ」
参謀本部の指令に、同本部は混乱した
僅か一か月間の間に独ソ間の往復の命令
1800キロの距離を帰還するのは、容易ではない
大部隊を率いて緊急帰国の指令
何かが起きている
大童で支度をすると、深夜ベルリンへ向かって部隊は移動を開始した
先ずキエフまで戻って燃料を補給した後、ワルシャワまで最高速で走破
ワルシャワに戻れば、あとは道路事情は格段に良くなる
ワルシャワから、数時間でベルリン市内に入れるであろう
数時間おきに小休止を入れ、全速力で帰路を急いだ

 一方ベルリン市内では、表立ってKGBが動いた
政府や軍に察知されることを気にせずに大胆な行動に出た
公用車で、大使館や事務所から直接、官衙に出向いた
午前10時前後に、各省庁に乗り付け、シュミット等ソ連派人士を直接指導したのだ
其の事は同日昼頃までに、他の官公庁や軍の情報部隊の知るところになる
 保安省内からの《リーク》で、事前情報を得ていたハイム少将は、動く
保安省子飼いの監視員を恐れずに、この国を動かす面々が居る中央委員会に乗り込む
午後1時過ぎごろ、自分が影響力を持つ連隊に指示を出し、庁舎周辺に非武装の兵を配置
会議場内に少数の手勢と乗り込むなり、座上にある委員長に立礼をして話を切り出した
「会議中、失礼致します。
KGBが、我が国に対して破壊工作を始めているとの緊急の情報が入りました。
詳細は未確認ながら、実力部隊を持って官衙を制圧すると計画が漏れ伝わっております。
どうか、緊急に非常線を引く準備を要請致します」
委員長に掛け合った
「議長、ご決断を!」
目前の老人は、石像の様に固まっている
保安相が立ち上がって、制止する
「貴様。立場を分かって申しているのか。
これは党への反逆に当たるのではないのか」
国防相が彼を弁護する
「本当ならどうする。
この国の主力は、ほぼウクライナに行ってしまったぞ。
早速だが、首都近郊の戦車部隊、高射砲部隊を呼び寄せろ。
仮に敵が戦術機部隊を引き連れてきたなら、事は内乱まで発展するぞ」
遅れて、小火器で武装した保安省職員がなだれ込んだ
彼等は遠巻きに非武装の人民軍将兵を囲む
議場に声が響いた
周囲の顔がその声の主に振り替える
件の屋敷の主人で有った
「この非常時に、軍も警察も縄張り争いをやっている暇は、ありますまい。
そうでは御座いませんか、議長」
委員長は押し黙ったままで、身動(みじろ)ぎもしない
彼はそれを気にせずに、保安省職員を一瞥(いちべつ)する
「貴様等も小銃を置け。
危なっかしくて、話も出来んわ」
保安相は、職員に小銃弾倉を外す命令を下し、彼等は小銃を壁際に立てかけた
退出命令を下し、その場から兵を引き上げさせた
そしてある人物を指名して、議場に呼び寄せた
「アクスマン少佐を、此処に呼べ」

 既に日は傾き始めており、幹線道路は渋滞し始める直前 
交通警官の制止を振り切り、大急ぎで、中央委員会のビルに一台の乗用車が乗り込む
周囲を確認せずに荒々しく車を止める
車内で、アスクマン少佐は、上着を脱ぐ
普段上着の下に隠して保持する小型拳銃を、インサイドホルスターごと車内に置いた
改めて、軍帽を被り、上着を着なおし、ネクタイを直す
肩からランヤードと拳銃嚢の負い紐を下げ、ギャリソンベルトに着け直す
弾倉を確認し、ランヤードを付けると、自動拳銃を拳銃嚢に仕舞いこむ
予備マガジンの入ったポーチを付け、ベルトを締めこむ
相手を威圧するために、あえて自動拳銃を目に見える形で帯びたのであった
ドアを開ける際、運転手に声を掛けた
「車を回す準備をしておけ。ゾーネ」
彼は、両手で軍帽の位置を直すと、長靴を鳴らしながら庁舎内へ消えていった
 
 議場のドアが勢い良く開けられる
拳銃を帯びた兵士に連れられて、アクスマン少佐の姿が目に入る
両腕を後ろ手に縛られながら、後ろから催促され歩いて来る
帯びていた拳銃は、ベルト一式、衛兵に没収されしまった
「議長、不届き者が居たので、お連れしました」
保安相だった男が立ち上がって、声を掛ける
「アスクマン少佐……」
奥の方から、声が飛ぶ
「先程、議長と保安相は辞意を示された。
新任の議長は未だ決まっていないが、暫定の立場で、俺が仕切る事になっている。
少佐、君は元議長をシェーネフェルト(ベルリン市内の空港)までお連れしなさい」
彼はその言葉に唖然とした
自分が呼び出される間に事態は大きく動いたのだ
「遅かったか」
膝から力が抜け、その場に屈した
例の男から声が飛ぶ
「君と取引がしたい。
まず、元議長と、そのご家族を国外に送り出しす。
そのを成功させたのであれば、君の地位を保全しよう
中佐に一旦昇進させた後、大佐にして保安省の次官級の職責を任せたいと思う。
受け入れるつもりはあるかね」
非武装とはいえ、数百人規模の兵に、この庁舎は囲まれている
自らの生命は危うい
彼は一旦、提案を飲むことにした
 
 

 
後書き
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