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ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル

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第82話 ミカエルの話、驚愕の真実を知ります!

 
前書き
 聖書の神が死ぬ前にシステムを生み出した、天界は人間の信仰心で存在している、天界のシステムの設定が原作と違う事、ミカエルが無断でシステムを使用していたのがこの作品では神に託された……などはこの作品オリジナルの設定なのでお願いします。

 
 でも原作の設定を全て知っているわけではないので、もしこの設定は原作にあるよと知っている人がいれば教えて頂けると幸いです。

 

 
side:小猫


 全員が席に着きミカエル様が話を始めました。


「今日はこうして集まって頂きありがとうございます。一応自己紹介をしておきましょう。私はミカエル、『熾天使(セラフ)』を率いる天使長です」


 ミカエル様はそう自己紹介されました。ううっ、ただ挨拶しているだけなのに神々しいオーラが出てちょっと痛いです……


「今日皆様に集まって頂いたのは会談をする前にどうしても確認をしておかなければならないことがあったからです」
「確認しておかなければならない……と言われますと?」
「……」


 ミカエル様はソーナ会長の質問を受けて何故かゼノヴィアさん、イリナさんを見ていました。


「……今から話す事は天界にとってとても重要な事になります。ゼノヴィア、イリナ。エクソシストとして活動している貴方たちと……」


 ミカエル様は今度はアーシアさんの方に視線を向けました。


「……元聖女であるアーシア・アルジェント。貴方は今も主を信じていますか?」
「えっ……は、はい!」
「ならば貴方にとっても辛い事になると思います。もし聞きたくないのならば3人は退席していただいても構いません。その場合は会談にも参加は出来ませんが……」


 ミカエル様はアーシアさん、イリナさん、ゼノヴィアさんにそう言いました。3人共教会の関係者ですよね、この三人が聞いて辛い思いをするとは一体どんな話の内容なのでしょうか?


「……」


 イッセー先輩は少し苛立った顔をしていました。おそらくミカエル様がアーシアさんに聖書の神を信じているかと聞いてイラッとしたのでしょう。なにせアーシアさんを魔女として追放したのは教会……つまり天界なのですから。


 ですがイッセー先輩はすぐに表情を切り替えてアーシアさん達の答えを待っていました。


「わ、私は覚悟はできています!」
「私もイリナと同じです。如何なる事でも動揺致しません」


 イリナさんとゼノヴィアさんは覚悟はできていると言いました。残るはアーシアさんだけですね。


「わ、わたしは……」
「アーシア、無理はしなくていいぞ。ミカエルさんが事前にそう言うって事はアーシアにとってかなりつらい話になるはずだ」


 悩むアーシアさんに隣にいたイッセー先輩が無理はしなくていいと言いました。


「……いえ、私も聞かせてください。少し怖いけどイッセーさんがいてくれれば勇気が出ますから」


 アーシアさんはそう言ってイッセー先輩の手を繋ぎました。先輩も何も言わずにアーシアさんの手を優しく握り返しました。


「……分かりました。では話をさせていただきます」


 ミカエル様は三人の了承を得ると本題を語り始めました。一体どんな内容なのでしょうか?でもG×Gの世界で色んなことを体験してきたんです。ちょっとやそっとの事では驚きも……


「単刀直入に言います。聖書の神は既に死んでいます」


 しない……えっ?


「い、今なんと仰られましたか?」
「聖書の神は既に死んでいます。もうこの世界にはいないのです」


 ……聖書の神が死んでいる?想像もしていなかった事に私はおろかイッセー先輩ですら驚愕の顔を浮かべていました。


「そ、そんな……嘘ですよね……神が……主がいないなんて……そんな!」


 ゼノヴィアさんは青ざめた顔で嘘だと言いました。イリナさんも「嘘よ……」と呟いていました。


 無理もありません、二人にとって聖書の神は信仰する対象、つまり心の支えでした。それがいないなんて言われるのは今まで信じてきたモノ全てを否定されるようなことです。


「いえ、本当です」
「……ッ!?」


 それが嘘じゃないのはミカエル様の真剣な顔を見れば一目瞭然です。それをゼノヴィアさんとイリナさんも思ったのか白目を向いて倒れそうになりました。


「ゼノヴィア!イリナ!」


 イッセー先輩は咄嗟に席を立ちあがり瞬時に二人を抱きかかえました。ですが二人は気を失ってしまい先輩の腕の中で生気のない顔をしていました。


「気を失ったのか……」
「兵藤君、念のための隣の教室を借りておきました。そこにお二人を移動させてもらっても良いですか?」
「分かりました」


 イッセー先輩はソーナ会長に言われた場所に二人を連れて行きました。


「……」
「アーシアさん、大丈夫ですか?」


 私はアーシアさんの席の近くだったので彼女に声をかけました。アーシアさんは顔を真っ青にしていましたが気を失ってはいませんでした。


「だ、大丈夫です……正直心臓をナイフで刺されたみたいに苦しいですが……でも大丈夫です」
「アーシアさん……」


 アーシアさんはそう言って笑みを浮かべましたが無理をしていると直ぐに分かりました。


「……分かりました。でも苦しくなったら直に言ってくださいね」
「はい、ありがとうございます」


 私は心配でしたが彼女が大丈夫だと言う以上納得するしかなく口を閉じました。


 それから直にイッセー先輩が戻ってきました。


「申し訳ありません、ミカエルさん。話を中断させてしまって……」
「構いません。如何に覚悟をしていようと二人は想像していなかったでしょう。主が存在していないなどと」
「……」


 イッセー先輩はミカエル様に謝りましたが、ミカエル様もそうなると予想していたのか申し訳なさそうにしていました。


 席に戻ったイッセー先輩は私と同じようにアーシアさんの心配をしましたが、彼女に大丈夫と言われて心配そうにしていましたが一応納得しました。


「ミカエル様、聖書の神が亡くなっていると言うのは本当ですか?」
「事実です。聖書の神は既に死んでおり、私達熾天使が現在天界のトップとして活動しています。この事実を知るのは現在の時点でサーゼクス、アザゼルなどの各組織のトップと一部の幹部しか知りません」


 リアス部長の質問にミカエル様はそう答えました。


「で、ですが聖書の神が亡くなっているのならば何故神器は存在するのですか?あれは聖書の神が作った物です。聖書の神が死ねば神器も共に失われるはずではないのでしょうか?」


 ソーナ会長は神が死んだのならその神が生み出し神器が今もあるのはおかしいと言いました。


「鋭いですね、ソーナ・シトリー、その通りです。聖書の神が生み出した神器は神が死ねば共に消えます。本来ならば……」
「本来ならばと仰られたという事は、つまり今神が死んだのに神器が存在するのは何かイレギュラーな事が起きたと言う事ですか?」
「いえ、神器が残っているのは神が残した『システム』と呼ばれる力のお蔭です」


 システム……一体何なのでしょうか?


「まずは何故聖書の神が死んだのか、そこから話していきたいと思います。それはかつて三大勢力で生じた大戦争に遡ります。悪魔、天使、堕天使、三つの勢力が互いを滅ぼそうと常に争いを繰り広げていたのですが、ある日その戦場に赤い龍と白い龍が乱入してきました」
「それって……」
「ええ、貴方の中にいる赤い龍ですよ」


 ミカエル様はイッセー先輩……ではなく先輩の中にいるドライグに視線を向けました。


「二匹の龍は私達には目もくれず互いを攻撃し合っていました。しかしその激突の余波で三大勢力は被害を受けその二匹を攻撃しました。するとその二匹の龍は逆ギレを起こし我々に襲い掛かってきました」
「ドライグ……」
『……そんな顔をしないでくれ、イッセー』


 イッセー先輩はジト目で赤い小手を見ていました。ドライグはいたたまれなくなったのか見ないでくれと言いました。


「私達三大勢力は一時的に休戦してこの二体の龍と戦いました。なんとかこの二体の龍を神器に封印することが出来ましたがその代償は大きく初代魔王4人は死に、主も無理をしていたことが祟ったのか後に亡くなられてしまったのです……」
『……』


 全員の目がイッセー先輩の赤い小手に注がれています。話に聞くと結構酷いですね、ドライグ。


『ま、待て!騙されるな相棒!悪魔はドラゴンを見下していたし、堕天使も俺達を突け狙っていたんだ。いずれはこうなっていたんだ!何より天使どもはドラゴンや蛇を一方的に毛嫌いして抹殺しようとすらしていたんだ。喧嘩を売ってきたのはあいつ等だ!』
「どういう事だ?」
『聖書の神は初めに生んだ人間のアダムとイブをそそのかして禁断の果実を食わせた蛇を毛嫌いしているんだ。だからドラゴンも心底嫌っていた。こいつら天使は神は蛇が嫌いだからといってドラゴンにケンカを売ってたんだぞ』
「当然です。主の敵は我らの敵ですので」
『フン!やはり貴様らとは相いれんわ!』


 ドライグは必至に弁解をして先にケンカを売ってきたのは三大勢力だと言いました。ミカエル様はそれを認めましたし天界は蛇が心底嫌いなのでしょうね。デビルオロチとか見たらどう思うのでしょうか?


「……コホン、話がそれてしまいましたね。神は死ぬ事を悟っていたのか自身の力を形として残して逝かれました」
「それがシステムですか?」
「ええ、そうです。兵藤一誠、貴方が赤龍帝の籠手を今でも使えるのはそのシステムのお蔭なのです。更にシステムは神器だけでなく聖なる力……例えば聖水が悪魔に効果的という法則を生み出し私達が堕天する現象なども生み出しています。まさに神に代わって天界を支えている非常に大事な存在なのです」


 神が残したシステムという力はまさに天界の要なのですね。でも堕天してしまうのは嫌ですね、いくら天使が清らかでなくてはいけないとはいえ、好きな人とえっちぃことが出来ないなんて私には耐えられません。


「私は神からシステムの管理を任されていました。その力で信者たちを導いてきたのです」
「……しかしアーシアは魔女として追放されましたが?俺は信者ではないので信仰と言われてもイマイチピンと来ません。ですがアーシアがとても良い子なのは分かります。でも貴方たちは彼女を追放した。こんな良い子を追放するなんて、本当に導いているのですか?」


 イッセー先輩はミカエル様の言葉に本当にそれが出来ているのかと返しました。流石に拙いと思いましたが、先輩の気持ちを考えると何も言えません。


 実際にアーシアさんは追放されましたしそのせいで辛い思いをされてきたのです。部長もそれを知っているのでイッセー先輩を咎めたりはしませんでした。


「兵藤君、ミカエル様にそのような言い方は……」
「大丈夫です、ソーナ・シトリー」


 事情を知らないソーナ会長はイッセー先輩に注意をしようとしましたが、それを止めたのはミカエル様でした。


「兵藤一誠、貴方が私……いや天界について不信感を持っているのは当然です。しかしどうか理解していただきたい、私が彼女を追放したのは仕方なくだったのです」
「どういう事ですか?」
「彼女は悪魔を癒し傷を治しました。しかしそんな事は今まで不可能でした。なぜならば聖なる力である神器は魔なる存在である悪魔を癒すことは決してあり得ないからです」
「しかし、現に彼女はそれを成し得た。それは彼女が悪魔すら救おうとする優しい心を持っていたからでは?」


 ミカエル様はアーシアさんを追放したのは仕方なかったと話しました。神器である聖母の微笑では悪魔を治すことは不可能だと断言しました。


 それに対してイッセー先輩はアーシアさんの優しい心が奇跡を起こしたんじゃないのかと言いました。


「あり得ません。しかし誤解しないで頂きたい、私は彼女の優しい心を否定したいのではありません。彼女がどんなに素晴らしい人間でも神が聖母の微笑では悪魔を癒せないとシステムがそう設定している以上、悪魔を癒すことはできないのです」


 驚きました、聖母の微笑にそんな設定がされていたのですか。まあ確かに人間の為に作った神器で敵である悪魔を癒されたら本末転倒ですからね。


「かつて過去にアーシア・アルジェントのように悪魔を癒そうとした人間がいました。その人間も聖母の微笑を持っており悪魔に使用しましたが、結果は悪魔を消し去ったという記録が残されています。人間である以上神が作ったシステム……つまり設定を変更することはできません。しかしアーシア・アルジェントはそれを成し得てしまった。これこそが神の死によって世界に起こり始めた異変の一つなのです」


 ミカエル様は過去にアーシアさんのように悪魔を聖母の微笑で癒そうとした人間がいたが、結果は悪魔を殺したと言いました。神の死によって起こった異変とは何なのでしょうか?


「異変、それは神の設定した聖女の微笑がそれを無視して悪魔を癒したこと……つまりシステムの力が働いていなかった事です。この設定は神が存在する以上絶対なるモノ、破れることなどあり得ません。しかしこの設定を打ち破ったのがアーシア・アルジェントなのです。そして聖女の微笑が悪魔には効果が無いことは既に教会の人間は知っていました。このままでは異変が信者たちに知れ渡ってしまうと思った私は……」
「すみません、ちょっといいですか?」


 するとイッセー先輩が手を上げて質問をしたいと表しました。


「何でしょうか?」
「そもそも異変が信者に知られたから何が不味いのですか?俺にはよくわからないのですが……」
「兵藤一誠。貴方は天界がどうやって存在を保っているか分かりますか?」
「えっ、貴方たち天使が維持しているのではないのですか?もしくはそのシステムとやらで……」」
「聖書の神が生きていた頃ならそうでした、しかし今は違います。天界は人間たちの信仰心をシステムによってエネルギーに変えてその存在を保っています。つまり人間たちの信仰が無くなってしまえば天界は何れ消滅してしまうのです」


 イッセー先輩は信者の方達に異変がバレたら何が不味いのか質問しました。するとミカエル様は天界は信者達の信仰心によって存在を保っていると話します。


 冥界も人間の欲望のエネルギーで存在を保っているので仕組みは同じですね。私達が悪魔のお仕事で人間の願いをかなえるのは欲望のエネルギーをもらう為なのです。


 その割には人間を見下す悪魔が多いですが……天使はどうなんでしょうね?


「キリスト教の信者は今や世界中にいます。もしその者たちが神がいないと知ればどうなるか分かりますか?」
「パニックを起こすでしょうね。しかも億単位の人間の数、世界中が大混乱になってしまうでしょうね」
「その通りです。そうなれば暴動も起こり世界中で様々な争いが生まれる事でしょう。そうなれば人間の社会に溶け込んでいる悪魔や堕天使も困るのです。だからこそ敵である悪魔や堕天使のトップであるサーゼクスやアザゼルは神の死を黙認してくれています」


 キリスト教の信者は億単位の数もいます。それらが暴動を起こせばとんでもない事になってしまうのは私でも想像が出来ます。だから魔王様は神の死を知っていても天界を攻めたりしないんですね。


「話を戻します。私は信者たちが神の死に気が付く可能性を消す為に、そしてアーシア・アルジェントを守るために処刑ではなく追放を選びました」
「えっ、私を守るためですか……?」
「はい、そうです。そもそも私はずっと前から貴方を部下にしようと思っていたのですよ」
「えっ……えええェェェェェェ―――――――!?」


 ミカエル様に部下にしようと思っていたと言われたアーシアさんは、とっても驚いていました。


「貴方はとても素晴らしい信者です。是非私の元で天界の未来の為に働いてもらいたいと思っていました。しかしそれを実行する前に例の一件によってあなたは魔女と認定されてしまいました。このままでは過激な思想を持つ信者に狙われると思った私は貴方を一旦追放して直に保護する予定だったのです。しかし何処から嗅ぎつけたのか堕天使の一味が貴方と接触してしまい私は迂闊に手が出せなくなってしまいました」


 ミカエル様はアーシアさんを保護しようとしていたのですが、それよりも早くレイナーレ達が彼女に接触してしまったのですか。彼女達は一体どこでその情報を得たのでしょうか?


「当時はまだ三大勢力は互いを警戒し合っていたので慎重に動かざるを得ませんでした。しかし私が行動を起こす前に堕天使たちは壊滅しました」
「もしかしてイッセーが……」
「貴方のお蔭でね、赤龍帝」


 部長の呟きにミカエル様が笑みを浮かべて肯定しました。レイナーレ達をやっつけたのはイッセー先輩でしたね。こんな偶然があるんですね。


「……俺を恨んでいるんですか?アーシアを救い結果的に貴方の邪魔をしたのですから」
「まさか。私が嫌いなのは貴方の中にいるドラゴンであって貴方自身には憎しみはありません。貴方も神が生み出した子供たちの一人なのですから」


 ミカエル様はあくまでドライグが嫌いなだけでイッセー先輩は嫌っていないと言いました。


「貴方には感謝しています、兵藤一誠。アーシア・アルジェントの件だけでなくコカビエルからエクスカリバーを取り戻してくれたのですから」
「……あれは俺一人の手柄じゃありません」
「でも貴方がいなければどうにもならなかったのも事実です。貴方には後で贈り物がありますので楽しみにしていてください」
「贈り物……?」


 ミカエル様はそう言うと話の続きを話し始めました。


「神の死による影響はとても大きかった。システムだけではカバーしきれなかったのでしょう。そういった現象は徐々に広がっていきました。木場祐斗の神器が禁手した『双覇の聖魔刀』もその一例です」
「僕の禁手が……?」
「はい、そうです。システムが正常に起動していれば聖と魔は本来混じり合う事はありません、でも貴方はそれを実現させました」


 ミカエル様は祐斗先輩の禁手である双覇の聖魔刀も異変によって起こった現象だと話しました。


「感の良い信者が神の死に気が付くのも時間の問題、しかし私達天使だけでは誤魔化すのは不可能だと判断しました。その対策をする為に私は悪魔や堕天使と協力する道を選びました」
「つまりミカエル様は三大勢力の和平に協力的な考えをお持ちという事ですか?」
「ええ、そうです。私も思う事はありますがこのままではどの道天使は滅んでしまうでしょう。何故ならシステムがいつまで正常に動き続けるか分からないからです。聖書の神が死んだ今、誰もシステムに干渉は出来ませんからね」


 ミカエル様は和平に賛成なのかとソーナ会長が効くと、彼は首を縦に振りました。聖書の神にしかシステムには干渉できないようです、そして異変が起こりこのままではいずれ天使は全滅してしまうかもしれないと思ったからミカエル様は和平の道を選んだのですね。


「……少し関係の無い話もしてしまいましたが、聖書の神の死については以上になります。会談ではこの議題は必ず出るので予め貴方方に話しておこうと思ったのです」


 なるほど、ミカエル様が態々お越ししてくださったのは神の死を私達に教えてくださるためでしたか。もし会談でその話を初めて聞いていたら、先程のようにゼノヴィアさんとイリナさんが気絶して会談の進行が妨げられてしまったでしょうしそれを防ぐために今日来てくださったわけですね。


「何か質問などはありませんか?答えられる事なら話しましょう」
「いいでしょうか?」


 するとイッセー先輩が手をあげました。


「兵藤一誠、なんでしょうか?」
「神の死についてではないのですがいいでしょうか?」
「内容によりますが……」
「俺が聞きたいのは貴方方天使が人間をどう思っているかという事です。天界は人間の信仰心によって存在を保っていると言っていました。しかしそれは結局何も知らない人間たちを騙して自分たちの都合のいい駒にしているってことですよね?」
「ひょ、兵藤君!?ミカエル様になんてことを言うのですか!」
「どうなのでしょうか?」


 イッセー先輩は天使たちは人間をどう思っているのか少し挑発するような言い方でミカエル様に聞きました。流石に拙いと思ったソーナ会長がイッセー先輩を止めようとしましたが、先輩は気にせずそのまま話を続けました。


 ソーナ会長は事情を知らないので仕方ありませんが、これはわざとやっています。先輩はミカエル様の考えを少しでも知って一龍さんに天使にもグルメ細胞のことを話して協力してもらうか、それとも天使に伝えるのは止めた方が良いかと判断するための報告をするつもりなのです。


 そもそも先輩は悪魔が人間の欲望のエネルギーを集める事に関しては人間が自分の意志で決めて悪魔にお願いするので自己責任だと思っています。


 勿論不当な取引……つまり悪魔が無理やり契約させたとかなら話は別ですが基本的に人間は得しかしないので先輩はそう思っているらしいです。


 因みに願いによっては命を奪ってしまう事もありますが、昔ならともかく今は事前に忠告することを義務付けられているので命を落とした人は殆どいません。


 しかし天使は悪魔と違い一方的に人間から信仰心を得ているのでもしかしたら内心人間を見下しているのかもしれない、そう思った先輩はわざとあんな質問をしました。


「……全ての天使がそうだとは言えませんが、少なくとも私は人間を愛しています。信仰心の高い者には祝福を与えますし、一方的に信仰心を得ているわけではありません」
「でもアーシアは苦しみました。もっと早く対応は出来なかったのですか?」
「……それについては私の責任です。私は聖書の神と違い常に信者たちの状況を確認できるわけではありません。もし主が生きていればアーシア・アルジェントを即座に救ったでしょう」


 ミカエル様は信仰心の高い信者には祝福を与えると言いましたが先輩はアーシアさんが苦しんだのはどういう事だ、という風に質問しました。


 それを聞いたミカエル様は申し訳なさそうな顔をされて自分が早く把握できなかったせいでそうなってしまったと語ります。


「アーシア・アルジェント、貴方が苦しい思いをすることになったのは全て私の責任です。許してくれとは言いません、ですが謝らせてください。本当に申し訳ありませんでした」
「ミ、ミカエル様……」


 なんとミカエル様はアーシアさんに頭を下げました。


「ミ、ミカエル様!私のようなものに頭を下げるなんて御止めください!」
「しかし……」
「確かに辛い思いはしました。でもそのお蔭で私はイッセーさんや小猫ちゃん達に出会えたんです。だからもう何も気にしていません。それにミカエル様が私なんかの為にそこまで考えてくださっていたという事実を知れただけでも私は救われました」
「……ありがとうございます」


 アーシアさんにそう言われたミカエルさんは彼女にお礼を言いました。


「兵藤一誠、改めてお礼を言わせてください。アーシア・アルジェントを救ってくださり本当にありがとうございます」
「……いえ、俺も成り行きだったので。それに貴方は貴方なりにアーシアの事を考えていてくださったことを知ることが出来ました。先ほどの失礼な言い方を許してください」
「ならばお互いさまと言う事でいかがでしょうか」
「はい」


 ほっ、そこまで心配はしていませんでしたがイッセー先輩はミカエル様を信頼することに決めたようですね。


「他に何か質問はありませんか?」
「えっと……よろしいでしょうか?」


 話を終えたミカエル様は再度質問はないか確認すると、今度は祐斗先輩が手を上げました。


「木場祐斗、なんでしょうか?」
「その……僕はバルパーと戦った際に奴からミカエル様はバルパーの研究の一つである聖剣を扱うための因子を人から抜き取る技術を奪ったと聞きました。それは本当なんですか?」


 祐斗先輩は聖剣を使う因子を人から抜き取る技術を教会が使っていると聞いたと前に教えてもらいました。だからまた教会が誰かの命を利用しているんじゃないのかと気になったのでしょうね。


「木場祐斗、貴方の事情は知っています。だからこそソレについて聞きたいのですね?」
「はい。過去についてはもう気にしていませんがソレだけがどうしても気になっていて……こんな事を質問して申し訳ありません」
「いえ、貴方には知る権利があります。答えを言うならばハイと答えます、私はバルパーから因子を抜き取る技術を奪い利用しています」
「……」


 因子を抜き取る行為をしていると言われて祐斗先輩は複雑そうな顔をされていました。


「しかし私達は研究を進めて命を奪うことなく因子を取り出す技術を得ました。それに因子を抜く際は必ず本人の意思に尊重して行っています。仮に高い因子を持っていても本人が拒否するのなら無理強いはしません。亡き主に誓います」
「……分かりました、僕は貴方を信じます。質問に答えてくださりありがとうございます」
「木場祐斗、私は貴方に約束します。もう二度とこのような行いがされぬように尽力を尽くすと」
「はい」


 ミカエル様の回答を聞いて祐斗先輩は納得した表情を見せます。そんな祐斗先輩に対してミカエル様はもう二度と祐斗先輩のような子を出さない為にすると言いました。


「そろそろ時間も押してきましたしここまでにしましょう。続きはまた会談で……兵藤一誠、最後に貴方に渡したいもんがあります」
「なんでしょうか?」
「この聖剣を受け取ってください」


 ミカエル様はそう言って空間を歪ませると一本の剣が出てきました。それは聖なるオーラを放っており悪魔の私には痛いです……


「これは……」
「ゲオルギウス……聖ジョージの持っていた『アスカロン』です」

 
 アスカロン……確か『龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)』で有名な聖剣でしたね。


「なぜそれを俺に?」
「エクスカリバーを取り戻していただいたお礼ですよ。この聖剣はドラゴンを宿す貴方にも効果は抜群ですが、逆に言えば他の龍との戦いで有利になります。例えば宿敵である白龍皇にも同じように有効です。白との戦いで役立ててください」
「……ありがとうございます」


 白龍皇……赤龍帝である先輩の宿命の敵ですね。まだ出会っていませんがいずれは私達の前に現れるのでしょう。まあ並みの相手ならイッセー先輩が負ける訳がありませんが。


「既に特殊儀礼を施しているので因子を持たない貴方でも扱えるはずです。剣を掴んでみてください」


 イッセー先輩はミカエル様に言われたとおりに剣を握るとアスカロンは反発することなく先輩の手に収まっていました。


「ドライグ、籠手の中に収納してくれるか?」
『了解だ』


 すると赤龍帝の籠手が赤く輝きアスカロンと共鳴しました。そして光となって籠手の中に入っていきました。


「さて、今日はこの後サーゼクスとの打ち合わせがあるのでそろそろ失礼させていただきます」
「お忙しいところ来て頂きありがとうございました」
「いえ、こちらの都合ですので礼を言うのは私の方です。後兵藤一誠、一ついいでしょうか?」
「なんでしょうか?」
「ゼノヴィアとイリナに意識が回復したら気にしないでくれと伝えてください」
「分かりました」


 リアス部長がミカエル様にお礼を言うと気にしなくていいと言われ、ミカエル様はイッセー先輩にゼノヴィアさんとイリナさんに伝言を頼みました。


 そして光となって教室の窓から出て行かれました。


「……何だか予想以上に大変な事実を知ってしまったわね」
「そうですね。でも今は会談に向けて意識を切り替えるしかありませんね」
「そうね、今日は色々あって疲れちゃったし解散しましょう」


 イッセー先輩とリアス部長の言葉に全員が頷き今日は解散することになりました。ゼノヴィアさんとイリナさんをイッセー先輩が担いで帰ったのですが二人はまだ目を覚ましませんでした。


 アーシアさんも気丈に振る舞っていましたがショックは大きいはずです。今はそっとしておくことしかできません……


(でもイッセー先輩ならどうにかできるはずです。いえ、アーシアさん達の悲しみを受け止められるのは先輩だけです)


 お人好しなイッセー先輩が三人をこのままにしておくわけがありません。私は先輩を信じることにしました。


 
 

 
後書き
 次回はアーシア、ゼノヴィア、イリナのフォローをしてその後に参観日に移ります。 
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