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ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル

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第80話 朱乃よ、父と向き合え。家族の和解と本当の愛 後編

 
前書き
 朱乃がアザゼルをおじ様と呼ぶのはオリジナル設定なのでお願いします。 

 
side:イッセー


 俺は朱乃さんの様子を見に二階に上がった。そして彼女の部屋の前に立ちドアをノックする。


「朱乃さん、イッセーです。具合はどうですか?」
「……イッセー君?」


 すると朱乃さんが返事をしてくれた。さっきよりは声に覇気があるな、少しは気が落ち着いたのかな?


「朱乃さん、もしよかったら部屋に入っても良いですか?」
「ええ、今開けますね」


 ドアが開き朱乃さんが顔を見せてくれた。顔色は心なしか先程よりは良くなっていた。


「朱乃さん、調子はどうですか?」
「心配をかけてごめんなさい、イッセー君。少しは落ち着きましたわ」
「そうですか……」
「……イッセー君、少し話したいことがあるの。中に入ってもらってもいいかしら」
「?……ええ、分かりました」


 少し朱乃さんの様子がおかしく思えたが俺は朱乃さんに連れられて彼女の部屋の中に入った。


「それで朱乃さん、相談というのは……!?」


 その時だった。朱乃さんは俺をベットに突き飛ばしてきたんだ。油断して力を抜いていたからバランスを崩してしまった。


「ぐうっ!?」


 ベットが大きく軋む。この家の家具は特注品で俺の力や体重にも耐えられるように設計されているから壊れる心配はないが……


「朱乃さん、何を……」
「お願い、今は朱乃って呼んで……」


 俺は朱乃さんに何故ベットに突き飛ばしたのか聞こうとしたが、それよりも早く朱乃さんは俺の上に覆いかぶさると悲痛な表情で自分の名前を呼んでほしいと言ってきた。


「朱乃、一体どうしたんだ?なんだか様子がおかしいぞ……」
「イッセー君、お願い、わたしを抱いて……」


 朱乃さん……いや朱乃はそう言うと俺にキスをしてきた。いつもするキスとは違い何か焦りのようなものを感じた俺はなされるがままにしていた。


「んちゅ……んっ……ちゅうう……」


 朱乃は余裕のない表情で必死に唇を重ねてくる。まるで今の現実を忘れたいと言うように凄く必死に……


「胸を触って、イッセー君……」


 上着を脱いで下着姿になった朱乃は俺の手を取ると自分の胸に持っていき胸を揉ませる。いつもなら赤面してしまう展開だが、朱乃の姿が痛々しくてそんな気にはなれなかった。


「イッセー……好き、大好きよ。このまま私を滅茶苦茶にして……」


 俺の名前を呼び捨てで呼んだ朱乃は俺の下半身に手を伸ばそうとしたが俺はその手を止めた。


「朱乃、もう止めろ」
「イッセー、どうして……?」


 朱乃は俺に拒絶されると思っていなかったのか悲痛な表情を浮かべた。


「今の朱乃は俺を利用して現実から逃げようとしているだけじゃないか。俺は利用されるような形でお前を抱きたくない」
「いいじゃない、貴方はわたくしの恋人なのよ?恋人が辛い思いをしているのに貴方は何もしてくれないの?それともやっぱり小猫ちゃんが一番なの?わたくしなんてどうでもいいの?」
「恋人だから拒絶するんだ。例え小猫ちゃんが同じことをしてきたとしても俺は拒絶したさ。いくら好きでもお互いが想い合っていないのに利用される形で行為には及びたくない」
「……仕方ないじゃない」
「朱乃……?」
「仕方ないじゃない!だって……わたくしは汚れた存在なのよ!こういう事しかできないのよ……」


 朱乃は泣きながらそう叫んだ。汚れたと言うのは恐らく母親を殺された際に姫島家の奴らにそう言われたのだろう。それが朱乃の中でトラウマになっているんだ。


「朱乃、俺はそんなに頼りないか?俺はそんなに信用できないか?俺は朱乃が好きだ、汚れているとかそんなことは関係ない。こんな事しなくても俺は朱乃を支えたいんだ」
「イッセー……」


 俺は朱乃を抱きしめて俺自身の想いを彼女に話していく。


「バラキエルさんと仲直りできなかったから自暴自棄になってしまったんだろう?」
「……うん」
「なら俺に話してくれないか?今の朱乃の思いを……」
「……私はね、イッセー、酷い女なの。お父様のことを拒絶して避け続けて……それで今になって心を入れ替えたからお父様と仲直りしたいって思った。でもそんなの虫のいい話だったわ」


 朱乃はいつも使う「わたくし」でなく「私」と一人称を変えて話し始めた。


「だって私はお父様の気持ちを何一つ考えていなかった。何年も連絡すらしなかったような親不孝な娘なんてもう見限っていたとしてもおかしくなかったのに……もし私がお父様の立場ならこいつはいまさら何を言っているんだと思うわ」
「俺はそうは思わないよ。あの時のバラキエルさんは本気で朱乃を心配していた。もし朱乃を見限っていたのならそもそも何も言ってこなかっただろう」
「そうかな……?」
「そうに決まってる。娘を大事に想わない父親なんていないさ」


 朱乃はバラキエルさんが自分を見限っているなんて言うがそれはあり得ないと俺は思う。だってあんなにも朱乃を心配している人が朱乃をどうでもいいとなんて思っているわけがない。


「きっとバラキエルさんにも思う事があるんだ。朱乃の言う通り朱乃だけが歩み寄ろうとしても駄目なのかもしれない。ならしっかりとバラキエルさんと話し合うしかない」
「……怖いわ。もしお父様が私が言った言葉で今でも苦しんでいて、それで分かり合えるのか私には分からない。怖いよ……」
「大丈夫だ、朱乃。俺が側にいる。俺だけじゃなくリアスさんやグレモリー眷属の皆だっている。朱乃は一人じゃない、俺達が付いている。だから一人でどうにかしようとするな、俺を頼ってくれ」
「……うん」


 朱乃は俺を見上げると儚さを感じさせる優しい笑みを浮かべてくれた。


「イッセー、私ね、お父様と仲直りしたい。昔みたいに一緒に笑い合いたい。だからその為にもお父様と向き合わなければいけないの。こんな私だけど助けてくれる……?」
「ああ、勿論だ。いくらでも助けるさ、俺は朱乃の恋人なんだからな」
「ありがとう、イッセー……」


 朱乃はそう言うと俺に再びキスをしてきた。でも先程のような何かから逃げようとするようなものは感じず勇気を分けてほしいという彼女の思いが伝わってきた俺は、そのまま長い時間彼女と唇を重ね続ける。


「……んっ。ふふっ、勇気を貰えましたわ」
「元気は出たか?」
「ええ、お蔭さまで」


 朱乃はいつも通りの話し方に戻り立ち上がった。


「イッセー、まずは食事を頂いてもいいかしら?」
「ああ、準備するから下にいこうか。リアスさん達も心配していたぞ」
「皆にも謝らないといけないですわね」


 朱乃はそう言うと俺の手を握ってきた。


「ねえイッセー、お願いがあるの。これからはわたくし……ううん、私の事はずっと「朱乃」って呼んでほしいの。敬語もいらないわ」
「いいのか?人前だと恥ずかしいんじゃ……」
「違うの。私はね、貴方に名前を呼んでもらうのが怖かったの。自分は汚れた存在だからせめて二人の時だけ名前で呼んでもらいたいって思っていたわ。でももうそんな事は思わない、私は堂々と貴方の彼女だって思いたい。だから……」
「……分かった。これからはずっと朱乃って呼ぶよ」
「うん。じゃあ私も二人きりの時はイッセーって呼んでもいい?」
「ああ、いいぜ」
「嬉しいわ、イッセー♡」


 また一つ想いを通じ合わせれた俺と朱乃はより強い絆を繋いだ。必ずお父さんと仲直りさせてやるからな、朱乃。



―――――――――

――――――

―――


 その後一階に降りた俺と朱乃はリアスさん達に謝った。リアスさんは彼女が元気になったことに喜び他のメンバーたちも嬉しそうに笑っていた。その後彼女は食事を終えてバラキエルさんとどうやって仲直りするのか話し合っていた。


「そう、わたくしの過去を話したのね」
「ごめんなさい、朱乃。勝手に貴方の辛い過去を話して……」
「いいのよ、リアス。皆にはいつか話そうと思っていましたから」


 リアスさんは勝手に朱乃の過去を話したことを誤ったが、朱乃は気にしていないと言った。


「でも実際どうすればいいんだろう。バラキエルさんは朱乃先輩の事は嫌っていないけど自分は父親である資格はないって思っているんだよね」
「ああ、ぱっと見だが真面目そうな人だと思ったよ」


 祐斗はバラキエルさんが朱乃さんの父親である資格は無いと思っているのかと言い俺はそれに同意した。凄く真面目そうな人だったからな、朱乃の言葉を受け止めすぎているのかもしれない。


「うーん、これはあの人に協力してもらった方が良いかもしれないわね」
「あの人?」
「アザゼル様よ、あの人ならバラキエルさんの事もよく知っているでしょうし適任だと思うわ」


 リアスさんはアザゼルさんに協力を要請しようと言った。確かにバラキエルさんの上司であり一緒にいる事が多い彼なら上手い方法を教えてくれるかもしれない。


「でも大丈夫なのか?忙しいかもしれないだろう?」
「そもそもアザゼルさんの電話番号知ってるの?」
「わたくしは知っていますわ。定期連絡をしていましたから」


 ゼノヴィアとイリナはどうやって連絡するのか聞くと、朱乃が連絡先を知っていると話した。


「……あっ、おじ様。先ほどは申し訳ありませんでした。実は……」


 おじ様?アザゼルさんの事か?俺はそう思いながら朱乃とアザゼルさんのやり取りを聞いていた。


「ええ……はい。分かりました、すぐそちらに向かいますわ」


 朱乃はそう言うとアザゼルさんとの通話を終えた。


「どうだった、朱乃?」
「会ってくれるとのことです。おじ様が泊まっているホテルを聞きましたのでそこまで来てくれと言われました」
「良かったじゃない。なら早速行きましょう」


 リアスさんはアザゼルさんが会ってくれるのか聞くと朱乃は頷いた。そして俺達はアザゼルさんが泊まっているというホテルに向かった。


 俺達はアザゼルさんがいるというホテルまで来たが、ここは駒王町にあるホテルの中で一番高級な場所だ。流石は堕天使勢力のトップ、良い所に泊まっているな。


「因みにここはお兄様が経営しているホテルよ。授業員たちも裏の人間なの」
「へぇ、そうだったんですか」


 流石お金持ち、ホテルを経営しているとはな。まあ聞いた話じゃホテル以外にも沢山の施設を運営しているみたいだし意外と身近な店もグレモリー家の経営する店だったって事もあったぞ。


「じゃあ行きましょうか」


 俺達はアザゼルさんに会うためにホテル内に入った。彼は一階にあるバーにいるらしいが……おっ、あそこか?


「よー、お前ら。待っていたぜ」


 アザゼルさんは綺麗な大人の女性たちとお酒を飲んでいた。だが俺達の姿を見ると女性たちに謝りながら解散させて俺達を手招きした。


「相変わらずですね、アザゼル様」
「おいおい、リアス。今はプライベートなんだからいつもみたいにアザゼルって呼べよ」
「それは……流石に止めておきます。眷属たちもいますので」
「ならせめて敬語は止めてくれ。お前が貴族らしいことしていると何だか調子が狂う」
「どういう意味よ!……もう分かったわよ、アザゼル」


 どうやらリアスさんとアザゼルさんは知り合いのようだ。それも結構親しい感じだな。


「リアスさんはアザゼルさんと仲が良いの?」
「お兄様の紹介で何回か会ったことがあるのよ。敵対していたとはいえお兄様とアザゼルは気が合う間柄だったしね」
「それは知らなかったな……」


 イリナはリアスさんとアザゼルさんの関係を聞くと彼女は魔王の紹介で既に親交があったみたいだ。しかし悪魔のトップと堕天使のトップが仲が良かったとは……ゼノヴィアが驚くのも無理はないな。


「まあ親友というよりは悪友のようなものだ。あいつとは何十回も殺し合ったがどこか悪魔らしくないところもあって時間が立つにつれて気が合っていったんだよ。立場上堂々と仲良くは出来なかったがな」
「叔父様、お父様は……?」
「あいつなら酔って寝ちまったよ。朱乃に酷いことをしたとウジウジしていたから俺が晩酌に誘ったんだ。そしたらアイツ、普段は飲まない酒をヤケになって飲んだからな、酔いつぶれちまった」
「そうですか……」


 朱乃はアザゼルさんにバラキエルさんの事を聞くと、彼はお酒を飲み過ぎて酔いつぶれてしまったみたいだ。


「イッセーはさっきぶりだな」
「そうですね、先ほどはありがとうございました」
「ああ、礼なんていいさ。俺こそ朱乃の事について改めて礼を言いたかったんだ。なにせ朱乃が母親を失うきっかけを作っちまったのは俺なんだからな」
「えっ、どういうことですか?」


 アザゼルさんは自分が原因で朱璃さんを死なせてしまったと言うがどういう事なのだろうか。


「バラキエルを冥界の本部に呼んだのは俺なんだ。あの時大きな仕事があってな、俺も動けなかったし仕方なくバラキエルに頼んだんだが、結果的に朱乃は母親を失う事になっちまったんだ」
「おじ様……」


 アザゼルさんはそう言うがそれは仕方なかっただろう。悪いのは朱璃さんを殺した奴らなんだから。


「しかしバラキエルと和解するのは難しいぜ。あいつは一度決めた事があると意地を張ってでも曲げようとしないからな。ましてや朱璃を失い朱乃を悲しませた自分が父親を名乗るなどおこがましいと思い込もうとしているくらいだ」
「そんな……お母さまを失って悲しんでいるのはお父様だって同じなのに……」
「だよな。でもあいつは不器用なんだ、どうしようもなくな。だからあいつの本音を引き出すのは容易じゃない」
「じゃあどうするつもりなの、アザゼル」


 アザゼルさんはバラキエルさんの本音、つまり本当は朱乃さんと家族に戻りたいと思っている気持ちを引きずり出すのは容易じゃないと話した。リアスさんはどうするのか聞くと彼は悪い笑みを浮かべた。


「少し意地が悪いが作戦がある」
「作戦?」
「ああ、それはだな……」


 アザゼルさんの話した作戦にリアスさんは眉間にしわを寄せた。


「それはちょっと拙いんじゃないの?人の気持ちを利用しているみたいだわ」
「だがここまでしないとあいつは本音を見せないぞ」


 アザゼルさんの作戦は朱乃を誘拐したと手紙を出して彼をおびき出して本音を吐かせるというものだった。リアスさんの言う通り少し人の気持ちをないがしろにした作戦だったので苦言を言う。


 だがアザゼルさんはバラキエルさんの本音を出すにはここまでする必要があるとリアスさんに話す。


「それにその作戦はイッセーが凄い負担を背負う事になるじゃない」
「だがイッセーしかできないだろう。あのコカビエルに勝てるんだ、バラキエルとだって上手く戦えるだろう」
「そうはいっても……」


 アザゼルさんは俺に朱乃を誘拐した刺客の役をやってほしいらしい。まあ戦闘になったら戦わなければならないだろうし頑丈な俺が適任だろう。


「イッセー君……」


 すると朱乃が不安そうに俺を見ていた。


「イッセー君、無理はしなくてもいいですわ。わたくしはお父様とイッセー君が戦う姿なんて見たくないですもの」
「朱乃……」


 朱乃は不安そうにそう言うが、俺の心はもう決まっていた。


「朱乃、俺にやらせてくれないか?おれは俺は朱乃とバラキエルさんが仲直りできるように力になりたいんだ。それに将来は俺の義理のお父さんになるだろう、なら俺にとっても他人事じゃないしな」
「も、もう!……バカ♡」


 俺は朱乃にそう言うと彼女は顔を真っ赤にしながら嬉しそうにはにかんだ。


「おーおー、仲いいねぇ。それじゃ明日の放課後に計画を始めるぜ」
『おーっ!!』


 そして俺達はアザゼルさんを味方に加えて朱乃とバラキエルさんの仲直り作戦を開始した。



―――――――――

――――――

―――


 そして翌日、俺達は授業を終えると廃工場に集まっていた。周りに人払いの結界を張っているので人間が来ることはないだろう。


 バラキエルさんにはアザゼルさんがコッソリ偽の脅迫状をホテルの部屋にいたからいずれ来るとして俺達は準備を進めておこう。


「……本当にこれでバレないか?」
「あら、良く似合っているわよ。イッセー」


 俺は赤龍帝の鎧を纏いリアスさんにそう聞いた。


 何が似合っているのかというといつもの赤ではなくペンキで黒く塗っているんだ。更に装飾やマントも装着してゲームのラスボスとして出てくる魔王みたいな見た目になっている。


『俺の鎧が黒くなるなんて……』
「悪いな、ドライグ。今回は我慢してくれ」


 赤龍帝と言われるだけあって赤にこだわりがあるドライグは自身の力によって生み出された鎧が黒く塗られたことに不満があるみたいだ。まあ今回は我慢してもらうしかないんだけど。


「それじゃ師匠に変身しますね」
「応、頼むな。ルフェイ」
「行きますよ、モシャス!」


 事情を話して協力してくれる事になったルフェイは魔法で俺に変身した。おおっ、初めて見たが本当に俺みたいだ。


「わあ、本物のイッセー先輩みたいです!」
「えへへ、まあ姿しか似ていないんですけどね」


 凄いと褒める小猫ちゃんに照れるルフェイ、だがルフェイは今は俺の姿をしているので、俺がえへへって笑っていて正直気持ち悪い。


「ほう、大した魔法使いだな。何処の出の者だ?」
「え、えっと……今はフリーなんです。色々ありまして……」
「うん?もしかして込み合った事情があるのか?そりゃ悪いことを聞いたな」
「いえ、お構いなく」


 アザゼルさんはルフェイの魔法に関心を寄せるが、ルフェイは黄金の夜明けに所属していたという事がバレないように誤魔化した。アザゼルさんも深くは聞いてこなかったから良かったぜ。


「じゃあまずはルフェイさんを縛りますね」
「や、やさしくしてくださいね……」


 イリナは縄を使い俺に変身したルフェイを縛り上げた。そしてその後にオカルト研究部、教会組、最後に俺がアザゼルさんを縄で縛りあげた。これでメンバー全員が人質に取られたっていう演出が出来たな。


「後はバラキエルが来るのを待つだけだが……おっ、この気配は来たな」


 俺は全員を廃工場の隅に寄せると、アザゼルさんがバラキエルさんの気配を感じたと話す。すると廃工場に誰かが勢いよく入ってきた。


「朱乃!アザゼル様!ご無事ですか!」
「お父様!」


 どうやらバラキエルさんが来たみたいだな。昨日は無理をしてお酒を飲んだから朝から二日酔いになっていたとアザゼルさんが心配していたが、今はそんなものは感じさせないほど焦りを見せていた。


「ふっふっふ、遅かったな。バラキエル」
「貴様が朱乃を……!一体何が目的だ!」
「俺はお前にかつて敗れた者さ。お前に復讐するために娘やアザゼルを誘拐してお前をおびき寄せたまでさ」
「良くも朱乃を……!」


 バラキエルさんの目には闘士が宿っていて最初に会った時の死んだような眼をしていた男とは思えないほどだった。


「おい、バラキエル。お前俺の事を忘れていないか?」
「あっ、いえそのような事は……そもそもアザゼル様がお前のような奴に負けるはずが……」
「お前の娘を見せたらあっさりと投降したぞ。堕天使のトップがこんなにも甘ちゃんだとはな、お笑いだぜ」
「アザゼル様を侮辱するな!この卑怯者め!」
「ほう、そんな口をきいても良いのか?お前の娘は今俺の手の中にあるんだぞ」
「ううっ……」


 俺は朱乃を抱き上げると彼女の胸を揉みながらそう言った。演技とはいえこんな事をして後で殺されないかな、俺……


「あっ♡んんっ……♡(イッセー君の手……大きくてわたくしの胸を全部揉んでいますわぁ……♡)」
「貴様!私の娘から離れろ!」
「いいぞ、もっと怒れ!お前の悔しそうな顔が俺に喜びをくれる!」
「おのれ!」


 バラキエルさんは俺に向かって殴りかかってきたが、俺はそれを受け止めてバラキエルさんを投げ飛ばした。


「なっ……!?この私を投げ飛ばした!?」
「くくくっ……お前の力はその程度か?老いたな、バラキエル。こんな男に負けたとは……あまりにも恥ずかしい話だ」

 
 俺はそう言ってバラキエルさんを挑発した。まあ焦っていて力が入っていなかったし昨日は二日酔いしていたからな、ベストな状態ではないだろうしな。


「さあバラキエルよ、お前の娘の前でお前を葬ってやろう。精々情けない姿を娘に晒す事だな」
「私を舐めるな!」


 バラキエルさんは光の剣を生み出して斬りかかってきた。だが俺はそれをナイフで受け止める。


「馬鹿な!私の剣を素手で!?」
「いくぞ、バラキエル!」


 俺は剣を押し返すとナイフでバラキエルさんを攻めていく。バラキエルさんは防戦一方になり壁際まで追い詰められた。そして俺はつばぜり合いに持ち込み光の剣ごと彼を押さえつける。


「くっ、これほどの力を持った奴を私は知らないぞ!本当にかつて私が倒した奴なのか!?」
「ふん、俺の事など覚えがないと言いたいのか。ならばこのまま無様に死ね!」


 そりゃ戦った事なんてないのでバラキエルさんが思い出せないのは当たり前だ。でも俺も少しノッてきてしまい悪役ムーブを強めていく。


「お父様……」
「ぐっ……うおおぉぉぉっ!!」


 バラキエルさんは俺に前蹴りをして距離を離した。そして遠距離から光の槍を放つが俺はフライングフォ―クで打ち消してバラキエルさんの背後の壁を壊した。


「うっ……」
「はははっ!ここまで弱くなったとはな、バラキエル!娘にも見捨てられる訳だ!こんな無様な奴が父親なんて耐えられないだろう!」


 バラキエルさんは自身の技を打ち消されたことに怯んでしまったみたいだ。俺はバラキエルさんの申し訳ないと思いつつも再び挑発を入れる。


「バラキエルの娘よ、お前も不憫だな。こんな男を父に持ってしまうとは……さぞや苦労しただろう」
「あ、朱乃……」
「どうだ?お前も父親に何か言ってやりたいことがあるんじゃないか?この際だ、父に言いたいことを言ってもいいぞ。どうせ二人とも今日死ぬのだからな」


 俺はそう言って朱乃に視線を送った。朱乃はコクリと頷くとバラキエルさんに語りだした。


「お父様、わたくしはずっとお父様を恨んでいました。お母さまを守ってくれなかったこと、わたくしをこの世に生み出したこと、全てを恨んでいました」
「……」
「でもわたくしは本当は分かっていました。お父様は何も悪くないのにわたくしは全てをお父様のせいにして逃げたのです」
「……ッ!」


 朱乃は今まで胸の中に秘めていた父親への想いを語り始めた。


「お父様、いままでずっとお父様から逃げて本当にごめんなさい。わたくしは弱い子供でした。だから今日までお父様に謝ることが出来なかった……」
「朱乃……」
「わたくしはお父様とちゃんと話し合いたいのです。もう一度家族になりたい……もしお父様がまだわたくしを娘だと思っていてくださるのならわたくしと向き合ってください!」
「……朱乃、私は……」


 バラキエルさんは朱乃の心の声を聴いて涙を流していた。


「ふん、下らん。父が父なら娘も娘だな。こんな下らない茶番はもううんざりだ、ならまずは先に娘から始末してやる。娘が死ぬ姿を見て絶望……ッ!?」


 その瞬間、俺の体は宙を飛び壁を突き向けた。鎧にはヒビが入って割れ欠けていた。


(ヤ、ヤバイ!防御をおろそかにしていたとはいえ一撃で鎧を割る寸前までダメージを与えるとは……!?)
『落ち着け。今鎧を修繕する』


 ドライグに鎧を修繕してもらいながら俺はバラキエルさんの方を見る。彼は全身に雷を纏わせていた。


「朱乃……」
「お父様……?」
「逃げていたのは私も同じだ。朱璃を失い絶望したお前に見つめられると何も守れなかった自分を思い知らされて苦しかった……お前が私を避けるようになったのを良いことに私もお前から目を逸らしてきた。お前を心配するように見せて関係の改善に取り組まず、自分は娘を心配する良い父親だと思い込んでいたかったんだ」


 バラキエルさんも自身の思いを語り始めた。


「私は父親失格だ、娘から逃げてしまったのだからな。だから今回の件が終われば二度と会うつもりは無かった……だが朱乃、お前はこんな私に謝ってくれた!向き合おうと歩み寄ってくれた!……嬉しかったよ」
「お父様……!」
「私はもう逃げない!お前からも弱い自分自身からも!……父として今度こそお前を守って見せる!」


 バラキエルさんはそう言うと全身に雷を纏い俺に向かってきた。だがその速度は先程までよりも遥かに早くまるで光の如き速さだった。


「くっ、何だこの速さは!?」
「おおっ、久しぶりに見るぜ。雷を纏い光の速さで敵を討つ……あれぞ『神の雷』だ!」


 アザゼルさんはバラキエルさんを見てそう言った。なるほど、二つ名はこの事を表していたのか。まさに名の通りの神のような凄まじい攻撃だ。


「ならば俺も本気で行こう!ナイフ!」
「もうその技には負けん!『雷虐水平千代舞(らいぎゃくすいへいチョップ)!!」


 俺はそう言いナイフでバラキエルさんを攻撃するが、彼は雷を纏った手刀で相殺した。うおっ、結構本気で放ったが相殺されるとは……!


「うおりゃぁぁぁぁっ!!」
「ぐうっ……!?」


 先程とは打って変わって俺が押され始めた。打ちあう手刀と手刀がスパークして衝撃が走り廃工場にヒビが入っていく。


「フライング・フォーク!」
「むんっ!『重流爆(えるぼう)!」


 距離を取りフライングフォークで攻撃したが雷を纏った肘撃ちでかき消された。そしてバラキエルさんは距離を詰めると大きく跳躍した。


「はぁぁぁぁっ!『義雷沈怒雷斧(ギロチンドロップ)!」


 強烈なかかと落としで地面を打ち砕いたバラキエルさん、辺りは土煙で覆われて何も見えなくなった。俺は匂いでバラキエルさんの位置を把握して彼が力を溜めているのが分かった。


(何か大技で来るつもりだな。ならば俺は防御に専念する!)


 体に力を入れて全力で防御を意識する。そしてバラキエルさんは土煙をかき消して俺に突っ込んできた。


「くらえ!『雷犁熱刃(ラリアット)』!!」
「ごほッ!?」


 そして俺の喉に強烈な一撃を加えた。その一撃は防御に力を入れていた赤龍帝の鎧に大きなヒビを入れる程だった。


(ヤべェ……!?防御に意識していなかったらかなりの大ダメージだ!?)


 ヘタをしたら致命傷を負ったかもしれない一撃に俺は堕天使側のトップクラスの実力者の底力を思い知った。


 俺は宙で体制を立て直そうとしたが、それよりも早く動いたバラキエルさんは俺の体を捕らえると廃工場を突き破って上空に向かった。


「朱乃!見ていてくれ!俺は今度こそお前を守る!」


 そして俺の体を両手で抱え上げて後頭部を地面に叩きつけた。


「堕天使が奥義!『雷我爆弾(ライガーボム)!!』


 ごはぁぁぁぁ!?す、すげェ……こんなにも強かったのか……


 俺は意識を失いかけたが歯を食いしばって耐えた。そしてバラキエルさんに声をかける。


「見事だ……バラキエル……」


 そのまま地面に大の字で倒れる俺、後でアーシアに回復してもらおう……いってェ~……


「朱乃!無事か?ひどい目には合っていないか?」
「お父様!」


 朱乃はバラキエルさんによって解放されて彼の胸に飛び込んだ。


「お父様、凄くかっこよかったです……」
「朱乃……」


 久しぶりの親子の抱擁をかわす朱乃とバラキエルさん、この光景が見れたなら今回痛い目に合ったけど全然後悔していないぜ。


(良かったな、朱乃……)


 俺は暫くの間抱擁を交わしていた親子を暖かい視線で見つめていた。



――――――――――

――――――

―――


「本当に済まなかった!」


 バラキルさんは頭が地面に埋まるんじゃないかというくらいの土下座をしていた。


「あのー、俺は気にしていないので……」
「だが私は本気で君を攻撃してしまった!なんとお詫びをすればいいのか……」
「いや本当に大丈夫ですって!俺は仕方がない状況でしたし俺も悪ふざけが過ぎたので……」


 あの後事情をアザゼルさんから聞いたバラキエルさんは顔を真っ青にしながら俺に謝ってきた。


「はっはっは!あのバラキエルがペコペコしているとは面白いな!」
「黙れアザゼル!聞けばお前の案だったみたいだな!悪趣味にもほどがあるぞ!」
「悪かったって……」


 怒りのあまりか敬語を辞めてアザゼルさんに怒鳴り散らかすバラキエルさん、どうやらプライベートではああいう口調らしい。


「イッセーさん、大丈夫ですか?」
「応っ、ルフェイの運んでくれた食材に加えてアーシアの回復で万全になったぜ」


 アーシアに回復してもらいルフェイの運んでくれたG×Gの食材ですっかり回復した俺はアーシアにお礼を言った。


「兵藤君、本当に済まない」
「いいんですよ、バラキエルさん。貴方と朱乃が仲直りできたのなら名誉の負傷ですって」
「君は優しい子なんだな、朱乃が惹かれたのも納得したよ」
「ええ、イッセー君は素敵な男性ですわ♡」


 朱乃は俺の腕に抱き着いて甘えてきた。


「こらこら、いくら義理の父親になるからと言ってもまだ結婚もしていないのに父親の前でこういうことをするのは駄目だぞ。お父さんが心配するだろう?」
「えー?わたくし達は愛し合っているので問題ないですわ♡」
「まったく……」


 俺はそう言いながら笑顔でほほ笑み朱乃の頭を撫でた。バラキエルさんはそんな俺達を見て優しい笑みを浮かべた。


「朱乃、お前が幸せそうで私も嬉しいよ。兵藤君、朱乃を変えてくれたのは君か?」
「いえ、俺だけではないです。グレモリー眷属や教会のメンバー、ルフェイなどの沢山の仲間達と朱乃自身が強くなったからです」
「それでも朱乃がここまで信頼するのは君が朱乃を愛してくれたからだ。父親として複雑だが、それでも娘が心から信頼できる男性を見つけた事が素直に嬉しいよ」
「お父様……」


 バラキエルさんはそう言って俺に頭を下げてきた。


「兵藤君、これからも朱乃を頼む」
「……はい!」


 俺はそう言ってバラキエルさんと握手を交わした。その後は朱乃とバラキエルさんが仲直りしたことを祝ってアザゼルさんがご飯をおごってくれる事になった。


(学生だしそんなに食べないだろう)


 俺達は遠慮なく彼におごってもらい、食べまくった。そして5店回ったところでアザゼルさんが泣き始めた。


(こいつら可笑しいだろう!?どこに食い物が入っていくんだ!?)


 もう勘弁してくれというアザゼルさんだったが、バラキエルさんが罰だと言って食事を続行、その後更に10店回ってアザゼルさんは絶望していた。


―――――――――

――――――

―――


 その後絶望したアザゼルさんをバラキエルさんが連れて行った。本当はもっと話したかったが二人にも仕事がある。会談が終わったら朱乃と俺、バラキエルさんの三人で朱璃さんの墓参りに行くことを約束して別れた。


 その後俺達は家に戻った。もうすっかり夜なので普段なら明日に備えて寝るんだけど……


「んちゅ……イッセー……好きぃ……♡」
「ちゅうう……俺も……んっ……大好きだ、朱乃……」


 前にお預けを喰らったからか深夜に部屋を訪ねてきた朱乃とキスをしている。俺もすっかりその気になってしまい彼女と熱く唇を重ねていく。


「んはぁ……イッセー……大好きよ。私、ずっとあなたと一緒にいたい……」
「ああ、ずっと側にいてくれ、朱乃」
「うん……♡」


 お互い下着だけになり俺は朱乃を押し倒した。朱乃は潤んだ瞳で俺を見つめながら頬に手を添える。


「あの……初めてだから優しくして……」
「勿論だ、優しくするからな」
「あっ……♡」


 そしてそのまま朱乃とキスをして……



 俺達はより深い絆を結ぶことが出来た。


 
 

 
後書き
 次回は生徒会との接触と神の死についてミカエルから話があります。その後に家族参観日、三大勢力会談へと続きます。


 なおプール編はありません。小猫達の水着はガツガツカレー編までお待ちください。 
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