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ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル

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第39話 因縁の再開!フリードと現れし元凶、コカビエル!

side:小猫


 こんばんは、小猫です。今私たちは夜の駒王町をエクソシストに変装して彷徨っています。出来るだけ人気のない道を歩いていますが本当にコカビエルたちが出てくるのでしょうか?


「ふむ、ここまでは何もないな」
「やっぱり敵もそうバカじゃないって事かしら?一向に向かってくる気配がないわね」
「二人とも、気を抜くな。気配を限りなく辺りの空気と同じ位に溶け込ませて接近することだって出来る奴もいるからな」


 ゼノヴィアさんとイリナさんは何も起きない状況にちょっと気を許した会話をしていましたが、先頭を歩くイッセー先輩が辺りを警戒しながら二人に注意をしました。グルメ界にはそういった狩りをする猛獣もいるのでいつだって油断はできないって事ですね。



 ヒュンッ


 その時でした。何か風を切るような音が聞こえた思った瞬間、イッセー先輩が赤龍帝の籠手を出して自分の斜め上に腕を上げるとガキィィンと金属がぶつかり合うような音が響きました。


「な、なんですか!?」
「皆、敵だ!武器を構えて!」


 アーシアさんは何が起きたのか分からずに困惑していましたが祐斗先輩が敵が来たことを察して和道一文字を抜きました。


「はっはっは!教会の御一行様方、ようこそいらっしゃいましたってね!」


 イッセー先輩に攻撃を仕掛けたのは白髪の神父の恰好をした男性でした。年は私たちとそこまで変わらないくらいでしょうか?でもその瞳には狂気が渦巻いていました。



「あ、あなたはフリード神父!?」


 アーシアさんが襲撃してきた男性神父を見て驚いた表情を浮かべました。


「アーシアさん、あいつを知っているのかい?」
「はい、フリード神父はレイナーレ様の部下だった人です」
「レイナーレ?イッセー先輩が倒したあの堕天使の事ですか、あの時堕天使側の関係者は全部捕まえたと思っていましたが逃げていたんですね」


 祐斗先輩がアーシアさんにあの神父の事を聞くと、どうやらあのフリードという男は前にイッセー先輩が倒した堕天使の仲間だったそうです。


「フリードだと?もしや貴様はフリード・セルゼンか!?」
「おやぁ、僕チンの事知ってるんですかぁ?いやー、人気者はツラいねー。ぎゃははは!!」
「よくも私たちの目の前に姿を現せたわね!多くの同胞を手にかけたクセに!」


 ゼノヴィアさんとイリナさんはフリードの姿を見ると強い敵意を込めた視線を奴に送っていました。


「お二人はあいつの事を知っているんですか?」
「フリード・セルゼン、元ヴァチカン法王庁直属のエクソシストだった男だ。13歳でエクソシストとなった天才で悪魔や魔獣を次々と滅していくその姿は教会の上層部からも高い評価を得ていた」
「でもあいつはやり過ぎてしまった、味方まで手をかけ始めたの。フリードには最初から信仰心なんて存在しなかった、あったのは異常なまでの殺意と戦闘執着、異端にかけられるのも時間の問題だったわ」
「はっ!俺から止めてやったんだよ!あんな主よ、主よ、としか言えねえ壊れたラジカセみたいな奴らしかいないクソうぜぇ所なんて!!俺は戦えさえすればなんだって良かったからなぁ!!」


 私がゼノヴィアさんとイリナさんからフリードの事を聞くと、フリードは心底嫌そうな顔をして教会の事をバカにしました。


「貴様、私たちを侮辱するか!」
「あんれぇ?事実を言われて怒っちゃったのかな?僕チンってバカだから言っていい事と悪い事が分かんない~」
「許せないわ!あなたなんて私たちが……」
「二人は下がっていろ、こいつは俺がやる」
「えっ?」
「し、しかし……」
「怒りで視野が狭くなっているだろう?元々あいつは俺が逃がしてしまったようなもんだ、ここでとっ捕まえる」


 怒りの表情を浮かべるゼノヴィアさんとイリナさんでしたがイッセー先輩が一歩前に出て二人を静めました。


「ぎゃはは!お久しぶりっすね、イッセー君!俺は君の事を片時も忘れたことは無かったよ!痛かったなぁ……あのパンチ……親にも殴られたことが無かったのにイッセー君に無理やり初めてを奪われちまったからねぇ!」
「そうか、嬉しくない報告をありがとうよ」
「相変わらず余裕そうだね~、前回は不覚を取ったけど今の僕チンにはこれがあるんだよなぁ」


 フリードは右手に持つ聖なる波導を出している剣をイッセー先輩に突きつけました。


「これぞ『天閃の聖剣』!!使い手に神速の如き速さを授けてくれる7本あるエクスカリバーの一つさ、どうだい?ピカピカと聖なる波導を出していて綺麗だろう?ここにイッセー君の鮮血が付けば更にいい感じになると思わないかい?」
「付くのはてめぇの鼻血だろう?御託は良いからさっさとかかってきな、コカビエルの相手もしないといけないんだからな」
「うわぁ……僕チン眼中にもないって感じ?そんな風にツンデレな対応されちゃうとゾクゾクしちゃうね~」


 構えを取るイッセー先輩にフリードは狂気の笑みを浮かべて笑いました。


「おい、お前たち、いいのか?兵藤一誠が神器『龍の手』を持っているとはいえ相手はあのフリード・セルゼンでしかもエクスカリバーを持っているんだぞ!?」
「そうよ、私たちも一緒に戦った方がいいわ!」


 イッセー先輩の実力を知らないゼノヴィアさんとイリナさんは一緒に戦った方がいいと話します、でも先輩の実力を良く知る私たちは首を横に振りました。
 因みにゼノヴィアさんとイリナさんには赤龍帝の籠手を龍の手として教えているので先輩が赤龍帝とは知りません、近いうちにバレるだろうが説明が面倒なので今は誤魔化しておいておくとのことです。


「いや、それは止めておいた方がいい。僕たちじゃイッセー君の邪魔になりかねないからね」
「はい、私たちは周辺への注意と万が一フリードが逃げないように包囲網を張っておくべきです」
「しかし……」


 お二人は未だ納得しきれないようです、それだけフリード・セルゼンという男とエクスカリバーの組み合わせが驚異的だというのがお二人には良く分かるんでしょう。でも私と祐斗先輩は何も心配なんてしていません。


「いいから見ていてください、私のイッセー先輩はどんな奴にだって負けない最高のヒーローなんですから」


 私はゼノヴィアさんとイリナさんにそう言ってイッセー先輩とフリード・セルゼンの戦いに視線を送りました。


「ぎゃはは!いっくよ―――――ッ!!」


 フリードの姿が消えてイッセー先輩の背後に現れました、そしてエクスカリバーを振り上げてイッセー先輩を斬ろうと勢いよく振り下ろしました。


「危ない!!」
「イッセー君!!」


 ゼノヴィアさんとイリナさんが悲鳴を上げますがフリードが斬ったのはイッセー先輩の残像でした。フリードが驚いた表情を浮かべ何かに気が付いたかのように横を向こうとした時には既にイッセー先輩の拳が顔にめり込んでいました。


「吹き飛べ」
「がはぁぁあっ!?」


 フリードの顔に拳を叩き込んだイッセー先輩は近くにあった木々に向かってフリードを殴り飛ばしました。フリードは抵抗する間もなく吹き飛ばされて背中から木に叩きつけられて鼻から血を吐き出しました。そしてズルズルと木に背中を押し当てながら座り込みグッタリとした表情を浮かべました。


「……3秒で終わったね」
「意外と持ったほうですね」
「な、ななな……」
「えっ……?」


 この結果を当然のように受け入れた私と祐斗先輩は寧ろ3秒もかかってしまった事に驚いていました。それに対してゼノヴィアさんとイリナさんは今目の前で起こった現実を頭が処理しきれないのか口をパクパクしながらイッセー先輩とフリードの戦いを見ていました。


「どうしたんですか?そんな池の中からエサを求めるコイみたいに口をパクパクさせたりして?」
「お前たちこそ何故そんな普通の事のように受け入れているんだ!?あのフリード・セルゼンが一瞬にして敗れ去ったんだぞ!?」
「そうよ!しかもあいつはエクスカリバーを使っていたのよ!?それなのにあんな一瞬で勝負がついた事に何で驚かないのよ!普通はあり得ないことなのよ!?」
「そう言われても僕たちにとってはフリード・セルゼンやエクスカリバーなんかよりイッセー君の方がよっぽど凄いって知っているからね、寧ろあの光景が普通にしか思えないよ」


 どうして驚かないんだ!?と言うお二人ですが私たちからすれば寧ろ時間がかかったなぁという感想しか浮かびません。そもそもフリードやエクスカリバー以上にヤバい奴を何度も目にしてきていますからアレで驚けと言う方が無理です。


「しかもイッセー君は5%も実力を発揮していないんだ、これくらいで驚いていたら彼の本気を見た時に頭が壊れちゃうよ?」
「嘘だろう!?あれで5%も実力を発揮していないというのか!?」
「はい、間違いなく本気じゃありません。そもそもイッセー先輩が本気なら7本の聖剣全部があっても勝つと断言できます」
「……何者なの、彼は?」


 祐斗先輩の発言にゼノヴィアさんは頭を抱えました、でも事実だから仕方ないです。更に私が他のエクスカリバーが全部あっても本気のイッセー先輩が勝つと言うとイリナさんは信じられない物を見るような目でイッセー先輩を見ていました。


「さて、お前には色々と喋ってもらうことが沢山あるからな。拘束させてもらうぞ?」


 イッセー先輩は縄を出してフリードに近づいていきます、ですがそこに黒い影が現れてイッセー先輩目掛けて飛んできました。


「むッ!」


 イッセー先輩はその場から横にステップして黒い影を回避しました。


「こいつは……地獄の番犬、ケルベロスだと!?」


 イッセー先輩を襲った黒い影の正体は地獄の番犬と呼ばれる魔獣ケルベロスでした。


「マズいわ、囲まれている!」
「いつの間に僕たちを囲んでいたんだ?とにかく戦闘態勢に入るんだ!」


 イリナさんの言葉通り私たちの周辺には何十匹ものケルベロスがおり、私たちを囲んでいました。裕斗先輩は和道一文字を取り出して全員に注意を促しました。


「ガァァァッ!!」


 4体ほどのケルベロスがイッセー先輩に襲い掛かりました。先輩は襲ってきたケルベロスの一体を踵落としで地面にめり込ませて残った3体をパンチ、キック、手刀で弾き飛ばしました。


「来い、破壊の聖剣!はぁぁぁぁ!!」
「擬態の聖剣!これでも喰らいなさい!」


 ゼノヴィアさんの放った一撃は3体のケルベロスを一撃で葬り去りました。あれが破壊の聖剣ですか、確かに凄まじい破壊力ですね。
 一方イリナさんは擬態の聖剣を日本刀の形に変えて刀身を伸ばして2体のケルベロスを串刺しにしていました、破壊力はそこまで無さそうですがあらゆる武器に変化させられるのでどんな局面でも戦えそうですね。
 実際にエクスカリバーの能力を見てみると厄介なものばかりだと思います。


「でも私たちだって負けてはいられませんね!」


 私に噛みつこうとしたケルベロスの顎を掴んで担ぎあげた後、大きくジャンプをしました。そして着地したときの衝撃を利用してケルベロスの口を引き裂きました。


「口さけ小猫バスターです!」
「やるね、小猫ちゃん。だったら僕も……はぁぁぁ!」


 祐斗先輩が地面に手を置くと地面から沢山の魔剣が現れてケルベロスたちを串刺しにしていきます。そして動けなくなったケルベロスたちを和道一文字の一閃で切り裂いていきます。


「皆さん、援護します!バイキルト!ピオラ!」


 アーシアさんが私たちに補助魔法をかけてサポートしてくれます。今の呪文はルフェイさんから教わった物ですね、今のアーシアさんでは数回しか使えないらしいのですがサポートしてもらえるのは有り難いです。


「アーシアさん、ありがとうございます!」
「ほほう、面白い状況だな。『魔剣創造』にエクスカリバーが2本、更には見た事もない魔法や武術を使うとは興味深い」


 ケルベロスたちを蹴散らす私たちに第三者の声が聞こえてきました。声がした方を見てみるとそこには神父の恰好をした初老の男性が立っていました。


「貴様はまさか、バルパー・ガリレイか!?」
「如何にも、私こそがバルパー・ガリレイだ」


 ゼノヴィアさんの言葉に丁寧に自己紹介する初老の男性……バルパー・ガリレイの登場に私たちは衝撃を受けました。まさか本当にこの事件に関わっているとは何かしらの運命を感じてしまいますね。


「バルパー・ガリレイ!教会から奪った聖剣を返してもらうぞ!」
「襲撃に会った際に殺された仲間たちの仇!ここで討たせてもらうわ!」
「ふん、教会の使いか。エクスカリバーを私に渡してくれる為に態々この町まで来てくれたというのか?感謝するぞ」


 ゼノヴィアさんとイリナさんが聖剣を取り出すとバルパーは2人を馬鹿にしたように笑いました。


「……バルパー・ガリレイッ!!」


 祐斗先輩は憎々しげにバルパー・ガリレイを睨みつけました、ずっと恨んでいた人物が実際に現れたのですから無理もありませんね。


「何だ、小僧。貴様は私を知っているというのか?」
「忘れたとは言わせないぞ、バルパー・ガリレイ!僕はお前がかつて行った聖剣計画の生き残りだ!」
「ほう、あの計画に生き残りがいたのか。全員無様に死に絶えたと思っておったわ」
「貴様ッ!!」


 バルパーの言葉に遂に怒りを抑えきれなくなった祐斗先輩がバルパーに斬りかかりました、でもバルパーは右手から結界を出して祐斗先輩の攻撃を防ぎました。


「何!?」
「魔剣創造には興味があるが今は貴様の相手などしていられないのでな、この場は失礼させてもらう」
「逃がすと思うのか!」
「お前たちの相手はこいつらがしてくれるだろうよ」


 バルパーが地面に手を置くと魔法陣が展開されてケルベロスたちが現れました。先ほどいきなりケルベロスの群れに囲まれていたのはこの男が呼び出していたからだったんですね。


「さらばだ、悪魔と教会の連合諸君」


 バルパーはそう言うとフリードを連れて消えてしまいました。


「くそ、こんなところで逃がしてしまうとは!」
「イッセー先輩、威嚇でこいつらをどうにかできないんですか?」
「既にやってみた、だがこいつらは脳に何か細工を受けたのか感情が無くなっている。本能に恐怖を訴える威嚇は感情が無い奴らには通用しねぇ」
「そんな……こいつらまだ増えていますよ!」


 ゼノヴィアさんはバルパーとフリードを逃がしてしまった事に拳を握りしめていました。
 私はイッセー先輩に威嚇でケルベロスたちの戦意を無くしてしまう事を提案しましたが既に行っていたようです、しかし脳に細工を受けたのかケルベロスたちには感情が無いそうで威嚇は効果が無いらしいです。確かにケルベロスたちの目は虚ろで屍みたいな状態にも見えます、コカビエルたちがケルベロスたちを操る為にそんな事をしたのでしょうか?


「さてどうするか……(いっその事赤龍帝の鎧を纏うか?この数を相手にするとなるとカロリーを結構消費しちまうだろうな、そうなったらコカビエルとやり合う時に不利になるかも知れん。イリナたちもいるがもはやそんなことを気にしている場合でもないだろうし……やるか)バランス・ブレ……」
「その必要はありませんよ、師匠!イオナズン!」
「グァァオォオ!!」


 突然凄まじい爆発が起こったと思ったら何体ものケルベロスたちが吹き飛ばされていました。更に白い閃光がケルベロスたちの間を走り抜けるとケルベロスたちの身体から夥しい量の血が吹き出ました、よく見るとケルベロスたちの身体の一部が食いちぎられたかのように無くなっていました。


「ルフェイ!テリー!来てくれたのか!」
「はい!師匠のピンチに弟子が駆けつけるのは当然の義務ですよ!」
「ワォン!」


 なんと私たちのピンチを救ってくれたのはルフェイさんとテリーでした、どうやら2人はこちらの世界に来てくれていたようです、でもテリーはグルメ界の生物なのでゼノヴィアさんとイリナさんに変に思われたりしないでしょうか?


「な、なんだ?魔法使いのような少女が現れたが兵藤一誠の仲間か?」
「白いワンちゃん……いや狼ちゃんかしら?アルビノっぽいけど目は赤くないわね」


 どうやらテリーの事を唯の狼と思ってくれたようですね、取り敢えずは安心ですね。


「いいタイミングだったぜ、二人とも。あのまま戦っていたらちょっと面倒だったからな」
「でも敵は逃がしてしまいました、ごめんなさい、師匠……」
「謝ることは無いさ、よくやってくれたな」
「あ、えへへ……」


 イッセー先輩に頭を撫でられたルフェイさんはふにゃあといったように表情を緩ませていました。う、羨ましい……


「兵藤一誠、そっちの魔法使いと狼は君の知り合いか?」
「ああ、この子はルフェイ、そしてこっちがテリーだ。どちらも俺の頼りになる相棒さ」
「初めまして、ルフェイと言います!イッセー師匠の弟子をやっています!」
「個性的な子を弟子に持っているんだね、イッセー君って……」


 元気いっぱいに挨拶をするルフェイさんにゼノヴィアさんとイリナさんは苦笑を浮かべていました。


「……ってこんなことをしている場合じゃない、バルパーが逃げてしまったぞ!くそ、みすみす逃がしてしまうとは……」
「追いましょう、ゼノヴィア!」
「止めろ、2人とも」


 ゼノヴィアさんとイリナさんがバルパーを追おうとしましたがそれをイッセー先輩が止めました。


「どうしてよ、イッセー君!」
「ここで深追いすれば危険なのは分かっているだろう?罠があるかも知れないのに自分から引っかかりに行くつもりか?」
「……確かにその通りだ。少し頭に血が上り過ぎていたようだな、すまない」
「私もごめんなさい……」


 冷静さを取り戻したのかゼノヴィアさんとイリナさんは申し訳ないという風に私たちに頭を下げました。


「反省できるなら問題はない、それよりもこれからどうする……ん?携帯か」


 イッセー先輩の携帯から着信音が鳴りました、先輩は携帯を取り出して電話に出ました。


「はい、イッセーです」
『あ、イッセー?私よ、そっちの状況はどう?』
「リアスさんでしたか。ちょうどいい所に電話をしてきてくれましたね」
『もしかして何か進展があったの?』
「ええ、実は……」


 どうやら電話をかけてきたのはリアス部長だったみたいですね、先輩はさっきまでの事を部長に説明しました。


『……そう、バルパー・ガリレイに遭遇したのね』
「はい、そういえば魔王様には連絡したんですか?」
『連絡は済んだわ、こっちに向かっていると言っていたからもうすぐ着くはずだけど……あら、朱乃。どうかしたのかしら?……なんですって!?』


 先輩の携帯から部長の驚いたような声が聞こえました、何かあったのでしょうか?


「リアスさん、何かあったんですか?」
『大変よ、イッセー!この街全体に謎の結界が張られたらしいの!そのせいで魔王様との連絡もできなくなってしまったの、しかも魔法陣まで使えなくなってしまったから冥界はおろか町の外にすら出られなくなってしまったらしいわ!』
「結界ですって?」


 イッセー先輩がチラリと上を見上げるとそこにはいつの間にか紫色の結界が張られていました。


「どういう事だ?あんなものはさっきまでなかったぞ?」
「これはコカビエルたちの仕業なのかしら?」


 ゼノヴィアさんとイリナさんはあの結界がコカビエルたちの仕業だと言いますが本当にそうなんでしょうか?


「……とにかく一旦集まって情報を交換した方がいいですね、リアスさんたちは今どこに?」
『イッセーの家にいるわ、朱乃も一緒よ』
「なら俺たちは戻りますからそこにいてください」


 イッセー先輩は携帯をしまうと私たちに部長との話したことを教えてくれました。


「町から出られなくなったうえに援軍も来なくなったんですか!?」
「ああ、最悪俺たちだけでコカビエルと戦わなくてはならないかもしれないな。とにかく今は一旦俺の家に戻ってリアスさんたちと合流しよう、皆もそれでいいな?」
「うん、僕は異論はないよ」
「私も大丈夫です」
「私とゼノヴィアもOKだよ」


 全員がイッセー先輩の言葉に頷いたので一旦イッセー先輩の家に退却することになりました、でも洗脳されたケルベロスといい空に現れた謎の結界といい一体どうなっているんでしょうか……



「ただいま戻りました」
「お帰りなさい、イッセー君!」


 イッセー先輩の家に着いた私たちは家の中に入ろうとしましたが、イッセー先輩が玄関の扉を開けると朱乃先輩が飛び出してきてイッセー先輩に抱き着きました。


「朱乃さん?どうしたんですか、急に抱き着いてきたりして」
「イッセー君と一日も離れ離れになっていたんですもの、つい嬉しくなって抱き着いてしまいましたわ」


 自分の匂いを付けようとしているのか朱乃先輩がイッセー先輩の胸板に頭をこすりつけていました。それは私の特権ですよ!


「朱乃さん、甘えてくれるのは嬉しいですが人目もあるのでまた後にしてもらっていいですか?」
「うふふ、分かりましたわ。また後で2人でたっぷり楽しみましょうね♡」


 イッセー先輩成分をたっぷりと補給できたのか朱乃先輩はニコニコしながらイッセー先輩から離れました。


「朱乃さん、リアスさんはいますか?」
「ええ、今はリビングでイッセー君たちの帰りを待っている所ですわ。あら、ルフェイちゃんとテリーちゃんがどうしてここに?」
「実は二人にも協力してもらっていたんです、そのことについても今から話しますよ」


 どうやらルフェイさんとテリーがここにいるのはイッセー先輩が関係しているらしいですね、家の中に入った私たちはリビングにいた部長に挨拶をしました。


「リアスさん、遅くなってしまってすみません」
「私は大丈夫よ。それよりもあなた達の方が心配だったわ、バルパーと遭遇したんですって?」
「ええ、その通りです。ルフェイ達の事も含めて話をさせていただきます」
「分かったわ」


 全員がリビングのソファーに座るとイッセー先輩が話し始めました。


「まず初めに何故ルフェイとテリーがここにいるかと言うと俺が協力を頼んだからです。二人には昼間の間、生徒会とは別にコカビエルたちを探ってもらっていたんですよ」
「そうだったの、でもどうして私たちに言ってくれなかったの?」
「敵に情報が漏れることを避けたかったからです。というのもコカビエルたちがここまで尻尾を掴ませないのはこちら側の情報を知る手段が向こうにはあるんじゃないかと思ったんです、だから皆にも言わないように俺だけで判断をしました。結局はなかったみたいですが……とにかくそれについては俺の独断ですし謝ります、すみませんでした」


 なるほど、そう言われて思い出しましたが皆が寝ている時にイッセー先輩だけグルメ界に行っていた時間帯があったのですがその時にルフェイさんたちに話を付けてきたんですね。


「私はイッセーを信頼しているから貴方がそう思ったのならいいわ。それよりもルフェイ、あなたから話を聞かせてもらってもいいかしら?なにか進展はあったの?」
「そうですね、まずこの町の上空に張られた結界ですが初めて見るタイプのものでした。魔法を当ててみましたが全て弾かれてしまったのでかなりの強度を持っていますね」
「俺もここに来る前に5連釘パンチを放ってみたが効かなかったぜ」
「私も滅びの魔力を当ててみたんだけど効果が無かったわ。ルフェイの魔法でも無理だとすればあの結界を壊すのは無理かもしれないわね」


 部長の滅びの魔力やルフェイさんの魔法、更にはイッセー先輩の釘パンチでも破壊は無理そうですか……


「後すみません、コカビエルたちの根城は発見できませんでした。魔法を使った痕跡もありませんでしたしテリーの野生の感にも反応はありませんでした」
「テリーの野生の感でも何も感じ取れなかったか……こうなってくると敵がどうやって隠れているのか気になってくるな」


 ルフェイさんの魔法やテリーの野生の感でも発見できないとなると敵は一体どんな技術を使って私達から逃げているんでしょうか?


「この町にいるのは間違いないはずだ、バルパーは実際にいたんだからな。でもそう広くないこの町をいつまでも見つからずに隠れ続けるなんて難しいはずだ。もしかすると……」
「イッセー?何か心当たりがあるの?」
「……いえ、何でもないです。そういえばバルパーについて気になったんだが奴も教会では名の知れた戦士だったのか?」


 イッセー先輩は何かを言いたそうでしたがチラリとゼノヴィアさんとイリナさんを見ると話しを変えました。もしかしたらお二人には聞かせられないこと、つまりグルメ界関係の話をしようとしたんでしょうか?


「バルパーは大司教ではあったが武に関しては一般のエクソシスト以下のものでしかなかったぞ」
「それがどうかしたの、イッセー君?」
「いや、祐斗の攻撃を防いだし俺にも気配を読ませなかったからてっきり凄腕の戦士かと思っただけだ」


 そういえばあの時バルパーが現れても先輩は気が付きませんでしたね、イッセー先輩にすら気が付かせないなんて普通に考えたらおかしいです。


「とにかく今は相手の出方を……ッ!?」


 イッセー先輩は突然会話を止めて窓の方に視線を送りました、傍にいたテリーも唸り声を上げて窓を睨みつけます。


「どうかしたのか?」
「……どうやら敵さんの方から来てくれたみたいだぜ」
「……まさか!?」


 イッセー先輩はそう言うと外に向かいました、私たちも後を追って外に出ると家の前にフリードがニヤけた笑みを浮かべて立っていました。さっきイッセー先輩に殴り飛ばされたのにもう回復したんでしょうか?


「やっほー、イッセー君!アーシアたん!さっきぶりだねぇ。なんか前に会った時より仲良くなっているみたいだけどもしかしてもうセ〇〇スしちゃってる系?」
「お前、一体何をしにきやがった?もしかすると殴り飛ばされ足りなかったか?」
「やだなァ、僕チンはドMじゃないからそんな性癖は持っていないよ~。どちらかといえば攻める方が好きだしねぇ」
「御託は良い、俺はお前じゃなくて別の奴を見に来たんだ」


 えっ?別の奴ってこの場にはフリードの気配しかしないんですが他に誰かいるんでしょうか?


「さっさと出て来いよ、コカビエルとやら。いるんだろう?」
『……クックックッ、バレているのならご期待通りに姿を見せてやろうじゃないか』


 上空から何者かの声が聞こえたかと思ったら空間が歪んで穴のようなものが開きました、そこから装飾の凝ったローブを身に纏う男の堕天使が現れました。


「現れたわね……堕天使コカビエル!」
「初めまして、リアス・グレモリー。その紅い髪を見ていると忌々しいサーゼクスを思い出すよ」
「お兄様から聞いた事があるわ、昔手ごわい堕天使と戦って勝った事があるって」
「ふん、あんなのはマグレだ。今では俺の方が強い」


 リアス部長を憎々しげに睨みつけるコカビエルは空間から何かを取り出すとこちらに投げてきました。


「……あれは!」


 イッセー先輩はジャンプしてコカビエルが投げつけた何かをキャッチしました。よく見るとそれは人間でしかも私たちが良く知る人物でした。


「匙さん!?」


 そう、イッセー先輩がキャッチしたのはソーナ会長の眷属である匙さんだったんです。身体中から血を流しており危ない状態だと直に分かる位でした。


「アーシア、回復をしてやってくれ!」
「わ、分かりました!」


 イッセー先輩がアーシアさんに回復の指示を出してアーシアさんが匙さんを回復させます。


「コカビエル!ソーナ達に何をしたの!!」
「奴らは俺が捕らえた、所謂人質と言う奴だな」
「人質ですって!?」


 リアス部長はソーナ会長に何をしたのかコカビエルに問い詰めます、するとコカビエルはソーナ会長を人質に取ったと話しました。


「そこの二人、お前たちが持つエクスカリバーと人質を交換と行こうじゃないか。大人しくそれを渡すというのなら人質を返してやる」
「エクスカリバーを寄こせだと!?」
「バルパーの奴はどうしても最強のエクスカリバ-を生み出したいそうだ、俺としてはミカエルさえ呼び出せればそれで良かったのだが折角だからその最強のエクスカリバーとやらを拝見しようと思ってな」


 コカビエルが要求してきたのはゼノヴィアさんとイリナさんが持つ破壊の聖剣と擬態の聖剣でした、それを奪うためにソーナ会長を人質に取ったというのでしょうか?


「コカビエル、あなたはミカエルを呼び出そうとしていたと言ったわね。ということはあなたの目的はやはり戦争を起こす事かしら?」
「然様だ。俺は戦争がしたくてな、今回の事件もエクスカリバーを奪えばミカエルが戦争を仕掛けてくると思って起こしたものだ。だが来たのは弱いエクソシスト共ばかり……つまらん、実につまらんな。だから次のターゲットとして魔王の妹が管理するこの町をメチャクチャにしてサーゼクスを呼び寄せる事にしたのだ」
「呆れた……戦闘狂だと聞いていたけどそれ以上ね。言うならば戦争狂といった所かしら?」


 コカビエルの目的が戦争を起こすだった事を知った部長は、コカビエルを戦闘狂ではなく戦争狂と言いました。あそこまで殺し合いを欲する姿は確かに戦争狂と言ってもおかしくはないですね。


「そう、俺は戦争をしたい……だが今はそれ以上に戦ってみたい奴がいるのさ」

 
 コカビエルは部長にそう言うとイッセー先輩の方に視線を送りました。


「貴様が赤龍帝……いや美食屋イッセーか。こうして会えたことを嬉しく思うぞ」


 なっ……!?ど、どうしてコカビエルがイッセー先輩が赤龍帝だと知っているんでしょうか!?……いえ、そんなことよりも美食屋と言った事の方が重要です!まさかコカビエルは……!


「お前……どこでそれを知ったんだ?」
「俺の協力者が教えてくれたのさ、お前の事も美食屋やグルメ界の事、そして……ハァアァァぁぁアァァ……ハアァァァァッ!!」


 コカビエルが力を溜めると闘気が膨れ上がっていき戦闘力が格段に上昇していきました、まるでイッセー先輩が戦う時のようです!


「……ふぅぅぅぅ……このグルメ細胞の事もな」


 煙が晴れてコカビエルが姿を現すとその姿はさっきまでとは違っていました。血走った目に盛り上がった筋肉、そして体から漏れ出すオーラはさっきまでのコカビエルとは比べ物にならないほどでした。


「グルメ細胞まで持っていたのか、お前にそれを渡した奴は一体誰だ!!」
「それは言えんなぁ、唯一つ言えるのはそいつは俺の世界を大きく広げてくれたということだ。こんな素晴らしい細胞を俺に与えてくれたのだからなぁ」
「話す気が無いのならこの場で話してもらうだけだ」


 イッセー先輩はコカビエルに負けない位のプレッシャーを身体から出して戦闘態勢に入ります。コカビエルはそれを見ると楽しそうに笑いだしました。


「素晴らしいな……それだけの戦闘力を出せるとは期待以上かもしれん。お前を逃がさないために態々結界を張った甲斐があったという物だ」
「やはりあの結界はあなたが張ったものだったのね!」
「サーゼクスやミカエル、それにアザゼルの介入があれば面白くないからな。そいつとの戦いが終わるまでは奴らには引っ込んでいてもらうことにしたのさ」
「因みにその結界を作ったのもボスの協力者なんすよね」


 イッセー先輩を逃がさないように態々あんな結界を張ったという事ですか?それだけイッセー先輩と戦いたいという事なんでしょうか。


「逃げる訳ねぇだろう、お前には聞かなくちゃならないこともあるんだからな」
「ふはは、いいぞ美食屋イッセー!俺は貴様らが通う学園にいる、そこで決着を付けようじゃないか!」
「逃がすかよ……!」


 空間に消えようとするコカビエルをイッセー先輩が追いかけます、しかしコカビエルが放った強い光が私たちの視界を奪い目を開けられるようになった時にはコカビエルとフリードの姿はありませんでした。


「逃げたか、ふざけた野郎どもだ……」
「イッセー先輩、コカビエルはグルメ界の事を知っているんですか?」
「恐らくな。奴は協力者がいると言っていた、そいつがコカビエルに俺の事やグルメ界の事、そしてグルメ細胞を与えたんだろう」
「一体誰がそんなことをしたのかしら?もしかしてイッセーみたいにグルメ界とこちらの世界を行き来できる人物がいるというのかしら?」
「誰かは分かりませんがそういう可能性は考えていました。実際に俺がこの世界に滞在していたのもそれを調査するためでしたからね」


 部長の質問にイッセー先輩が可能性として考えていた事を話しました、確かに異次元七色チョウが2匹しかいないなんて決まっていたわけじゃないですから他にいてもおかしくないんですよね。


「いつかはこうなるんじゃないかと思っていたがまさかコカビエルに接触するとは……このままだとマズい事になるな、なんとしてもコカビエルからそいつの事を聞きださないとならない」
「そのためにも必ず勝たないといけませんね……」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!兵藤一誠が赤龍帝なのは本当の事なのか!?」
「それにグルメ界とかグルメ細胞とか一体何の話をしているの?」


 私たちの会話を聞いていたゼノヴィアさんとイリナさんが何の話か分からずに説明を求めてきました。コカビエルのせいで二人にバレてしまいましたね……


「2人共、隠していて悪かったな。コカビエルが話した通り俺は赤龍帝なんだ」
「まさか君があの赤龍帝だったなんて……だがどうしてそれを言ってくれなかったんだ?」
「赤龍帝だと分かれば俺に危害を加えようとする奴が現れると思ったからだ、2人を信用していなかったわけじゃないが教会に所属している以上話すことが出来なかった」
「そういう事情があったのか。確かに赤龍帝の事を知っている者が君に危害を加える可能性もあるだろうしそれに関しては納得した」
「じゃあグルメ界って言うのは何なの?」


 イッセー先輩の説明にゼノヴィアさんは赤龍帝だったことを隠していた事に納得してくれました、すると今度はイリナさんがグルメ界について質問してきました。


「グルメ界については後で説明する、今は説明している時間も惜しいからな」
「……分かった、でも必ず教えてよね」
「約束する」


 イリナさんは取りあえず納得してくれたようでそれ以上は質問することはありませんでした、でもグルメ界の事を話すということはイッセー先輩の事も話さなくてはならなくなります。


「イッセー先輩、いいんですか?それを話すということはイッセー先輩の事も聞かれますよ?」
「構わないさ、イリナは恐らく俺が神崎一誠なんじゃないかと感づいているだろうしな。本当なら話す気はなかったがコカビエルのせいでバレてしまったんだ、もう隠すことは出来ない。覚悟はしているさ」
「……分かりました、先輩がそう仰るのなら私もこれ以上は何も言いません」


 小声でイッセー先輩と話して先輩の覚悟を知りました。だったらどんな結果になろうとイッセー先輩を支えることにします。


「皆、ここから先は完全な死が待っている戦場になる。そこに向かう覚悟は出来ているか?」
「勿論よ、イッセー。私が管理する町は私が守って見せるわ!」
「イッセー君と一緒なら怖くなんてありませんわ」
「私もイッセーさんと一緒に戦います!」
「僕は過去と決着をつける、だから一緒に戦わせてほしい」
「主の為に私はここに来た、そして新たな仲間が出来た……それを守りたい、だから覚悟は出来ている!」
「私も戦うよ!自分の為に!皆の為に!」
「勿論私も一緒に戦いますよ、師匠!」
「グワウ!」
「行きましょう、イッセー先輩。皆で勝ってここに戻ってくるんです!」


 上から部長、朱乃先輩、アーシアさん、祐斗先輩、ゼノヴィアさん、イリナさん、ルフェイさん、テリー、そして私の順でイッセー先輩に合図をしました。


「なら行こうぜ、この町を守る為にコカビエルどもをぶっ飛ばすぞ!」

 
 そして私たちはコカビエルたちが待つ駒王学園に向かいました。

 
 

 
後書き
 小猫です。次回はコカビエルとの決戦です、奴に協力した人物とは一体何者なのでしょうか?そして私たちはコカビエルに勝つことが出来るのでしょうか?いえ、勝たなくてはいけませんね、何があっても絶対に勝つんです!次回第40話『聖剣を超えろ、祐斗の新たなる力!』でお会いしましょう。





 因みに今回倒したケルベロスたちの死体はちゃんとイッセー先輩が食べてしまうので安心してくださいね、皆さんも命は大切に頂きましょう。 
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