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ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル

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第40話 聖剣を超えろ、祐斗の新たなる力!

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 月から放たれる淡い光が結界を通して紫の光となって深夜の駒王学園に降り注いでいる。本来なら誰もいない校庭には静寂だけが存在しているはずなのだが今は禍々しい魔法陣が校庭の中央に展開されており、それを3人の男たちが期待を込めた眼差しで見つめていた。


「くくく……3つのエクスカリバーが一つとなるか。良かったな、バルパーよ、貴様の願いが叶って」
「何を言う、コカビエルよ。こんなものでは物足りぬよ。あの小娘たちが持つエクスカリバーも融合させたいからな」
「でもあいつらが素直に渡しますかねー?」
「その時は人質を殺して開戦といこうじゃないか、どの道こいつらは死体にしてセラフォルーに送り付ける予定だからな」


 コカビエルは地面に倒れるソーナ・シトリーとその眷属たちを見ながらそう話した。


「ぐっ……堕天使コカビエルがここまで強かったとは……」
「おやおや~、まだおしゃべりができる元気が残っているようですね~」


 悔しそうにコカビエルたちを睨みつけるソーナ、そこにフリードが現れてソーナの頭を踏みつけた。


「うぅ……!」
「ぎゃはは、無様ですね、悪魔さん。どうですか?守るべき学園を我が物顔で占拠されて無様に横たわっている気分は?」
「ぐっ……うぅぅ……!!」


 フリードに頭を踏みつけられながらソーナは涙を流した。奇襲を受けたとはいえ何もできずに敗北して挙句人質にされるという失態を犯してしまった、眷属たちは敗れ自分が弟のように思っていた子は重傷の状態で連れていかれた。安否を確かめたいがそれすらもできなかった。


(いっそこのまま足手まといになる位なら自分で……)
「おっと、つまんない事を考えんなよ」


 舌を噛もうとしたソーナにフリードが電撃を浴びせた。体が痺れ動けなくなったソーナは煙を上げながら横たわった。


「あのさ、そういう空気の読めない事をしないでくれないでほしいな。もし次に同じことをしようとしたらお前の眷属殺すから」


 情けない……ソーナの心はそんな感情でいっぱいだった。眷属も守れずに自害もできない、そんな自分が悔しくて仕方なかった。


「フリード、一応人質であるんだからあまり手荒な真似をするなよ?」
「えー、どうせあいつらを殺したらこいつらだって殺すんでしょう?人質何てくだらないことしてないでさっさと殺せばいいじゃないですかー」


 不満げにソーナを蹴飛ばすフリードにコカビエルはくくくと笑いながら話す。


「それもいいが折角の機会だ、最強のエクスカリバーとやらを見ておこうじゃないか。俺の協力者も見たいという話だからな」
「協力者ねぇ……ボスには悪いけど俺はあまりあいつが好きになれないんですよねー」
「なんだ、未だに自分だけグルメ細胞に適応できなかったことを気にしているのか?」
「だってボスだけならともかく何でバルパーの旦那まで適応できたのに俺だけ出来なかったのか……納得いかないっすよ」
「失礼な奴だな、お前は……」


 不満げな視線でバルパーを見るフリード、そんなフリードにバルパーは気分を害されたという嫌そうな表情を浮かべた。


「しっかしあいつ、実際何者なんでしょうね?この町に来た俺たちに接触してきて隠れ場所をくれたりグルメ界だか何だか知らないけどスゲー細胞くれたり……なんか怪しくないっすか?」
「あいつが何者だろうとどんな目的を持っていようと俺には関係ない。あいつのくれたグルメ細胞で俺は強くなれたんだ、寧ろ感謝しているくらいさ」


 コカビエルは自身の身体を見て満足そうに笑った。コカビエルたちがこの町に来て直に接触してきたのがコカビエルの言う協力者だった。初めは半信半疑だったコカビエルもグルメ細胞を移植されて数日で全盛期の自分を超えるほどの力を得た事でグルメ界の事を信じる事にした。


「しっかしグルメ界か……どんなところなんだろうなー」
「どうやら美食屋イッセーもグルメ界に行く手段を持っているらしい、奴を殺してその手段を奪いこの世界を破壊しつくしたら行ってみようじゃないか。きっと身の毛がよだつ強い存在ばかりなのだろう、ああ、楽しみで仕方ないな……」


 コカビエルは正直この世界に最早興味など持っていなかった、あれだけ望んでいた戦争もつまらなく感じ始めていたのだ。グルメ細胞を得て更なる強さを得たコカビエルは悪魔のくせに戦争を拒むサーゼクスや綺麗ごとしか言わないミカエル、そして神器とやらの研究に没頭するアザゼルに興味を失い始めていた。
 

 グルメ界の事を知ったコカビエルは是非ともそこに行きたいと協力者に言った、だがその協力者はこの世界の強者たちを皆殺しにできるほどの実力が無ければ話にもならないとコカビエルに話した。それを聞いたコカビエルは悪魔や天使、そして同胞である堕天使までもを皆殺しにする事にした、そしていずれは神話の神々にも喧嘩を売り最後にはあのオーフィスやグレートレッドを打倒してグルメ界に行くのがコカビエルの現在の目的だ。


「その為にもまずは兵藤一誠を倒さなくてはならん、そこから俺の輝かしい未来への一歩が始まるのだ」


 コカビエルはこちらに向かってくる数人の男女と一匹の獣を見据えて禍々しい笑みを浮かべた。


「コカビエル、約束通り来てやったぜ。よくもまあ駒王学園をここまでメチャクチャにしてくれたもんだな」
「来たか、美食屋イッセー。くくく、中々に味のある光景になったと思わないか?自分たちが通う学園での決戦、いいシチュエーションではないか」
「それを直すのはこっち側なんだぜ?まあ俺じゃなくてリアスさん側なんだけどよ」
「……!ッソーナ!!」


 軽口を言い合いながらお互いをけん制するイッセーとコカビエル、コカビエルの足元に倒れるソーナを見つけたリアスがその名を叫んだ。


「ぎゃはは、感動の再会って奴ですかい?いい展開になってきたねぇ!」
「黙りなさい!ソーナ達に何をしたの!」
「適当に痛めつけて放置してるんすよ、そういえばあの悪魔の男の子は無事でしたか?俺が斬りさいてやったんだけど」
「ソーナが大事にしている眷属の子たちまで……あなたたちは絶対に許せないわ!」
「貴様などに興味はない。さて美食屋イッセーよ、戦いを始める前に人質と聖剣を交換するのかしないのか聞いておこうか」


 激高するリアスなど興味ないと言った風にコカビエルはイッセーに話しかける。


「……ゼノヴィア、イリナ」
「ああ、任せたぞ」
「お願いね、イッセー君」


 イッセーはゼノヴィアとイリナから破壊の聖剣と擬態の聖剣を受け取るとコカビエルたちの少し離れた場所まで移動して地面に聖剣を突き刺した。


「ほう、そこに聖剣を刺したという事は人質と交換という事でいいんだな?」
「ああそうだ、受け取れよ」


 ここに来るまでにイッセーはゼノヴィアとイリナから聖剣を渡してもいいかどうか確認していた、すると二人はなんの迷いもなくイッセーに聖剣を託すことを話した。
 流石に驚いたイッセー達だったが二人は「たとえ悪魔とはいえ目の前で救える命を見捨てればそれこそ主は悲しむだろう」「教会の使いとしては間違っているけどイッセー君達はもう大事な仲間だしね」と言ってくれたことに感謝をした、特にリアスは涙を流して二人にお礼を言っていた。


「いいだろう。フリード」
「あいよ、ボス」


 フリードは2本の聖剣を持ってくるとバルパーに渡した。バルパーは歓喜の表情を浮かべて2本の聖剣を眺めていた。


「おお、遂に5本の聖剣がわが手に……」
「おい、聖剣は渡したんだ。会長たちを離してもらおうか?」
「いいだろう、受け取るがいい」


 コカビエル達はその場から消えると魔法陣の中心に向かった、イッセー達は倒れるソーナ達の元に向かうと安否を確認した。


「ソーナ!大丈夫!?」
「リ、リアス……さ、匙は……?」
「匙君なら治療をして保護したわ、もう大丈夫よ」
「よ、良かった……」
「ソーナ、あなたってば……」


 自分がこんな状態になっていても眷属を心配するソーナ、そんな彼女を見てリアスは目に涙を浮かべていた。


「アーシア、ソーナ会長とその眷属たちを回復してやってくれ」
「はい、任せてください!」


 イッセーはアーシアにソーナ達の回復を任せるとアーシアはソーナの元に向かった。


「大丈夫ですか、会長さん?今回復しますね」
「あなたはアルジェントさん……それにあそこにいるのは兵藤君……?どうして彼らがここに?」
「説明は後でするわ。でも安心して、イッセーはあの伝説の赤龍帝なんだから」
「赤龍帝……!?兵藤君が……!?」


 リアスの言葉にソーナは目を見開いて驚いた。かつて3大勢力で行われた戦争、その戦争に介入した2体のドラゴンは3大勢力に多大な被害を与えたとされ二天龍と恐れられた。その一角である赤龍帝が自身が通っていた学園にいるなんて思ってもいなかったのだろう。


「おお、遂に完成したぞ……!!」


 魔法陣の中央で5本のエクスカリバーを融合させていたバルパーが歓喜の声を上げていた、魔法陣の中央には青白い光を放つ1本の聖剣が浮かんでいた。フリードが持っていた『天閃の聖剣』……コカビエルたちが奪った『夢幻の聖剣』、『透明の聖剣』……そしてゼノヴィアとイリナが持っていた『破壊の聖剣』に『擬態の聖剣』……7本あるエクスカリバーの内5本が融合した聖剣にイッセーたちは目を奪われていた。


「あれが融合した聖剣か、身震いするくらいの聖なる波導を出しているな」
「悪魔の私たちは恐ろしいくらいの波動です」


 イッセーと小猫は融合した聖剣の放つオーラに若干の恐れを感じていた、特に悪魔である小猫達はより恐ろしさを感じていることだろう。


「くくく……遂に戦いを始めるときが来たようだな。さあ、悪魔と教会の連合どもよ!戦争を始めようじゃないか!!」


 コカビエルが指を鳴らすと校庭に様々な魔獣が現れた。


「あれは……ケルベロスにミノタウロス、メデューサにグリフォンまでいるわ!」
「他にも神話に出てくる魔獣が沢山いますわね」


 突然現れた魔獣たちにリアスと朱乃は驚いた様子を見せた。


「ハッハッハ、戦争用に集めておいた魔獣たちだ。感情を消しているから威嚇は通じないぞ?」
「チッ、やはり威嚇対策はしていたのか。俺の能力を随分と知っているようだな」
「ああ知っているさ、お前の嗅覚や能力もな。それを知らなければもっと早い段階で見つかっていただろう、奴には感謝しないとな」
「益々その協力者って奴に会ってみたくなったぜ」
「ならば俺を倒すことだな、貴様にできるならの話だが……」


 睨みあうイッセーとコカビエル、もはや戦闘が始まるのは時間の問題だった。


「俺はコカビエルをやる。皆はバルパーとフリード、そして魔獣たちを頼む。後祐斗」
「なんだい、イッセー君?」
「たとえどんな選択をしたとしても俺はお前の味方だ、だから思いっきりやってこい!」
「……うん!」


 イッセーの言葉に祐斗は力強く頷いた。イッセーはそれを確認すると赤龍帝の籠手を出してコカビエルに近づいていく。それに対してコカビエルもイッセーに近づいていき二人は校庭の真ん中で遂に対立した。


「ようやく貴様と殺し合いが楽しめるな、美食屋イッセー」
「俺は食う目的以外に殺しはしねぇ、お前には聞かなくてはならないこともあるからな」
「そうか、ならその戯言をいつまで吐けるのか見させてもらおうか」
「たっぷり見せてやるさ……禁手!!」


 赤龍帝の鎧を纏ったイッセーとコカビエルが動き出し互いの拳をぶつけ合った。そのぶつかり合いは駒王学園全体を揺らすほどの衝撃を放ち深夜にも関わらず近くにいた鳥や動物たちが身の危険を感じ逃げだすほどの恐怖を生み出した。


「ふん、いい一撃だな」
「……」


 鎧が砕けて右手から血を噴き出すイッセーは、同じく右手から血を噴き出して楽しそうに笑うコカビエルの腹に目掛けて鋭い一撃を放った。
 コカビエルはイッセーの一撃に苦しげな表情を浮かべたが怯まずにラリアットでイッセーの首を攻撃した。


「ぐはっ……!」


 大きく後ずさりしながらも踏ん張ったイッセーはコカビエルを見据える、彼の目に映ったのは地面に手を置いてクラウチングスタートをしようとしていたコカビエルだった。イッセーは回避をしようとしたがコカビエルが消えたと思ったらその剛腕に捕らえられていた。


「イッセー先輩!!」


 小猫の悲鳴が聞こえるがイッセーはそのまま体育館にまで連れていかれて体育館の壁に叩きつけられた。イッセーが叩きつけられた体育館は壁にヒビが入り半壊してしまった、コカビエルの突進はそれだけの威力を持っていたのだ。


「どうした、この程度か?」
「……ッ!」


 追撃しようと拳を振り上げるコカビエル、イッセーはその一撃を辛うじて避けてコカビエルの首に前蹴りを放った。


「ぐぅ……!」
「はあぁぁぁ!!」


 たまらず後退したコカビエルの顔面をイッセーの拳が捕らえた、そしてイッセーはそのまま連続してコカビエルの全身に打撃を打ち込みながら校庭まで移動した。


「生ぬるいわ!」


 イッセーの連続攻撃を受け続けていたコカビエルだったが、一瞬の隙をついてイッセーの頬を自身の剛腕で張り付けた。顔の鎧が吹き飛ぶほどの威力を持ったビンタを受けたイッセーは口から血を吐き出してコカビエルに近づいていく、一方のコカビエルも口から垂れていた血を指でぬぐい取ってイッセーに近づいていく。


「……」
「……」


 再び睨みあう二人、そしてなんの前触れもなくお互いの頬に拳を叩き込みあって再び戦闘を開始した。拳と拳がぶつかり合うと大気が揺れ蹴りがぶつかれば地面が割れる、まさに災害のような戦いが繰り広げられていた。


「凄い、なんという戦いなんだ……!」
「あれがイッセー君の本気なの……?」


 あまりにも現実離れした戦いを初めて目にしたゼノヴィアとイリナはあのコカビエルと互角に戦うイッセーの姿に驚きを隠せない様子だった。


「おいおい、よそ見しているなんて余裕ですね~!」


 そこに融合したエクスカリバーを持ったフリードがゼノヴィアとイリナに斬りかかった。だがそこに祐斗が立ちはだかり聖剣の一撃を和道一文字で受け止めた。


「おやぁ、君は確か聖剣計画の生き残り君じゃないですか?態々僕チンに殺されに来たんですかぁ?」
「お前の相手はこの僕だ!」


 フリードと斬り結ぶ祐斗は自身の特性である速さを活かしてフリードを攻めていく。


「おっほぅ、速いじゃですねぇ!でも僕チンも負けてはいないんだぜぇ!」


 フリードは天閃の聖剣の能力を使い祐斗と互角の速さで渡り合っていた。


「聖剣の能力か!」
「そうそう、しかもそれだけじゃないんですよねえ!」


 高速で動くフリードの姿が増えていく、あれは夢幻の聖剣の力か?祐斗はそう思ったが残像からも攻撃を受けた事に驚いた表情を浮かべた。


「はっはっは!質量を持った残像!天閃の聖剣と組み合わせればこんなこともできちゃうんですよねぇ!さ・ら・に!これもオマケしちゃいますよォ!!」


 3体の残像が持つ聖剣が鞭のように伸びて祐斗に襲い掛かった、祐斗は上手い事かわしたが避けた瞬間に聖剣が枝分かれして祐斗に襲い掛かってきた。


「今度は擬態の聖剣か!いくつもの能力を短期間でここまで使いこなすなんて……!」


 攻撃を紙一重でかわしていた祐斗だが背後から殺気を感じたため和道一文字で防御の構えを取る、すると金属がぶつかる音が響き祐斗の手を痺れさせる。


「へえ、よく分かったねぇ。これで首ちょんぱしようと思ってたのにざんね~ん!」
「ぐう……透明になって攻撃してきたか。殺気を感じ取れなかったらやられていた……」
「何を安心しているんですか!まだ手の内は残っているんですよォ!!」


 フリードの残像とつばぜり合いをしていた祐斗の上から聖剣を振るう別の残像フリードが襲い掛かってきた。
 嫌な予感を感じた祐斗はつばぜり合いしていた残像フリードを蹴り飛ばしてその場から離れる、そして振り下ろされた聖剣が地面に当たると巨大な爆発が起こり祐斗を吹き飛ばした。


「うわぁぁぁ!?」


 爆発に巻き込まれた祐斗はボロボロになりながら地面に横たわった、咄嗟に回避をしたので致命傷にはならなかったが決して小さくないダメージを受けてしまったようだ。


「くぅっ、こんなところで負けるわけには……!」
「祐斗!あなたたち、邪魔よ!」
「この!メラゾーマ!マヒャド!」
「ガルルルル!!」


 祐斗のピンチにリアス、朱乃、小猫、ルフェイ、テリーが反応するが彼女たちは迫り来る魔獣たちを相手にするのに手一杯だ。本来ならこの程度の魔獣たちに苦戦するようなことはないのだがこの魔獣たちはとても強かった、まるでグルメ界の猛獣を相手にしているような気分だった。


「ふふふ、そいつらはグルメ細胞を入れた特注品だ。普通の魔獣とは強さが何倍も違う」
「くっ、これもあなた達の協力者とやらの仕業かしら?」
「その通りだ、あの怪しい人物には最初は警戒したものだが実際にこの光景を見てみると興奮が止まらないよ。グルメ細胞か……聖剣と同じ位好きになってしまったな、この戦いが終わったら是非とも研究してみたくなったよ」


 魔獣たちの強さがグルメ細胞だと知ったリアスはコカビエルたちに接触した協力者とは本当に何者なのかと思い始めた。そんなリアスたちをしり目にバルパーはグルメ細胞の素晴らしさや自分の聖剣に対する思いを話し始めた。


「しかしまさかこうして聖剣計画の生き残りと出会う事になるとは……ある意味奇跡とも言えるのかな?」
「何がおかしいんだ?」


 笑みを浮かべるバルパーに膝をつく祐斗が怪訝そうな表情で問い詰める。


「おかしいさ、私の研究を完成させてくれた恩人ともいえる君にこうして出会えることが出来たのだからね」
「恩人だと?お前は僕たちを失敗作として殺そうとしたじゃないか」
「確かに最初はそうだった、だがそれは間違いだと気が付いたのだよ」
「どういう事ですか……?」


 バルパーの言葉に小猫が首を傾げてバルパーの言葉の意図を考える。祐斗達を失敗作扱いしてころそうとしたのはバルパーだ、なのにどうして恩人などというのか?


「聖剣を使うために必要な因子があることに気が付いた私はある事を思いついたのだ、一人一人の因子を抜き出して集めることは出来ないか……とな」
「……まさか!?」
「これを見るがいい」


 バルパーは光り輝く球体を取り出した。


「これは抜きだした因子を集めた物だ、これを人間に入れることによって人工的に聖剣使いを生み出すことが出来ることが分かったのだ。だが教会の連中は非人道的だと言って私を糾弾した、だが結局はそこの小娘たちが証明するように教会は人口聖剣使いの研究を進めていたのだ。ミカエルという天使はしたたかな奴だ、私一人に罪を着せて自分たちは平然と研究資料を奪ったんだからな。まあ殺さずに因子を抜き取るだけ私よりは遥かに良心的かもしれんがな」
「じゃあその因子は僕の同志たちの……!」
「奴らの因子は有効的に使わせてもらったぞ。これはそのお礼だ、受け取るがいい」


 バルパーは因子の塊を祐斗に投げつけた、地面を転がり祐斗の手に当たった因子を祐斗は涙を流しながら手に取った。


「……皆……こんな姿にされて……ごめんよ、ごめんよ……」


 祐斗の頬に涙が伝い、それが因子の塊に落ちた。だがそこにフリードが聖剣を振り上げながら祐斗に襲い掛かった。


「安心しなよ!お前もお仲間の所に送ってやるからさぁ!!」


 振り下ろされた聖剣が祐斗を斬ろうとしたその時だった、何かの衝撃を受けたフリードは大きく吹き飛ばされた。


「いい加減にしなさいよ、この最低男!あなたは空気が読めないのかしら?」
「イリナさん……」


 祐斗の危機を救ったのはイリナだった、彼女の足にはいつの間にか漆黒のブーツが履かれており宙に浮かんでいた。


「それは、まさかイノセンスか!?」


 イリナの履くブーツを見たバルパーは驚いた表情を見せた。


「イノセンス?確か教会のエスソシストだけが使える神器みたいな物だったかしら?」
「うむ、イノセンスとは天使の祝福を受けたエクソシストが稀に生み出すという神器の亜種と言われているものだ。その力は神器にも匹敵すると言われている、イリナは教会でも数少ないイノセンス使いだ」


 リアスの疑問にゼノヴィアがイノセンスについて説明した。イノセンスとは天使の祝福を受けたエクソシストが稀に発現させる神器の亜種のようなものであり神器に匹敵する能力を持っているらしい。


「イノセンス~?そんなもんこのエクスカリバーでバラバラにしてやんよ!!」


 天閃の聖剣の能力を使いイリナに向かっていくフリード、それに対してイリナは落ち着いた様子を見せていた。


「行くよ、黒い靴(ダーク・ブーツ)!!」


 イリナが宙を蹴るように足を動かす、その瞬間にイリナの姿は消えていた。一瞬で自分の眼前から消えたイリナにフリードは戸惑うが背後から受けた衝撃によって地面に叩きつけられた。


「速い、天閃の聖剣の動きに負けない位の速さだわ!」
「イリナのイノセンス、『黒い靴』は空気の波動を蹴り高速での移動が可能になる。更にキック力は大幅に上昇されその一撃は岩石すらも砕くほどだ」


 イリナの速さにリアスが驚きゼノヴィアがイリナの持つ『黒い靴』について説明する。


「くそがっ、今度こそ切り刻んでやるよ!!」


 頭から血を流すフリードは擬態の聖剣の力を使い聖剣をいくつもの鋭い槍に変化させてイリナに突き刺そうとした、だがイリナは宙を舞うように動き回り攻撃を回避していく。


「円舞『霧風』!!」
「ぐぎゃぁぁぁ!?」


 イリナが放った蹴りの風圧で発生した竜巻がフリードを切り刻んでいく。


「イノセンスという物は初めて見たけど神器にも劣らない性能を持っているのね」
「イリナばかりに活躍させていたら私の出番が無くなってしまうな、ここは切り札を使わせてもらうか」


 襲い掛かってきたミノタウロスを滅びの魔力で消し去ったリアスはイリナが使うイノセンスの力に感心していた。すると傍にいたゼノヴィアが何を思ったのか武器を持っていないにも関わらずフリードの元に向かっていった。


「ゼノヴィア!武器も持たずに突っ込むなんて無茶よ!?」
「武器なら持っている、とびきりの奴をな……ペトロ、バシレイオス、ディオニュシウス、そして聖母マリアよ。我が声に耳を傾けてくれ」


 ゼノヴィアは右手を前にかざすと何かの言霊を話し出した、するとゼノヴィアの前の空間が歪みゼノヴィアはその歪みに右手を突っ込んだ。


「この刃に宿りしセイントの御名において、我は解放する―――――デュランダル!」


 歪む空間から出されたゼノヴィアの右手にはエクスカリバーにも負けないほどの聖なる波導を放つ聖剣が持たれていた。


「デ、デュランダルだと!?」
「貴様、エクスカリバー使いではなかったのか!?」


 エクスカリバーに匹敵するほどの力を持つ聖剣デュランダル……それがいきなりこの場に現れた事に流石のフリードとバルパーも驚きを隠せなかった。


「残念だったな、私は元々デュランダルの使い手だ。エクスカリバーの使い手も兼任していたにすぎない」
「ありえん!私の研究でもデュランダルを扱える領域にまでは達していないぞ!」
「それはそうだろう、私は人口的な聖剣使いではない。元から使える天然物だ」


 ゼノヴィアは生まれた時から聖剣を使えるだけの因子を持った神に選ばれし者だった、その衝撃の事実にバルパーは言葉を失ってしまった。


「デュランダルは想像を遥かに超える暴君でね、触れた物を何でもかんでも切り刻んでしまうんだ。だから普段は異空間に封印してあるのさ、まあ私が未熟ゆえに扱いきれていないのが事実なんだがな」


 ゼノヴィアはデュランダルを上段に構える、するとデュランダルから凄まじい聖なる波導があふれ出した。


「さてフリード・セルゼンよ、エクスカリバーとデュランダルの頂上決戦といこうじゃないか。私も全力で行く、精々一太刀で死んでくれるなよ!」
「ナメてんじゃねえよ、破壊の聖剣!!」


 フリードは破壊の聖剣の能力を使い巨大な斬撃をゼノヴィア目掛けて放った、当たればひとたまりもない一撃を前にしてゼノヴィアは笑みを浮かべた。


「秘剣、『月牙天衝』」


 ゼノヴィアが振り下ろしたデュランダルから膨大な一撃が放たれた、その一撃は破壊の聖剣から生み出された斬撃を軽く飲み込み校庭の地面を大きくえぐるほどの威力だった。


「ぐあぁぁぁ!?」


 無論そんな一撃を喰らえばエクスカリバーとてひとたまりもない。フリードはその一撃に飲まれて吹き飛ばされてしまった。


「ふむ、こんなところか」
「ちょっとゼノヴィア!その技使うなら前もって言っておいてよね!下手をすれば味方にも被害が出るのよ!」
「ああ、そういえば言っていなかったな。済まなかった」


 ぷんすかと怒るイリナにゼノヴィアが軽い感じで謝った。


「デタラメな威力ね、あんなの受けたらひとたまりもないじゃない」
「まさにパワーを極めたり、ですね」


 魔獣たちを一通り倒したリアスたちはデュランダルの一撃に呆れていた。この荒れた校舎や校庭を直すのは自分たちだと言うのに当の本人は満足そうな笑みを浮かべている、これにはリアスも苦笑いしてしまう。


「……」
「……祐斗先輩」


 仲間たちの因子を抱きしめながら涙を流す祐斗の姿に小猫が悲しそうな表情を浮かべた、散々利用され最後には殺されかけた、挙句には仲間の因子すら奪われ道具として最後まで道具として利用されていたことを知った彼の心境は計り知れないものだろう。故にどう声をかければいいか分からなかった。


「ぐ、くそがぁ……」
「むっ、まだ生きていたのか」


 膝をつきながらこちらを睨みつけるフリードにゼノヴィアが感心したような表情を浮かべた、確かに先ほどの一撃を受けてまだ生きているとは凄い生命力といえるだろう。


「なんなんですかぁ、この展開は……?イノセンスにデュランダルとかご都合主義にも程があんだろうよ……」
「ご都合主義がなんなのかは知らんが貴様の負けだ、大人しくエクスカリバーを返すがいい」
「ふざけんな、俺はまだ負けて……ッ!?」


 その時だった、フリードの腹から何かが飛び出して鮮血が地面に撒き散らかされた。


「うえっ?んだこりゃ……?」
「もういい、この役立たずめ」


 フリードの背後にいたのはバルパーだった、しかしバルパーの背中には本来人間には無い尻尾がありそれがフリードを貫いていた。


「貴様、何をしているんだ!」
「仲間を攻撃するなんてひどいわ!」
「仲間?こいつは聖剣の力を引き出してもらうために協力しただけの存在だ、だが実際は聖剣を使いこなせないゴミだったようだな。もうこいつは必要ない」


 尻尾を振るいフリードをゴミのように飛ばすバルパー、その光景を見てリアスたちは怒りの表情を浮かべた。


「あなた、最低ね。自分の仲間をゴミ呼ばわりするなんて」
「悪魔が仲間意識を持っている方が滑稽だと思うがな、さて……」


 バルパーはリアスに皮肉を言うとフリードが持っていた聖剣を手に取る、そして何を思ったのか聖剣を口の中に入れてそのまま飲み込んでしまった。


「きゃああ!エクスカリバ―を飲み込んじゃった!?」
「ふふふ、これで聖剣は私のものだ」


 バルパーは神父服を脱ぎ去り裸になる、だがその体は人間のものではなかった。黒い装甲の下に赤黒い肉体、そこに緑色の血管を浮かばせ腕から針を出した人外の姿だった。


「な、なんだ。その姿は……?」
「これぞグルメ細胞を得て進化した新たな私の姿だ、美しい姿だろう?」


 バルパーは美しいと言うがリアスたちからすれば化け物にしか見えない姿だった。


「そういえば前にイッセー先輩から聞いた事があります、グルメ細胞に完全に適合できないと身体に異常が起きたり変化してしまったりすることがあるそうです。恐らくバルパーは完全にグルメ細胞と適合することが出来なかったんじゃないでしょうか?」
「その結果あんな化け物になっちゃったって訳ね」


 小猫の説明にリアスが納得した様子を見せた。


「ふん、何とでもいいがいい。私は人間を超えた存在となったのだ、まさに神と言える存在にな」
「貴様が神を名乗るな!」


 ゼノヴィアがデュランダルから聖なる波導を飛ばしてバルパーを攻撃した、だがバルパーはそれを腕ひとつで防いでしまった。


「バカな!聖剣の中でも最強の切れ味を持つと言われているデュランダルの一撃が防がれただと!?」
「今の私には聖剣の力が取り込まれている、いかにデュランダルといえど私には通じぬよ」
「だったらこれならどう!」


 イリナがイノセンスを発動させてバルパーの顔に蹴りを喰らわせた、しかしバルパーはその一撃を受けても余裕の笑みを浮かべていた。


「嘘……」
「鬱陶しいわ、このハエが!」


 バルパーは尻尾を振り回してイリナに叩きつけた。


「きゃああ!」
「イリナ!」


 吹き飛ばされたイリナをゼノヴィアが受け止めた。


「ふはは、素晴らしい、素晴らしいぞ!どうやら私は聖剣を取り込むことによって更なる強さを得ることが出来るようだ。最早最強の聖剣など生み出す必要はない、私こそが最強の聖剣になったのだ!」
「何が最強ですか、あなたの力は全部貰い物に過ぎません」
「それがどうした?結果さえあれば貰い物の力だろうと認められるものだ。ふふっ、いい事を考えたぞ、お前らを皆殺しにして戦争を起こした後に世界中の聖剣を喰らってやろう。そして私を捨てたミカエルや聖書の神を滅ぼして私が新たな神……いや魔神になってやろう!我が名は魔神バルパーだ!!」
「狂っている……こいつはもう人間じゃない……」


 小猫の言葉にそれがどうかしたのか?と言わんばかりの開き直りを見せるバルパー・ガリレイ。力を得て野心が暴走したのか自分自身が聖書の神に代わって新たな神になろうとまで言い出すバルパーにゼノヴィアは恐怖の眼差しを向ける。


「さてデュランダル使いよ、まずは貴様から殺してやろう。聖剣デュランダルを取り込めば私は更なる……むっ?」


 ゼノヴィアに攻撃を仕掛けようとしたバルパーだったが、背後から放たれた攻撃に反応して尻尾を振るう。尻尾で攻撃を受け止め攻撃してきた者を確認するとバルパーに攻撃したのは祐斗だった。


「バルパー!僕は貴様を許さないぞ!」
「死にぞこないが……いいだろう、まずは貴様から殺してやろう!」


 祐斗を尻尾で弾き飛ばしたバルパーは両腕から生えた鋭い針で祐斗を攻撃していく、祐斗は和道一文字で攻撃を受け流しバルパーの背後に回り込んで後頭部を斬りつけた。


「龍巻閃!!」


 完全に切断することは出来なかったがバルパーは体制を崩してよろけてしまった、祐斗はその隙を見逃さずバルパーの全身に斬撃を放った。


「喰らえ、龍巣閃!!」


 バルパーの全身を斬りつける祐斗だったがバルパーは効いていないのか防御すらしなかった。挙句には和道一文字の刀身を掴んでしまう。


「そんな攻撃など効かんわ!」


 そして和道一文字を手刀でへし折ってしまった。


「イッセー君から貰った刀が……!!」


 大切な刀を折られてしまった事に動揺して祐斗の動きが止まってしまった、その隙を見逃さなかったバルパーは祐斗の肩と足に両腕の針を突き刺した。


「雷よ!」
「うわぁぁぁぁ!?」


 そして針から電撃を流し込み祐斗を苦しめる。


「祐斗!」


 リアスが祐斗を助けようと滅びの魔力を放とうとする、だがバルパーはそれよりも早く動き尻尾を横に振るいリアスの脇腹に直撃させた。


「がはッ!」
「部長!!」


 口から血を吐きながら吹き飛ぶリアスを小猫が受け止めた。


「ふん、貴様らは後で始末してやる」
「ぐはぁ……!」


 倒れる祐斗を踏みつけてバルパーは愉快そうに笑った。


「さてそろそろ貴様には死んでもらうとするか、結局貴様は最後まで私に叶うことは無かったな」
「く、くそ……地獄に落ちてしまえ、バルパー……」
「ははは、地獄に落ちるのは貴様だ!さあ、死ねぃ!!」


 祐斗にトドメを刺そうとしたバルパー、だが急に祐斗が明るい光に包まれたことに気が散り攻撃を止めた。


「むっ、なんだ?……ぎゃあ!?」


 その光は祐斗が持っていた因子の塊から放たれたものだった。祐斗の周りに広がった光は次第に一つに集まっていき球体となった。するとその球体が動き出し祐斗を踏みつけていたバルパーを弾き飛ばした。


「な、何が起きたんだ……?」


 状況が分からない祐斗は困惑した様子を見せるがその球体が人間の形になるとあり得ないと言った表情を浮かべた。


「リ、リナリーなのか……?」
『……久しぶりだね、イザイヤ』


 祐斗は球体が変化した人間を見てリナリーと名を呟いた、そのリナリーと呼ばれた人物は祐斗をイザイヤと呼んだ。


「イザイヤ?それって確か祐斗君がリアスに拾われる前に名乗っていた祐斗君の本名ですわ」
「じゃああの人は祐斗先輩の同志の方ですか?」


 イザイヤという名が祐斗の本名だと朱乃が説明する、それを聞いた小猫は彼女が祐斗の同志だと理解した。


「皆……」


 球体がいくつにも分かれそれぞれが男女、人の形になり祐斗を囲んでいく。そして祐斗を懐かしそうで哀しげに見つめていた。


「リナリー、僕はずっと思っていたんだ。皆を犠牲にして僕だけが生き残ってしまった……本当にそれでよかったのかって……僕も皆と一緒に死んでしまった方が良かったんじゃないかってずっと思っていたんだ……」
『イザイヤ……』
「君たちは僕を恨んでいるのかい?だからここに姿を現したのかい?」
『……ふふっ、あなたは本当に優しい人ね』


 後悔する祐斗にリナリーと呼ばれた少女は優しい笑みを浮かべた。


『私たちはあなたを恨んでなんかいないわ、寧ろずっと私たちも事を想ってくれて嬉しかった』
「リナリー……」
『でももういいの、私たちに捕らわれないであなたはあなたの為に生きて。それが私たちの願いだから』
「そんな……出来るわけないだろう!僕は……皆と一緒にいたかったんだ!」
『……ありがとう、イザイヤ。そう言ってくれるだけで十分に嬉しいわ。でも私たちはもうあなたには会えないの。だからあなたは新しい家族を守る為に剣を振るって』
「新しい家族……」


 祐斗は背後で自分を見つめる小猫たちを見る、するとリナリーと呼ばれた少女が微笑んだ。


『私たちはずっとあなたと一緒にいる、だからもう悲しまないで。私たちの思いがイザイヤ……いえ祐斗を守るわ』


 そして祐斗を囲む少年少女たちが口を開き何かの歌を歌いだした。


「これは聖歌ですか?」


 アーシアが彼らが歌っているものは聖歌だと呟いた。祐斗は涙を流しながら彼らと共に聖歌を歌う、その歌には彼らの想いが込められていた。苦しい実験の中でも互いに助け合い希望を捨てなかった強い想いがこの場に広がっていった。


『もう大丈夫、私たちの心は何時だって――――――――』
「……ああ、ひとつだ」


 淡い光が折れた和道一文字に集まっていく、すると眩い光が辺りを照らし光が収まると和道一文字が修復されていた……いやそれはさっきまでの和道一文字ではなかった。その刀身には禍々しい悪魔の字が彫られていたが放つのは神々しい聖なる波導だった。


「聖魔刀……これが僕の新たなる力……」


 祐斗はその刀を手に取った、その瞬間祐斗の身体から溢れんばかりのエネルギーがこみ上げてきた。


「ぐうっ、一体何が起こったと言うのだ……?」


 光の球体に弾き飛ばされて地面に倒れていたバルパーが起き上がってきた、祐斗はゆっくりとバルパーの方に向き直り刀を構えた。


「僕はリアス様に助けられて悪魔として新たな生を授かった、平和に生きる中で僕は復讐の事を忘れかけていた。でも本当にそれでいいのかとずっと悩んでいた、でも皆は僕の幸せだけを願っていてくれたんだ……」


 祐斗は涙を拭いながら自分の事を想ってくれていた同志を、そして同じくらい自分を想ってくれている今の仲間を思い浮かべた。


「僕の為に動いてくれる、助けてくれる仲間が出来た。それを守ることが僕の新たなる使命だ!部長や皆を……そして僕の最高の友人を守るために僕は剣となって戦う!『双覇の聖魔刀』!!」


 祐斗は聖魔刀……『新生・和道一文字』を振るいバルパーに向かっていった。


「そんなナマクラ刀などもう一度へし折ってくれるわ!」


 バルパーは祐斗目掛けて雷を放つ、だが祐斗はそれを刀の一振りで四散させた。そしてバルパーの目前で姿を消した。


「なに!?どこに消えた!?」


 バルパーは祐斗の姿を探すが祐斗は既にバルパーの頭上で刀を振り下ろす体制に入っていた。


「龍鎚閃!!」


 祐斗の振り下ろした一撃はバルパーの尻尾を見事に切断した。


「うわぁぁぁ!私の尻尾が!?」


 動揺するバルパーに祐斗は龍巣閃で斬りつけていく、先ほどは効かなかったこの技も今はバルパーの全身に痛々しい傷をつけていた。


「い、いたぁぁい!?止めろ!私の身体を傷つけるな!!」


 情けない悲鳴を上げながら我武者羅に攻撃をするバルパーだがそんな攻撃が祐斗に当たるはずもなく空振りばかりしていく。


「何故だ!何故当たらない!」


 バルパーは何故当たらないと叫ぶが当然の事だ。バルパーは確かにグルメ細胞で強くなったが元々は戦いの苦手な司祭でしかなかった、故に動きは単調で祐斗からすれば読みやすくパワーアップした彼にとってもはや脅威ですらなかった。


「無駄だ、お前の攻撃は最早当たらない!牙突!!」


 カウンターとして放たれた祐斗の突きがバルパーの腕の針に当たり粉々に砕いてしまった。怯むバルパーの隙をついて祐斗はもう1本の和道一文字を生み出した、すると2本の和道一文字は小太刀程の大きさに変化した。


「この新生・和道一文字は攻撃によって一番最適な形に自動的に変わるんだ。今から放つのは小太刀が最も真価を発揮する怒涛の連撃……!」


 二刀流の構えを取った祐斗は不規則な動きでバルパーの周囲を徘徊し始めた、そしてバルパーの隙をついて一気に動き出した。


「秘技!回転剣舞・六連!!」


 祐斗は2本の刀を使い怒涛の六連撃をバルパーに喰らわせた、バルパーの全身はボロボロになり最早勝敗は誰が見ても明らかなものになっていた。


「バルパー……遂にこの時が来たな、仲間たちの仇を討たせてもらうぞ!」
「ま、まて!取引をしよう!私がお前に最強の聖剣を使える栄誉を貴様に与えてやろう。どうだ、最強の聖剣だぞ?剣士なら振るってみたいんじゃないか?」


 この期に及んで呆れるような取引を持ち込むバルパー、だが祐斗がそれを聞くことなどありえるはずもなかった。


「飛天御剣流、奥義……」
「ま、待ってくれぇ!!?」
「天翔龍閃!!」


 その一撃は祐斗が放ってきた技の中でも最も速く鋭い一撃だった、バルパーの上半身を横一閃に切り裂いた。


「そ、そんな……私は……最強の聖剣を……うみ……だ……す……者……」


 横に一刀両断されたバルパーの上半身が緑色の血を降らしながら地面に落ちていった、そしてバルパーは最後まで聖剣にこだわり続けながら絶命した。


「ありがとう、皆……」


 見事復讐を果たした祐斗は刀を鞘に戻して笑みを浮かべた、その表情はとても穏やかなものだった。


「祐斗!やったわね!貴方は私の誇りよ!」
「祐斗先輩!やりましたね!」
「うふふ、とってもかっこよかったですわ」
「はい、素晴らしい一撃でした!」
「見事だったぞ、木場祐斗」
「うんうん、祐斗君すごかったよ!私感動しちゃった!」
「まるで戦隊ヒーローのクライマックスを見ている気分でした!」
「アォン」


 立ち尽くす祐斗にリアスたちが駆け寄っていく。祐斗は笑みを浮かべながらリアスたちの元に歩み寄った。


「部長、ありがとうございます。僕はようやく復讐を果たすことが出来ました」
「良かったわね、祐斗。でも禁手に至るなんて思ってもいなかったわ」
「はい、同志たちが……そしてみんなが僕に力をくれたんです」


 祐斗は涙を流しながらリアスたちにお礼を言う、そんな祐斗をリアスは微笑みながら優しく抱きしめた。


「おいおい、確かにそうしたくなるのも分からなくないが今は戦いの最中だぞ?早く兵藤一誠の元に加勢しにいかなくては」
「大丈夫ですよ、イッセー先輩が負けるはずありません……えっ?」


 ゼノヴィアの言葉に小猫が大丈夫だと言いながらイッセーとコカビエルが戦っている方を見る。イッセーの勝利を信じる小猫、そんな彼女の目に映ったのは上空でコカビエルに何かの技に固められて地面に落下していくイッセーの姿だった、しかも落ちると予想される場所には大量の光の矢が刺さっておりこのままでは最悪の結果になってしまう。


「きゃあああっ!?イッセー君!!」
「イッセーさん!止めてください!!」


 朱乃とアーシアも最悪の予想を頭の中で考えてしまったのか悲鳴を上げた、だがコカビエルはそんなことで止まるはずもなく捕らえたイッセーと共に落下していく。そして……


「喰らえ――――――ッ!堕天使の奥義が一つ!!鴉の早贄刺し―――――――――ッ!!!」


 イッセーの背中を鋭い光の矢が貫いた光景が小猫たちの目に映った。


「イ、イッセー先輩―――――――――ッ!!!」


 真夜中の駒王学園に小猫の悲鳴が響き渡った……



  
 

 
後書き
 バルパーの姿はドラゴンボールのセルをドラクエ9の魔人ジャダーマと掛け合わせた感じだと思ってください。
 後祐斗の新生・和道一文字に彫られた悪魔の文字はワンピースの映画『呪われた聖剣』に出てきた七星剣のようなものだと思ってください。 
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