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ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル

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第38話 イッセーの苦難、祐斗の仇を見つけます!

side:イッセー


 よう、イッセーだ。一眠りしてから時計を見てみると17時を回っていた、俺は食材の買い出しでも行ってこようかと思い一階のリビングに向かうと紫藤がソファーに座っていたのを発見した。


「よう、紫藤。おはようさん」
「あ、兵藤君。おはよう……といってももう夕方なんだけどね」
「はは、まあ今は昼夜が逆転してるからな。ゼノヴィアたちは?」
「ゼノヴィアはアーシアさんと一緒にまだ寝ているわ。私は目が覚めちゃったから本でも読んでおこうかなって思ったの。兵藤君はどうしたの?」
「俺はメシを作ろうと思っていたんだが丁度冷蔵庫の中が空っぽになっていたんで買い出しに行こうと思ったんだ」
「それなら私も一緒についていってもいい?久しぶりにこの町を見て周りたいの、駄目かな?」
「紫藤もか?うーん……」


 昨日聞いた話では紫藤も生徒会のメンバーと出会ったんだよな、その紫藤と俺が一緒にいたら変に思われないだろうか……まあ透明化のリングは持っているし生徒会のメンバーが近づいてくれば匂いで分かるからなんとかなるか。


「分かった、一緒に行こうか」
「やった♪それじゃ準備するね」


 紫藤はそう言うと最初に会った時に来ていた白いローブを身に纏った。


「そんなものを着けていたら変に思われるぞ」
「大丈夫、このローブには認識を誤魔化す術式が施されているから普通の人に見られても唯の服にしか思われないわ。寧ろこれを着ていないとピチピチのスーツ姿で外出することになっちゃうよ」
「そんな効果があったのか……因みにそのピチピチスーツは教会の趣味か?」
「教会の上層部が作った由緒ある服なんだって」


 絶対に嘘だな、どう見ても個人的な趣味を感じるぞ……


「まあいいや、皆が起きる前にさっさと買い出しに向かおう」
「うん、それじゃ行こっか」


 俺は紫藤を連れて買い出しに向かった。


「へー、この辺もすっかり変わっちゃったね」
「そういえばこの町に住んでいたって言っていたな。昔はどんな感じだったんだ?」
「そうだね、あの公園にはブランコとか滑り台があったけど今はジャングルジムも出来てるしあの辺には駄菓子屋があったんだよ。小さい頃はよく友達と行ったな~」


 ……紫藤の言う通り公園の遊具は昔と比べて増えた、今は潰れてしまったが俺が昔、この町に住んでいた時は確かに駄菓子屋はあった。これだけ昔のこの町の事を知っているという事、そして紫藤イリナという名……やはりこの子は俺の知るあのイリナなのだろうか?


「なあ、紫藤。お前は……」
「お、イッセーじゃないか?何をして……なんだ、その美少女は!?」


 俺が紫藤に声をかけようとした時、後ろから聞いた事のある声がしたので俺は呆れながら後ろを振り返った。


「なんでお前がここにいるんだよ。元浜」


 俺たちに声をかけてきたのは元浜だった、どうやら何かを買って家に帰る途中で俺たちを見つけたようだ。


「俺は近所のプラモデル屋で予約していた戦艦のプラモデルを買ってきたところだ」
「エロフィギュア以外にも興味があったのか……そういえば松田は一緒じゃないのか?」
「松田は同志ではあるが四六時中一緒な訳じゃない、あいつは確か新作のエロゲーをやりこむとか言って急いで帰ったぞ。そういうイッセーこそ今日は急に休んだようだが何かあったのか?」


 そうか、今日は体調不良という事で急に学校を休んだから元浜たちは気にしていてくれたのか。


「まあ、色々あってな……」
「ふむ、まあ元気そうだからそれはいいとして……さあ、話してもらうぞ?そちらの美少女の事をな」


 くっ、話の流れで誤魔化せたかと思っていたが甘かったか、こいつが紫藤のような可愛い女の子の事を忘れるわけないもんな。


「彼女は紫藤イリナといって、俺の親父の知り合いの娘さんだ(紫藤、話を合わせてくれ)」
「(分かったわ)初めまして、兵藤君の知り合いの紫藤イリナです。よろしくね」


 アイコンタクトで紫藤に合図をして、それを汲み取ってくれた紫藤が話を合わせてくれた。


「イッセーの親父さん?そう言えばイッセーは一人暮らしをしていたんだったな」
「ああ、親父は外国で働いているから俺は一人暮らしをしてるんだ、んで今日いきなり紫……イリナが遊びに来るって連絡が会ったんで学校を休んで町を案内していたって訳さ」
「なんと羨ましい奴だ。学校を休んで美少女とデートが出来るとは」


 本当は外国どころか異世界にいるんだがそんなことは話せないからある程度は誤魔化したにしている。


「しかしどうしてお前の元にはそんなにも美少女が集まるんだ?」
「さあな、皆優しいからなんだかんだ俺の事を気にしてくれているだけじゃないか?」
「それでも羨ましいではないか、俺も可愛いロリッ娘とお近づきになりたいものだ」
「お前、いつか犯罪者として捕まりそうだから止めておけって……」


 こいつも中身は変わらねえな、まあ前よりは落ち着いているしそんなことをする奴だとは思っていないので別にいいか。


「さて、俺はそろそろ帰ってプラモデルの制作に入るとするか。イッセーも小猫ちゃんという可愛いロリッ娘に慕われているくせにあまり見知らぬ美少女と仲良くするんじゃないぞ」
「分かったって、じゃあまたな」
「バイバーイ」


 去っていく元浜に手を振りながら見送った後、紫藤はちょっと複雑そうな表情を浮かべながら声をかけてきた。


「ねえ兵藤君、さっき私の事名前で呼んだけど……」
「ああ、すまなかったな。知り合いだって言ったのに余所余所しい呼び方をしたら変に思われるかと思ったからつい咄嗟に名前で呼んでしまったんだ。気を悪くさせたなら謝るよ」
「別にそんなことないよ。唯兵藤君ってなんか私にだけ壁を作っているように思えたからちょっと驚いちゃったの。なんだったら私の事もイリナって呼んでほしいんだけど」
「出会って少ししか立っていないのにそんな馴れ馴れしくしてもいいのか?」
「でもゼノヴィアは名前で呼んでいるよね?」
「そりゃ苗字が無いみたいだから名前を呼ぶしかないだろう」
「兵藤君は私の事、嫌いなの?もしかして何か君に不快な思いをさせちゃった?」


 うっ……あまり深入りするべきはないと思って苗字で読んでいたがこれ以上避け続けるのは無理だな。


「悪かった、気を使ったつもりだったが返って不快な思いをさせてしまったようだな……イリナ。これでいいか?」
「……あ」


 イリナの名を呼んでみると、イリナは少し驚いたような表情を浮かべていた。


「どうかしたのか?」
「あ、ううん、何でもないよ(どうして私、兵藤君に名前を呼ばれたら懐かしいって思ったんだろう?やっぱり兵藤君は……)」


 イリナは何かを考えこむように悩んでいたが、決心したような表情を浮かべて声をかけてきた。


「……ねえ、兵藤君。私もイッセー君って呼んでもいい?」
「ああ、別に構わないぞ」
「じゃあ改めてよろしくね。イッセー君!」


 ニパッと太陽のような眩しい笑みを浮かべながら俺の名前を呼ぶイリナを見て、俺は不意に過去の記憶が蘇った。



(イッセー!)



 ……同じだ、昔イリナが俺に見せていた笑顔と全く同じだ。例え服装や髪型が違っていてもこの笑顔だけは全く一緒だった……この子は俺がよく知るあの紫藤イリナに間違いない。


「イリナ……俺は……」


 俺はイリナに自分の事を話してしまいたいという衝動に駆られたがそれを抑え込んだ。


「あれ?今何か言った?」
「……いや、何も言ってないよ。急がないと皆が腹を空かせてしまう、そうなる前に買い物を終わらせて帰るとしようぜ」
「あ、待ってよ、イッセー君!」


 俺はイリナを連れて再び歩き出した。イリナが俺の知っていた幼馴染であったことは分かった、でも俺がイリナが知る神崎一誠だという事を言い出すことは出来ない。それを言ってしまえば彼女を危険な目に合わせてしまうかもしれないからだ。


(すまない、イリナ。俺はお前との約束を守ることは出来ないんだ、せめてこの事件が解決するまではお前とお前の仲間は俺が守って見せるよ……)


 また会おうね……かつてイリナとした約束を守ってやれない自分にいら立ちを感じながらも、コカビエルの件が終わるまでは彼女の力になろうと俺は決心した。












「美味い!日本の食事は美味いぞ!」
「うんうん!これよ!これが故郷の味なのよ!」


 目の前に並ぶ料理を次々と平らげていくゼノヴィアとイリナを見て俺は思わず苦笑してしまった。今日の献立は牛肉100%ハンバーグ、沢山の魚を使ったアラ汁、新鮮野菜のサラダ、キノコとおろしポン酢の和風スパゲティ、鶏肉の竜田揚げ、パンプディング、ベジタブルピザ、そしてデザートに牛乳寒天を入れたフルーツポンチのラインナップだ。しっかしいい食べっぷりだな、小猫ちゃんといい勝負なんじゃないか?


「あう……ゼノヴィアさん、ちゃんとよく噛んで食べないと駄目ですよ」
「あはは、小猫ちゃんやイッセー君を見ているみたいだね」
「あれだけ作った料理が瞬く間に消えていきます……私も負けていられませんね」


 アーシアはゼノヴィアにちゃんと噛むように叱っており祐斗は二人の食べっぷりを見て俺と小猫ちゃんを見ているみたいだと苦笑している。小猫ちゃんだけは対抗心を燃やして更に食べ続けているんだけどな。


「というかお前ら普通に肉とか食ってるけどいいのか?確か食べてはいけない食べ物があっただろう?」
「確かにあるけどエクソシストはある程度免除してもらえるの、命を懸けて戦うんだから食事位は楽しまないと」
「それにバレなければ問題はない。使命を果たそうとする私たちを主は見逃してくれるはずだ」


 そう言いながら食べる勢いを衰えさせない二人を見て食欲が更にわいてきたので俺も食べ続けた。30人前ほどは作った料理があっという間に消えてしまった。


「は~、お腹いっぱい……ごちそうさまでした。主よ、こんなにも美味しい料理を作ってくださったイッセー君達にお慈悲を」


 イリナが胸の前で十字を切ると、小猫ちゃんと祐斗が頭を抑えた。悪魔である二人は十字架を斬られるだけでもダメージを受けてしまうらしい。


「イリナ、この場には悪魔もいるんだから十字架は切らないでくれ」
「あ、そうだったわね。塔城さん、木場君、ごめんなさい」


 テヘッと可愛らしい笑みを浮かべながら小猫ちゃんと祐斗に謝るが本当に反省しているんだろうな?


「はぁ~、仕方ない奴だな。大方何時もそんな感じで周りの人間に迷惑をかけているんじゃないか?例えば詐欺まがいの見るからに怪しい聖画とかを騙されて買ったりしているとか」
「ど、どうしてイッセー君がそれを知っているの!?」
「当てずっぽうで言ったがマジだったのか……」


 イリナは昔からそそっかしい所がありオマケに騙されやすい。小さい頃は近所の悪ガキに騙されておもちゃを取られたり、怪しいおっさんにお菓子で釣られてホイホイ付いて行ってしまいそうになるくらい危なっかしい子だった。お陰で小さい頃は片時もイリナから目を離せなかったんだがどうやらそのそそっかしさは今も健在のようだ。


「……随分と仲良くなったのだな」
「そうですね、いつの間にか下の名前で呼び合っていますしね」


 ゼノヴィアが意外そうなものを見るように驚き、小猫ちゃんはジト目で俺とイリナを睨んでいた。


「さっきお二人で買い物にいかれたんでしたよね、その時に何かあったんですか?」
「イッセー先輩の事だからまた女の子を無自覚に口説いたんじゃないですか?」
「いくら何でもそれはない……とは言い切れないね、うん」


 アーシアと小猫ちゃんは探るような視線を送ってくる、それに対して祐斗がフォローしてくれようとしたが結局フォローになっていないことを言いやがった。


「ご、ごほん!そんなことよりもゼノヴィアとイリナに話があるんだがいいか?」
「誤魔化しました……」
「誤魔化しましたね……」
「誤魔化したね……」
「今はそんな事はいいだろう!真面目な話があるんだ!」


 話を強引に変えた俺をジト目で俺を見る小猫ちゃんたちだったが、俺が真面目な話をすると知ると真剣な表情を浮かべた。


「私たちに話とはなんだ?」
「単刀直入に聞く……聖剣計画って知っているか?」


 俺が聖剣計画について二人に訪ねると、二人は驚愕と言った表情を浮かべて俺に探るような視線を送ってきた。


「……どこでそれを?」
「木場祐斗……彼はその実験の唯一の生き残りだ」
「なっ!?それは本当か!?」
「うん、事実だよ。僕はあの忌まわしき実験の被験者さ」
「あの実験の生き残りがいたなんて……」


 ゼノヴィアは警戒するように俺に聖剣計画をどこで知ったのか聞いてきた、俺は祐斗がその計画の生き残りだと二人に告げると二人は信じられない物を見るような顔で祐斗に視線を送り裕斗がそれを肯定する。


「やはり知っていたんだな」
「ああ、その事件は私たちの間でも最大級に嫌悪されたものだ。なるほど、君はその事件の関係者だったという事か。最初に君たちの元を訪ねた時、一瞬強い殺気を感じたがそれは君のものだったんだな」
「……ごめん、つい感情が抑えられなくて」
「気にしなくてもいいわ、あの事件の関係者なら私たち教会の関係者を恨むのは当然の事だもの」


 どうやら祐斗は2人と初めて出会った時に殺気を出してしまったようだ。まあ無理もないか、急に自分の目の前に憎き存在が現れれば動揺するのは無理はない。ゼノヴィアたちも気にしていないと言っているので取りあえず話を進める事にした。


「俺が知りたいのはその計画を提案した首謀者についてだ」
「首謀者だと?……復讐が目的か?」
「俺としては仲間を弄んだ奴に一発くれてやりたいだけさ、最終的な判断は祐斗に託すつもりだがな。それで教えてくれるのか?それとも仲間を売るのは嫌か?」
「フッ、そいつはもう私たち教会の関係者ではない。事件が発覚した後、計画の首謀者や関係者は全員死罪になるはずだった。だが首謀者だけが教会から逃げだし今も行方を眩ませている」
「その逃げた首謀者の名は?」
「バルパー・ガリレイ……『皆殺しの大司教』と言われた男だ」


 バルパー・ガリレイ……そいつが裕斗の仇って訳か。


「そいつの居場所は今も分からないのか?」
「ああ、バルパー・ガリレイは教会の追手からも逃げ延びて行方を晦ました。だが今回の事件にもしかすれば奴が関わっているかもしれない」
「何だって……!?」


 ゼノヴィアの言葉に祐斗は驚いた表情を浮かべた。まさか自分の仇がこの町にいるかもしれないとは思ってもいなかったからだろう。


「バルパー・ガリレイは聖剣に強い執着を持っていた、そして今回のコカビエルによる聖剣の奪取……無関係とは思えない」
「教会を追放されたり逃げ出したエクソシストや神父は大抵が堕天使側の勢力に流れ着くわ、そしてバルパーは元大司教だから教会の内部や施設にも詳しかった」
「なるほどな、そのバルパーって奴がコカビエルに協力して今回の事件が起きたのかも知れないって事か。やったな祐斗、仇がすぐそばにいるかもしれないぞ」
「うん、まさかこうも早く出会えるかもしれないチャンスが訪れるとは思ってもいなかったけど……」
「確かに急な話かもしれない、でもこれはきっと神様の導きなんじゃないのか?いや悪魔風に言うのなら魔王様の導きか?」
「あはは、そうだね、きっとそうだ……ようやく見つけたんだ、自分の呪われた過去に、そして仲間たちの無念を晴らせる機会が……!」


 祐斗は決意を込めた眼差しで拳を握った。


「そちらの事情は分かった、バルパーは見つけ次第始末しろと上層部から言われているから場合によっては君たちに譲っても構わない」
「こちらの勝手な事情に付き合わせてもらってもいいのか?」
「木場祐斗からすれば我々教会の者は憎き怨敵そのものだ。確かの聖剣計画自体は畏怖すべきことだが皮肉にもその計画によって聖剣の研究が飛躍的に進み、今では私やイリナのように聖剣を操ることが出来るようになった。だがそれは私たちの都合であり犠牲になった者たちからすれば堪ったものではない、ましてはあの事件の生き残りなら猶更だ」
「ゼノヴィアさん……ありがとう」
「礼などいらないさ、君にそんな言葉をかけてもらう資格は私たちには無い」


 ゼノヴィアにも思う所があるのだろうかその表情は複雑なものだった。確かに聖剣計画自体は悍ましいものだったのかもしれない、だがその計画があったからこそ聖剣の研究が進み今では聖剣を自在に操れる人材まで作れるようになった。
 何かを犠牲にして技術が発達して文明が繁栄していく、これは人間の歴史そのものだ。IGOだって人体実験や生命を人工的に生み出す技術……表には決して出せないことをしている、それが必要な事だとは理解できるがそれで犠牲になった者たちが納得するわけがない。動物たちは喋れないだけで人間に憎しみを持っているのかも知れない、でもそれを俺たちが知るすべはない。あったとしても見てみぬフリをするかもしれない。


(何が正しいのか何て誰も分からねえよな……)


 祐斗はそれらで実験に使われた動物そのものだ。聖剣によって仲間を奪われた悲しみを本当の意味で理解してやることは俺にはできない、ゼノヴィアもそれを理解しているからせめて仇だけでも討たせてやりたいと祐斗の意思を尊重してくれたのかもしれない。


「あ、あの……聖剣計画とかバルパー・ガリレイとか一体どういう話なんですか?私、ちょっと話についていけなくて……」


 そんな時だった、話を聞いていたアーシアが困惑した表情で聖剣計画について尋ねてきた。そうか、俺と小猫ちゃんは祐斗から話を聞いていたしゼノヴィアとイリナは教会関係者だから知っていたがアーシアだけは知らないんだったな、でもこれを話すという事はアーシアに教会の汚い部分を見せつけるも同じ事だ。この子にそれを伝えてもいいのだろうか……?



「アーシア、聖剣計画というのは教会の裏側で起きた事件の事だ。つまりアーシアにとって辛い話になるかも知れない、それでも聞きたいのか?」
「覚悟はしています、私だけが何も知らないのは嫌です!」
「……分かった、聖剣計画というのはな……」


 俺はアーシアに聖剣計画について知っていることを全て話した。


「……という訳だ」
「そんな……教会が、主に仕える者たちがそんな悍ましい事をしていたなんて……」


 ショッキングな話の内容にアーシアは困惑した表情を浮かべた。やっぱり話すべきでは無かったか……


「大丈夫か、アーシア?」
「……イッセーさん」


 アーシアの肩にそっと手を置くと、アーシアはその手を握り返して俺に抱き着いてきた。


「イッセーさん、どうして人はこんなにも酷い事が出来るんですか?それも主に仕える存在たる者たちがどうしてそんな……」
「アーシア、辛い事を言うかも知れないが組織という物は大きくなればなるほど裏で何かをしているものなんだ。それはきっとどこも変わらないと思う」
「じゃあ私が追放されたのも私の信仰心が低かったからじゃないんですか?」
「ああ、きっとアーシアにいられてはマズイ事が教会にはあったんだろう。君の信仰心が低いなんてあり得ない、それは俺が保証する」
「私が信じてきたものは一体何だったんでしょうか……」


 アーシアは教会によって聖女として祭り上げられていた。恐らくアーシアの癒しの力を使って信者を増やそうとかそう言った考えがあったんだろう、だがアーシアが悪魔を癒したことによって教会に不都合なことが出来てアーシアを切り捨てたと俺は思っている。


「アーシア、自分が信じていた組織が裏で酷い事をしてきた事を知って信じたくないと思う気持ちで苦しいのは分かる。でもこれは事実であり受け入れなければならない現実だ」
「……そうですね、私もイッセーさんと過ごしてきて世の中が綺麗ごとばかりじゃないって見てきました。だから辛い現実を知ったとしても否定することなんて出来ないですよね」
「やっぱり教えるべきじゃなかったな。配慮が至らずすまなかった」
「謝らないでください、わたしが自分で知りたいって言ったんです。それに追放されたおかげでイッセーさんや皆さんに出会えたんです、だから追放されたのも主の導きだったんだと思います」
「……そうか、そう言ってくれて嬉しいよ」


 アーシアは現実を受け入れて向き合う覚悟を決めたようだ、強くなったな……


「さて、祐斗の仇も分かった訳だが……こちらとしては何も進展が無いんだよな」
「うむ、コカビエルがこの町に潜伏しているのは間違いないはずなのだが一向に手掛かりが見つからないとはな」
「もう既に逃げてしまったとかは無いのかな?」
「いや、コカビエルはこの町でなにかをしようとしているのは確かだ。安易に逃げ出すとは思わない」


 祐斗がコカビエルとバルパー・ガリレイは逃げたんじゃないかと思ったらしいがゼノヴィアがそれを否定した。


「やりたいことか……コカビエルは戦闘狂と聞いていたがそれに関係するのだろうか?」
「部長から聞いた事があるんですが、この町は悪魔にとって何か意味のある土地らしいんです。そこにコカビエルが来たという事は悪魔も巻き込もうとしているのでしょうか?」


 小猫ちゃんの話ではこの駒王町は悪魔にとって何か意味のある場所らしい、だとしたら奴は町を破壊して悪魔に喧嘩を売るつもりなのか?そして天使側も巻き込んで再び戦争をおっぱじめようとしているんじゃないか?


「何か情報でもあればいいんだがな……そういえばこの町に入ったエクソシストっていうのとは連絡は取れないのか?」
「駄目だ、全員の通信機にアクセスしてみたが誰も応答しない。殺されたか無力化されて捕まっているかのどちらかだろう」
「そうか、エクソシストは殺されるか……ん?だったらいい考えがあるぞ」


 俺はコカビエルたちを誘い出すための作戦を思いついた。


「ゼノヴィア、お前たちが来ているそのローブはまだ替えはあるのか?」
「ああ、予備としていくつか持ってきているがそれがどうかしたのか?」
「奴らがエクソシスト、つまり教会の関係者に襲ってくるのを利用してやろうと思ってな」
「そうか、僕たちがエクソシストの恰好をして町中をうろつけば向こうから接触して来るかもしれないって事だね」


 祐斗の言う通り俺が考えた作戦はエクソシストに変装して向こうから接触してもらう事を待つという内容だ。


「しかしそう上手くいくものなのか?」
「ゼノヴィアとイリナはエクスカリバーを持っている、向こうの目的にエクスカリバーが関わっているのなら無視できないはずだ」
「なるほど、今までは敵にバレないように聖なる力を抑え込んでいたが逆にそれをエサにするという訳か。逆転の発想だな」
「よし、夜になったら行動を開始するぞ」


 俺たちは夜に作戦を決行することを決めて時間が立つのを待った。

 
 

 
後書き
 小猫です、エクソシストに変装した私たちは深夜の町中をうろつくことにしましたが果たして上手くいくのでしょうか?私としてはイッセー先輩とイリナさんが仲良くなったことが気になりますが今はそんなことを言っている場合じゃないですよね。
 次回第39話『因縁の再開!フリードと現れし元凶、コカビエル!』でお会いしましょうね、にゃん。 
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