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【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。

作者:炎の剣製
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0178話『十五夜と甘える卯月』

 
前書き
更新します。 

 





………今夜は十五夜である。
だから私は午前中に空母寮のみんなにも協力してもらって和作りの空母寮にお月見ができる場を作ってもらった。
みんなも見たいという事で意欲的に制作してくれたので場はかなりいいものになっている。
月見台を作って瑞穂の三方も借りてとの本場仕込みの作りだ。
月見団子は鳳翔さん等料理が得意なメンバーで作ってもらい、ちょうど秋刀魚漁でもあるので秋刀魚も豊漁を願ってお供え物として飾った。
ススキなどもしっかりと準備は完了しておりもういつでもできる状態であるから後は雨が降るか雲で隠れない事を願うばかりである。

「Admiral……今夜はなにが行われるのですか……?」

そこに話を聞きつけて海外組も空母寮へと足を運んできて代表してウォースパイトが私に内容を聞きに来たという流れである。
ちょうど海外組は全員その場にいたので説明するのはちょうどいいということで、

「今夜は日本でいう十五夜っていう日なんだよ」
「ジューゴヤ……?」
「あー……つまりみんなで月を見ながら海では豊漁、陸地では豊作などが成功するようにお祈りをする日なんだ。まぁうちでいえば艦隊運営がうまくいきますようにっていうのもありかな……?」
「まぁ! それは素晴らしい日ですね!」

それでウォースパイトが嬉しそうに手を合わせる。

「まぁ、表面的には日本の行事の一つなんだけど実質は月を肴に宴会をする感じかなぁ……? 酒飲み連中なんかはもう準備を始めているしな」
「なるほどな。中々面白い行事じゃないか」

ガングートがそれで腕を組みながら感心していた。

「それじゃ今日はお酒が飲めるんですね~? ポーラもっ、ぐえっ!?」
「ポーラは今は少し禁酒中でしょう……?」
「それはあんまりですから~。許してザラ姉様~」

ザラに襟を掴まれたポーラがそれで引きずられて行ってしまった。
まぁあの調子だと諦めないだろうからそのうちザラが脱走したポーラを探し始めるのも時間の問題だろうな。
それで海外組はそれぞれ仲のいい子たちとグループになってもっと詳しくお月見について話を聞いているという感じか。
海外交流もいいものだよな。
そんなこんなでそろそろ暗くなってきたところで空を見上げてみるとそこにはいい感じに満月が顔をのぞかせていた。
それを見て各場所から感嘆の声が聞こえてくる。
みんなも不安だったんだろうな。
雲で隠れてしまわないかと……。
そんな感じで私は月見台の前で月を眺めながら榛名と一緒にお月見を満喫していた。

《やはりお月見はいいものですね、提督……》
「そうだな。日々深海棲艦と戦う感じなんだから少しは癒しがないとみんなも持たないだろうしな。いい感じにリラックスできるだろう」
《そうですね》

そして少しの間周りでみんながわいわいと騒いでいるのを眺めているとふと私の隣に一人のウサギ……もとい卯月が座ってきた。

「司令官、お月見楽しんでいるぴょん?」
「ああ。月の下でみんなと一緒にお月見をしてふと隣を見ればウサギが一匹……これで楽しめなければ損だろうな」
「うーちゃんはウサギじゃないぴょん!……でも、今日は司令官のウサギになってもいいよ?」
「また素直だな今日は……」

それで私は卯月の頭を撫でてあげる。
そして少し気持ちのいい表情をする卯月。そのまま私の肩に項垂れかかってくる。
甘えたいのかな?

「司令官の手は暖かいぴょん……」
「そうか? この手は榛名の手でもあるんだけどな」
「そういうのじゃないぴょん。しっかりと榛名さんとは別の司令官の熱が伝わってくるぴょん……とっても暖かいぴょん」

それで私も卯月と一緒に和んでいる時にふと卯月の今の恰好を見て、

「ふふ……。卯月、そのTシャツ中々似合っているじゃないか」
「そうぴょん? やったぴょん」

卯月の今のシャツには大きくサンマの字が書かれていたのだ。

「あんまり睦月型のみんなは褒めてくれなかったけど司令官に褒められたからよかったぴょん」
「独創性があっていいじゃないか」
「わかってくれるぴょん!? いやー、頑張って作った甲斐があったっぴょん」

私から理解を得られてなおの事嬉しそうに笑う卯月。
そんな卯月の笑顔が私には少し眩しいと感じてしまった。
純粋な笑みっていいものだよな……。
周りではお酒におつまみにと結構騒いでいるけどこの場所だけは少し静かに感じられる。
みんなに混ざれないのも少し悲しいけど卯月がいるだけでもいいものだよな。

「あ、司令官。お団子食べていいぴょん?」
「一つだけな。みんなの分もあるんだから」
「わかったぴょん」

それで卯月はお団子を一つ摘んで美味しそうに食べていた。
と、そこに今まで別の場所で楽しんでいたのか赤城と加賀がやってきた。

「提督。それに卯月さんも楽しんでいますか?」
「ああ。赤城たちも楽しんでいるか……?」
「はい。もう飛龍さんや蒼龍さんが隼鷹さん達に酔いつぶされてしまいましたので私達も巻き込まれないようにこちらに来ました」
「まったく……せっかくのお月見なのにお酒で台無しにするなんてもったいない子たちね……」

加賀がそれで溜息を吐いていた。
とは言いつつも赤城の手には少しお酒が握られている。

「提督、少しだけなら大丈夫ですよね。一尺しますよ?」
「それじゃ頂こうかな」
「うーちゃんも飲みたいぴょん!」
「卯月はダメよ。すぐに酔ってしまうでしょう……?」
「司令官よりは飲めるぴょん!」
「まぁそう言うなら……」

それで加賀が私と卯月にお猪口を渡してきた。
そして赤城が少しだけ注いで私達は月を肴に一滴飲み干す。
少し染み渡る感覚を味わっているんだけど横では卯月が「うぇー、苦いぴょん……」と言っていた。
まぁ予想通りの反応だな。

「だから言ったでしょうに……ほら、お水を飲みなさい」
「ありがとぴょん」

それでお水を飲んで「ぷはぁ!」という感じのリアクションを取った卯月は、

「でも、やっぱりお月見はいいものだぴょん。司令官、来年もやろうぴょん!」
「そうだな。という訳で赤城に加賀。来年も空母寮を使わせてもらうぞ」
「はい、いつでもどうぞ。大人数入れるように出来ていますからまた人数が増えるでしょうけど歓迎ですよ。ね、加賀さん」
「ええ。来年にはまたどの程度の仲間が増えているのか楽しみね」
《榛名も楽しみです!》

来年か。また一つ外せない行事が出来たな。
ちなみに来年の十五夜は『9月24日』という事を忘れないようにしておかないとな。
それでみんなが寝静まるまで私達はお月見を楽しんだのであった。


 
 

 
後書き
来年は9月24日ですよ。忘れないようにしませんとね。
少し素直な卯月を書かせていただきました。
お月見と言ったら卯月でしょうという事で。



それではご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。 
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