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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Eipic26-C聖王のゆりかご攻略戦~Mothers And Daughter~

†††Sideなのは†††

プライソンとガンマっていうサイボーグの手によって洗脳されていたヴィヴィオは、リミッター解除によって手がつけられない程に強化されてしまった。

「破ッ!」

――撼天動地――

虹色の魔力が込められた拳を玉座の間に打ち付けたヴィヴィオを中心に、魔力が四方八方にジグザグと走った。ルシル君のメタトロンを思い起こすものだ。魔力の轍の側に居ないように離れたところで、魔力が勢いよく噴き上がって強力な防壁となった。

「っく・・・!」

噴き上がり時の衝撃波に体勢が僅かに崩れる。魔力の壁は私とフェイトちゃんを墜とせ、さらには私たちの攻撃を無効化できるだけの高濃度。加えてヴィヴィオの姿が捉えられない。“レイジングハート”の柄を強く握り直して、周囲に浮遊させてるブラスタービット4基で周囲警戒。

(ヴィヴィオ・・・)

今の“レイジングハート”は、すずかちゃんとスカラボの技術力の粋を結集したリミットブレイクモードのブラスターモードだ。自己ブーストを利用している機能で、私と“レイジングハート”に限界を超えた魔力出力を出させる。
本来の使い方は、前衛などの味方と連携して、後方からの支援射砲撃を主とする。すずかちゃん達の努力のおかげで負担は大きく減ったけど、それでも私の体やリンカーコア、“レイジングハート”への負荷は大きい。だから長時間、そして連続使用には不向きとも言える。

『フェイトちゃん!』

『ヴィヴィオはこっちでも確認できない! 気を付けて!』

前後左右を魔力壁で覆われていて、ヴィヴィオの姿や魔力反応に気配など、何も感じることが出来ない。なんて考えていたところで・・・

――天衣無縫――

右方数m先の壁を突っ切って来たのは、全身に魔力を纏って砲弾と化したヴィヴィオ。“レイジングハート”の意思で即座にビット4基がヴィヴィオに向いて、一斉に砲撃4発を発射。でもヴィヴィオを覆う魔力に全弾が掻き消された。

――アクセルフィン――

そして私は急上昇するけど、「速っ・・・!」ヴィヴィオの突進速度に明らかに負けてる。それでもタッチの差でヴィヴィオの頭上に到達することが出来た・・・んだけど、足元を通り過ぎた際の衝撃が凄まじくて「きゃああああ!」私は大きく吹き飛ばされて、「かはっ!」天井に背中から叩き付けられた。それとほぼ同時に魔力の壁が解除された。

「なのは!」

私の足元を通り過ぎた後、壁を蹴って方向転換したヴィヴィオの突進を避けきったばかりのフェイトちゃんに名前を呼ばれた。私は「けほっ、けほっ」咽ながらも宙で体勢を立て直して、“レイジングハート”とビットの先端を足を止めた直後のヴィヴィオに向ける。

「エクセリオンバスター・マルチレイド、シュート!」

砲撃5発を一斉発射すると、「金城鉄壁」そう発したヴィヴィオの全身を薄らと魔力が覆った。直後に着弾して、ヴィヴィオは大きな魔力爆発に呑み込まれた。呼吸を整えて、追撃の魔法をスタンバイ。フェイトちゃんも“バルディッシュ”のリミットブレイクモード、二剣一対形態の“ライオットザンバー・スティンガー”を手に、ヴィヴィオに警戒をしている。

「・・・さすがに、キツイかな・・・」

強力なAMFの中、攻撃がほぼ通らない相手、しかも私とフェイトちゃんにとって大切なヴィヴィオ。心も体も想像以上の負担で軋んでる。しかも戦闘開始からすでに5分は経過してる。早く止めないと、ヴィヴィオの心も体も壊れてしまう。

「はあああああああああッ!」

魔力爆発を魔力放出で吹き飛ばしたヴィヴィオ。そして即座にフェイトちゃんへ向かって突撃して行く。私は「アクセルシューター!」を16発とヴィヴィオへ撃ち込んで、その軌道を阻害させる。

(ヴィヴィオの防御力は桁違いに高い。だけどそれに驕ることなく回避もキッチリやってくる。それが厄介でありながら、行動制限攻撃が通用するのは助かる)

ジグザグに走ってシューターを避けるヴィヴィオへ「はあああああ!」フェイトちゃんは仕掛ける。フェイトちゃんが右手の“スティンガー”で斬り掛かると、ヴィヴィオは左拳でこれを迎撃。電気変換資質による高魔力を圧縮して形成された魔力刃にも拘らず、ヴィヴィオの拳は傷を負うことなく魔力刃を殴り返した。

「やああああッ!」

フェイトちゃんはその勢いを利用して時計回りに旋回して、左の“スティンガー”での斬撃を繰り出した。ヴィヴィオは伸ばし切っていた左腕を戻しつつしゃがみ込んで、その斬撃を躱した。即座に立ち上がりつつ、フェイトちゃんの脇腹に右拳を打ち込もうとしたから・・・

――アクセルシューター――

「シューット!」

右腕に目掛けてシューター1発を高速発射。ガキン!とおよそ人に当たって出るようなものじゃない音が玉座の間に響いて、ヴィヴィオの右腕を下方に弾いた。それでも間髪入れずに左拳を繰り出す。でもすでに体の正面をヴィヴィオに正したフェイトちゃんは、両手の“スティンガー”を構えて盾として拳を防いだ。

「っ・・・!」

「ぐっ・・・!」

フェイトちゃんは殴り飛ばされるより先にヴィヴィオのお腹に右の踏み蹴りを打ち込んで、2人揃って後方に吹き飛んだ。私は“レイジングハート”とビットを着地前のヴィヴィオへ向けて、3発とカートリッジロードして魔力チャージ。

――エクセリオンバスター・マルチレイド――

「シューット!」

「クロス・プラズマスマッシャー・・・、ファイアァァァーーーッ!」

飛行魔法で宙に留まったフェイトちゃんは、“スティンガー”二剣の剣先に展開した環状魔法陣を砲門として、雷撃砲2発をヴィヴィオへと発射した。私とフェイトちゃんの計7発の砲撃が、床に片足を付けたばかりのヴィヴィオに着弾。玉座の間の3分の1程の大きさの魔力爆発が起きた。爆風に煽られるけど、空中姿勢を整えながら消費しきったマガジンを取り外して、新品のマガジンを装着しようとした時・・・

――電光石火――

無傷なままのヴィヴィオが爆煙を突破して来て、フェイトちゃんへ改めて突進した。カウンターとしての両手の“スティンガー”による十字斬撃を繰り出すフェイトちゃんに対して、ヴィヴィオは何もせずに突っ込んで行く。そして斬撃を両肩にまともに受けたヴィヴィオだったけど、大したダメージは入ってないようで・・・

――旭日昇天――

右手の平に展開していた魔力スフィアごと「がはっ・・・!」フェイトちゃんのお腹に打ち込んだ。防御も何も無い中での一撃に「フェイトちゃん!」は吹き飛ばされて、そのまま壁に叩き付けられた。ヴィヴィオが私を見上げて両膝を曲げたのが判ったから、急いでマガジンを装着してカートリッジも3発とロード。そしてヴィヴィオは私に向かって跳んだのを見計らって、ビット4基を利用しての「レストリクトロック!」を仕掛ける。

「・・・!」

ヴィヴィオの周囲をぐるりと回るビット4基の尾から伸びるバインドにヴィヴィオは拘束された。その間に『フェイトちゃん!』に念話を通すと、『大丈夫・・・、まだ墜ちてないよ・・・』苦しそうな声でそう返答してくれた。

『良かった。少し休んでて、フェイトちゃん。その間は私が何とかして、ヴィヴィオを抑えるから』

『私は大丈夫だよ、なのは。すぐに・・・ぅあ・・・』

壁にめり込んでたフェイトちゃんが床に降り立ったけど、両膝を折って床に四つん這いになった。やっぱりダメージが大きいんだ。右手に持ってた“スティンガー”を手放して、ヴィヴィオの一撃を受けたお腹を押さえてる。

「はああああああああッ!」

ヴィヴィオがバインドを力尽くで弾き飛ばして床に落下、そしてトンッと降り立った。その視線が行くのは立ち上り途中のフェイトちゃん。体の正面もフェイトちゃんに向けたヴィヴィオに、私は急降下して、「させない!」フェイトちゃんとヴィヴィオの間に降り立つ。

「ヴィヴィオ、止まって・・・お願い」

――勇猛果敢――

私の言葉に一切反応せずに両拳に魔力を付加したうえで、私たちのところへ歩いて来る。

「クリスタルケージ!」

ビット1基をヴィヴィオの頭上に配置して、四角錐型の結界を展開させてヴィヴィオを閉じ込める。ヴィヴィオが内面を何度も殴るけど、結界は割られることなくヴィヴィオの攻撃を耐えてくれた。その間に「フェイトちゃん!」の元に駆け寄って、立ち上がろうとしてたフェイトちゃんに肩を貸したところで・・・

――破邪顕正――

「破ッ!」

ヴィヴィオがとうとう結界を破壊して、そのままの勢いでこっちに突っ込んで来た。両拳にはこれまで以上の高濃度な魔力が付加されてる。あんなもので殴られたら即撃墜でもおかしくない。

≪Protection EX≫

“レイジングハート”が展開してくれたバリアにヴィヴィオが左拳を打ち込む。初撃は防げた。でも続けざまに放たれた右拳の一打でガシャァン!と砕かれた。フェイトちゃんの肩を支えたまま上に逃げようとしたけど、「あっ・・・!」ヴィヴィオは私とフェイトちゃんの足首をガシッと掴んだ。そして私たちを「あっぐぅぅ・・・!」床に叩きつけた後・・・

――狂瀾怒濤――

ヴィヴィオは床を踏みつけた。背中越しに伝わる衝撃と床が破壊される音、そして強大な魔力。次の瞬間、私たちは強大な魔力流に呑み込まれた。

・―・―・―・―・―・

プライソンのアジト、その居住区画の最奥。そこは“スキュラ”シリーズと呼ばれる特別製のサイボーグ姉妹の1機、三女ガンマの私室がある。円形状の部屋の中央に卵型の椅子が宙に浮いており、窪みには1人の20歳ほどの女性・ガンマが座っている。身長は160cmほど。深紅の前髪と後ろ髪は共に30cmと長く、顔を完全に覆い隠している。

「ウーノとクアットロめ! それだけじゃない、ルシリオン・・・! アレのステガノグラフィア! 波状攻撃が鬱陶しい!」

ガンマは今、アジトのコンピュータ防衛に手一杯になっていた。ガンマの役割は各戦力の監視・運用、さらにはアジト防衛と、たった1機でプライソン一派の生命線を担っている。そして今現在、その役割が丸ごと失われてしまうような攻撃を受けていた。

「どちらかに守りを回せば、その間にもう片方が一気に攻め込んで来る・・・! しかも局や教会からも攻撃が始まるなんて・・・!」

今は亡きジェイル・スカリエッティの娘・シスターズの長女ウーノと四女クアットロ、次元世界屈指の電子戦を行えるルシリオンの電子戦術式ステガノグラフィア、さらには管理局と聖王教会からのアジトのメイン・サブのコンピュータへの同時波状クラッキング攻撃。いくら電子戦特化として開発されたガンマでも、完全に迎撃するのは難しいようだ。

「警報!? 今度は一体なに!」

室内に轟く警報音。椅子の内壁に複数のモニターが展開され、アジト内が次々と制圧されて行く様が映し出される。そして警報の原因は、クラリスを筆頭とする教会騎士隊が居住区にまで侵入したことによるものだ。

「このままじゃ・・・。(ウチのISを使って迎撃する?・・・ダメ。それだと研究所の防壁を抜かれて、プリンツェッスィンどころか、シコラクスやスキタリスの洗脳までもが解除される。父さんの合図が来るまではどうにかして・・・)・・・こうなったら、ロールアウト前だけど・・・」

モニターの映像が切り替わり、ガンマと同じ“スキュラ”のアルファ達のスペアボディ、その未完成品が映し出された。衣類どころか人工スキンや義眼の張られてない、鋼色に鈍く光る人型骨格が並列して佇んでいる。

「複製したスキルやAIも搭載していないけど、LAS以上の戦闘行為は十分できる。連中の足止めくらいは・・・!」

ガンマが手元に展開しているモニター型キーボードのキーを打ち、スペアボディの強制起動を行う。するとモニターに映るスペアボディに繋がっていたケーブルが外れ、眼窩内に収められている眼球レンズにポッと光が灯る。そしてガシャガシャと音を立てて歩き出し、ガンマの設定したポイントへ向かい始める。

『やったー!\(^_^)/』

『ようやく防壁を抜いてやったよ!O(≧▽≦)O』

『貴女がガンマね! やっとその顔を確認!┗(`皿´)┛』

『8年前の借りは、今日ここで返すからね!(^q^((〇≡(・ω・ )』

『ボク達ステガノグラフィアが不甲斐なかった所為で、ゼスト隊長、メガーヌ・クイント両准尉、それに他の隊員さん達、いろんな人たちにご迷惑をお掛けしたヾ(。>﹏<。)ノ』

椅子の内面に展開されていたモニター全てに、3頭身の小さな天使のような女の子が5人と映り込む。ステガノグラフィアのインターフェースであるアメナディエル、ソレウイエル、マカリエル、メナディエル、ライシエルだ。

『ようやくその面を拝見させてもらいました~♪』

『ガンマ。あなた達の計画は、亡き父ドクター・ジェイルの名の下に・・・ここで終わりよ』

続けてウーノとクアットロの映るモニターも展開された。前髪に隠されたガンマの目が、表情が、怒り一色に変わる。そしてガンマが「おのれぇぇぇーーーッ!」と叫んだ後、研究所の電脳防壁が全て突破され、その管理権限がガンマの手を離れた。

「まだ! まだ取り返せないことは・・・!」

なおも諦めないガンマがキーボードのキーを打とうとした時、「いぎっ!?」奇声を発した。右腕に強烈な痛みを感じたガンマはそちらに目をやる。視界に入ったのは右手の甲と前腕に大きな穴が開き、バチバチと火花を散らしている様。

「っ・・・!?」

「本当なら殺してやりたいところだけど、一応はあなた達スキュラと私たちは同じ男の手によって生み出された姉妹だと考えられるし。・・・だから見逃してあげるわ、正解でも不正解でもね」

「ドゥーエ・・・!? 一体どうや――っ! クアットロのシルバーカーテンによるステルスぅ・・・!」

ガンマの表情が驚愕に染まる。ドゥーエが何も無かった空間から突如として現れたからだ。ガンマの言う通り、クアットロの幻影を操り、対象の知覚やレーダー・電子システムなどを欺けくことの出来るスキル・シルバーカーテンによって、ドゥーエはステルス状態となり、クラリス達と共にアジト内へ突入した直後に単独行動を開始。迎撃戦力をスルーしつつ、ようやくガンマの部屋へと侵入した、というわけだ。

「フリーズ。ノーヴェ達・・・妹たちは返してもらうわ」

そして今、管理権限を奪還するための作業を始めようとしたガンマを止めるべく、ドゥーエは固有武装――親指と人差し指と中指に伸縮自在の爪を装着したグローブ・“ピアッシングネイル”、その人差し指と中指の爪でガンマの手の甲と前腕を貫いたのだ。

「ウチがこんな失態を犯すなんて・・・!」

「ウーノやクアットロ、それにルシルの攻撃に焦り過ぎたわね」

『ご愁傷様ですぅ~♪』

『ノーヴェ達やクイント・メガーヌ両准尉、それにヴィヴィオの洗脳プログラムを全破棄・・・完了。妹たちは確かに返してもらったわ』

『ガジェットおよびLAS、それにスペアボディの管制システムも全て乗っ取ってやりました~♪』

自分の存在意義を全て消されてしまったことで、「こんな・・・」とガンマは力なく項垂れる。ドゥーエも“ピアッシングネイル”の爪を彼女の手の甲と前腕から抜いた。直後に、「聖王教会騎士団です!」クラリス率いる翠梔子騎士隊グリューン・ガルデーニエの第1班、加えて査察官ヴェロッサも、ガンマ私室へと入って来た。

「ドゥーエ一尉。ご無事何よりですよ」

「ええ、アコース査察官」

ヴェロッサにそう返しながらガンマの両腕に手錠をはめようとしたドゥーエ。だがここで、ガンマは「・・・せめて最後に、お前たちの首を・・・獲る」そう漏らした。足元に様々な色が混じり合ったテンプレートを展開。ドゥーエ達が「やめなさい!」と制止するが・・・

――ISクローニングクイーン・ライドインパルスTypeガンマ――

ガンマはトーレのスキルを発動。手首と太ももと足首にエネルギー翼を展開し、「うああああッ!」咆哮を上げて、両手首のエネルギー翼を周囲のドゥーエ達に振るう。ドゥーエはヴェロッサに押し倒されたことで直撃は免れ、クラリスは方天戟型デバイス・“シュトルムシュターク”を盾とすることで防御。

「ウチはスキュラシリーズ・ガンマ! 当研究所の最後の防衛者! 侵入者は・・・排除する!」

†††Sideなのは†††

「うあっ!」

ヴィヴィオの強烈な蹴りを受けた私はまた、玉座の魔の壁に叩き付けられる。そんな私に追撃を試みようとしたヴィヴィオだけど、「ヴィヴィオ!」フェイトちゃんが立ちはだかってくれた。

――光芒一閃――

ヴィヴィオは貫手にした両手に虹色の魔力刃を展開。フェイトちゃんは“バルディッシュ”の最大火力を誇る大剣形態、“バルディッシュ・ライオットザンバー”による振り降ろしで迎撃。ヴィヴィオは両手の魔力刃を頭上でクロスすることでフェイトちゃんの一撃を受け止めるけど・・・

「ぐっ・・・!」

足元が陥没するほどの衝撃をその身に受けた。壁から脱出した私は即座にビット4基を使って、ヴィヴィオに再度バインドを仕掛ける。フェイトちゃんは大きく後退して“ライオットザンバー”を上段に構えた。私も“レイジングハート”とビット4基をヴィヴィオへ向ける。

「あああああああああッ!!」

――臥薪嘗胆――

ヴィヴィオが吼えると、「っ!」さらに魔力量が増加した。肌に感じる圧倒的過ぎる魔力に、私とフェイトちゃんはデバイスを下げかけた。あまりの高濃度な魔力の防御膜。その防御膜を突破するための術はある。ルシル君から渡されたお手製カートリッジ。でもそれで防御を抜いた後のダメージがヴィヴィオにどれだけの負担になるかが判らない。攻撃に必要以上の魔力を回して、それでヴィヴィオの身に何かあった・・・なんて。

(一体どうすれば・・・)

そう考えてた時、「なのは!」って名前を呼ばれた。ハッとして、「なに・・・?」ヴィヴィオの様子がおかしい事に気が付いた。

「・・・??」

暴風のような魔力流が急速に収束して行って、S+ランク程度にまで弱まった。ヴィヴィオ自身も何が起きてるのか判らないみたいで、自分の体を見回してる。

≪駆動炉に異常発生、駆動炉に異常発生≫

玉座の間にベルカ語でそんなアナウンスが流れた。ということは「シスター達が・・・!」やってくれたんだ。異変はそれだけじゃなかった。ヴィヴィオが「うあ・・・あああ!」頭を抱えて苦しみ出した。

「「ヴィヴィオ!」」

「っ!?・・・なのはママ・・・フェイトママ・・・?」

ヴィヴィオの口から私たちの名前が出た。これってやっぱり洗脳が解けてるってこと・・・だよね。私たちが「ヴィヴィオ!」の元へ駆け寄ろうとしたら・・・

「ダメ・・・ダメ、来ないで!」

迎撃としての拳による打撃技を繰り出してきた。さっきまでの容赦無用の攻撃じゃないから、後ろに飛び退くことで容易く回避することが出来た。

「来ないで、ママ・・・! わたしの体なのに・・・止まらないの・・・!」

「洗脳が解かれただけじゃダメなの・・・?」

「おそらく、ヴィヴィオの体を急成長させた何か――たぶんレリックが関係してると思う」

ヴィヴィオはゆりかごを起動・運用する鍵の聖王として、そして今までのように本人が玉座を守る戦力・人造魔導師として、プライソンによって生み出された。ならフェイトちゃんの言うように“レリック”をどうにかしないと、ヴィヴィオを取り戻せない・・・ということに。

「直接プライソンを問い質したいところだけど、今はヴィヴィオを最優先しないと」

「うんっ! なのはママとフェイトママがちゃんと、ヴィヴィオを助けるから!」

「待っててね、ヴィヴィオ!」

そう声を掛けるとヴィヴィオは「もう・・・いいの・・・」暗い表情をして、沈んだ声色でそう漏らした。まさかそんな返しが来るなんて思わなかったから、「え・・・?」私たちは訊き返した。

「夢・・・、夢を見たの・・・。それで思い出したの・・・。わたし、わたしは普通の子じゃないって・・・。ずっと大昔の人のクローンなんだって」

「「っ!」」

ヴィヴィオやフォルセティには絶対に漏れないようにしていた、過去の人物のクローンという話。でも私たちがいくらタブーとしていても、遺伝子に組み込まれた記憶を見せないようにすることだけは不可能だ・・・。

「しかもわたしが生み出された理由は、この艦を動かして、みんなの居る世界を破壊して、玉座に侵入してきた人たちを倒すだけの、生きてる兵器として在ること・・・」

ヴィヴィオの瞳から大粒の涙が溢れ出て来て、頬を次々と伝ってく。私とフェイトちゃんで、そのくだらない役割からヴィヴィオを助けてあげたい。だから「違う、そうじゃない」って、ヴィヴィオの言葉を否定する。

「うん。ヴィヴィオは兵器なんかじゃない」

「違わない・・・! 違わないよ! わたしが兵器だからこの艦は今動いていて、多くの人に迷惑を掛けてる! さっきだって、ぼんやりだけど・・・なのはママとフェイトママを傷つけてた! あんなに酷い事・・・いっぱいしたんだよ! 操られてたなんて・・・そんなの言い訳に・・・ならない・・・!」

そう言ってヴィヴィオは自分の両手を見た。洗脳されてた間の記憶は薄ら残っていたようで、私たちに攻撃を加えたことを悔やんでる。けどそれはやっぱりヴィヴィの所為なんかじゃない。

「ママ達だって本当は、わたしの本当のママじゃない・・・! パパもママもいない、機械の中で生まれたの・・・! こんなの人じゃない・・・! 本当はこんな悲しいとか、苦しいとか、全部が作り物で、偽者で、やっぱり兵器なんだよ!」

ヴィヴィオのその言葉にフェイトちゃんが1歩と足を踏み出して、「そんなことない」そうキッパリと告げた。フェイトちゃんの前進にヴィヴィオが身構える。きっとあれも意思とは別に、勝手に構えを取っちゃうんだ。私も1歩と足を踏み出してフェイトちゃんの隣に並ぶ。

「私もね。ヴィヴィオと同じ、機械の中で生まれたんだよ」

「え・・・っ!?」

「私もクローンなんだよ、ヴィヴィオ。アリシア・・・お姉ちゃんの遺伝子を使って、リンディ母さんじゃない、私の本当の母さんの手によって生み出されたの。ねえ、ヴィヴィオ。私、人じゃないかな・・・?」

「あぅ・・・」

ヴィヴィオが返答に困る。フェイトちゃんと過ごした時間を考えれば、肯定なんて出来るわけがない。フェイトちゃんは両腕を広げて、「ヴィヴィオ。生まれ方なんて関係ないんだよ」そう言って微笑んだ。

「そうやって温かな涙を流して、感情を吐露してるヴィヴィオは・・・偽者でも作り物でも、兵器なんかでもない」

「うん。甘えん坊ですぐ泣くのも、転んで1人じゃ起き上がれないのも、それなのに結構やんちゃなのも、フォルセティと一緒だと無茶もやっちゃうのも・・・。それ以上に優しいのも・・・。そんなヴィヴィオがとても大事で・・・大好き!」

「なのは・・・ママ!」

「ヴィヴィオ。私となのはは、確かにヴィヴィオの本当のママじゃないよ・・・。でも私たちはヴィヴィオが大好きで、だからヴィヴィオのママだって胸を張って言いたい!」

「フェイト・・・ママ!」

私とフェイトちゃんは一度顔を見合わせて頷き合った後、改めて泣いてるヴィヴィオを見詰めて、「ヴィヴィオの今の、本当の気持ちを教えて」そう声を掛ける。涙に濡れるヴィヴィオの瞳が揺らいだ。

「本当は・・・ヴィヴィオ、本当は・・・こんなのいやだ・・・! なのはママとフェイトママとずっと一緒に居たいよ・・・! だってわたしも・・・なのはママとフェイトママが大好き・・・! 大好きだよぉ・・・! お願い、ヴィヴィオを止めて・・・、ママ、助けて・・・」

「「うんっ、助けるよ!」」

ヴィヴィオの本心は聞けた。ならあとは、ヴィヴィオをきっちり救い出して、大手を振って六課のみんなの元へ帰るだけ。フェイトちゃんが「私が足止めする。その間に・・・」そう提案して来てくれた。

「うん。魔力ダメージでのノックダウンで、ヴィヴィオを止める。魔力チャージ完了までお願い、フェイトちゃん」

「うんっ! ヴィヴィオ。なのはママからちょっとキツイお仕置きがあるけど、我慢できる・・・?」

「必ず助けるから!」

「うん、大丈夫・・・!」

私は宙へと上がって集束砲スターライトブレイカー発動の為の魔力チャージを開始。その間にフェイトちゃんが、自分の意思に反してオートで交戦に入るヴィヴィオを押さえてくれる。フェイトちゃんの今の防護服はソニックフォームの発展型の真・ソニックフォーム。これまでのソニックフォーム以上に魔力を速度に全振りしたことで防御力がほぼ無い、超高機動特化形態だ。短距離限定の速度なら、ルシル君の空戦形態以上だし。

「ヴィヴィオ、もう少しだよ!」

「うん・・・! あ、ダメ・・・魔法が・・・!」

――セイクリッドクラスター――

ヴィヴィオが発動したのは、私の魔法のセイクリッドクラスターだった。1基の魔力スフィアを、「フェイトちゃん!」へと放った。スフィアがフェイトちゃんの側で10発の小型スフィアに分裂。ソレらがさらに小さな魔力弾となって、フェイトちゃんを完全包囲・・・するより早く、フェイトちゃんはその効果範囲から離脱した。そうだよね、今のフェイトちゃんを止められるのは空間攻撃だけ。それからフェイトちゃんとヴィヴィオは衝突を繰り返した。私の集束を止めようとヴィヴィオが向かおうとするけど、フェイトちゃんがその機動力を以ってヴィヴィオを食い止めてくれる。

「フェイトちゃん! スタンバイ完了!」

だから私は無事に集束を終えることが出来た。フェイトちゃんは防護服をインパルスフォームへ換装して、機動力に回してた魔力を防御にも回した。“バルディッシュ”もライオットザンバーからザンバーフォームになって、カートリッジを全弾ロード。

「うんっ! チェーンバインド!」

そしてヴィヴィオを10本以上のバインドで拘束した後、フェイトちゃんが私の足元に避難。

「ヴィヴィオ。行くよ」

「うん・・・!」

フェイトちゃんのバインドが次々と千切れ出す。ヴィヴィオが自由を取り戻すその前に・・・

「スターライトぉぉ・・・ブレイカァァァァーーーーーーッッ!!」

――スターライトブレイカーEX-Fourth Burst――

“レイジングハート”からのスターライトブレイカーEXが1発、ビット4基からのフォースバースト4発、計5発による多方向多弾集束砲撃がヴィヴィオに直撃した。激しい魔力爆発の中、ヴィヴィオの胸から“レリック”が浮かび上がって来たのが見えた。そして私の一撃に耐えきれなかったのが砕け散って、消滅した。一際強い魔力爆発が起きてヴィヴィオの姿を見失うけど、その光が治まると「ヴィヴィオ!」の姿をちゃんと確認。床に出来たクレーターの底、そこで元の小さな体に戻ったヴィヴィオが倒れていた。

「・・・ダメ・・・来ないで・・・!」

フェイトちゃんと一緒に駆け寄ろうとした時、ヴィヴィオからそんなことを言われたからハタと足を止める。

「ヴィヴィオ・・・」

「どうして・・・?」

「・・・約束・・・したから・・・。今度は・・・自分の力で、立つって・・・」

「「っ!」」

それはある訓練の終了後、ヴィヴィオが私たちの元に走って来ていたところで転んだ。その時に約束したんだ、今度は1人の力で立ってみようね・・・って。ヴィヴィオが今、その約束の通り自力で立とうとしてる。あの時のフェイトちゃんは、半泣きになってたヴィヴィオに我慢できずに手助けしたけど、今のフェイトちゃんはギュッと唇を噛んで、手助けしないように必死に耐えてる。

「「ヴィヴィオ・・・!」」

フラフラながらもヴィヴィオは自力でしっかりと立ち上って見せた。その瞬間、私たちは駆け出して「ヴィヴィオ!」を力いっぱい抱きしめた。

「ただいま・・・なのはママ、フェイトママ」

「「おかえり!」」
 
 

 
後書き
とうとう、ここまでやって来られました~。
前作ではルシルが、そして今作ではフェイトが、なのはのパートナーとして対ヴィヴィオ戦をやり遂げました。長かったな~、いやホント。
さて。次話から最終決戦パートです。まずは、最終兵器アグレアスの起動、プライソンの真の目的、スキュラシリーズとの決着。これで1話。
2話目で対プライソン戦、3話目でラスボス・レーゼフェア戦・・・という流れです。プライソン戦役編の後は、どうしましょうかね~。軽く日常編を挟んでから、エピソードⅤに入るかと思います。

 
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