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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Eipic12君は誰の子? あの人の子~Parent & Children~

 
前書き
もう今話は酷い、酷過ぎる。書き終えた後、私は一体何をやっているんだろう?と本気で悩んだくらいです。酷評の嵐が目に浮かぶ。 

 
†††Sideアリサ†††

ルシルと全くと言っていいほど似てる男の子フォルセティ。あたしも、ギンガとは別行動(トレーラー事故の件に回ってもらった)でフォルセティの捜索に参加してた。地下水路であの子を発見して、その姿をきっちりと確認した際の衝撃と言ったら。ルシルをそのまんま小さくしたかのような感じですごいビックリしたわよ。
そんなフォルセティは、六課から貰ってた生命反応消失ポイントから結構離れた水路の一番奥で蹲ってた。発見してから地上へ運び出すまでは意識はある程度残っていた。その際の聴取で、名前がフォルセティ、ファミリーネームは不明、母親も不明、ただ・・・

――ぼく、じゃあお父さんのお名前は判るかな?――

――パパの名前は、ルシリオン・・・――

父親の名前が、あたし達の知ってる親友のものだということが判明した。その返答を最後にフォルセティは意識を失った。すぐに近くの聖王医療院へ搬送。精密検査をしている最中に、子供を保護したことを六課へ報告しようとしたんだけど・・・

――ダメ。事前に報告したらルシルに言い訳を考える暇を与えるじゃん――

――言い訳ってアンタ・・・。ルシルが本当に父親だと思うわけ? そりゃ確かにそっくりだけどさ――

――解る、わたしには解る。遺伝子レベルでルシルと似てるってことが――

――あたしもあの子を見りゃ解るわよ。ソックリってレベルじゃないものね、あの子。だからさ・・・――

――だからルシルに逢って直接問い質す――

――人の話しを少しは聞きなさいよ。はぁ。そうすればいいわ。絶対に怒鳴られるから――

そっからのシャルは怒りを内に込めたまま、フォルセティに合う子供服を用意したりと淡々と仕事をこなした。そしてあの子の検査結果は異常無し。衰弱と空腹が原因で意識が飛んだことが判って、そう時間を置かずにあの子は目を覚ました。点滴と温かいご飯ですぐに元気を取り戻した。

――フォルセティ。あなたのお父さん、ルシリオンのところに行こうか? ヴィヴィオも一緒だって言うし――

――いく!――

ルシルと、先に保護されてた女の子であるヴィヴィオが居るって知って、さらにそこに行こうってシャルから言われたフォルセティは、それはもう可愛い!って言ってしまうくらいに満面の笑顔で大きく手を挙げた。うん、あれはしょうがないわよ。あたし達が知ってるルシルで一番若い頃の年齢って8~9歳。でもフォルセティはそれより幼くて、もう完全に女の子にしか見えない。素で、可愛い!って言っちゃうわよ。

「――で? 釈明を聞かせてもらえるんでしょ?」

そして今、あたしとシャルは六課の部隊長室に居る。フォルセティはなのはやヴィヴィオ、それにフォワード4人と一緒に別室へ。あたしの視界にはルシルを睨むシャル、そんな2人を堂々とした面持ちで見守るはやて、そしてヴィータとシグナムとリイン。

(おー、はやてはルシルのことを信じ切ってるって顔ね。つうか、シャルもルシルのことを信じなきゃいけない立場でしょうに。ホント、ルシル関連の恋愛話が絡むと暴走するんだから)

もう溜息しか出ない。そんな中で、「ああ。まず大前提として、俺は無実だ」ルシルが釈明を始めたんだけど。口調が調査官のものじゃなくて素なのはツッコまない方が良いのよね、きっと・・・。

「たとえば俺が女性と子供を作ったとする。そして子供が生まれました。はい、ここでシャル!」

必死にその画を想像しないようにルシルの話を聴いてると、突然シャルを名指しで指名した。シャルは「あ、はい」さっきまでの怒りがどこへ行ったのか、丁寧に応じた。

「子供とは、父と母の遺伝子両方を持っている。ではその外見がどうなるか答えなさい」

「え? あー・・・あ!」

思案顔だったシャルが何かしらの答えに行きついたのか声を上げて、「ごめんなさい」ルシルに向かって深々と頭を下げた。シャルが信じられない程に今さら行き着いた答えは、なのは達も絶対に行き着いてるはず。フォルセティを見た瞬間、普通に考えればおかしいことに気付くもの。それを伝えようにもシャルはあたしの話を聴こうともしなかったし。

「これが俺の身の潔白を証明する魔法の言葉だ。・・・親のどちらかと双子かと見間違うほどの子供は絶対に生まれない。そこでだ。俺とフォルセティ、違うところはあったか?」

「・・・ない、です」

そう、これが答え。両親のどちらか片方とすごく似てる子も、広い世の中だしひょっとしたら何人かは居るかも知れない。だけど必ずもう片方の親の何かしらを受け継いでるはず。目や鼻や耳の形とかさ。でもフォルセティは、どう見てもルシルの特徴しか受け継いでいないのよね。目も若干ツリ目だし。あとパッと見が女の子だし。

「相手の女性の特徴が無いんだよ、フォルセティには。だから俺は、あの子やヴィヴィオの正体についてある推測を立てた」

ルシルがそこまで言ったところで、PiPiPi♪と通信が入ったことを知らせるコール音が鳴った。それはあたしへの通信で、「ちょっとごめん」一言断りを入れてからコールに応じる。

『お疲れ様です、アリサさん。ギンガです。今、お時間よろしいでしょうか?』

モニターに映るのは、あたしの直属の部下であり友人でもあるギンガだった。あたしも「お疲れ様、ギンガ」労いの言葉を返す。続けてはやて達が、昨日の戦闘に協力してくれたギンガに感謝や労いの言葉を掛けてった。ギンガも嬉しそうに応じたし。

「それでギンガ。そっちで何かあった?」

『あ、はい。昨日のトレーラー事故の調査について、新しい発見がありましたのでその報告を』

フォルセティとヴィヴィオ、それと“レリック”ケースを運んでいたトレーラーの爆発事故の調査についての続報だ。ギンガの話だと、損傷の激しかったコンテナ内部からある機械部品が見つかった、と鑑識班から報告を受けたとのことだった。

『こちらで再現してみたところ、どうやら生体ポッドのようです。5~6歳の子供が収まるほどの大きさの物が2基ですね』

新たに展開されたモニターに、再現された件の生体ポッドが映し出された。あたしはポッドを見ても特に思うことはなかったんだけど、「コレ・・・」フェイトとはやてが反応した。リインが「知ってるですか、はやてちゃん、フェイトさん?」そう訊ねると・・・

「うん。前に事件捜査の時に少しだけ・・・」

「私は資料を見ただけやけどな。・・・人造魔導師計画の素体培養器、やね」

『はい。私も同じ意見です。アリサさんが戻って来る以前に一度だけ見たことがあります』

2人やギンガがそう話してくれた。プライソン製のサイボーグの死体。ソイツが運転してたトレーラー事故。コンテナから逃げたヴィヴィオとフォルセティ。破壊された素体培養機。もうこれだけであの子たちの正体は確実なものへとなっていく。

「そう。ありがとう、ギンガ。あたしもすぐに戻るから、資料纏めておいて」

『了解です』

ギンガとの通信が切れ、部隊長室はシーンと静まり返った。フォルセティはおそらくルシルの遺伝子データを用いて生み出されたクローンだ。でもヴィヴィオは誰の?ってなる。そんな中で最初に口を開いたのはルシルだった。

「・・・シャル。聖王教会から盗まれたという2つの聖遺物・・・アレ、見つかったのか?」

シャルはハッとした後、「あなたへの怒りでそこまで気が回らなかった。反省・・・」ガックリと肩を落としてしょんぼり。“闇の書”事件も終盤に差し掛かった頃だったかしら。そんな話をシャルから聞いた気がする。聖遺物が教会本部から盗まれたって。・・・って、まさか・・・。

『そっか。ルミナちゃんが言ってたのはそういうことだったんだ・・・』

ここでなのはから念話が入る。シャルが「どういうこと?」って訊き返すと、盗まれた聖骸布の持ち主だったヴィヴィオの身体的特徴が聖王女オリヴィエと一致してるんだけど、それが偶然の一致かも知れない。だけど偶然じゃないかも知れない。ルミナからそう聞かされたって。それはギンガからの報告で、後者だってことがほぼ確定した。

「え、ちょっと待って、なんか、その話だとまるで・・・」

「うん。ルミナちゃんが言いたかった事ってつまり・・・」

「プライソンが関わってる以上、ヴィヴィオとフォルセティは・・・」

「記憶転写型クローニング技術――プロジェクトF.A.T.E、もしくはただのクローン技術によって生み出された、オリヴィエとオーディンのクローン・・・」

フェイトがそう言った途端、「やっぱりそういう話!? 」シャルが驚いてソファから立ち上がった。

「あんだ? お前、ヴィヴィオもオリヴィエと同じ紅と翠の虹彩異色持ちだって聞いてなかったのか?」

「聞いてない! ルミナめ、そんな大事な報告をわたしにしないってどういうこと!? あとで絶対にシメる!」

結構昔にシャルの家に泊まった際、数いる聖王の中でも特にオリヴィエって王女が好きだって聞かされたしね。たぶんそれは、あたし達以上に付き合いの長いルミナも知ってるはず。ヴィヴィオがそんなオリヴィエのクローンかも知れないって話を、なのはの話を聴く限りルミナはすぐに察していたようだし。だったらシャルに一言あっても良いかもね。

「そやけどシャルちゃん。さっきヴィヴィオと顔を合わせたやんね・・・?」

「・・・ルシルしか見てなかった・・・、不覚!」

ソファに座り直したシャルがテーブルに突っ伏した。そして「あとで挨拶しておかないと。オリヴィエ様のクローン、現代に蘇った聖王陛下」なんてブツブツ言い始める始末。今日のシャルはホント忙しいわね。頭の血管が切れないか心配だわ。

「ともあれ、ヴィヴィオとフォルセティはクローンだ、と考えるのが妥当だろうな。仮にもしフォルセティが俺の実の息子だっていうなら絶対に認知するし、相手の女性とも結婚しよう。そもそもはやてとシャルとトリシュの告白に答えを出さずにそんな事をするわけないだろう。その辺りは信じてほしかったがな」

ルシルがそう言ってチラッとシャルの方を見た。ますます落ち込むシャルに、ルシルは「ま、それだけ俺を想ってくれているんだと捉えておくよ」なんて苦笑い。ぶたれたことについてはもう許してるっぽい。

「で、話は戻すが、盗まれた聖遺物や盗んだ犯人についてはどうなんだ、シャル」

「え? あー、うん。結局は犯人も聖遺物も発見できてない。もうあれから10年近く経ってるし、ズィルバーン・ローゼはもう捜索に関わってないよ。一応捜査部は残っているけどほとんど諦め状態。・・・でもまさか、聖遺物がこんな風に利用されるなんて思いもしなかったよ」

でもこれで犯人は判明した。プライソンの手下が何かしらの手段を使って聖王教会本部に侵入して、オリヴィエとオーディンの聖遺物を盗んだ。そしてフェイトとアリシアの実母であるプレシアのように、残されて遺伝子データを元に2人のクローンであるヴィヴィオとフォルセティを生み出した。

「スバルとティアナの話が気に掛かるな。デルタとやらは、ヴィヴィオとフォルセティを端末と呼んでいたらしいではないか。単純に面白半分でクローンを生み出したわけではないだろう」

「シグナムの言うとおりです。きっと何かあるですよ」

そう言ったシグナムとリインに対して、「騎士カリムの預言に当てはめたらどうだ」ルシルがそう返した。あたしは騎士カリムの預言なんて話は聞いてないから「なんの話?」って訊ねてみた。

「そうやね。良い機会やしアリサちゃんにも知っておいてもらおか。実はな・・・」

そう前置きして、はやては機動六課設立の本当の理由を教えてくれた。騎士カリムのスキルである未来予知。その預言の内容を阻止することこそが本当の目的だって。んで、その内容を聴いたんだけど、「ヤバいわね・・・」軽く戦慄する。地上本部の崩壊どころかミッドチルダが滅ぶような内容だった。

「・・・っと。そろそろあたしは戻るわね。ギンガも待ってるし。シャル、アンタはどうすんの?」

もうちょっと長居して預言内容の解釈に付き合いたい気もするけど、あたしは108部隊の隊員だ。今は自分の仕事をきっちりとこなさないと。シャルも今は教会騎士団の1部隊を預かる隊長だし、六課に留まる時間はそうないって思ったんだけど・・・。

「わたしは今日はもうオフシフトだから、このまま六課に残るよ」

そう言ったシャルは笑顔を浮かべて、あたしに手を振った。少しの時間でもルシル達と一緒に居られるのが本当に嬉しいみたいね。

「そう。じゃああたしはこれで」

そしてあたしはフェイト達に見送られながら六課の隊舎を後にした。

†††Sideアリサ⇒ルシリオン†††

アリサを見送った後、はやて達は改めて預言内容の解釈を続けた。フォルセティは俺の実子じゃない、という身の潔白を証明し終えたことで調査官モードに戻っている俺。そのため彼女たちの話し合いをただ聴いていることしか出来ないことに歯がゆい思いをしているわけだ。

「――旧い結晶はやっぱりレリックやろね」

「無窮の強欲ってぇのは判んねぇな」

「レリックと集い交わる地っていうのはミッドのことかな・・・?」

「じゃあ強欲はプライソンってことでいいんじゃない?」

「死せる王と騎士というのは何でしょう?」

『たぶんだけどヴィヴィオとフォルセティじゃないかなぁ。ヴィヴィオのオリジナルは聖王女オリヴィエ・・・』

「魔神オーディンはアムルの騎士でもあったからな。フォルセティはルシルのクローンではなく、オーディンのクローンなのだろう。つまりは死せる騎士はフォルセティのことを差しているのだろう」

俺もシグナムに賛成だ。俺もフォルセティがクローンだと思い至った瞬間に、死せる騎士があの子なのだと理解した。

「次は・・・聖地より彼の翼が蘇り、やけど・・・。昔、王さまはユーリ――砕け得ぬ闇のその威容は大いなる翼、すなわち戦船かもって言うてたし。おそらくこの預言の翼も戦艦とちゃうんかな・・・」

はやてが随分昔の話を出してきて、彼の翼が戦艦かもしれないと鋭い指摘をした。すると「はやて、ナイス。心当たりがあるよ」シャルがそう切り出す。そしてモニターに展開してそこに映し出したのは・・・

「かつて聖王家が所有していた超巨大な戦艦型ロストロギア、聖王のゆりかご」

彼の翼の正解解釈である“聖王のゆりかご”の画像だった。聖王の一族、アウストラシア王家が所有していた全長数kmを誇る巨大戦艦。聖王はこの艦の中まで生まれ、育ち、死んでいったことから、ゆりかご、という名前が付いている。

「これまで数多くの歴史学者や神学者や考古学者、それにわたしたち聖王教会もずっと探し続けてきた。でもこれで、ヴィヴィオが端末だって言われた理由は解ったよ。ゆりかごの起動には聖王という鍵が必要なの」

『そういうこと・・・なんだ。聖王女オリヴィエの遺伝子データを持ってるヴィヴィオなら、聖王のゆりかごを動かせる。プライソンはそのためにヴィヴィオを・・・』

なのはの声に込められているのは純粋な怒り。初めから道具として人間を生み出すプライソンに対する、強烈な怒り。

「ゆりかごについて詳しいデータが無いか、母さまに訊いてみる。なのははユーノに連絡しておいて。無限書庫にも何かしらのデータがあるかもしれないし」

『え? あ、うん、判った!』

シャルが良い具合に話を逸らしてくれたおかげで、なのはの怒りが少し鳴りを潜めた。そしてシャルは、現在の聖王教会の教皇であるマリアンネに連絡を入れるために少し席を離れた。なのはとシャルが戻ってくるまでの間にも解釈は続く。

「使者というのはプライソン一派のことだろうな」

「地を這う鋼の龍はたぶん列車砲とか装甲列車のことだね。咆哮はおそらく砲撃・・・」

「彼の翼――ゆりかごを護りし親鳥は地上に畏怖を・・・。親鳥・・・うーん、なんでしょうか・・・?」

「共に翔けし子鳥たちは戦火を、ってところを見ると、親鳥も戦艦なんじゃねぇかな。子鳥たちっつうのはきっと戦闘機のことだろうしな」

「なるほどです!」

「その果てに中つ大地の法の塔は虚しく焼け落ちる。これはカリムから教えてもらったように地上本部のことやろうね。プライソン一派と兵器群がミッドに戦争を仕掛けて、地上本部を破壊するってわけや」

「そして最後に。それを先駆けとし、遥か空の彼方より来たる恐怖の大王により、星の命はその輝きを失う。明らかにミッド滅亡を詠ってるよね。恐怖の大王・・・かぁ。なんだろう?」

やはりそこで詰まってしまうんだよな。俺としてプライソンが造り出した兵器だと考えてはいるんだが。奴の研究所から奪取した兵器データの中には最後まで解読できなかった物も多い。その解読できていないデータの中に、世界1つを破壊できるだけの威力を持った兵器が記されているはずだ。はやて達もお手上げのようで首を横に振った。

「何にせよこのままプライソンを放っておけば地上本部どころかミッドが滅亡するわけや。みんな、これから気を引き締めていこな!」

はやてからの檄になのは達は「『了解!』」力強く応じた。厳かな空気の中、きゅ~、と誰かの腹の虫が鳴った。犯人捜しとは違うがはやて達がキョロキョロと辺りを見回すと、「あぅ、リインです~」リインが腹を押さえて恥ずかしそうにしていた。

「もう17時過ぎやな。混んで来る前に夕食にしよか」

「賛成ですぅ~!」

「シャルも一緒にどう?」

「もち、ご一緒します♪ なのは達みんなも一緒しようよ」

『うん! ヴィヴィオとフォルセティも一緒に連れて行くんだけど・・・。セインテスト調査官、良いですか?』

はやて達が思い思いにソファから立ち上がって行く中、なのはから何故かそんな確認が。念話ではなくモニター展開での通信であるため、フォルセティの顔もよく見える。不安そうな表情で、父親だと信じている俺を見ていた。

『パパ・・・』

「・・・ご一緒させてもらうよ。食堂でまた会おうな、フォルセティ」

『っ! うんっ!』

満面の笑顔になったフォルセティに、「可愛い♪」はやてとシャルがだらしなく破顔した。幼さという差異はあるが、俺と同じ顔だからな。なんか複雑な思いだ。そう言うわけで、俺も一緒に夕食を摂ることになった。部隊長室を出て、廊下でなのはやフォワード、ヴィヴィオとフォルセティと合流して、食堂を目指して歩き出す。

「お。シャマルとアイリや。おーい」

「はやてちゃん、それにみんなも♪」

「ひょっとして今からご飯? アイリ達も・・・って、ええええええ!?」

「ち、ち、小さいルシル君が居る・・・!?」

「・・・」

アイリとシャマルが、俺と手を繋いでいるフォルセティを見てビックリ仰天。しかしザフィーラは無言。アイリはものすごい勢いで駆け寄って来て、身を屈めて視線を合わせたうえで「うわ、うわ、ちっちゃ可愛い~♪」抱きしめ、さらに頭を撫でまくった。

「セインテスト調査官。これ、どういうことかしら?」

そしてシャマルは、シャルと同じレベルだった。シャマルにジトっと睨まれている中、はやてが「ちゃうよ、シャマル。『実はな――』」フォルセティとヴィヴィオの事をシャマルとアイリに話した。

『そうだったんですね! ごめんなさい、セインテスト調査官・・・』

『おお! オーディン(マイスター)のクローン!』

シャマルは素直に謝り、アイリは俺を見ながらそう言った。実質オレのクローンだから、俺を見るのは当然だな。そして2人は、フォルセティ、ヴィヴィオと顔を合わせて「こんにちは♪」挨拶。シャマルとアイリに「こんにちは・・・」2人も挨拶返し。そして俺たちはシャマルやアイリと一緒に、改めて食堂へと足を運ぶ。

『あのさ、なんかわたし、避けられてない? ヴィヴィオとフォルセティに・・・』

シャルが念話でそう訊いてきた。ヴィヴィオはなのはの、フォルセティは俺の隣を、小さな歩幅で一生懸命歩いて付いて来る。ただそんな中で、時折シャルをチラッと見ては顔を逸らすというのを繰り返している。どう見ても怖いものから逃れようとしている子供だ。

『お前さ、コイツらの前で散々怒鳴り散らしてただろ。しかもルシ――セインテスト調査官をフルスイングのビンタで吹っ飛ばしたしよ』

『くっはぁ! やっぱりそれが原因か~! 時間を戻す術が有ったらぁ~・・・!』

『あらあら。シャルちゃんは一体何をやっているのかしら』

苦悩するシャルの表情をタイミング悪く見たヴィヴィオとフォルセティはさらにビクッとして、フォルセティは俺と繋いでる手に力を込めてきた。あー、これはもうダメっぽいな。しばらくは避けられるぞ。

『あの、ヴィヴィオとフォルセティの今後ってどうなるんですか?』

『う~ん・・・、今回の事件を解決するまでは六課で預かることになるよ。解決後はそうだね・・・。一応里親を探してみるつもり』

『ですけどもう・・・ママとして見られてますし・・・』

『もうなのはさんから離れるのは無理ではないかと・・・』

キャロの問いにそう答えたなのはだったが、スバルやティアナの言うようにヴィヴィオはもう完全になのはに懐いている。これで引き離すのは酷というものだろう。先と同じようになのはが引き取るのがベストだろう。

『う~ん、やっぱりそうかなぁ~。どうしよう・・・』

『セインテスト調査官も、フォルセティを里親に出す系ですか?』

『ん?・・・ん~・・・』

俺もリインからそう訊かれた。が、これは先とは違って初経験だから困惑する。フォルセティも俺を父と呼び慕ってくれている。オーディンのクローン=俺のクローンだから、息子ではなく双子のような関係なんだよな、本当に妙な感覚だが。

『うちは本局の寮で、アイリも居るしな。俺は寮を空けることが多いうえに、アイリに世話させるのも大変な事になりそうだし。保護責任者くらいにはなってもいいが・・・』

念話=素の俺、というクセが付いてきてしまっていることで、全体念話でサラッと普段の口調を使ってしまった。僅かな沈黙があったが、『じゃあさ、じゃあさ!』シャルが何事もなかったように話を続けてくれた。

『もう引き取っちゃえば? 住む家は私の実家で~、ルシルとアイリも一緒に住んで~、ルシルがパパで~、わたしがママ! きゃぁぁぁぁ❤ 』

シャルがそんなことを言いだした。そこに切り込んでいくのが『ちょう待って、シャルちゃん。それは聞き捨てならへんよ』はやてだった。

『それはどういう意味かな~、はやて?』

『そのまんまの意味やよ、シャルちゃん。セインテスト調査官は・・・、ううん、ルシル君は渡さへんよ』

『またわたしの前に立ち塞がるのね、我が最強の恋敵・・・八神はやて!』

額がくっ付きそうなほどに接近して睨みを利かせるはやてとシャル。まぁ2人の身長差が激しいため、はやてが見上げ、シャルは見下ろすような感じだ。その光景に外野が俺から少し距離を空けて・・・

「あの、八神部隊長とシャルさんって、その・・・」

「ルシルさんのことが好きなんですか・・・?」

「そうですよ。もう10年と続いてる三角関係なのです」

「正確には、トリシュ・・・、トリシュタン・フォン・シュテルンベルクも入ってっから四角関係か?」

「おーっと。アイリも入ってるよ。五角関係だね♪」

俺に聞こえないようにするためか小声で話し始めた。そこは念話で、俺抜きですればいいものを。俺の耳の良さを知っているだろうに

「ルシルを慕うシャル達はまぁ良い子ばかりだから、ルシルが刺されるような事態に張らないと思うけどね」

「「刺される・・・!?」」

アリサの俺が刺される発言に、キャロとエリオが顔を青くして見せた。そしてアリサとヴィータが、恋愛とその恋敵のドロドロとした例え話やその結果を教えた。どれもドラマや漫画でよく見かけるものだ。というか、そんな話を2人にするなよ。恋愛に怯えたらどうする気だ。

「よっこらせ」

アリサ達の話に耳を傾けながらはやてとシャルの様子を眺めていると、急に何を思ったのかシャルはその豊満な胸を強調するかのように腕を組んだ。するとはやての口端がヒクッとなった。

「な、そ、それは何のつもりなんやろ、シャルちゃん・・・?」

「べっつに~。ただちょっと重かっただけ~」

明らかに煽っているな。わなわな震えたはやては「別に女の子の魅力は胸だけやないもん!」なんて言いながらシャルの胸を両手で鷲掴みして、「うりゃぁぁぁ!」全力で揉みしだいた。なのははヴィヴィオ、俺はフォルセティ、フェイトがエリオ、そしてシャマルがキャロ、というように後ろから子供たちの目を両手で覆い隠した。

「ひゃあん!?」

「女の子の魅力は体だけやないんやよ! フォルセティは、わたしら八神家が預かる!」

シャルの胸から手を放したはやては、左手を腰に、そして開いた右手を前方へと突き出した。

「ちょっ、はあ!? はやてんところって、もうリインみたいな娘がすでにいるじゃん! シグナム達っていう家族もいるし! フォルセティくらい、わたしに預からせてくれてもよくない!?」

「それはそれ、これはこれや! セインテスト調査か――ああもう! ルシル君は今も八神家の一員やし、ルシル君がフォルセティの保護責任者なり義父なりになるんなら、それはつまり八神家やってことや!」

「ずる~い! それ、ずる~い! そうなったら実質、はやてがフォルセティの母親になっちゃうじゃん!」

シャルがそう喚くと、フォルセティが「ママ・・・?」はやてを見て小首を傾げた。はやてが何かを言う前に、「そうだ! もうこの際、フォルセティに決めてもらおう!」シャルがそう言った。なんかもう結果が見えているんだが・・・。シャル、何があっても強くあれ、だ。

「わたし! わたしが、フォルセティのママになってあげる!」

シャルが身を屈めてフォルセティと目を合わせてそう言った。しかしフォルセティは「・・・あー・・・」そっとシャルから目を逸らした。その時のシャルの表情は、それはそれは悲しいものだった。思わずこれからはずっと優しくしてやろう、と思えるほどに。そしてシャルはその場に両膝を付き、コテンと廊下に倒れ込んだ。

「うぉぉぉ!? シャルが死んだ!」

「シャルさん、傷は深いですけど大丈夫ですよ!」

「死んでない・・・。あと大丈夫じゃない」

シャルの心は残念ながらポッキリと折れてしまったようだ。フォルセティは俺の手を取り、反対の手ではやての手を取った。はやては嬉しそうに頬を綻ばせ、そして照れながら俺に微笑みを向けた。

「あのね、フォルセティ・・・。どうしてわたしはダメだったのかな・・・?」

「・・・パパを叩いて、いっぱい怒って、怖い・・・」

「ぐはっ! タイムマシンがあれば・・・」

シャル撃沈・・・したかと思えば、「いいもん。フォルセティははやてに託すよ。でも・・・!」ゆらりと立ち上った。今日のシャルはなかなか強いな。

「義理の子供じゃなくて、本当の子供を産めばいいんだしね! ルシルと結婚して、2人の間に本当の子供を儲ければ良いだけだし❤」

シャルはそう言って、空いている俺の左腕に抱きついて頬擦りしてきた。はやての呆けっぷりが少し面白い。だが笑っていられるのもここまでだった。シャルは「ささ。ルシルの部屋へ行こう、行こう❤」俺を引っ張って寮へと向かおうとし始めた。

「ちょっ、ちょちょちょ、ちょう待って! ルシル君の部屋に行って何するつもりなん!?」

「ナニをするんだよ~♪ 男女がベッドルームでやる事と言えば、はやてだってもう解るでしょ? ○○○だよ~❤」

「~~~~~っ!!」

はやてだけではなくなのは達、スバルやティアナも顔を真っ赤にした。そしてエリオとキャロ、あとリインが意味を解っていないことで小首を傾げた。というかこの馬鹿、こんな往来のあるところで一体何を口走っているんだ。怒る前にシャルは俺の顔を上目遣いで見上げながら、18禁の下ネタを連発して、俺をベッドに誘って来ようとする。
だからみんなで「わぁぁぁ~~~!」大声を出して、シャルのセリフを掻き消す。なのはと俺はすぐに反応してヴィヴィオとフォルセティの耳を塞げたが、フェイトとシャマルは反応しきれず、キャロとエリオにシャルの下ネタを聞かせてしまった。だから・・・

「あの、フェイトさん。○○○ってなんですか?」

「×××? △△△?」

「はやてちゃん。□□□ってどういう・・・」

そんな3人の口から卑猥な言葉が飛び出る始末。フェイトの顔色が赤から青に急降下。そんなフェイトに代わり、「あー、ダメダメ、そんなこと言っちゃ!」スバルと、「いい? もう言っちゃダメだし、調べてもダメ。お姉さんたちの約束よ。いいわね?」ティアナが、顔を赤くしたまま、キャロとエリオの目をジッと見てそう伝えた。

「リイン! そうゆうのはまだ早い、とゆうより必要のない・・・とゆうより、ああああ! 一体どう言えばええの!?」

「はやてちゃん!? もういいです、もういいですから!」

「「あ、はい。判りました」」

スバルとティアナの迫力に、キャロとエリオは素直に応じた。そしてリインは、頭を抱えるはやてを見て自分が口にした疑問を取り下げた。で、こんな混乱を招いた張本人であるシャルは、大して気にも留めずに俺の左腕にその胸を押し付けてくる。

「もう、シャル! シャルが変な事ばっかり言うから大変になっちゃったよ! エリオとキャロに変な言葉を言わせちゃうし! いくらなんでも酷過ぎるよ!」

「大丈夫だって。エリオとキャロだって、あと10年もすれば2人でそういう事するだろうし」

ここでシャルはさらなる爆弾を投下してくれやがった。フェイトはその言葉を聞いて、「・・・」無言。少なからずショックは受けただろうな、って思っていると・・・

「きゅ~~~」

バッターンと直立不動のまま前のめりでぶっ倒れた。あまりのショックに脳が耐え切れず、シャットダウンしたようだ。これにはみんな大慌て。とりあえず、「あっちゃ~」と額を叩いているシャルの頭に・・・

「反省しろ、大馬鹿者」

「あいたっ?」

1発の拳骨を打ち降ろしてやった。とにかく、フォルセティの保護責任者は俺、後見人ははやてとなり、ヴィヴィオは先と同じくなのはが保護責任者で、フェイトが後見人となった。

 
 

 
後書き
ドヴロ・ユトロ。 ボーク。 ドーブロ・ヴェーチェ。
早い段階で聖王のゆりかごの名前が登場。原作と比べて教会との関係が深いですからね。イリス達も居ることですし。そしてシャルは馬鹿でした、まる! 
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