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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Eipic11-A運命の子供たち~Prinzessin Vivio~

†††Sideなのは†††

プライソン一派との戦闘を終えた翌日。私はミッド北部の聖王医療院に来ていた。昨日六課が保護した女の子が目を覚ましたってシャルちゃん・・・じゃなくて、ルミナちゃんから連絡が入ったからだ。シャルちゃんとその騎士隊は、廃棄都市区画の地下水路でもう1人の子供を捜索を、昨日の事件後から交代制で捜してくれてるってことで、シャルちゃんの代わりにルミナちゃんが医療院に派遣されたとのこと。

「早く見つかると良いな・・・」

ガジェットを十数機と破壊できるだけの戦闘力を有しているかもしれないけど、それでもきっとあの女の子くらいの幼さのはず。そんな子が生死不明の行方不明というのが耐えられない。万が一にもうダメだとしても、せめて地下から陽の当たる地上へ出してあげたい。

「ああ。今はシャルのことを信じよう」

「・・・はい」

そういうわけでフェイトちゃんから車を借りて、運転免許を取ってない私の代わりに運転してくれたシグナムさんと一緒にやって来た。シグナムさんが車を駐車場に停めて、私たちが車を降りた時・・・

「おーい、なのは、シグナム!」

「シグナム、なのはさん!」

ペザント・ブラウスとティアード・スカートっていう私服姿のルミナちゃんと、シスターシャッハが医療院のエントランスから駆け寄って来たから、私は「ルミナちゃん!」手を振り返して、「ご無沙汰しているな、シャッハ」シグナムさんは微笑んで応えた。そして私たちは、医療院のエントランスを潜って女の子の病室へ・・・って思ったんだけど・・・

「お呼び立てした手前ですが、申し訳ありませんがしばらくロビーにてお待ちいただけますか?」

シスターシャッハの案内で待合ロビーへ向かうことになった。私とシグナムさんで小首を傾げる。ロビーの一角にある円テーブル1脚を囲うソファ4脚を利用させてもらって、ソファに座ったところで「あー、さっきまで泣いて暴れてたから、今は泣き疲れて・・・ね」ルミナちゃんが肩を竦めて事情を話してくれた。

「暴れてって。何かあったの?」

「あの子、お母さんとフォルセティが居ないって泣いて暴れたの」

「フォルセティ?」

「おそらく、未だ見つかっていないもう1人の子供の名前かと」

「フォルセティ。・・・じゃあ女の子の名前はなんて言うの?」

「ヴィヴィオ。ファミリーネームは判らないみたいね」

「母親が居るとのことだが、父親については?」

「父親については判らないみたい。あと、やっぱりまだ幼いからか母親の名前や住所も判らないみたいだし。でも、フォルセティって子がいつもあの子の側に居て、お母さんに会わせてあげる、って言ったみたい。・・・みたい、ばっかり使って申し訳ないけど、あんなに幼いうえに泣き騒がれてる中での事情聴取なんてやっぱ無理」

「母親と親しい友人・・・かどうかは判らないが・・・その2人が行方知らずで、見知らぬ場所と者を見れば混乱するのは当たり前か」

「そういうわけです」

でもあの女の子――ヴィヴィオが眠ってるって言うんなら、わざわざ部屋まで行って起しちゃうような真似は出来ないし。シスターシャッハは「少し様子を見てきますね」そう言って席を立って、入院病棟へと向かった。

「しかし困ったものだな。さすがに長時間、隊舎を開けるわけにはいかんぞ」

「ですよね・・・」

ヴィヴィオと話をして、六課で預かるか、もしくは可能だったら聖王教会本部に預かってもらえるかどうか、それを決めようと思ってた。それだけの時間は貰ったけど、それ以上の滞在は六課の職務に差し支えると思う。だから出来ればあまり時間が掛けたくないのが本音だ。

「ヴィヴィオと話をしたいらしいけど、どうせならこのまま連れて行っちゃえば。どっちにしろ、六課の隊舎に連れて行くんでしょ」

「うん、そのことなんだけど・・・」

ヴィヴィオはプライソン一派に狙われてるから、一派を迎撃できる程の戦力が整った場所に置いておきたい。戦力だけを考えれば、聖王教会に預けるのが一番だ。たぶんミッドで一番安全な場所だと思う。だけど今回の事件は管理局預かりだし、聖王教会の本部内で匿ってって依頼しても良いのかどうか判らない・・・って、話してみた。

「なるほど。たぶんヴィヴィオの保護についてはOK出ると思う。というか、まず出る。教会が全力を挙げてきっと護ると思うよ」

「そこまで言うのか。その根拠は?」

「あの子が聖王教会にとって――」

ルミナちゃんがそこまで行ったところで、テーブル上にモニターが展開された。映っているのは顔を青くしたシスターシャッハで、『あの子の姿がありません!』耳を疑う知らせを聞かされた。

「え・・・!?」「な・・・!?」

「うっそ! ちょっ、捜して! すぐ!」

ルミナちゃんが慌ててソファから立ち上がって、「私はこっちを捜す!」そう言って走り去って行っちゃった。とにかく「私たちも!」シグナムさんと頷き合って、別々の場所を捜すべく散開した。念話で捜索済のエリアを確認し合って、「外に行ってきます」そう断ってたから私は医療院の外に出る。停まってる車の死角を捜してると・・・

「「あ」」

バッチリとヴィヴィオと目が合った。昨夕、私が買ったウサギのぬいぐるみを大事そうに抱えてる。初めて会った時はまぶたを閉じていたから判らなかったけど、この子の瞳ってルシル君と同じように光彩異色なんだ。右目が翠、左目が紅。

「・・・!」

あまりの突然の再会、ヴィヴィオからして見れば初めての出会いだから驚かせちゃったかも。目を丸くしちゃってるし。

「あの・・・」

だから恐がらせないように声を掛けようとしたら「ママ・・・?」ヴィヴィオが小首を傾げながらそう漏らした。

「はじめまして。私――」

「ママ・・・、ママ・・・!」

ヴィヴィオが大粒の涙を溢れさせながら私に抱き付いた。しがみ付いてるヴィヴィオを引き離すのは気が引けたから「よいしょ」抱き上げると、「えへへ♪」嬉しそうに笑顔になって私に体を預けてきた。

「そのウサギのぬいぐるみ、気に入ってくれたかな?」

「あ、うん・・・!」

キュッと大事そうに抱えてくれたヴィヴィオに「ありがとう♪」私からお礼を言った。そして「なのはです。ヴィヴィオ発見しました」シグナムさん達に念話で報告する。ルミナちゃんから待合ロビーで合流するよう言われたから、ヴィヴィオをそのまま抱えながら医療院のエントランスへ。

「なのは、ありがとう・・・! もう! 勝手に部屋を出たらダメじゃない!」

「っ!・・・ぅ・・ひぅ・・・」

私とヴィヴィオを見て真っ先にやって来たルミナちゃんが叱る。やっぱり怒られてるって解るようで、ヴィヴィオが泣きそうになっちゃった。私は「ルミナちゃん。心配したのは解るけど・・・」ちょっと窘める。

「それはそうかも知れないけど、最悪なケースだってあるわけで・・・」

「っ!・・・金色の髪に翠と紅の光彩異色・・・!」

涙を湛えた怯え瞳で見られたルミアちゃんはしょんぼりして、シグナムさんは何故だか驚きを見せた。シスターシャッハが「はい。これが、聖王教会が彼女を保護するという動機です」って、シグナムさんに話した。

「それはどういう・・・?」

「なのは。私たちが何を信仰してるか知ってるよね」

「えっと、聖王様・・・」

「そう。特に最後の聖王と呼ばれるオリヴィエ王女殿下は有名で大人気。そんなオリヴィエ様とヴィヴィオって同じなの。金色の髪に翠と紅の虹彩異色が」

ルミナちゃんがそう教えてくれた。かつての聖王と同じ見た目だから教会は、このヴィヴィオを保護してくれる、と。

「外見の一致は偶然かも知れない。金色の髪を持つ人なんて山ほど居るし、虹彩異色だって珍しいけど全く居ないわけじゃない。けど偶然じゃないかも知れない・・・」

そこまで言ったところでルミナちゃんが口を閉ざしたから「なに・・・?」先を促すと、ルミナちゃんがチラッとヴィヴィオを見たから、私は自分の鈍さを呪った。まだ小さな子だとしても出生がどうのって聞かせていいような話じゃない。

「ま、後者の方は教会で確認中だから、この話題はとりあえず横に置いておいて。先に隊舎に行くか本部に留まるか、ヴィヴィオに訊いてみたら」

「そうだね。コホン。改めまして私、高町なのはっていいます。ヴィヴィオ。とっても可愛いお名前だね。お母さんが付けてくれたの?」

「??」

まずはそこから切り出してみた。だって私、ママじゃないし。きっと本当の母親と見間違えてるんだよ。だから懐いてくれている今の内に、そっちの情報を聴き出そうとした。だけどヴィヴィオは小首を傾げるばかり。私はシグナムさん達と顔を一度見合わせてると、「ママはママ・・・だよ?」そう言ってヴィヴィオが私をジッと見た。だから「ママ?」シグナムさん達が一斉に私を見る。

『え、違いますよ? 私、ヴィヴィオのお母さんじゃありませんよ? というか知ってますよね、判ってますよね?』

声に出してヴィヴィオの母親じゃない、なんて言うとヴィヴィオがまた泣きそうだから即座に念話に切り替え。ヴィヴィオが「ママ? どうしたの・・・?」って、本当に心配してくれてるって判る声色で訊いてきた。そんなに似てるのかな、ヴィヴィオの母親と私って。

「なのは。お前、いつの間に母親に・・・」

「そっか。確認するまでもなかったわけか。なのは、おめでとう。無粋だけど、お父さんってだ――」

「もう! ルミナちゃんはともかくとして、シグナムさんからボケ始めるなんて!」

ぷんぷん怒るとシグナムさんは「ふふ、すまん」含み笑いをして、ルミナちゃんは「ともかく・・・?」小首を傾げた。私は「とにかく本題に入りましょう!」ササッと話を済ませるために話題を元に戻す。

「えっと。ねえ、ヴィヴィオ」

「??」

「私はこれから隊舎・・・お家に帰るんだけど、ヴィヴィオはどうしたい?」

「ママと一緒がいい!」

即答だった。置いて行かれないようにって必死に私の制服を握りしめる。ルミナちゃんとシスターシャッハに振り返ると、「ま、なのはをママって呼んだ時点で判ってたけど」ルミナちゃんは肩を竦めて、「ですね」シスターシャッハは苦笑した。

「あの、でも、良いんでしょうか。勝手に決めちゃって・・・」

「そうは言ってもあなたから引き離したら、また泣いて暴れて疲れて眠るの繰り返しになりそうだし。それは教会側としても出来ないから。だから連れて行ってあげて、なのは。強力が欲しいならまた連絡ちょうだい。無償でヴィヴィオを守ってあげるから。・・・それじゃバイバイ、ヴィヴィオ、またね♪」

そう言ってルミナちゃんはヴィヴィオに手を降ると、「ばいばい」ヴィヴィオも手を降り返した。そういうわけで、私はヴィヴィオを連れて六課に帰ることになった。行きは助手席だったけど、帰りは後部座席でヴィヴィオと並んで座る。ヴィヴィオも途中までは窓から景色を見てるおかげでご機嫌だったけど・・・

「すぅ・・・すぅ・・・」

寝ちゃった。前髪が鼻に掛かって少し唸ったから指で少し払ってあげてるところに「む?」シグナムさんが声を漏らした。シグナムさんの方を見れば自然とフロントガラスの向こうを見ることになって、「あれ?」見覚えのある大型リバーストライクが反対車線を走っていて、この車とすれ違って行った。

「今のはルシルだな。奴が隊舎を離れるとは、何かあったのか・・・?」

「どうなんでしょう。でもただ事じゃないのは確かですよね・・・」

特務調査官は基本的に出向先の隊舎から出られないし、休暇も出向期間中は1日たりとも無い激務だし。そんなルシル君が隊舎から離れるなんてよっぽどのことだ。シグナムさんが「とにかく急ごう」そう言って少しスピードを上げた。まぁそれでも法定速度だけど。

「あ、最初は寮に行ってもらえますか?」

「ん? あぁ、ヴィヴィオを預けておくのだな。承知した」

寮にはアイナさんっていう寮母さんが居る。とりあえずヴィヴィオは私とフェイトちゃんの部屋のベッドで寝かせて、アイナさんに見ていてもらおう。そういうわけで寮に着いて、アイナさんに事情を説明。

「あ、はい。判りました。それでは少しお部屋に失礼させて頂くことになると思うのですが・・・」

「すいません。お忙しい中・・・」

「いえいえ。ヴィヴィオちゃんが目を覚ましたら、通信を入れさせて頂きますね」

「はい。それでお願いします」

ヴィヴィオをベッドに寝かせて、アイナさんに様子を見ていてくれるようにお願いして、私とシグナムさんは隊舎のミーティングルームへ急いだ。

†††Sideなのは⇒はやて†††

聖王医療院へ行ってたなのはちゃんとシグナムが帰って来たことで、「ほんなら、ミーティングを始めよか」隊長陣だけやなくてフォワードも入れたミーティングを始める。まずは「それじゃあ私から、これまでの敵性戦力についてを」フェイトちゃんが椅子から立って、楕円形の長テーブル上にモニターを展開した。

「昨日の戦闘で、新たにプライソン一派の戦力を確認できたから、そのおさらいを」

地下水路で行われたフォワード4人とギンガとプライソン一派の戦闘がノイズ交じりで流れる。サーチャーは使いもんにならんくなってたけど、5人のデバイスが記録を残してくれてた。スバルが「お母さん・・・」ポツリと漏らす。プライソン一派には、死亡とされてたクイント准陸尉が居った。それだけやない。

「クイント・ナカジマ准陸尉、融合騎アギト。そしてホテル・アグスタでアリシアを撃破した女の子と、今回で確認された女の子。2人の女の子は、クイント准尉の話からしてMIAとされていたメガーヌ・アルピーノ准陸尉の娘、ルーテシアとリヴィアみたい」

エリオと戦った女の子リヴィア、ティアナとキャロと戦った女の子ルーテシアの映像が流れる。クイント准尉の口振りからすると、メガーヌ准尉も生きてるって考えられる。そんでみんなして記憶を弄られてるみたいや。ホンマにド外道やね、プライソン。怒りしか湧いてこぉへん。

「魔力パターンを確認したところ、ルーテシアが召喚魔導師であることが判明。アグスタでシグナムとザフィーラの前に現れた人外も、彼女が召喚したものだと思う」

新たに展開されたモニターに、虫の羽を生やした二足歩行の人型生物が表示された。シグナムとザフィーラを相手に奮闘してる。まぁ結局は体を透明にしての撤退を余儀なくされるほどのダメージを受けたけどな。

「次に、地上での一派について。彼女たちは本局の第零技術部に籍を置くシスターズと同じバトルスーツを着用していた」

映像が切り替わって、シスターズのトーレさんとチンク、そんで昨日の襲撃犯3名が映し出される。5人ともピッチリと体に張り付くバトルスーツ姿。色もデザインも全く同じや。ドクターやシスターズのことを知らへん人が見れば、シスターズと襲撃犯が仲間やって判断するやろ。

「この事から本局は、ドクターの異名を持つ第零技術部のジェイル・スカリエッティ少将とシスターズ6名を逮捕。今は本局内の拘置所で拘留中だね」

「そんな!」

「チッ。これ完全に嵌められたな」

フェイトちゃんがそう報告すると、スバルは納得できひんって風に声を出して、ヴィータは少し苛立ちを含んでそう言うた。ドクターやシスターズと知り合いな私らはみんな同じ意見や。プライソンは、ドクター達を嵌めるためにわざわざ同じデザインのバトルスーツを着せたんや。少なからず因縁もあるって話やしな。

「親交の深かった第四技術部のすずか、・・・月村すずか技術官に話を聴いたところ、この3名の名前が判明。赤い髪の子はノーヴェ。ボード乗りはウェンディ。砲撃主はディエチ。元はプライソンが人工的に生み出した子供たちで、ドクターから盗んだサイボーグ化技術であるBNACを用いて改造された子供たち、とのことだったよ」

プライソンの話をこれまで聴いてきたから、私もある程度は予想はしてた。ティアナとエリオとキャロが少しざわつく中、「つまり、あたしの妹か姉にあたるんですよね・・・」スバルがそう漏らした。

「あたしとギン姉を生み出したのはプライソンですし。参ったな。止めなきゃいけない相手が多いや」

そんな乾いた笑い声を出して言うスバルに、ティアナが「アンタ1人が背負ってんじゃないわよ」そう言うてスバルの額にチョップした。痛がるスバルに「そうですよ!」エリオや「私たちもお手伝いします!」キャロも励ますようにそう言うた。

「ティア、エリオ、キャロ・・・」

「そうだよ、スバル。これは私たちみんなの問題だよ」

「そういうわけだ。お前はクイント准尉のことを考えとけ、とりあえずな」

なのはちゃんとヴィータもスバルに声を掛ける。私も「そうやね。私らのことも頼ってな」微笑みかけた。スバルは少し呆然とした後、「はいっ!」満面の笑顔で頷いた。

「・・・すずかの話だとあとセッテ、オットー、ディードの3名も居るみたい。一度はドクター達がプライソンの研究所から保護したようだけど、残念ながら奪還されたみたい。・・・で、もしかすると、ハイウェイを破壊したハンマーの持ち主がその内の誰かかもしれない」

2m近いハンマーがハイウェイを崩壊させる映像がモニターに流れる。正直「これの直撃は受けたくないな」シグナムの言うようにあの一撃は受けたない。それ程までに強大な破壊力やった。

「プライソンの戦力はこれだけじゃなく、ガジェットはもちろんこう言った航空兵器や陸戦兵器もある。フォワードのみんなは憶えておいてね」

複数のモニターが展開されて、これまでに確認されてる兵器群が表示された。ルシル君がかつてプライソンの研究所から引き出したデータも一緒に出す。戦闘機“シームルグ”。攻撃機“アンドラス”。掩護機“シャックス”。輸送機“マルファス”。装甲列車“ケンタウロス”。列車砲“ディアボロス”。電磁砲“ウォルカーヌス”。名前しか判ってへんけど“アグレアス”や“アンドレアルフス”などなど。

「これって本当ですか・・・!?」

「戦争を起こせそうな程の兵器ばかりじゃないですか!」

「僕たちだけで対処できるんでしょうか・・・?」

「ヴォルテールを召喚すればなんとか出来そうな気も・・・」

フォワード達がざわめく。確かにこんなんがミッドや主要世界に現れたら戦争とも呼べる大事件が起きる。

「もしこの兵器群が出現した際は、聖王教会の教会騎士団全体が協力してくれるように六課と協定を結んでる。そやから安心して、ってゆうのも変な話やけど、私らの任務を全うするようにな」

「「「「はいっ!」」」」

フォワード達が首肯したところで、「もう1つ、覚悟を決めておいてほしい戦力があるの」フェイトちゃんが画像を切り替えた。ライダースーツのような全身真っ黒の服に、ところどころに装着された装甲、フルフェイスのヘルメットのバイザーにも装甲が付けられてて、カメラレンズがいくつか付いてる。

「この人たちが要注意戦力、なんですか?」

「装甲列車や列車砲なんかに比べると大したことなさそうですけど・・・」

「コレはLASと呼ばれる人型兵器ね。戦力としてはそれほどでもないかな。ただ、その正体がエグイというかなんと言うか・・・」

フェイトちゃんが言い淀んだことで、「ソイツら、死体をベースに改造されたサイボーグだ」ヴィータがサラッと引き継いで、LASの正体を伝えた。フォワードは最初、何を言われたんか解ってへんようでポカンとしてる。そやけど、その意味を理解した途端・・・

「いやいやいや! そんな、死体なんて・・・!」

「何かの冗談ですよね!?」

「死体・・・え、死体・・・?」

スバルとティアナとエリオは混乱して、キャロはまるで気を失ってるかのように無言で明後日の方を見た。4人とも結構ショックを受けてるな~。まぁ私かて最初知った時はホンマにショックで、吐き気を催したもんや。

「プライソン一派の誰かがわざわざ管理外世界に赴いて、墓を荒らして収められた遺体を奪って来ているのだろう」

「管理世界内で墓荒らしが起きているって事件は調べたけど1件も起きてなかった。プライソンは墓荒らしで騒ぎを起こしたくないみたいだね。本当にこう・・・」

肩を震わせるフェイトちゃんの様子にフォワードは黙った。フェイトちゃんがここまで怒りを露わにするんはフォワードの前やと初めてやしな。

「・・・スバル、ティアナ、エリオ、キャロ。死体とは言え元は生きていた人間だ。お前たちに破壊する真似はさせられん。もし接敵したら逃げても構わん」

「そうだね。LAS撃破時の映像を観せてもらったけど、かなりショッキングなものだったよ。スバル達にあんなものを直に見せるわけにはいかないし」

私も見せてもらった。服やヘルメットの下にある死体はもう腐敗しててドロドロ。映像で観るだけでも気を失いそうなほどにキツいものやった。あれを現場で実感する勇気は私にはあらへん。そやから「私からもOKを出す。フォワードはLASとの戦闘を禁止。ええな?」部隊長としての命令を出した。

「「「「・・・了解」」」」

「そして最後に。プライソン一派にはもう1組の戦力があるかもしれない。私が実際に見たのは1人だけなんだけどね」

さらにモニターに表示される映像が切り替わる。女子高生のような服装をした女の子と、シスターズのトーレさんとチンクの戦闘シーンや。

「この女の人、もしかして金属を操っているんですか・・・?」

「うん。名前はアルファっていうらしくて、AMF下での戦闘ということもあってスキル使いなのは確定。そして・・・」

トーレさんとチンクのコンビネーションによって、アルファの右腕がトーレさんのスキルで斬り飛ばされ、チンクのスキルで左足が爆発して吹き飛んだ。傷口から覗くんは機械部品。

「そのもう1組の戦力もまたサイボーグの集団だと思う」

「フェイトさん。1つ伺いたいんですけど・・・」

「なに、ティアナ?」

「1組だという根拠は・・・」

「あぁ、うん。この後にアルファが、イプシロン、って叫ぶんだけどね」

一時停止されてた映像が再生される。音声は切られてるけど、アルファが何かを叫んだ直後に砲撃がトーレさんとチンク、アルファの間を通過してった。そんでアルファは這って砲撃で開けられた穴へ向かって・・・落っこちた。

「この砲撃もイプシロンと呼ばれるサイボーグのスキルだと思う。そう、ディエチのような。それで、これでどうして複数人いるのかって考えるその理由は、アルファとイプシロンがアルファベットだからなんだ」

「アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、イプシロン。もしこれが開発順だとすれば、最低でもあと3人も居ることになる」

「「デルタ・・・!」」

なのはちゃんが話にスバルとティアナが異常に反応した。私らの視線が2人に集まると、「あたし達、会いました・・・!」スバルがそう言うて、ヴィータが「いつだ!?」問い質すと、「昨日、休暇中にです」ティアナが答えた。

「そう言えば、このアルファって人と服装が似てるかも」

「姿形は憶えてるか?」

シグナムからの問いに、休暇中に立ち寄った公園とゲームセンターの監視カメラに映ってるって2人は教えてくれたから、私はすぐさま「その2つの施設の管理者から映像を取り寄せて」フェイトちゃんに指示を出す。

「了解!」

「スバル、ティアナ。デルタの目的がどうかは訊いてないですか?」

「探し物をしていると言っていました。端末らしいんですが、名前はヴィヴィオとフォルセティ、だそうです」

「「ヴィヴィオとフォルセティ!?」」

リインの問いに答えたティアナの話に、今度はなのはちゃんとシグナムが驚きを見せた。その突然の大声に私らはビックリ。なのはちゃんは「そのデルタは間違いなくプライソン一派だよ」そう言うて、手元にモニターを1枚と展開。映るのはなのはちゃんとフェイトちゃんの部屋で、ベッドの上に昨日保護した女の子が眠ってた。

「報告が遅れちゃったけど、あの子・・・私に懐いちゃって離れようとしなかったから連れて帰って来ちゃったんだけど・・・」

「彼女の名前が、ヴィヴィオ、なのです。そして未だに行方不明の子供の名前が、フォルセティ、だそうです」

シグナムからの報告に「そうか」私は納得した。アルファとイプシロンの間にやっぱり3人おって、それに“レリック”だけやのうてヴィヴィオとフォルセティも連中の狙いやってことが、改めて確認できたからな。問題は2人を端末って呼んだことや。

(端末って呼ぶくらいや。かなり重要な立ち位置に置かれる予定なのかもしれへん。そうなればいつかは取り返しに来るやろ)

「それでね、はやてちゃん。聖王教会に預けることも出来たんだけど、ヴィヴィオがどうして私と一緒に居たいって言って、その・・・」

「うん、構へんよ。なのはちゃんに懐いてるってことやし。あ、なのはちゃん預かりにするけどええか?」

「あ、うん。それについては任せて。というか、もう私しかダメみたいだし・・・」

なのはちゃんがそう言うた後、「じゃあ私からはこれで以上かな」フェイトちゃんが全てのモニターを消したところで、「じゃ、これでフォワードは解散な」私は先にフォワード4人を退室させることにした。ここからの話題は隊長陣限定で進めたい。4人は「失礼します」と一礼して、ミーティングルームを後にした。

「・・・あ、そう言えば、ルシル君ってどこに出掛けたの?」

これから次の話題に入ろうって思うたその時、なのはちゃんがそう訊いてきた。それはこれから私が始めようとしてた話題に関係することやから、この質問への答えから話し始めることを決めた。

「ルシル君な、地上本部に行ったんよ、なのはちゃん」

「え、地上本部? どうしてまた・・・」

小首を傾げるなのはちゃんに「実はな・・・」ルシル君が職務を一時的に放棄してまで出掛けた理由を私は伝えた。昨日の一件で地上本部に目を付けられてしもうたこと。そんでこの機動六課を、地上本部の息の掛かった査察官が臨時査察したいってことを。これが次の話題の内容や。

「え、それってかなりまずくない・・・?」

「うん、まずい。機動六課(うち)はツッコみどころ満載の部隊やしな。新人を多く採用して、1年間限定ってゆう時限付きにすることで、この部隊の本質を隠してたんやけど・・・」

「地上本部の査察ってすごく厳しいのが有名だし。もし査察でアウト食らってシフト変更や配置換えなんて受けたら、六課の運営がガタガタになること間違いないよ」

私とフェイトちゃんで「はぁ・・・」大きく溜息を吐いた。そんでなのはちゃんは「あ、だから・・・」ルシル君が地上本部へ向かったその理由に思い至ったようや。

「特務調査官として六課に常駐してるのに、地上本部から査察させろ、なんて言われたらさすがにルシル君も怒るよね・・・」

「そりゃもうカンカンやったよ。内務調査部からその連絡が入った時、ルシル君も素になって、あのクマ髭オヤジめ、俺にケンカを売るとは上等だよ、後悔させてやる!って、湯呑みをこう・・・握り潰して粉砕したしな」

「怖かったですよ~、あの時のルシル君・・・」

リインがぶるっと体を震わせた。なのはちゃんはそれを聞いて「クマ髭オヤジってゲイズ中将のことだよね・・・。毒舌だなぁ~・・・」苦笑した。私としてもルシル君がそんなこと言うなんて思いもせえへんかったわ。

「でも、これで地上本部の査察は受けないでいいことになる・・・のかな~」

「査察を受けて潔白を証明する、ってパターンもアリやどけね。そやけど、それでアウトを食らったら身も蓋もない。ルシル君に頑張ってもらうしかないと思うてる」

地上本部の査察を乗り越える自信はある。こうゆう場合のためにいろいろと手を回して来たんやしな。とは言うても綱渡りになることも事実。そやから出来れば、査察は受けたない、って考えてる。みんなが黙る中、PiPiPi♪と通信が入ったことを知らせるコール音が鳴った。

「あ、私だ」

なのはちゃんがコールを受けて通信を繋げた瞬間、『びぇぇぇぇ~~~~!』展開されたモニターからトンデモなく大きな泣き声が聞こえてきた。さっきはグッスリ眠ってたヴィヴィオが目を覚まして、『ママぁぁぁ~~~!』って喚いてた。

『ごめんなさい、なのは隊長! 私では泣き止ませられなくて・・・!』

寮母のアイナさんがモニターの端に映り込んで、申し訳なさそうになのはちゃんに謝った。するとなのはちゃんが「いえ、お気になさらず。ヴィヴィオ! 泣かないで!」モニター越しにヴィヴィオに声を掛けた。

『ひっく、うっ、ママ? ママ!? ママ!』

ヴィヴィオは明らかになのはちゃんの声に反応して、なのはちゃんをママって呼んだ。事情を知らへん私とヴィータとフェイトちゃんは「ママ?」小首を傾げた。

 
 

 
後書き
ヨー・レッゲルト。 ヨー・ナポット。 ヨー・エシュテート。
とうとう~妹が~帰って行った~♪
やったね~ようやくだね~♪
ちゃ~んと嫁ぎ先に~帰ったかな~?♪
ノンノン♪
わ~たしの~経営して~いるアパートに~♪
引っ越しただけな~のよ~♪

アホか! いやマジで愚か過ぎて笑い話にもならんわ!
お兄ちゃん、これまでの人生でここまでキレたことないわ! 
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