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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Eipic6-C古代遺失物管理部・機動六課~Forward~

 
前書き
本日は更新2本立て。今話は後編ですのでご注意を。

話の始まり前のプロローグ的な何か。1mmとストーリーは進んでおりませぬ。とりあえずフォワードの紹介といったところです。 

 
†††Side???†††

古代遺失物管理部・機動六課。あたしスバル・ナカジマが所属してる陸士部隊だ。元々あたしの所属部隊は陸上警備隊第386部隊の災害担当課で、転属扱いかな。小さい頃は誰かを痛くすることも、自分が痛くなることも嫌いで、だからそういう事が起きないようにずっと逃げてばかりだった。そんな弱い自分の事が本当はあんまり好きじゃなかった。

――そうしないと大事な人を守れないから。傷つけないで済めばそれで良い。けど、全てが話し合いで解決できるほど世界は優しくない。ごめんな。こんな夢のないことを話すべきじゃないんだろうけど、でも現実だ。だから俺は強くなりたい。守りたい人を守りたいから――

自分が痛いのは恐くて嫌いじゃないの?っていうあたしの疑問に、あの人はそう答えた。その時あたしが抱いた思いは、自分はやっぱり強くなった方が良いんじゃないかな、だった。そんなあたしにお姉ちゃんは、お父さんとお母さんと自分があたしの側に居るから大丈夫、って言ってくれた。でも一度生まれたあたし自身への疑問に、それで良いのかなって思いは拭えなかった。

――スバルは優しい女の子だ。強くならなくても、支えることは出来ると思う。強さで守ること、優しさで支えること、出来ることをやればいいさ――

そんなあたしに一番しっくり来る答えを与えてくれたあの人。お母さんも、お姉ちゃんも、お父さんも、あの人のことが好きだった。幼いながらもあたしだって、あの人のことをお兄ちゃんみたいだなって、好きだったんだと思う。だけどあの日、あの人はあたし達家族との約束を破った。

(判ってる。あの人は何にも悪くないんだってこと。もうあの時の、何も知らない馬鹿なあたしとは違う・・・)

お母さんは任務中に殉職した。お母さんが所属してた首都防衛隊は、隊長とお母さんの友達って人以外はみんな亡くなった。あの人だって死に掛けて、左目の視力や固有スキルを失ったって聞いた。それでもあの人は、自分よりお母さんの死に悲しんで苦しんでた。それなのにあたしは・・・

――うそつき! 一緒に帰って来るって言ったのに! おかーさんは大丈夫って言ったのに! 約束したのに! それなのに・・・! だいっキライ! うそつきなんてだいっキライ! うそつき! かえしてよ! おかーさんをかえしてよっ! かえしてよっ! 約束したんだからかえせ! おかーさんの代わりに・・・ルシルさんが・・・死ねばよかったんだ!――

あの人を、ルシルさんを責めた。しかも、死ねばよかった、なんて暴言。お母さんのお葬式の後、家に帰ったらあたしはお父さんに叱られた。でも怒った表情じゃなくて、とても悲しそうな表情だった。お父さんのその表情はとても印象が深くて、あたしの心に今日までずっと残ってる。

(あの日からのあたしは余計に自分の殻に閉じこもるようになった。ルシルさんのことやその友達だって人のことも心の奥底に沈めて・・・、弱い自分のままで時間を過ごした・・・。だけど、あの日・・・あたしは出会った)

4年前の空港火災。あたしとお姉ちゃんは、お父さんの部隊に遊びに行くために利用した空港で起こった大規模な火災に巻き込まれた。空港だけじゃなくてその周辺の街一帯までもが廃棄されるようなものだった。お姉ちゃんと逸れて、あたしひとり彷徨っていたところで火災に巻き込まれて、とっても恐い思いをした。

(だけど、そんなあたしを助けてくれた人が居た・・・)

なのはさん――高町なのは一等空尉。初めて会ったのは小さかったからうろ覚えだけど、本局でのお花見。次はお母さんのお葬式。そして空港。助けてもらった時、最初はなのはさんだって判らなかった。記憶の奥底に沈めていたからってこともあるけど、何より成長してた姿だったし。
念のために検査することになって、搬送された病院でお父さんやお姉ちゃんと会って、そこでなのはさんやルシルさん達が救助や消火活動を懸命に頑張ってくれたおかげで、あたしやお姉ちゃんが助かったって聞いて、記憶の奥底に沈めてた思い出が一気に蘇ってきた。そして・・・。

(何も出来ない自分が嫌になった。優しさで支えるだけじゃダメなんだって。お母さんやお姉ちゃん、それになのはさんみたく、強さと優しさを兼ね備えた格好いい自分になろうって)

それまで基礎の下の下くらいしかやってなかったシューティングアーツをお姉ちゃんから本格的に教わって鍛えてもらって、それにそれまで一切触れてこなかった一生懸命魔法の勉強もして、陸士訓練校を無事に首席で卒業できた。卒業後は陸士部隊の災害救助担当に希望配属されて、日々訓練や任務に明け暮れてた。あれから2年。あたしは今、なのはさんの居る部隊に居る。

「あ、おはようございます!」

「おはよう、スバル。今日も元気いっぱいだね。じゃあ、訓練もビシバシ行くこうっかな♪」

あの日以来からの憧れだったなのはさんが隊長を務める分隊に所属することが出来るだけでも幸せなのに、教導官としてのなのはさんに毎日鍛えてもらえる。なのはさんや八神部隊長たちの力になる、って胸を張って言えるほど強くないけど、スカウトしてもらったことを後悔させないためにも・・・

「スバル・ナカジマ! 精一杯頑張ります!」

出来ることは確実に、出来ないことも出来るように全力全開で頑張る、うん。機動六課の隊員寮・女子階(3階建てで、女子隊員は3階の男子禁制)の共同洗面所でなのはさんと朝一で会えたことに喜んだ。今日は1日、良いことが起きそう。

†††Sideスバル⇒???†††

機動六課に転属になって数日。あたしティアナ・ランスターは、お兄ちゃんが生前、とってもすごいんだ、って褒めちぎっていた戦技教導官である高町なのは一等空尉――なのはさんが隊長を務めるスターズの分隊員として過ごしている。陸士訓練校からの腐れ縁とも言える相棒(なんて小っ恥ずかしいから言えないけど)であるスバルと同じ分隊員だ。何が悲しくてずっと一緒なんだか。

(だけどそれ以上にあたしは幸運だと思うのよね)

あたしはいつか執務官になるって夢がある。元々は亡くなったお兄ちゃんの夢だったけど、今ではあたしの夢だ。そのためにはまず、もっと実力を身につけないといけない。そんなところに、管理局内の中でもトップクラスの知名度と戦力を誇るチーム海鳴、そのメンバーからの直々のスカウトでここ機動六課に入ることが出来た。
そこで直属の上司である戦技教導官のなのはさん、戦技教官のヴィータ副隊長からは戦闘技術を学べて、別の分隊長を務める執務官であるフェイトさんやその補佐官のアリシアさんからは執務官になるための試験対策などを教われる。

(これほど最高の環境はそうそうないわ。部隊の運営期間は1年。1年もあるって言えるけど、逆に1年しかないとも言える。けどこの1年で強くなって、見返してやるわ。ランスターの弾丸は全てを撃ち抜くってことをね)

お兄ちゃんの口癖だった、ランスターの弾丸は全てを撃ち抜く。その言葉を、お兄ちゃんの死を愚弄した地上本部の連中に認めさせてやる。そのためには教わった戦闘技術や知識などは完全にものにしないといけない。

「ぅあ~」

いま居るのは隊員たちの執務オフィスで、実働部隊の前線組(フォワード)のあたし達も訓練がない時は普通にデスクワークをこなすんだけど、「うっさい、スバル。他の人に迷惑でしょ」スバルが唸り声を上げて仕事をたびたび中断する。

「だって~。デスクワークってやっぱ苦手なんだもん~」

「あんた、前の陸士隊でもデスクワークでぶー垂れてたわよね。ちゃんとしなさいよ? どこの部隊へ行ってもデスクワークはあるんだから、ちゃんと出来ないと苦労するわよ」

「あーい」

サクサクと仕事を片付けた直後、昼休みを知らせるチャイムがオフィス内に鳴る。キーボードのキーを打つ以外に音が無かったオフィス内が一気に人の声に溢れる。スバルは「あー、お腹空いた~!」なんて大きな腹の音を鳴らした。

「午後からはなのはさんの訓練だし、お腹いっぱい食べておかないと絶対に乗り切れないよ~」

「あたしはそこそこ胃に空きを作っとくわ」

「え~。あ、ダイエット? 体に良くないよ?」

「違うわよ。なのはさんのシゴキが待ってるっていうのに、お腹いっぱい食べたらリバースするっつうの」

訓練校や前所属の陸士隊でも日々厳しい訓練や仕事をこなしてきたけど、なのはさんの指導はそんなのまだ手緩いって感じですごいハード。終わる頃にはまともに話せない程にヘトヘトになっちゃうし、動くのも億劫になるレベル。あんな訓練を1年も受けて何も成長しなかったら、完全に自分の責任よね。

「あたしはリバースしないけどな~」

「あんただけよ」

スバルと一緒にオフィスを出て食堂へ向かおうとした時、「あ、待ってティア」スバルがあたしを呼び止めたうえで「おーい、エリオ、キャロ!」隊員たちの中で特に小っこい(さらに小さい、リイン空曹長も居る)2人に声を掛けた。
実働部隊のフォワードを担当する4人の内の2人、エリオとキャロ。キャロの側には、あの子の友達だっていう小さな竜・フリードリヒが、静かな羽ばたき音で飛んでる。フェイトさんを隊長、シグナム二尉を副隊長とするライトニング分隊のメンバー。

「エリオとキャロもこれからお昼なんだよね? 同じフォワードのチームメイトとしてもっと親睦を深めたいから、一緒に食べようってお誘いなんだけど・・・」

スバルがあたしを横目で見てきたから「そうね。2人が良ければ一緒しましょ」って、あたしからも誘ってみる。するとエリオは「あ、はい! ご一緒いたします、ナカジマ二士!」って佇まいを直したうえでそう答えて、「お誘いお受けします、ランスター二士!」キャロも堅っ苦しい口調で答えた。

「ん~・・・、なんかな~」

「こう・・・もっと柔らかい感じで良いわよ、あたし達の呼び方」

「そうそう。所属してる分隊は違うけど、フォワードっていう同じチームなんだからもっと砕けた感じで♪」

あたし達の上司であるなのはさん達も、緊急時以外は本当に友達と話してるような感覚だし。あたし達もそういう関係で良いと思うのよね。

「えっと、ではなんとお呼びすればよろしいでしょうか・・・?」

「普通に名前で良いよ。あたしのことはスバル、ティアのことはティアって。ね? ティア」

「ええ、あたしもそれで良いわよ」

スバルはあたしの愛称・ティア呼びで、エリオとキャロだけは普通にティアナ呼びはなんか感じ悪いしね。あたし達の話を受け、「はい。じゃあスバルさん」エリオと、「ティアさん」キャロは呼び方を変えてくれたわ。

「うんっ。またちょっと親睦が深まったところで、混んでくる前に食堂に行こうか」

「「はいっ!」」

それからあたし達は食堂へ行って、それぞれ好きな料理を選んで注文。4人で分担して料理をテーブルに運んでくる中、「なんか静かよね」その準備中にあたしはスバルと話してるんだけど、エリオとキャロは一言も話さずに黙々と料理を運んでくる。スバルも「うん。あの2人、全然喋んないね」同意してくれた。とりあえず料理を運び終えて、4人で席に着いて食事を始める。

「あのね、エリオ、キャロ」

「「はい?」」

「隊舎であんた達と出会ってから4日、その間ずっと思ってたんだけどあんた達ってお互いに全然喋んないわよね。2人って兄妹のような関係って聞いたんだけど?」

フェイトさんを保護責任者としてるエリオとキャロ。関係としては兄妹(姉弟って感じじゃないわよね・・・?)が一番しっくりくるわ。

「ルシエさんと会ったのは六課に来た時が初めてなんです。写真などでは何度か見たことがあるんですけど・・・」

「通信とかもなかったわけ?」

「あ、はい。写真だけです」

「わたしとモンディアル三士は、なんと言うか事情と言いますか、そうゆうので別々のところで過ごしていましたので・・・」

エリオとキャロが少し困った顔を見せる。あたしは「悪かったわね。ちゃんと事情も聞かずに勝手なこと言って・・・」いろいろと事情を抱えてるっぽい2人に対して謝る。正直、あたし達も2人とはちゃんとしっかりと話してないのよね。これを機会にもうちょっと話す時間を作ろうかしら。

「あ、いえ、そんな! お気になさらないでください!」

「フェイトさんやアリシアさんからも、なるべく2人仲良くしてほしいと言われていますので」

「そっか。うん、そうよね、お母さんと・・・お母さんと・・・」

「「「・・・??」」」

そこまで言ったところであたしは口を噤んだ。フェイトさんをお母さんとすると、フェイトさんのお姉さんであるアリシアさんは伯母さんと言うことになるのよね。仮にもフェイトさんと双子なアリシアさんを伯母さん呼びして良いのかちょっと判らない・・・と言うより、なんか呼びづらい(たとえ年齢に関係ない呼称だとしても)。

「えっと・・・、うん、保護責任者(おや)の言うことはちゃんと聞かないとね」

フェイトさんとアリシアさんを一纏めにすることで難を逃れた。あたしの言葉をエリオとキャロは「はいっ!」しっかりと受け入れてくれた。

†††Sideティアナ⇒???†††

わたしの保護責任者になってくれたフェイトさん、そのお姉さんのアリシアさん、そしてわたしにフェイトさん達を紹介してくれたルシルさんとアイリの居る、機動六課・実働部隊の前線組フォワードへ配属になって数日。
そして今はフォワード4人で、隊舎内にある食堂でお昼ご飯を頂いてる。スバル・ナカジマ二等陸士とティアナ・ランスター二等陸士はスターズ分隊。わたしと同じフェイトさん達が保護責任者になってるエリオ・モンディアル三等陸士のライトニング分隊。

「――でさ、アルトってお兄さんばっかの所為で、7歳くらいまで自分が男の子だって思いこんでいたんだって」

「うわぁ。それマジ?」

スバルさんとティアさんの会話を聞きながら食べてると、「・・・本当に会話が無いのね、あんた達・・・」ティアさんが少し呆れた風に呟いた。さっきもモンディアル三士と全然喋らない、って言われた。フェイトさんやアリシアさんには、モンディアル三士と仲良くねって言われてるけど・・・

(仲良くする方法が判らない・・・)

同い年の子ってモンディアル三士が初めてだから、どうして良いのか判らなくてちょっと困ってる。これまで配属された陸士部隊はみんな大人の人だった。特務隊でルシルさんやルミナさん、初めて子供と呼べるアイリと会えたけど、お話しはアイリからしてくれてたから困ることはなかった。

「「すいません」」

「別に謝んなくて良いよ2人とも。・・・ティア、エリオとキャロも会ったばかりなんだから急かすのは良くないよ?」

「そうなんだろうけどさ。アンタみたく無闇に誰とも仲良くなれ、なんて言わないわ。けど、あんた達はライトニング分隊で前線じゃ背中を預け合うのよ? もちろんあたし達だってフォワードチームとしてフォローはするわ。でもそれにも状況によっちゃ限度がある。少なくともコミュニケーションはしっかりしておいた方が、あんた達の親も安心するんじゃない?」

「「あ・・・」」

隣に座るモンディアル三士に顔を向けると目が合った。スバルさんも「あー、そうだね。いざという時はちょっと大変だね~」ティアさんの意見に同意した。わたしもティアさんのお話には納得できる。だから・・・

「頑張りましょう、ルシエさん!」

「頑張るであります、モンディアル三士!」

ちゃんとコミュニケーションを取れるように決意すると、「いやだから、まずはそれを直しなさい」ティアさんがガクッと肩を落として、「あはは・・・。うん、だね」スバルさんも呆れ笑い。何がいけなかったのか小首を傾げてると・・・

「呼び方だよ、2人とも。普通に、エリオ、キャロ、で良いんじゃないかな?」

「あと堅苦しい言葉使い。それもやめた方が良いんじゃない? 同い年なんだしさ」

「うんうん。さっきので言うと、頑張ろうキャロ、うんエリオ、くらいで良いんじゃない?」

「「なるほど・・・」」

言われて初めて気付いた。とりあえず「えっと、エリオ・・・君?」で良いのかな。さすがに呼び捨ては気が引けちゃった。モンディ――ううん、エリオ君も「キャ、キャロ・・・?」どうしてかは解らないけど、顔を赤くしながらだけどわたしの名前を呼んでくれた。

「ま、最初はぎこちないでしょうけど追々慣れていけば良いと思うわよ」

「話のネタに困ったら・・・そうだね~。フェイトさんやアリシアさんのことで話してみたらどうかな? 共通の話題だし、きっと上手く行くと思うけど・・・」

スバルさんとティアさんにアドバイスを貰って本当に良かったって思う。フェイトさんやアリシアさんとの思い出話ならたくさんあるから、いつまででもエリオ君とお話しが出来そう。

「じゃあ時間に余裕がある時とかに話そうか、キャロ」

「はい。じゃなくて、うんっ!」

エリオ君とお話しすることを約束して、スバルさんやティアさんと一緒にお話ししながらお昼ご飯を済ませた。少しずつ混雑してくる食堂から出て、午後からのなのはさんの教導に備えて少しのんびりすることにした。
食堂を出ると、スバルさんはクラエッタ二士に呼ばれて、ティアさんは訓練開始まで自主練習するということで、先に外に向かった。残されたわたしとエリオ君は訓練開始までの30分ちょっとを使って、スバルさん達からのアドバイス通りにフェイトさんとアリシアさんとの思い出をお話しすることにした。

†††Sideキャロ⇒???†††

以前は世界を憎んでた僕も、今は世界を守るために管理局員としての仕事を頑張ってる。フェイトさんとアリシアさんとアルフが、僕に生きる目的と未来をくれたから。フェイトさんは僕が管理局員、中でも戦闘行為も仕事に含まれるような役職や部隊に就いてほしくなかったみたいだった。フェイトさんのお姉さんであるアリシアさんは・・・

――戦える男の子はポイント高いよ。だって女の子は守ってもらいたいものだしね~――

僕が騎士として強く成長してくれることを応援してくれてるみたい。今はまだフェイトさんにもアリシアさんにも全然通用しない僕の騎士としての実力だけど、けどいつかは2人(アルフは引退しちゃったから)を守れるほどに強くなりたい。それも目的の1つとして、僕はこの機動六課への参加を決めた。

(戦闘のプロである戦技教導官のなのはさんに鍛えてもらえる)

フェイトさん達からなのはさんを始めとしたチーム海鳴のみなさんの話を聴いてるし、僕も管理局の研修生になってから自力で調べてみた。今の僕の年齢の頃にはフェイトさん達はいろいろな偉業を成し遂げてた。ロストロギアに関連する事件を何度も解決したって。そんなすごい人たちが居る部隊・機動六課への参加は、僕を成長させてくれると思った。

(強くなって、六課やフェイトさん、アリシアさんの力になりたい)

そんな僕は、フェイトさんを隊長とするライトニング分隊に配属された。副隊長は古代ベルカ式を扱う騎士のシグナム二尉。僕は近代ベルカ式の騎士見習いだから、シグナム二尉からも騎士としての戦い方や教えを教わりたいって思う。分隊員には僕と同い年の女の子、キョロ・ル・ルシエさん――キャロが居る。竜のフリードを使役・・・というか友達として接してる。僕も少しずつフリードに好かれるようになってきた・・・かも。

「――それでね。アリシアさんってばフェイトさんのお姉さんなのに子供っぽくて♪」

「あ、うん、それ判るよ! フェイトさん達と遊園地に行った時、アリシアさんが一番はしゃいでいたし!」

キャロは、僕と同じようにフェイトさんを保護責任者としてる。事情はフェイトさん達から伺ってる。少数部族の出身だけど、竜使役の才能が凄まじい所為で里から追放されたって。その話を聞いた時は、どうして?としか考えられなくて、今でも理解できない。

(でもキャロは今、笑ってる。うん、だから良いと思う)

フェイトさん達との思い出を話してくれるキャロの声に耳を傾けて、相槌を繰り返す。時折ボクからも思い出を話して、「うん、そうだね♪」キャロも僕の話に相槌を打ってくれる。話しだしたらもう止まらない。次々溢れてくるフェイトさん達との思い出話に花を咲かせてる中・・・

「お待たせ~♪って、あれ? エリオとキャロだけ? ティアは・・・?」

クラエッタ二士に呼ばれていたスバルさんが戻ってきた。僕とキャロしか残っていないことに疑問を抱いて、ティアさんがどこに行ったのか訊いてきた。

「ティアさんなら自主練習をすると言って先に行きましたよ」

「えっ、そうなの!? そっか、ありがと♪ あたしも先行くから、エリオとキャロも遅刻しないようにね!」

「「あ、はいっ!」」

スバルさんと手を振り合って一旦お別れ。それから思い出話を少しした後、時間的に見てそろそろ訓練服に着替えた方が良いって思って、「一旦中断しようか?」そう伺ってみると、「そうだね。また夜にでも♪」キャロは受け入れてくれた。僕たちも更衣室へ向かおうとした時、「あ・・・!」キャロが食堂入り口を見て声を上げた。そこに居たのは、銀色の髪と蒼と紅の光彩異色、そして赤い局制服を身に纏ってる男の人と、真っ白な髪、陸士隊制服と白衣を着た女の子。

「ルシ――じゃなくて、セインテスト調査官、アイリ♪ お疲れ様です!」

ルシルさんとアイリさんは、フェイトさん達と同じチーム海鳴のメンバーだ。そしてキャロを最初に保護してくれた恩人。ルシルさんは調査官という立場だから、親しいフェイトさん達にも素っ気ない態度を取らないといけないって悲しんでた。聞いてた通り優しい人だった。アイリさんはキャロの最初の友達で、この数日間の訓練で負った怪我をいつも治してもらってる。

「キャロ、それにエリオ! お疲れ様。もうお昼は済ませたの?」

「うん。エリオ君やスバルさん、ティアさんと一緒に頂きました♪」

「セインテスト調査官とアイリ医務官はこれからですか?」

「そうなの。ね? セインテスト調査官♪」

「ああ。そうだ。『昼食くらいはゆっくり食べたいものだよ。1日中デスクワークで肩も目も疲労が溜まってばかりだ』」

これまで黙ってたルシルさんは冷めた声色での口頭と、優しい声色の念話を使って答えた。調査官は出向先の部隊員との会話もある程度会話を記録しないといけないらしく、だから必要最低限の会話しかしない。だけど念話はその対象にならないってことで、ルシルさんは限られた人にだけ念話で話してくれる。僕とキャロもその内に入ってる。たぶん、キャロへの配慮。

「お疲れ様です、セインテスト調査官。そしてアイリさんも。『調査官のお仕事は大変だって聞いてます。お体には気を付けてくださいね、ルシルさん♪』」

「僕たちはこれより訓練なので・・・『これで失礼します、ルシルさん!』」

ルシルさんとアイリさんに敬礼。

「そう? 頑張ってね、キャロ、エリオ♪」

『なのはの教導も始まったばかりで本当に大変だろうが、乗り越えれば必ず将来に役立つ経験だ。頑張ってくれ』

「「はいっ!」」

食堂の中へ入っていくルシルさんとアイリさんを見送った僕とキャロは、訓練服に着替えるために更衣室へと向かった。

†††Sideエリオ⇒なのは†††

今日も無事にフォワードの戦技教導を終えた。スターズのスバルとティアナは、陸士部隊の中でも最も重労働な災害担当だったこともあって基礎はなかなか。まぁ私の教導に耐えられるだけの最低の基礎は出来ていなかったから、この4日間で鍛えてみた。これでいよいよ明日から本格的に訓練を始めることが出来るよ。

「なんや嬉しそうやな、なのはちゃん」

「何か良い事あった?」

はやてちゃんとフェイトちゃんがそう訊いてきた。私たちは今、はやてちゃんとリイン、そしてルシル君の執務室である部隊長室に居る。そこでちょっとしたお喋りを楽しんでた。

「え? あー、うん。フォワードのことでちょっとね。鍛えれば鍛えるだけ伸びるな~って思って」

「そうなんか。手応えはあるってゆう事なんやね」

「うんっ、それはもう♪ 呑み込みも早いし、鍛えてるこっちまで楽しくなってくる。いつ出動が掛かっても良いように取り急ぎ準備は終えて、それぞれ伸ばしていく方向性もかなり見えてきたよ」

「エリオとキャロも?」

「もちろんだよ、フェイトちゃん。エリオは高速機動と電気資質を武器に、突撃・殲滅型ガードウィング。キャロはフリードリヒとヴォルテールの竜2騎の使役を切り札として、支援中心に後方型魔導師の完成形を目指すフルバック」

エリオにはフェイトちゃんから教わった魔法がいくつもあって、戦い方もフェイトちゃんにそっくり。

「スバルとティアナはどう?」

「うん。スバルは一撃必倒の爆発力に頑丈な防御性能もあってフロントアタッカーの理想型を目指していくつもり。ティアナは射撃と幻術を極めて、味方を活かして戦う戦術型のガンナー、ポジションはセンターガードだね。で、ティアナをフォワードのリーダーにしようと思う。ちょこっと熱くなりやすいけど指揮官向きの感覚持ちだし、自然と他の3人を引っ張ってくれてる」

首都航空隊のティーダ一尉の忘れ形見であるティアナ。ティーダ一尉の殉職には心を痛めた。教導隊として一緒に空を飛んで、本人からティアナの事についても聞いていたから尚更。だからこそ私の教えられること全てをティアナに叩き込んで、どんな任務に就いても生き残れるような魔導師に育て上げたい。ティーダ一尉を安心させたいから。

「とは言っても、今はまだチームワークとコンビネーションをきっちり学ばせる段階で・・・。いつでも出動できるとは思うけど、どっちの分隊もフル出動はまだ避けたいかも。もう少し確実で安全、安定した戦術を教えたいって考えてる」

4人のデバイスについてもまだ完成しきれてないし。すずかちゃんの弟子であるシャーリーがデバイスマイスターとして、4人のデバイスの開発・調整などを一手に引き受けてくれてる。でもスバルのオリジナル魔法の発動を、デバイスからも出来るようにするのにちょっと苦戦中みたい。

「ん、了解や。そこはなのはちゃんやフェイトちゃんら隊長陣が居ってくれるし。フォワードの配置などについては、なのはちゃんに裁量にお任せや♪」

「うんっ。・・・でもどっちの分隊もそれなりに問題も抱えてて・・・」

「「問題・・・?」」

「ライトニングは絶対的に実戦の経験値が少な過ぎる。まぁそれ以外は特に問題ないから、これからの出動で何とかなるから良いとして。スターズは地力も経験もそれなりにあるけど、2人ともとんでもない突撃思考なんだよね。それはきっちり厳しく教えて直させないと危ない危ない」

リーダーになるティアナまでもが猪突猛進になるとフォワード全体が壊滅しやすい。スバルの手綱はティアナが握っているから、ティアナさえしっかりしてもらえば連鎖的にスバルも直るはず。

「あー、なのはちゃんが小っちゃい頃みたいなもん?」

「全力全開!だね」

「えええ~~~? いくら私でもあそこまで酷くなかったと思うんだけどな~」

「「あはは!」」

フェイトちゃんとはやてちゃんが笑いだす。からかわれたんだって解って「もう。にゃはは♪」私もつられて笑いだす。とにかく私のやるべきことは、立ち向かうための意志に、撃ち抜く力と元気に帰ってくる技術をしっかりも経させてあげること。そのために、やっぱり全力全開であの子たちとぶつかっていかないとね。

 
 

 
後書き
グ・モロン。グ・ドッグ。グ・アフトン。
前後編ともにプロローグ的なものとなりまして申しわけないです。ここら辺はカットしてもいいのかもしれませんでしたが、本作限定の設定も多分に含まれていたのでこうなりました。

話は変わりまして、テイルズオブベルセリアがようやく発売され、私も予てより予約していたので本日よりプレイ開始です。ので! 申し訳ないですがまた更新が遅れます。アイゼンかっくぃ~! 
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