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ランス ~another story~

作者:じーくw
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第3章 リーザス陥落
  第51話 其々のご褒美



~ラジールの町・リーザス解放軍指令本部~


 ユーリとかなみは、ランス達を見送った後、真知子の言うとおり、とりあえず戻ってきた。

 だが、内心、正直に言えば、今回ばかりは あまり良く思っていない。なぜなら、あの膨大な資料を目の当たりにしてしまったからだ。ランスの様にあからさまな反応は出さないものの、完全な担当外なのだから。

「あー、真知子さん。悪いんだがオレは冒険者なんでな。……あまり役に立つとは思えないぞ? 情報を扱うプロの君らに比べたらさ?」

 ユーリはそう言っていた。  
 実を言うと、さっきのランスとのやり取りは、真知子なりのランス・回避術なのだが……、どうやらユーリは間に受けてしまったようだ。あの情報誌の内容を見たら仕方がないだろう。
 真知子はそれを見越しつつ、笑みを見せていた。

「ふふふ。はい。それは判ってますよ。情報を武器なんですから。誰にでも出来るものじゃありません。私達は、ユーリさん達の様に戦えない変わりに、ユーリさん達に出来ない事をしてますから。複雑な暗号の様にもしてます。適材適所と言う言葉の通りですね」

 真知子は、笑顔でそう答えた。
 それを見たユーリは漸く判ったようだ。ランス達と自分たちを離したかったと言う事を。

「……ん?? なら何だ。何か用があったのか?」
「私も必要でしょうか? 隠密、諜報であれば、役に立てると思いますが……」

 かなみもなぜここに呼ばれたのかよく分からなかった様だ。
 最初はユーリの様に情報の処理の役に立てるとは思えず同じように答えようとしたんだ。

「あら? ユーリさんは兎も角、かなみさんも、お忘れみたいですね。最初から説明をしますよ。本格的な作戦は明日が本番です。今日は囁かながら休息をと、リーザスの将軍様たちから計らいがありまして」
「……えっと、え?」
「話が見えないな、真知子さん? 本題に入ってくれないか? オレ達は何をしたらいいんだ?」

 ユーリは、意味深に真知子が言っているのは理解できたのだが、何のことなのかは判ってない為、そう聞いていた。視界の端にいる志津香は、どこか落ち着かない様子で、忙しなく裾やら帽子やらを触っているし、ランも上の空、いや 顔を赤らめている。ミリは、ニヤニヤと笑いながら腕を組んでいる。……ここまで客観的に見てみても嫌な予感が走るのは気のせいではないだろう。

「あっはっは!! もー忘れちゃったのかしら? ユーリ!!」

 そんな時だ。
 『どーん!』と言う大きな音を立てながら乱入してきた者達がいた。

 1人は……、勿論ロゼだ。

 高らかに言いながら入ってきて、露出の多いその格好を隠しも惜しげもせずおっぴろげている。この場に男が少ないけれど、と言うかユーリしかいないのだが、それでも幾らなんでもやりすぎだと思うのは仕方がないだろう。
 そして、勿論ロゼだけじゃない。ロゼ以上にテンションを高くさせながら、乱入してくる。

「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃーん! っと、トマトですかねー!! トマトっ、只今見参ですぅ!!」

 そして、少し遅れてトマトが声を上げた。当然ながら、ロゼにも負けていない。

「え? え? ……ぁあ///」

 かなみは、何やら察した様で、見る見る内に、カーーっと顔を赤らめ出していた。

「………ふんっ」

 トマトの後ろで、何やら機嫌が悪そうにしているのは志津香だ。

「さぁさぁ、楽しもうぜ!」

 そして、そんな志津香の背中を押しつつ、入ってくるのはミリ。

「はぅ……///」

 ミリの後ろで、もう既に顔を赤くさせているのは、ランだ。


「はぁ……、さっきまでいなかった癖に何でタイミングを見計らったかの様に、皆 出てきてるんだ?」
「あーっはっはっは! あ~んな難しそーな、面倒そーな、シリアスな場面に入るわけないじゃな~い。そんなのカイズの町だけにして、っての」
「……AL教の総本山でかよ。っと言うより、そんな場所にロゼでも呼ばれるんだな?」
「随分と失礼な物言いね? ユーリ。あの戦いって、このロゼ様のスーパーなアイテムのおかげじゃなかったっけ??」
「その点は、ありがとうございます」

 確かに、その点だけは、間違いないので、ユーリは素直に頭を下げた。

 負傷兵の手当だけでも有難いし、ここまで早くに戦線に復帰出来るのも驚異的なのだ。それも、一人一人が優秀であるカスタムの軍なら尚更だろう。

「敬語なんて、辞めて。鳥肌立っちゃうわ~(棒)」
「それ、ロゼに言われたくない」

 ユーリはため息を吐きながらそう言い、棒読みのロゼはニヤニヤと笑っていた。

「それで? 何だって言うんだ? ロゼがいる以上、良い予感は全然しないが……」
「ふっふっふー、ですかねー。今日という日をトマトは待ちわびていたのですかねー! 幸運スキル、バンバン垂れ流すですかねー!!」
「あら? 確率の問題なら、私も負けませんよ。占いと言う強力な武器だってありますし」
「うぅ……私、運に関しては……、ちょっと自信が……」
「ふぇっ!? や……やっぱり、そう言う形式で行くんだ……。でも、当然かなぁ……」

 大いに盛り上がってくれているのは結構だが、わけがわからない。
 そんなユーリの為に、これまた何処から持ってきたのか、ロゼは大きな大きな方眼紙を取り出して……、真知子と一緒に広げた。そこに書かれている《モノ》を見て仰天してしまう。



~第一回 ユーリさんと☆色々☆楽しめる券の抽選会《恋人もあるかもっ?》~



 と言う大きな大きな字で書かれていたからだ。

 これは、近眼だろうが遠視だろうが乱視だろうが、老眼だろうが見られそうな大きさだ。流石に失明してしまっている人は見れないと思うが……。


「って うぉい!!なんだよっ!それっ!!」

 仰天し、フリーズしかけていたユーリだったが、今回は 前回よりも早く、そして 盛大に突っ込み声を上げていた。そのタイミングはバッチリであり、その道の突っ込みのプロになれる!と思われる程に……。 

「あら? これ、読めないのかしら?」
「読めるわ!! ってなんだよ! これ!! いつの間にこんなの作った?? ってか、なんだ? これ! 色々凝った作りをしてっ!」

 更に、ゴロゴロと何か大きな物を運んできていた。

 巨大なボードゲーム?とも思える物だが、よく見てみれば、《アミダクジ》の装置の様だ。クジを辿っていくと……ゴールでは、金やら銀やらの板っ切れが置かれており、そしてまるで、アミダクジを妨害するかのように、小さな虫?みたいなのが、もぞもぞ動いている。……何やらロボットの様だ。

 そして、アミダのスタートにはボタンが付いている。どうやら、それを押せばスタートするのだろうか?

「ふふ、これから、説明するわ! これを押したら赤い光が一定速度で、発射される! そこで、もしこの動いてるヤツに接触したら、その人は、今回のサービスは、お預けだからね? このお邪魔虫ロボは完全全自動(オール・オート)! 不正の類は一切なく、ガチンコよ! その辺は、私じゃなくて、マリアと香澄のお墨付き! 彼女たちなら安心でしょ?」
「はーい! 頑張っちゃいました!」
「はい。チューリップ3号の合間に……。た、大変でしたが……」

 最後に入ってきていたマリアと香澄はそう答えていた。どうやら、全面的に協力をしてくれているようだ。

「うっしゃー! 幸運スキルは負けないですかねー! この間なんて、連続15回も宝箱開錠に成功したんですからねー!」
「うふふ、トマトさん。それは幸運と言うより宝箱スキルって言えるんじゃないですか?」
「むぐっ……、だ、ダメですよー、真知子さん。トマトの動揺を誘うようなのは禁止ですかね!」

 真知子とトマトは其々の健闘を願っている? 様であり、そして、それを横目で見ていた志津香はさらにため息。

「はぁ……何で皆こうも……」

 ため息を吐いている志津香。そしてその志津香を見てさらに笑うのがミリだ。

「んっん~? ここにいるって事は、志津香も参加するんだろ? 参加しないなら、な~~んで、来たんだ?」
「わ、私は副賞が欲しいのよっ! き、金券も良いって言ってたしっ! そ、それに、そ、そろそろ魔導書も欲しいシリーズの続編が……」

 大慌てでそう言う志津香。この場所での失言は もう直結(・・)してしまうから、要注意なのである。

「あぅぅ……、何だかちょっと自身が」
「かなみさん。頑張りましょう。……正直な所、私も……ですが」

 そう、《例の世界》では 似たような属性を持っている? と思われている不憫な扱いをされているかなみとラン。 だが、それはIFであり、この世界では関係ないのである。……多分。


 キャイキャイはしゃいでいるカスタムの面々。忘れ去られているのはユーリ君だ。

「こらぁ!! オレをダシに遊ぶなっ!! つーかそれに、オレは何一つ納得してないぞ! 何勝手にやってんだぁっ!!」
 
 さらにさらに、盛大に突っ込みを入れていた。今回は、ロゼにではなく、これに参加するメンバー達に向かって。そんなユーリを見たロゼはあからさまに表情を変えた。

「あーら……? ユーリは、こんなに頑張って町を守ったコたちを労ってもくれないのかしら……? 文字通りの命懸けだったのに……。なのに、拒むなんて大の大人がするような事じゃないわよ?」
「うぐっ……」

 簡単な、そして安い挑発だと思えるが、これはユーリには特に効くのである。《大人》と言う単語がついてしまえばだ……、それに丸っきり的外れな事でもない。それに確かに労うのは必要な事であり、ユーリ自身には別段必要としないが、慰安婦も戦士には必要だとされている。

 だが、カスタムの主力は女といっても言いのだから、この場合はまた違ってくるだろう。……でも、ユーリが、『自分には関係ない!』と言ってしまえば、確かにそうなのだが、彼女達と深く関わっているので、そうも言ってられないのである。

 ……普通の男なら 滅多にない機会なんだし、たくさんの女性。それもキワモノもいたりするが、外見から考えたら間違いなく美少女達。……そんな彼女達から求められたら、普通であれば、喜ぶようなシチュだが彼には関係なしの様だ。超鈍感(すーぱーどんかん)な彼には……。

「んで、オレにどーしろって言うんだよ……」
「おほほっ! だから、皆にサービスサービスっ? って訳よ! ま、今回は皆頑張ったからね、全員にプレゼントー! って訳にもいかないでしょ~?だから 抽選会! プレイ内容に勿論差があるから運試しよねー」
「………」

 ユーリは、ロゼの言葉を訊いて、完全にそっぽ向く。
 どうやら、完全にからかわれて遊ばれると思ってしまったようだ。その姿を見たらはっきりと判る。

「(……超鈍感)」

 志津香は、その姿を見て再びため息をしていた。ここまであからさまであれば、普通は判る。……志津香自身が、様々な人達に察しられているから、さらに彼女自身がそう思ってしまっているのは、ここだけの話。

「(……ユーリさんと、い、いろいろ?? 楽しむ?? そ、それに、こい……こいび……っっ///)」
「(一緒にいられるだけでも……な、なのに……/// あ、あぅ~ わ、私いま絶対顔真っ赤だよ~……///)」

 かなみは、かなみで今回のイベントの事で頭がいっぱいの様だ。不幸属性と言う言葉は、以前頭の中で響いていた事、なのだが……今は忘れて全身全霊をかけているのである。それは、ランも同様に。

「ふふ、ユーリさん。そんな複雑に考えなくてもいいですよ?」
「……ん?」

 訝しみながらもユーリは真知子の方を向いた。

「この所、やっぱり皆戦い続きで疲れてしまってますからね? 英気を養うといった意味でも、って意味です。一口に休むと言っても、色んな方法があるでしょう? 楽しく過ごすのだって、良い休息です。抽選と言う事ですしね? 何人かと楽しく遊ぼうと言う事ですよ」
「……ああ。そうだな」

 ユーリはその真知子の言葉に頷いた。あの夜の事を思い返せばそうだ。

「だが、いろいろって何だよ……それに、何で楽しむ事が『恋人もあるかもっ?』 って事になるんだ? まぁ、それは置いとくにしても、なら別にオレじゃないくたって良いじゃないか」
「ま、その辺は書かれている内容次第だって思うけどね~。それに、あ~ら? ユーリは、皆がランスの餌食になっちゃっても良いっていうのかしら?」
「……男はランスだけじゃないだろうに」
「いやー、私たちってみーんな、初心(うぶ)な乙女達だからね~、初対面の男の子と会ったらきんちょーして だめなのよねー(棒)」
「……どの口が言ってんだ。それに皆だって、大勢の男相手に無双してただろ……」
「トマトは、ユーリさんとが1番なのですよー!!」
「ぅ……、わ、わたし……も……」
「っ~~~」
「……ふん」

 大体の反応は似たり寄ったりである。この中で一番積極的なのが、トマトだろう。だが、それと運は全く関係ないので、皆にチャンスはある。

 それに、確かにカスタムに若い男性は……、ちょっと不足している。戦争があって、負傷していると言う意味でも。



「(でも、さっきのは流石は真知子さんですかねー……、ユーリさんに優しい言葉をかけてポイントゲットされちゃいました……。でも)」

 トマトは、真知子とユーリのやり取りを間近でみて そう感じていたようだ。大本命のように思えていたのは志津香の事だったが、認識を改める必要があると。……侮れない、したたかさを持っている真知子も。そして、ユーリと共に助けに来てくれたかなみと言う女性も。なんてライバルが多いのだろうか。

「(生まれて初めて男の人を好きになったんですからねー! 負けないですよっ!)」

 さっきまで、賑やかだ、と思える程声を上げていたトマトだったが、ここに来て、密かに闘士を燃やすのだった。

「(わ、私も……頑張ったんだもんっ! 迷惑をかけちゃってまだ恩義を返せてませんし、償いもしきれたと思えませんが……それでも、少しくらいなら……)」

 ランも同じ思いだ。最初から、トマトの様に声に出す事が出来ていたとすれば、また違った展開だったかもしれない。と、意味深な言葉だけを残しておこう。

 日頃の不運は、全てはこの時の為、と考えれば……気合が入ると言うものだろう。

「(はぁ……、皆が残る……と言うよりロゼやらマリアが何かこそこそしてる時から嫌な予感がしてたけど……)」

 志津香はロゼ達をみながらそう思う。

 自分も疲れているんだし、戦いが終わったばかりだから、ユーリも勿論疲れてる筈。だから、こんな時くらい休ませてやれれば……と思ったりしてる。……昨晩、色々と管理外したり、酷使もしたりしたのだから。

「(でも、……帰れないわ。絶対)」

 だけど、最早、志津香も後退のネジは無い。その事はロゼもマリアも判っており、志津香の事をニヤニヤと見ていた。……志津香は気づいていない。気づいていたら、またいつぞやのカスタムの夜で行われた《リアル鬼ごっこ in カスタム》が始まってしまうだろうから、良かったのである。時間は有限なのだから。

「(ゆ、ユーリさんと……、だ、ダメダメ、まだ当たった訳じゃ……それに、リーザスも大変なんだし……、あ、でもでも、やっぱり適度な休息……よね? ……うん)」

 かなみも、この時だけは……ユーリの言葉通りする事にした。ずっと、リーザスを、そして親友を想っていた彼女だったけれど。

 この時くらいは許してくれるだろう、多分。

「ふふ、オレも楽しそうだから、乗る口なんだぜ? ユーリよ」

 参加者の中で、ミリはユーリの傍へと向かってそう言っていた。この辺りの余裕が流石はミリだと言えるだろう。

「まぁ、ミリはいつもそんな感じだな。……オレ見て楽しむとか、良い性格って言えないぞ」
「ははは! まぁ良いじゃねえか。殺伐としてたんだ。たまには……よ?」
「はぁ……もう判った判った。付き合うよ」

 最後にはどうにでもなれ。と言わんばかりにユーリは頷いた。

「よっしゃー! ユーリからOKを貰ったわぁ、心置きなくバトるわよ!」
「気合充分ですかねー!!」
「……バトルって。結局は運勝負じゃない!」
「……頑張ります」
「ふふ、さてと……確率論。ある程度のシュミもしておこうかしらね。占いもしておいてと……」
「腕が鳴るぜ~!」
「……わ、私も(あぅ……私ってここぞで運がないから……)」

 参戦する女性は、トマト、志津香、かなみ、ミリ、真知子、ランのカスタムの女性6名。

 マリアは、口を挟まずにニヤニヤと見ていた。
 明らかに動揺しっぱなしである一番の親友の志津香の方を。……口を挟まないのは、これ以上言えば本当に口裂け女の様になりかねないからだというのは秘密だ。

 何度も何度も志津香にお仕置きをされていたマリアもMでは無かったと言う事だろう。

 そして、その傍らにはマリアの助手の香澄がいる。2人は、ものの数時間でこのゲームを作ってしまった天才。

 ユーリにとっては『……余計な事を』っと思っている事だろうが。

「んじゃあ、トマトはこれですっ!」
「よーし、右から2番目とった……っと」
「わ、私はこれを……、(当たりますように、当たりますように……)」
「……これを と、とります」
「はぁ……、んじゃあこれを」
「ふふ、私は残り物には福があると言う事で……」

 一目散に、駆け出す数人、そして 最後には険しい表情になっている者、ただただ、楽しそうな表情の者、何やら 挙動不審な者と、様々だ。

「ん……いったい何をされるんだ? オレは。……まぁ、これが終わらないとわからないか……」

 斯く言うユーリは、ため息が止まらなかった。今回のゲームの主賓も同然だから、離れる訳にはいかないから。……そして、ロゼの言っていた言葉も少なからずユーリの中にあった、『離脱』を完全に消してしまっているのだから。

 そして、ユーリと、同じようにため息をしているのが志津香だが、その意味合いは雲泥の差なのである。




 では、結果発表を致します。


✩  ✩  ✩  ✩  ✩  ✩  ✩  ✩  ✩  ✩  ✩  ✩  ✩  ✩  ✩  ✩


【ラン】

 なんとも呆気ない結末。
 お邪魔虫が、彼女のラインに侵入して、それを止めてしまい涙を飲んでいた。マリア達談だが、皆に楽しんでもらいたい為、止められる確率は結構低く作ったとの事。なのに止められると言う事は……ここまで来たらもう、ランはそういう仕様なのだろう。


【ミリ】

 ランの様な展開はなく、無事に到達。
 だが、惜しくも当たりであろう金の板のすぐ隣に到着してしまった。それでも満足そうな顔をしているのは彼女だからであろう。板を取った後は 其々のスタートを温かい目?で見守っていた。


【真知子】

 情報屋の本領発揮か!?とも思われたが、やはりクジはクジであり運試し。
 ラッキーアイテムで運気を補正していた様だが、結果は銅の板。もう1つ筋が違っていれば金だったのだが……、それでも真知子はいつも通りの様子(ポーカーフェイス)


【トマト】

 宝箱に好かれる異能を持つ彼女。それは幸運のスキルを持ち合わせていると言う事。
 なんと! 見事に金の板を獲得したのだ。
 この時のトマトのビクトリーサインは、まるで身体が光っているかの様に輝いていた。


【かなみ】

 まるで、『リーザスを救ってください……』と 願っている様に込めて選んだ場所。
 忍者の彼女らしい動きをする赤い光のラインは、尽くお邪魔虫を回避し、結果、本人も大満足の場所に到達。その場所は銀の板。
 彼女は軽く拳を握っていたが……その瞬間、顔が赤くなってしまったのは言うまでも無いだろう。


【志津香】

 表情は、面倒くさそうに選んでいたが……、他の皆に見えない様に忙しなく足を、手を動かしていた。
 そして、こそっと願いを込めて選んだ場所が到達したのはミリ同様の無色の板。いろんな意味で複雑な場所に当たってしまったのだった。その後、不機嫌さが増したのは言うまでもあるまい。



✩  ✩  ✩  ✩  ✩  ✩  ✩  ✩  ✩  ✩  ✩  ✩  ✩  ✩  ✩  ✩



 そして、全てのアミダクジが終了した。


「はーい、そこまで~。みんな~、其々 板っきれは手にとったかな~?」
「はいはーい!取りましたですかね~!!」
「は、はいっ!」
「あ……ぅ…… はぅ……」
「ふんっ……」
「ふぃ~、色々な人間ドラマが見れて楽しかったぜ?」
「本当ですね……。ここ最近では無かった、微笑ましい光景です」

 其々の話を聴いてロゼは、ニヤリと笑った。まるで、幼稚園に来たかの様なはしゃぎっぷりだ。

 そして、其々の台詞、反応を見てみれば大体心情は判るだろう。

 やはり誰がなんと言おうと、一番哀れなのはやっぱりランなのである。


「ふっふっふ~。さてさて、皆には言い忘れてたことがあります」

 ロゼは、更に一段階笑みをあげた。もう、この場にいる全員はロゼとはそれなりに付き合いが長い。だからこそ、判る。

「あ……、何か企んでる顔だ、アレ。絶対」

 ユーリは、ロゼを見てそう察した。いつもの事と言われればいつもの事なのだが。

「あのね~。勘違いしてると思うけどねー。別にさ~、《金》や《銀》の場所があたり~とか無いからね~!? 何事も先入観を持っちゃダメって事よ~? これも戦争から学ばなければならないものなのよ?」
 
 何かと理由をつけてそう言っているロゼだが……、そんなつもりでした事ではないと言うのは皆判るだろう。

 ……この自称清楚なシスターは自分が楽しむ事しか考えてないんだから。それを聞いた面々は数秒固まって……。そして噴火した。

「へぁぁ!?!?」
「そ、そんなのひどいですかねーー! まさかのどんでん返しっ!? お約束、敗者復活!? 今までのトキメキ返してくださいですかねーー!!」

 そのロゼの言葉にがくっと膝から崩れ落ちそうになるのを必死に踏ん張ると。ロゼに猛抗議をした。

 それは勿論 金getのトマトである。

 金の賞を得たのに、天国から地獄へと叩き落とされる様な気分だったようだ。そして、銀を取る事が出来たかなみも唖然としていた。

「うぅ……折角の銀……、私にも運が向いてきたって思ったのに……」

 かなみも、うなだれていた。よく聴こえてくる?声の言葉をずっと否定をしてきたのに……と。
 
 そんな中でも、希望の光を目に宿した乙女もいる。

「あ、な、ならさ?途中失格の私にもどんでん返しが?」
「あ~、流石にそれはないわよ?ランは第一回はお預けって事でっ」
「へうぅぅ……」

 まさかの敗者復活を期待したのはランだった。 だが……、そう上手くはいかないとの事。次のチャンスは一体いつになる事やら……と、枕を濡らす日々が続いてしまいそうだ。


「さ~て? 手に入れた紙に、ユーリと一緒に出来る事が記載してるわよ!? するかしないかは、本人に任せるけどね~。あー、ゆー? ゆーは、ちゃ~んと答えて上げるのよ~? 必死な女の子達の為に~」
「……無茶なの以外はな」

 ユーリはやれやれと、ため息を吐いた。今日で、ため息一体何度目だろうか?
 幸せが逃げていく……というらしいがそんなの考えてられないのだった。

「さぁ~て、ユーリさんには個室で待機してもらいましょ~かね? 準備が必要でしょうし~」
「はぁ? 一体何の準備だよ」
「え~、こういうのって 予約してからのプレイじゃないんだから、準備が整うまで待合室で待機が普通でしょ~。ユーリは、大人気みたいだし~? 即日完売しちゃったわよ」
「……何の店の話をしてるんだよっ!」

 ユーリはため息を吐きながらもそう突っ込んでいた。何処かにありそうな○俗店のシステムを言うロゼに対して。

「ま、細かい事はいーからいーから、さっさと行った行った~」
「はいはい……」

 兎も角ユーリは言われたとおりに 司令室から出て行った。

 ちゃんと場所は言われているのでご安心を……?





 そして、残された女の子達は、各々メッセージが書かれている板っきれを確認する。どうやら、表面が剥がれるようになっているようで、中に書かれている様だ。凝った作りだ、と思える。
 そして、その内容は勿論、個人のものであり、提示の必要は無い。

「むむむ……確かにトマトはユーリさんと冒険に出ようと鍛えてますですが……、ちょっと不服な内容ですかねー……、疲れてる所に、更に疲れる様な……。あ、でも ユーリさんとのスキンシップと考えたらそうでもないですか~?」

 トマトは内容をみながらそう言っていた。
 内容を聞く限り……、一日恋人?って言う内容ではなさそうだ。ロゼの煽りではこんな感じじゃ無かったはずだが……と。

「あははは! そりゃ仕方ないでしょ? 甲乙つけがたい! 皆が皆、まるで鬼のよーな活躍したんだから」

 そう……、もれなくユーリとの一日恋人~等だが、皆が皆貢献しているから、一日丸々恋人~は無理があるのだ。……今は戦争中、状況が状況と言う事もあるし。

「うむうむ~。へ、これもまっ! たまには良いな」

 ニヤリと笑っているのはミリだ。
 内容を見てから笑ってるから……、恐らく彼女にとって内容が良いのだと思える。

「ん~……私もそうですね。……良いのを引いたようです。……胸が、きゅんきゅん、としちゃいそうですよ」

 真知子もニッコリと笑っていた。その表情は、ポーカーフェイスと言われているのだが、……顔が仄かに赤くなっていた。

「……へぅ/// わ、わたし……え、えっと……/// ゆ、ゆーりさん、ゆーりさんにっ……///」

 かなみは、耳まで赤く染めていた。

 その姿を見ただけでわかる。かなり良い内容?なのだろうか。今の所、金のトマトだけが割に合わない様子だった。

「……皆、良いなぁ……はぁぁぁぁぁ」

 ランは、哀愁漂わせながら皆を見ている。
 ランがいる以上、彼女以外の外れはいないだろう。 そして、そんな中、この6人の中で最大級の反応を見せる者がいた。


「………///////////(はぁぁぁぁぁっっ!?!?!?////)」


 そして、無色の板を手にとった志津香は、ふるふると身体を震わせていた。

 顔を板で隠す様にしているから、わからないが……相当顔が赤くなっているのだろう。……かなみに負けないくらい。否、かなみ以上に。

「はいは~い。ユーリ君は~、冒険者なので 戦争(今回の)が終わったとしても、年に そうそう会えるもんじゃないでしょ~? って言う訳で、有効期限は、《1年以内》としましょ~か。ってか、それに書いてるけど」

 ロゼは各々の反応を見せている6人にそう言っていた。





「本当に楽しそうですね……、あんなに大変だったのに」

 香澄は、皆の方をみながらそう呟いた。本当に皆いい笑顔なんだ。今までのことが嘘の様に。

「やー、ほんとね? 今回は頑張ってなんにも口出ししなかったけど でも、ほんと………ぷっ、志津香……可愛っ」

 マリアは、香澄の方を見つつ、志津香の方も見ていた。明らかに動揺しているのが分かる。からかいたい衝動に駆られながらも……、何とか口を噤んだ。何か言い、そしてその本人にしか知らない内容を聞こう、知ってしまおうものなら、ヘソ曲げて『絶対にするわけないじゃない!!!』と大きな声で言いそうだから。
 
「……志津香だって、頑張ったんだもん! 絶対。たまには……ね?」
「普段のマリアさんがマリアさんだから、志津香さんも、ちょっと信用できないんだと思うけど……」
「あはは、だって、志津香ってば ほんとに可愛いんだもん!」
「もぅ……チューリップ3号の方だってありますし、それにあまり言い過ぎると、本当に頬が伸びちゃいますよ? 太ったふうに見えるかもしれませんし。最近おやつだって、増えてるんですから」
「う゛……それは勘弁だわ…… って、何でそれを!!?」

 マリアは、香澄の言葉を聴いて思わず頬を抑えつつ、こっそりと食べている筈の秘密(おやつ)を知られて、動揺していた。そして、志津香から何度もうけている抓り攻撃だが……、あれが慣れると言う事はない。なのに……何度も受けてしまうのは最早ご愛嬌だろう。Mと言う訳ではない、だが、それ以上に志津香をからかいたい衝動が勝っているようなのだった。

 秘密(おやつ)に関しては……研究職になってしまったので、身体を動かす機会が減っていき、ついつい職場机の中に忍ばせていたソレに手が伸びてしまうのである。

 どうやら、そこを香澄には見られてしまっていた様だった。








~ラジールの町・待合室?~


 ユーリは、ロゼに指定された場所で待っていた。

「……ま、休息は大事だと自分でも皆に言ってたし、こう言うのも大切、か?」

 正直、今の状況も大変だと思う。
 レッドの町の状況もはっきりとはまだ見えないが……、噂程度に聞いているのはリーザスの赤の軍がいる可能性が高いと言う事。


《赤の軍》

 リーザスの軍の中でも高い戦闘力を持っており、進撃戦で中心を担っているとの事。そして……中でも恐れられている存在が。

「《リーザスの赤い死神》か」

 ユーリがポツリと呟いたその異名。あのコロシアムで実況をしていたのは知っている。遠目だが、素顔こそは見えないが 雰囲気は見る事が出来た。只者ではないのは、十二分に承知していた。

「ふ……」

 彼の事を考えると、自然と笑みがこぼれ落ちる。
 あのエキシビジョンで戦えなかった事が残念だと思っているのは、リックだけじゃなかったのだ。

 ある意味、相思相あ…… っとと、ここから先は言わないでおこう。怖い目に合いそうだから。 


「ん?」

 ユーリはふと扉の方を見た。気配が感じたからだ。

 そして、その数秒後。

「じゃじゃーん! 1番手はトマトですかねー? ユーリさ~~んっ よろしくです~!!」
「……はいはい」

 最初に、入ってきたのは、今日も元気なアイテム屋兼戦士、トマト・ピューレ。


「さっ、次はオレだぜ? 楽しませてくれよ?」
「何するのかわからないが……?」

 そして、トマトが終わった後、その次にやってきたのは薬屋兼戦士、ミリ・ヨークス。


「ふふ、お待たせしました。次はわたしですよ」
「……真知子さんか。OKOK」

 ミリも終わって、そろそろ疲れが見え始めて来た所で、情報屋、芳川真知子。


「は、はぅぅ………」
「次はかなみか……」
「よ、よろしく、お、お願いします……」

 いろんな意味で疲れた所で、リーザスの忍者、見当かなみ。


「………」
「無言で入ってくるなよ……志津香」

 そして、ラストの大トリが、カスタム最強の魔女、魔想志津香。


 ユーリとのお楽しみ会は、完全に部外者立ち入り禁止状態であった為、内容を把握する事は、残念ながら、出来なかった。申し訳ない。

 しかし、彼女達は ユーリと《何》をしたのだろうか?

 あの板には書かれたのだろうか? それは……ユーリと彼女達の秘密?なのである。多分きっと?


 ※ ロゼさんが気を使って、この話の最後に で書かれてなんていないでしょ~きっと!?














~ラジールの町・酒場~


 そして、色々あった数時間後。
 ユーリとかなみは、ランス達も来たであろう酒場に来ていた。情報収集をするのに最適な場所はいろんな人間が集う酒場が一般相場だ。それに、ランスの行動は、はっきり言って、奇々怪々と言う言葉も似合う。だから、酒場で覚えている人は多いだろう。

「さてと……。かなみ、大丈夫か?」
「あ、あぅぅ……/// だ、大丈夫ですっ!」

 かなみは、まだ顔を赤くさせていた。さっき……色々とあったのだろう。あれから数時間経っていると言うのに、一向に収まらない様子だ。

「はぁ……、恥ずかしいなら、拒否をすればよかっただろう? ロゼもするしないは本人に、と言ったと聞いていたぞ?」

 ユーリは、かなみの状態を見てそう思った様だ。

「ぅぅ……で、でも……」

 かなみは、口ごもってしまう。ユーリの事が好きだから、だったのに。そして、恥ずかしいのも、ユーリだから、なのに彼は判ってくれないのだ。 でも……、かなみは、今は(・・)それでも良かった。

「……かなみは嫌じゃなかったか?」
「そ、そんなことっ! あ、ありませんっっ!!」
「……なら良かった。後、休息にはなったか?」
「……は、はいっ。ユーリさんのおかげで……色々と安心出来ました。させていただきました。これ以上無いです」
「そうか……」

 ユーリは、それだけを聞いたら 少し安心したように頷き、そして酒場へと入っていった。かなみは、ユーリの優しさと、そして笑顔を見る事が出来たんだから。だから、少なくとも今は(・・)……良かったのだった。

 そして、真知子が言っていた言葉を疑っていた訳ではないが……、休息になったかどうかは本人次第だからだ。


「……ユーリさん。嫌なんか……ある訳ないですよ……」

 かなみは、酒場へと入って行くユーリの後ろ姿を見てそう呟く。

「よしっ……」

 そして、気合を入れ直して酒場の中へと入っていった。





 この先で待っているのは、頑なに聖武具の返却を拒む娘、ローラとの一戦が待っている。

 彼女がこんな行動を取っているのは、リスのウーが 死んだと思い込んでいる為だ。後は、無理矢理襲ってきたランスへの恨みと、ユーリとかなみはそのとばっちり。ランス達は、まだ粘っている様で、この酒場にいた。ローラは、たとえ殺されても返さないと言っている。

 もう、恋人がいない世界に未練はないと。

「……これは色々と大変だな」
「あぁ……リーザスが……」

 それが決して虚勢の類ではない事は直ぐに判った2人だった。







~ラジールの町 町長の屋敷~


 ユーリ達が、武具捜索で一難あった時の事。その場所では、ガールズトークが花開いていた。勿論、あの時の事である。

「お? 真知子か。どうだった? ユーリとのヤツは?」
「うふふ。沢山楽しめましたよ? まさか、ロゼさんがあのような事を書いているとは思ってもいませんでしたが……」
「だよな? オレももっと過激な事があってもおかしくないって思ってたんだが。……ま、イイんじゃね? オレは兎も角、トマトは、微妙だがランやかなみ、志津香って言う初心な連中も揃ってたしな?」
「ですね。トマトさんは、勢いに任せてるイメージは有りますが。やっぱり差は男性経験の差ではないでしょうか?」

 真知子はド・ストレートでそう答えていた。トマトも経験がある?と、見抜いている様だ。それが望んでいた相手なのかどうかも。

「鋭いな。確かにオレもトマトに関しちゃ同感だよ。トマトと以前飲んだ事があってな。色々と聞いたんだ。ランスに不感症と言われてたが、その時のせいだってな」
「……そうですか」
「でもよ、……今はアイツは楽しそうだ。昔なんか忘れて今を楽しんでる」
「そうですね。わたしも知らなかったとはいえ、失言でした」
「まあ、本人の前では言わない様にしろよ? アイツは気にしてないと思うがな」
「ええ、勿論ですよ。大切な友人ですから」

 真知子とミリが話をしてた時。

「あれ~、何の話ですかねー?」

 丁度、トマトがやってきた。
 タイミング的に、狙ったのか? と思えるが、そんな気配は微塵も感じられない。

「はは、ユーリとの色々楽しめる会について話してたんだよ」
「あ~! それは、トマトも聞いてみたいですかねーー!! お二人はどんな事をされたんですかねー!?」
「ふふ、秘密ですよ? ユーリさんと私。……2人だけの」
「あー、そうだな。オレも気持ち良かったとだけ言っておくよ」
「にぎゃ~~! 羨ましいですかねーー!! 折角金賞だったですのに~……!」
「でも、トマトさんも楽しかったんでしょ? ……なら、良いじゃないですか」
「う、確かに……頑張って強くなったところは見て貰いましたですが~。当初の煽りである《1日恋人券》じゃなかったのが残念ですかねー……」
「はは、んな悲観する事無いって思うぜ?」

 ミリはニヤリと笑ってトマトに言い聞かせる。トマトは判らなかった様だから、ミリは答えた。

「ロゼは言ってたろ? 《第一回》って……」
「あっ!?」
「ふふ、次こそは色々と楽しめれば良いじゃないですか。何時になるか判りませんが……、それを待つのも楽しみましょう?」
「そうですね……、そうですかねー!」

 あっという間に笑顔になるトマト。


 その3人の姿を遠目で見ている者がいた。哀愁漂わせている……。

「(良いじゃないですか、トマトさん ……だって、わたしなんか……わたしかんか……)」

 思い出せば思い出すほどに……、膝から崩れ落ちそうになってしまう。今日は絶対に枕を濡らしてしまいそうだと自分でも思ってしまう。でも、カスタムの町・町長代行であるランは そう気落ちしてもいられない程多忙なのだ。

「ラーン?」
「うひゃいっ!?」

 いつの間にか、ミリに背後を取られていて、その首筋に息を吹きかけられた。驚きのあまり、一気に背筋が伸びてしまうラン。

「今度、ユーリとのディナーでもセッティングしてやるよ。第一回は、残念賞って事でな?」
「えっ……?」

 そのミリの言葉を疑うラン。
 不幸体質が続いていると言われた? のに、自分にそんな幸運があっていいのだろうか?と思ってしまう。

「だから、こっち来て飲もうぜ?今日くらいは良いだろう?リーザスの連中の計らいなんだからよ?」
「あ……はい。そうですね……はいっ! ミリさん、お願いしますっ!」


 ミリの後ろに、後光が差して見えている気がした。多分、今ミリが、ランに迫ろうとしたら、条件反射で受け入れてしまいかねない程、ランは、ミリに深く感謝をしていた。

 ミリとランは、2人に合流する。それを見たトマトは、笑顔でミリにワインを注いだ。

「今回は ランさん残念だったですかねー。まあ、トマトもちょっと不服と言えばそうですがー、お互い頑張りましょー! 次は 負けないですよー!」
「う、うんっ! 私も……負けないわよ? ……(ありがとう……トマトさん、それにミリさんも……)」

 不幸体質なランと幸運のスキルを持ってるトマト。
 2人が合わさればイーブンっ!なんて思ってしまったランだったが……、素直にトマトの明るさに感謝するランだった。

「後は志津香だな? アイツの姿が見えないが……」
「ふふ、多分ですけど、彼女……当たりだったんじゃないでしょうか?」
「ん? ああ。あの反応的にそうじゃないかとは思ってるよ。んで、2人っきりになったところでも……」
「ですね。多分、そこまで進展があったとは思えないです。普段、私たちもそうですが、それよりも、マリアさんが見てますし……、頭の片隅にうかんでしまえば……躊躇するでしょ? 素直になれない性格ですし」
「残念だな。一番、ユーリが脈がありそうなんだが……」
「ですね? でも、親愛の様なので、そこから 愛情になるのは難しいとも思えます」

 冷静に分析をする真知子と経験から推察するミリ。どちらも的を得ているのである。

「それで、ミリさん?」
「ん?」
「わたしにもお願いしますね? ディナーの件」
「なんだ……、聞いてたのか。ああ、そうだな。善処するよ。ランの後でも良いよな?」
「ふふ、勿論ですよ。ありがとうございます。ミリさん」

 ニコリと笑っていた真知子だった。

 そして、真知子は 空を見上げた。


「(優希さん。きっと貴女も何処かでユーリさんの助けを待ってるんですよね……? きっともうすぐですよ。わたしは、何も心配してません。貴女は絶対に大丈夫だって信じてますから……)」

 真知子は、同じ同業者にして、親友でもある色条優希の事を思い浮かべながらそう思っていた。

 占いを何度も試した。彼女に出た運勢は吉。

 災難にあってしまうが、諦めなければ必ず光明が得られると出たのだ。だから……大丈夫だと真知子は思っていた。

「さて……、志津香はどこにいったのかね?まさかとは思うが、失踪なんてしてないだろうな……」

 ミリは、一瞬そう思ったが……流石にそれは無いだろうと、首をふった。

 色々と難がある所もある彼女だが……町想いなのは 同じだ。それに、失踪する理由なんて無いだろう。良い思い出の筈だと思えるから。

 決して口には出さないって思えるが……。しかし、いったい彼女達の板には何が書かれていたのだろうか?



 おや? こんな所に彼女達の当たった板が………









~ラジールの町 とある部屋~


 この場所は志津香が、魔法の試し打ちをする為に間借りした訓練場の様なものだ。そこに彼女(・・)はいた。


「……………………………………………」


 顔は、非常に赤い。色は? と問われれば、赤しか浮かばない程だ。朱色? 紅色? とも言えるだろうけれど。

 そして、深く帽子を被って、瞑想をしているようだった。
 精神を集中させ、魔力を向上させると言う訓練はあるが……明らかにこれはやる理由が違うだろう。だが、まるで、呪文を唱える様に、つぶやき続ける。


「……何もなかった何もなかった何もなかった、いつも通りいつも通りいつも通り……」


 その呪文は、自分に言い聞かせている様だ。

 そう、彼女とは、志津香である。


「ふぅ、ふぅ……平常心平常心……。次あっても大丈夫大丈夫……いつも通りの私、そしていつも通りの……ゆーと私……」


 志津香の頭に浮かべるのは、彼の表情。浮かべただけで、更に顔が赤くなってしまうが……、それを違う方向へと必死に変換する志津香。
 どうやら、変換は順調の様だ。顔が赤いのは止められない様だが。


「それに、アイツは絶対になんとも思ってないっ!! あの超鈍感っ!!! 鈍男っ!!」


 変換。即ち、志津香は照れ隠しで、怒りを貯めているようだった。悟られない様に、だろうけれど……、これ以上言えば大変な事になりそうなので、口をチャックしておくことにする。

 いや、しかし 本当にいったい何が書かれていたのだろうか……。


 おや?ここに彼女の当たった板が………。
 





























〜人物紹介〜


□ 香澄

Lv10/24
技能 機械Lv1 経営Lv1

マリアの弟子にして、チューリップシリーズの開発に関わっている主任助手。
以前までは、マリアは弟子は取らないと言っていたが、それなりに開発が大変になってきた事もあって弟子をとった。
香澄も機械馬鹿である為、生き方はとても不器用。
結構周りからは心配されているとか……。




〜抽選クジの内容〜



□ エレノア・ラン  ※失格


□ トマト・ピューレ ※ユーリに稽古をつけて貰える券


□ ミリ・ヨークス ※ユーリにマッサージをして貰える券
           (性感マッサージをするかどうかはユーリ次第)

□ 芳川 真知子  ※ユーリに膝枕をして耳掻きをしてあげれる券


□ 見当 かなみ  ※ユーリに抱きしめられ、頭をよしよしして貰う券


☆ 魔想 志津香   ※今回の大当たり ユーリと抱き合いキスする事が出来る券
          (その気になれば最後までシテもよしっ! 人払いも手伝ったげる)
  


尚、全員がちゃ〜んと内容通りに出来た訳ではないみたい♪
そして、ロゼはなんだかんだ言ってたが、ハズレらしいハズレは無かったのが事実である。

 例外があるとすれば…… 誰なのかは言うまでもない。







 
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