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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epico3歴史は繰り返さなくてもいいのにな

 
前書き
聖祥小学校の校舎デザインを原作の物からオリジナルの物へと変更します。アニメ無印の設定資料集があればいいんですけど、持っているのはA’s上下巻とSTRIKERS上下巻と劇場2作とINNOCENT上下巻の計8冊。どれも聖祥小の校舎が載ってないです。アニメ視聴だけではイマイチですし。

歴史は繰り返さなくてもいいのにな/意:過去に起きた出来事がまた繰り返されようとしているかもしれないと思い、その無常さに頭を抱えたくなるというたとえ。

 

 
†††Sideルシリオン†††

ただでさえシャルやアリス、テルミナスの転生体が現れて驚いているというのに、さらには以前の契約で共に過ごした親友たちの転生体と出逢うことになるとは。驚きを通り越して感動すら覚える。まぁ、彼らの魂は地球の“界律”を巡っているのだから、次元を越えて出会うこともあるだろうが。

「――ですが改めて。4年2組の委員長、木花 咲耶ですわ」

茶色のロングヘアを螺旋状の巻き髪にして、さらにポニーテールにした少女、木花咲耶。かつての契約では、彼女は同学年の風紀委員長で、生徒会長のシャルとは犬猿の仲だった。今回はどうやらアリサと犬猿の仲のようだが。

「・・・私? 私もこのクラスの委員長で、五十鈴 依姫(よりひめ)。困ったことがあったら遠慮なく言って」

五十鈴依姫。艶やかな黒髪を腰まで伸ばした少女。かつての契約では、俺と同じ生徒会副会長で、1つ年上の先輩だったが。今回は同い年なんだな。この依姫先輩(じゃなかった。先輩って付けそうになるな、気を付けよう)も身体最強系なんだろうか・・・? かつての彼女は強かったもんな~。結局、高校生活の中で、一度も格闘戦じゃ勝てなかった。

「次はわたしよね? 比佐津(ひさつ) 天音(あまね)。よろしく♪」

比佐津天音。フェイトやアリシア、アリサと同じように綺麗な金色の髪で、ボブカットヘア。コーヒーブラウンの若干釣り目。生徒会会計の片割れで、高校2年になっても身長が150cm届かなかったことから、ロリアンヌ、なんていうニックネームを付けられていたな。今は歳相応の身長だが、将来はやはり低身長なんだろうか。

「ぼくは、比佐津天守(あまもり)。見た目と名前で解ると思うけど、天音(コレ)の双子の弟」

比佐津天守。天音と同じ、会計の任に就いていた。天音の双子の弟で、髪色に瞳の色はもちろん同じで、髪型は男らしさを示す為か少し逆立たせている。

「これとか言うな。殴るぞ? 依姫が」

そして、かつてと同じような台詞を吐く天音に、俺は吹き出しそうになった。あの子は、アイツと口喧嘩するたびに他力本願・・・依姫の腕力に頼ってばっかりだったからなぁ。

「おれは、武塔亮介」

武藤亮介。赤い髪は肩に掛かるセミロングで、うなじ付近でヘアゴムを使って縛っている。かつては俺の悪友であり、親友でもあり、生徒会の仲間――書記だった。亮介が生徒会に入る以前、俺はアイツから、とある問題で一方的に喧嘩を売られていた。紆余曲折を経て仲が良くなり、一緒に生徒会役員として最後まで友として過ごした。

「えっと、僕は・・・真神(まがみ) (まもる)っていいます。よろしくです」

真神護。生徒会最後の役員――書記として、シャルロッテ生徒会へ最後に任命された男子生徒。栗色のサラサラショートヘアを有し、顔立ちは少女のものだから、初見は性別を間違えそうだ。そこのところは俺と同じ辛さを持っているかと思う。うん、ここでも仲良くなろう。

(そう言えば、シャル・・・というよりはイリスの様子は・・・?)

前世(シャル)の人格が覚醒したことで、シャルの記憶がフラッシュバックしなくなったということだったが。咲耶たちの自己紹介を聞きながらシャルを横目で見ると、泣くことも泣き顔を浮かべることもなかったが、懐かしげな表情は浮かべていた。

「は、はじめまして。わたし、八神はやて、いいます!」

「俺は、ルシリオン・セインテストだ。よろしく頼むよ」

はやてに続いて俺も自己紹介返し。そしてシャルが胸に右手を添えて深呼吸を1回し、「イリス・ド・シャルロッテ・フライハイトです。はやて、ルシル共々よろしくお願いします♪」そう満面の笑顔を浮かべて自己紹介。

「それじゃあ、八神さん、フライハイトさん、セインテスト君はもう一度、職員室にまでお願い出来る?」

矢川先生の話によれば、なんとこの後に行われる体育館での始業式で、編入生(おれたち)をステージ上から初等部生徒のみんなへ紹介するとのこと。ま、俺は経験上そういうのには慣れているから問題ないが。はやてとシャルは・・・うん、2人も問題ないか。俺のバースデーパーティの時にカラオケをやらせたし。
とまぁ、そういうわけで俺たちは再び職員室へ向かうことに。正直、教室案内は始業式の後、矢川先生と一緒で良かったんじゃないか、って思うんだが・・・。まあいい。咲耶たちと別れ、再び廊下を進む。

「ねえねえ、はやて。次は、わたしが付き添いとして一緒にエレベーターに乗っていいかな?」

「え、うん、ええよ。じゃあ、ルシル君は、矢川先生と一緒な」

俺の押す車椅子に座るはやてがそう言って俺へと振り返る。俺としては断る理由もないため「判った。シャル、はやてのこと、任せるぞ」と、俺の右隣を歩くシャルに車椅子のグリップを預ける。シャルはグリップを握ると、「よぉーし、エレベーターにゴー♪」駆けだした。

「フライハイトさーん、廊下を走ったらダメよ~!」

速度調整ミスを犯して高速ダッシュをかますシャル。矢川先生の注意も空しく、シャルは速度を落とすより早くエレベーター前に到着して、エレベーターに乗った。矢川先生が「はぁ。陸上部に誘ってみようかなぁ・・・」と、シャルのダッシュ力に感嘆しながら「行こうっか、セインテスト君」歩き出した。

「(矢川枝姫(えひめ)。かつての契約だと、書道部部長の3年生だったんだが。ここでは教員なんだなぁ。・・どれ)先生って、書道とかやっていました?」

「え? ええ、小・中・高と書道部だったけど、どうしてそれを・・・、って、ああ、そっか。職員室前の壁に貼られた私の作品を見たのかな?」

「(そんなのあったっけ・・・? まぁとりあえず・・・)はい。すごい達筆でした(と言っておこう)」

「ありがとう♪ 他の先生たちからも褒められたの♪」

後で確認しておこう。そう決めて、矢川先生に続いて接続塔へと向かう。ふと、廊下に張られているこの聖祥小の校舎のマップが目に入った。

(改めて見ると、本当に大きな学校だな・・・)

聖祥小学校の校舎の構造は、4階建てのドーナツ型の塔――接続塔の四方から校舎が4棟と伸びた十字型となっている。ケルト十字を思い浮かべると判り易くていいと思う。で、円の内に有る十字を省けばオーケーだ。
接続塔には、内壁に沿った曲線フォルムの中央階段があり、基本的に生徒や教員はこの階段を使って階層移動を行う。そして各階層の中央階段の構造の邪魔にならないようエレベーターが1基だな。
接続塔の1階のドアから吹き抜け内に出入り出来る。上履きのままで入れる人工芝が敷かれた休憩スペースがあり、そこで休み時間や昼休み、放課後を過ごす生徒が多いと、なのは達に教えてもらった。流石に、真冬には寒くて誰も利用していないようだが。

(俺たちもこれから何度も世話になるんだろうな。でも確か、基本的には屋上と言っていたな)

今後のことは置いておいて、と。まず、下棒部分になる第4校舎なんだが。この校舎だけが2階建てとなっている。1階は昇降口と体育館が並列している。昇降口の直上階は倉庫となっていて、学校イベント(体育祭など)に使う物品や、使っていない椅子や机などが保管されている。

(ここには荷物用のエレベーターが有るんだな。ま、それもそうか。人力で2階から重い物なんて降ろしたくないだろうし)

横棒部分の左――4階建ての第1校舎の1階は、職員玄関・教材室・放送室・職員室・校長室・保健室。2階は第1学年の4クラス。3階は第3学年の4クラス。4階が第5学年の4クラス。
横棒部分の右――4階建ての第2校舎の1階は、理科実験室・家庭科室・家庭調理室。2階は第2学年の4クラス。3階は第4学年の4クラス。4階は第6学年の4クラス。

(第2校舎の3階が、俺たちの過ごす教室のある場所だな)

上棒部分――第3校舎は3階建てだな。1階は購買室(筆記用具などが売られている)・美術室・技術室。2階が音楽室・コンピューター室・視聴覚室。3階が丸ごと図書室になっている。

(第4学年の教室と同じ階に図書室が有るのは嬉しいんだが・・・。俺が満足できる書物は有るのだろうか・・・?)

そして、いずれの校舎端には階段室が設けられているため、わざわざ接続塔の中央階段まで赴く必要はないのも助かる。聖祥小校舎の見取り図を改めて頭の中に入れ、接続塔の曲線階段を矢川先生と降りていく。
1階ではすでにはやてとシャルが待っていて、登校し始めていた生徒たちから奇異の視線を向けられていた。と、そんな中で「ルシル!」シャルが大声で俺を呼ぶものだから、周囲に居た他の生徒から一斉に視線を受けることに。

「うわぁ、あの子もキレー♪」

「可愛い❤」

「男子の制服着てる・・・?」

「えっ、男子!?」

「女子だろ?」

「だって男子の制服着てるし・・・」

俺が学校に通う度に言われたワードがぞろぞろと出て来るじゃないか。とにかく「大声で呼ぶな、馬鹿」シャルの頭をコツンと軽く小突く。合流したはやてとシャルと一緒に職員室へ。その最中、矢川先生の作品、廊下は走らない、と半紙に掛かれた注意書きを発見。相変わらず美しい字だった。
そうして俺たちは職員室で始業式が始まるまで、他の教員と自己紹介などしながら待機。それと、編入生はどうやら俺たちだけじゃないようだ。第4学年では俺たちだけだが、他の学年に5人ほどが新たに編入するようだ。

「――時間ね。八神さん、フライハイトさん、セインテスト君。行こうか」

「「「はい!」」」

8時40分過ぎ。俺たちは矢川先生に、他の編入生はまた別の教員に案内されて体育館へ向かうことに。職員室を出、まずは接続塔へ。そこから昇降口を通過して、体育館と昇降口を隔てるスチール製の左右に開くスライドドアの前へ。スライドドアを開けて体育館へと入る。体育館はかなり広く、一番奥にはステージがある。屋根はアーチ状だ。一般的な学校の体育館と同じだな。

「あそこのステージに上がって、紹介されるんやなぁ。なんや緊張する」

「でも本局での強制カラオケよりはマシでしょ」

「あはは、そうやなぁ」

体育館の端を通ってステージ両側にある舞台裏への扉に入る。曲線スロープを上がってステージ脇へ。そこには俺たち編入生が座って待つ椅子が7脚とあった。それぞれ椅子に座って、出番が回って来るまで待つ。はやては車椅子のままだな。
そして徐々に体育館に生徒が入って来て騒々しくなってきた。緊張からか(いや、おそらく興奮して)そわそわしだすシャルが、何を思ったのか椅子から立ち上って「おい、どこへ行く」舞台裏からステージへ向かおうとしたから声を掛ける。

「え? なのは達も来てるかなぁ~、って思ってさ」

「来ていて当たり前だろ。ほら、やめろ。小さい子たちが真似したらどうする」

編入生の中でおそらく2番目の上級生となる俺たち(身長から言って、第4学年以上の少女が1人いる)の行動を、下級生の子たちが真似したらどうする。だというのに「まあまあ」と含み笑いしながら床に伏せ、閉ざされたカーテンの真下から向こう側を覗き込んだ。

「あ、なのは達をはっけ~ん♪」

『ちょっとルシル! シャルを止めなさいよ! 結構目立ってるわよ、シャルのやつ! シャル、手を振んな! くすくす笑われてるわよ!』

アリサからお叱りの念話が。すると『ルシル君。まぁなんや。よろしくな』はやてからもお願いされては『了解だ』断るわけにはいかないと思い短く応え、シャルの元へと向かう。そして「シャル、戻れ。先生たちが来る前に」そう言って立ち上がらせようとするんだが・・・。

「もうちょっとだけ~。見知らぬ生徒たちからも手を振り返してもらってるの~♪ 1年生なんか、もう可愛すぎて堪らない❤」

「馬鹿。これ以上、目立つ真似はするな。落ち着きがないと叱られてもしょうがないぞ?」

「これがわたしの生き様なのだ♪」

そう言って、カーテン下から覗き込むだけでなく頭を出そうと(絶対、生首~、とかのノリだろうな)しだしたから、「やめんか」とシャルの両足首を掴み取って、そのまま引っ張る。

「きゃっ? スカートが捲れちゃうじゃん!」

まぁ、当然だろうが顔を真っ赤にしたシャルが両足をバタバタ動かして俺の両手を払い退けてきた。ちゃんとした恥じらいを持ってくれるようになって俺は嬉しい。感動していたら、「え~い♪」あろうことかシャルが足ばさみを掛けてきた。

「ちょっ、なんで・・・!?」

あまりに突然の襲撃。踏み止まろうにも両脚がシャルの両足にしっかりと挟まれてしまっている所為で不可能。倒れないようにするには、全身の筋肉を使って姿勢制御をするほかない。が、「この体じゃ無理かぁ~」元の姿なら出来たであろうことが、この筋肉量の少ない幼い体じゃ出来なかった。

「ヘイ、カマ~ン❤」

「このっ、アホがぁぁぁーーーーっ!」

俺を抱き止めようと両腕を伸ばしてきたシャル。このままコイツの思い通りになどさせるものか。両手を突き出してステージに手を着くことで、シャルに抱き止められるのを阻止しようと決意。だからシャルの顔の両側に手を着こうと思ったんだが・・・

「あ・・・!」「っ!!?」

最初に左手がシャルの右脇下を着き、贈れて右手が最悪なことにシャルの胸に着いた。手の平から伝わってくる仄かな柔らかさ。でもやっぱりまだまだまな板だな。

「きゃぁぁぁぁーーーー!!」

「何しとんのぉぉーーーー!!」

一瞬の沈黙の後、シャルは悲鳴を、はやては怒声を上げた。車輪のリムの外側に付いているハンドリムという輪を掴んで回すことで車椅子を進ませたはやて。そしてシャルは「ルシルのエッチぃぃ~~~!」俺の両腕を鷲掴み、「ぐふぅ・・!」両膝蹴りを俺の腹にかましてくれやがった。

(最悪だ・・・!)

そのまま巴投げの要領で俺をカーテンの向こう側、生徒たちが整列しているであろうフローリング床へ投げ飛ばした。バサッとカーテンを押しのけてステージ外へ飛ばされた俺。ステージから床までの高さは約1m。落下するまでの一瞬で体勢を整え、腰を深く落として着地を果たす。そして巻き起こるザワザワ。担当する生徒たちを整列させて体育座りさせていた教員たちが「君、一体何をしているんだい!?」駆け寄って来た。

「あ!」「きゃんっ!?」

立ち上ろうとしたそんな時、ドンッ、と何かがぶつかる音と、カーテン奥のステージからはやてとシャルの短い悲鳴が聞こえてきた。振り返る最中、視界の端にステージから頭から落ちてきたシャルの姿を視認できた。

(避ける? あとが恐い。抱き止める? 立ち上っても振り返りきってもいない中でか? ええい!)

一瞬の中で頭を駆け巡った思考の果て、シャルを抱き止める体勢に入った。

「のわぁっ!」「きゃっ――あいたぁっ!」

体勢が悪い中でシャルの上半身を抱き止めたのは良いが、シャルの全体重を受け止めることが出来ずに俺の体が海老反り。そのまま俺はシャルを背後へと放り投げてしまった。そしてお互いに背中(俺だけが後頭部追加)を床に強打してしまい、「おぅぅ・・・」悶える。

「ごめんなぁー、シャルちゃん!」

カーテンをそっと開けて顔を出したはやてからの謝罪。どうやらはやてが車椅子でシャルを轢き、そのまま突き落としてしまったようだ。それから俺たち3人は、体育座りして整列している全校生徒たちの目の前で教員数人から注意され、奇異の視線の中で舞台裏へと戻り、大人しく椅子に座った。

「――ったく。酷い目に遭った・・・」

「あはっ、他に生徒のみんな、すっごい驚いてたね」

初日から全校生徒に馬鹿を見せてしまった俺は頭を抱え、シャルは両脚をぶらぶらと上下に振って笑い声を上げた。そして「笑い事やあらへんよぉ~」はやてもまた頭を抱えた。

「ま、良いじゃん♪ 変に取っ付きにくいって思われるより、ああして馬鹿を晒した方が人気も出るってもんだよ♪」

あくまでポジティブなシャルにはもう「はぁ~~」溜息しか出なかった。そんなこんなで始業式は始まり、校長先生の別段ありがたみもない長話、今年度から新しく転勤してきた教員の紹介、そして・・・

「――それでは最後に、今年度から聖祥小学校に通うことになった、新しいお友達を紹介します」

俺たち編入組の紹介となった。ステージ真ん中に置かれた演台の前へと俺たちは移動し、第1学年の2人、第2学年の1人、第3学年の1人、第4学年の俺たち3人、第6学年の1人、計8人の名前が低学年から順に紹介される。

「――第4学年の2組に編入する、八神はやてさん、イリス・ド・シャルロッテ・フライハイトさん、ルシリオン・セインテスト君です。仲良くしてあげてください」

紹介された後は、編入するクラスの列へと並ぶことになった。本来は出席番号順となるらしいのだが、今日だけは俺とはやてとシャルは最後列。まずは最後列の女子の隣へと先にシャルを座らせ、俺ははやてを横抱きに抱え上げて車椅子から降ろして、はやてと一緒に最後列に座った。

「ちょっとぶり。さっきのお前たち、かなり面白かったぞ」

「初日から有名人だよ、八神さん、フライハイトさん、セインテスト君」

最後列1つ前に座る武塔亮介と真神護がそう言って笑った。そして最後列に1人座っていた少女が「お姫様抱っこ、憧れるなぁ~♪ 私もいつか、お姫様抱っことかしてほしいかも」俺とはやてを羨ましそう見ながらそう言った。

「あ、私、八重刀梅(とうめ)。亮介君から聞いてたけど、本当に綺麗だし可愛いね、3人とも♪」

藍色のロングヘアで、シュシュで一纏めにした後ろ髪を肩前に出している少女、八重刀梅。かつてはこの子の存在が、俺とシャルと亮介・・・3人の関係を繋げたんだったな。懐かしい。八重だけじゃない。よく見れば、クラスメートの大半が見覚えのある顔をしている。なんかもう、この時点で懐かしさを抱くより頭と胃が痛くなってきた。

「可愛いって褒めてくれてありがとうー♪ わたし、イリス・ド・シャルロッテ・フライハイト。シャルって呼んでね♪」

「お、おおきにありがとう。わたし、八神はやていいます。はやてって名前で呼んでもらえると嬉しいな」

「俺は、ルシリオン・セインテストだ。俺も、ルシル、って気軽に呼んでくれ。で、綺麗っていう褒め言葉なら受け取るけど、可愛いっていう褒め言葉は一応、タブーだからそのつもりでお願いするよ」

自己紹介の後、可愛いはタブー、コレ重要、と示すために人差し指1本立てて告げる。

「あ、うん、判ったよ。ルシル君に可愛いはダメ、っと。で、シャルちゃんにはやてちゃん。私も、刀梅って気軽に呼んでいいよ」

「じゃあ、おれのことも、亮介って呼んでくれ」

「あ、僕も。護って呼んでいいから」

「亮介君と・・・」

「護君やね」

最後列付近にだけにフライング気味の自己紹介。そのまま話しこむ前に教員が話し始めたから中断。それから教員の話の間を黙って聴き、シャルにとっては初めてで、はやてにとっては久しぶり、俺にとっては懐かしい、学校の始業式は終わった。そして第1学年から退場し始めたんだが・・・

「やーん、可愛い❤」

1・2年生が退場時にシャルに手を振ってから出て行くじゃないか。シャルも笑顔を振り撒きながら手を振り返している。あ~あ、完全に前世シャルロッテになりつつあるよ、イリスの奴。そして俺たち第4学年の退場となる。まずはなのは達の1組が出て行く。

『あはは、すっかり小さな子たちの人気者になっちゃったね、シャルちゃん』

そんな中で、すずかからの念話が入る。1組の列へと視線を移すと、なのは達が俺たちの方へと振り向いて笑みを浮かべていた。

『あんた達、目立ち過ぎ。こっちまで恥ずかしいやつ入りしちゃうじゃない。少しは自重しなさい』

『にゃはは。シャルちゃんらしいって言えばらしいけど・・・』

『体育館だから大きな話し声は出ないけど、1組でもすでに話題騒然だよ』

『というか、恥ずかしいから少し他人のフリしていい?』

アリサにフェイト、なのはと続き、締めはアリシア。アリサの呆れには同調したいな。で、アリシアにだが、『大丈夫だ、アリシア。君もどちらかと言えばシャル側だ』と返しておく。シャルとアリシア、共に変人クラスだからな。被害に遭う俺が言うんだ、間違いない。

『ひっどぉ~い! わたし、シャルほど恥ずかしい存在じゃないよ!』

『待てぇ~い! わたしだって恥ずかしくないわい! あと、恥ずかしいって言われたの、わたしだけじゃなくてルシルもだからね!』

『はあ!? 俺を君ら側にしないでくれ』

納得できない。俺はまともだ。シャルとアリシアほどぶっ飛んだ性格でもなければ人格でもない。だからそう反論したんだが、『いやだから、さっきので恥ずかしいカテゴリ入りしたんだってば!』アリシアからはそう言われ、『こうなったら一緒に逝こう、ルシル』シャルからは道連れ発言が。

『道連れで逝くならアリシアで頼む。俺を巻き込むな』

『ちょっ、やめてよルシル! 恥ずかしいのはシャルだけで十分じゃん!』

『そうだな、もうそれでいい』

『うわっ、ひっど! いいもん、いいも~ん。ふ~んだ!』

シャルが拗ね始めたところで話題を切り替える。帰りのことだ。

『はやて、ルシル。シャルから聞いたでしょうけど、今日はバスで帰るわよ』

『ホームルームが終わったら、シャルちゃん達を迎えに行くね』

『うん。もし、こっちのクラスの方が先に終わるようやったら、わたしらが迎えに行くな♪』

なのは達と改めて帰りの約束を交わして、次は俺たち2組の退場だ。矢川先生が俺たちのところへと駆け寄って来て、「それじゃあ、みんなと一緒にクラスへ戻ろうか」とウィンク。

「はい。判りました。ルシル君、シャルちゃん」

「うん。友達も早速できたので、その子たちと一緒に戻ります♪」

はやてに続き、シャルが亮介たちへと一度視線を向けてからそう告げた。すると「大丈夫ですわ、先生。3人はすでにわたくし達2組の仲間ですから。ですわよね?」いつの間にか来ていた咲耶が自信満々にクラスメートにそう言うと、「うんっ!」2組全員が頷き返した。

「それでこそ2組ね♪ それじゃあ木花さん、それに五十鈴さん。クラスのみんなを教室までよろしくね」

「承りましたわ」「はいっ」

クラスメートの人垣からにゅっと出て来た依姫が、咲耶と同時に応える。矢川先生は他に教員と話があるのか、教員が集まっている壁際へと戻って行った。

「ではみなさん、戻りますわよ。ルシル君。はやてさんを車椅子へお願いしますわ」

仕切り屋なのはやはり人生を跨いでも変わらずか・・・いや、委員長だからか。まぁどちらにしろ「ああ」頷き返して、早速はやてを横抱きにして抱え上げる。と、「きゃぁぁぁ!」女子から黄色い歓声が上がり、「お姫様抱っこ!」「いいなぁ!」「私もしてほしいかも!」などなどの声が続く。

「な、なんや恥ずかしなってきたな・・・」

はやてが今さらに顔を赤くしたから、「そうか? 抱き方が少し違うだけじゃないか」と苦笑を漏らしながら彼女を車椅子へと乗せて、俺たち2組は体育館を後にした。

 
 

 
後書き
ボン・ジュール。ボン・ソワール。
今年最後の投稿となります今話。遅々として進んでいないストーリーに、私自身が焦り始めています。とにかく次話、にじファンでは投稿できなかったルシルと亮介の因縁を描こうと思います。その後、シリアス編の1話目になるかと。

それでは皆様、良いお年を! 来年にまたお会いしましょう!
 
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