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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epos43王のマテリアルD/闇統べる王~Lord Dearche~

 
前書き
ロード・ディア―チェ戦イメージBGM
魔法少女リリカルなのはA's-GOD-「ロード・ディアーチェ」
http://youtu.be/4qPC4L7o5J8
 

 

第97管理外世界。世界名を地球。そのうちの一国・日本。都市名を海鳴市。その街にある海に面した公園に、とある転移反応が発生した。しかもその転移反応は通常のものではなく、管理局で認知されていない技術による特別な反応だった。空間が揺らぎ、その揺らぎの中から2つの人影がポイッと放り投げ出されるかのように出現した。

「?? へ? なっ、ちょっ、あいてーっ!?」

1人は少年。面立ちは幼く、背格好からして10代半ば辺りだろう。茶髪のショートヘアに、頭部上からピョンッと跳ねた1束の髪――俗に言うアホ毛が生えている。格好はラフな私服といったところだ。その少年は急に放り出されてしまった所為なのか受け身を取る暇もなく、雨が降っていることで濡れている石畳の地面へドサッと墜落した。

「いってて・・・。腰、腰が・・・。急になんなんだよ、もう・・・! ていうか冷たっ?」

尻餅をついている彼が悪態を吐いていると、もう1人の転移者が「ト、トーマ、危ない!」と悲鳴を上げながら落下して来た。もう1人は少女だった。彼女もまた10代半ば辺りだろう。クリーム色をしたロングストレートヘア、白のブラウスに紺青色のコルセットスカートといった、どこかのお嬢様のような服装だ。

「ぐげぇっ!」

「きゃあー、トーマ! ごめんなさい!」

遅れて落下した少女が、トーマという名前の少年の腹へと尻から落ちた。見た目が細身である少女であっても人ひとりの体重を腹に、しかも落下速度を加えた状態で乗られれば当然、苦痛だ。
激しく咽返るトーマの上から慌てて降りた少女は「ごめんね、重かったよね!?」と涙目で謝りながら、咳き込む彼の背中を何度も擦る。しかしトーマは怒ることもなく「リリィに怪我が無くて良かったよ」と少女――リリィの安否を第一に考えた返しをした。

「トーマ・・・、ありがとう」

リリィがトーマのその気遣いに嬉しく思って微笑みを浮かべていると、「それにしても、ここはどこだ?」トーマが立ち上り、座ったままのリリィに手を差し伸べた。リリィは「判らないの。気が付いたら、わたしもここに」とトーマの手を取って、立ち上がらせてもらった。2人は周囲を見回してここがどこなのかを確認するが、見覚えのない土地ということもあって判らないようだ。

「とにかく今は雨宿りだ。・・・あ、あそこへ行こう!」

トーマはリリィの手を引っ張って公園内に点在している屋根つきの休憩所へと走った。そして2人は屋根の下で濡れた髪や服を手で払いながら一息。

「えっと、確か、俺はアイシスを連れて、バニングス一尉たちが待つ訓練場に向かってる最中だったんだけど・・・」

トーマは腕組をしてうんうんと唸りながら思い返していく。トーマの脳裏に過ぎるのは、女性名らしいアイシスという者と一緒に、バニングス一尉――アリサ・バニングスと同じファミリーネームを持つ者の待つ訓練場へ向かっている自分の姿。

「わたしは技術部で、シャマル先生やすずかさんとお話ししながらメディカルチェックをしてもらってた」

リリィも右手の人差し指を顎に添えて考えに耽った。リリィの脳裏に過ぎるのは、シャマル先生――守護騎士のシャマルと同名の者と、すずかさん――月村すずかと同じ名前を持つ者と話をしている自分の姿。だが、それだけだ。

「あー、ダメだ、全然判らない。いきなり雨だし夜だし、見覚えのない場所だし」

トーマが頭をガシガシと掻いて、何故このような場所に居るのか理解できないことに困惑していると、彼の側に1冊の書物が突如として現れた。黒色の無地のハードカバー。表紙と背には銀で出来ている十字架の装飾があしらわれている。

「なんだよ、もしかしてコレ、お前の仕業だったりするのか? 銀十字」

トーマが“銀十字”と呼ぶ書物が発光すると、リリィは小さく頷いた後に「トーマが誰かに呼ばれた、って言ってるけど・・・」と、“銀十字”の思考を代弁したかのように告げた。するトーマが若干膨れっ面になり、「何の目的で俺を呼んだのかは知らないけど、知らせもなしにいきなり呼びつけるとは失礼だなぁ、その誰か。しかもリリィを巻き添えにして」と苛立ちを表した。

「トーマ、どうする? ここがどこかも判らないし、人を探そうにも・・・」

リリィがそこまで言いかけたところでまた“銀十字”が発光すると、「付近に生命反応なし」と彼女が僅かに肩を落とした。夜中であり、雨も降っている所為か、彼らの周辺に人が居ないとされた。人が居なければここがどこかも判らず、彼らが元いた場所に戻ることも叶わない。

「ど、どうすればいんだ・・・? あ、通信か!」

判らないなら迎えに来てもらえればいいと判断したトーマがどこかへと通信を繋げるが、「あれ? なんで?」一向に繋がらない。続けて別の知人に通信を繋げようと試みるも、「ダメだ、誰にも繋がらない・・・」ガックリと肩を落とした。
いよいよ以って窮地に立たされていると理解したトーマとリリィの表情には焦りの色が見え始めた。だが、ここでさらに2人に迫る窮地。“銀十字”が発光して、「生命反応が接近してくる・・・!」とリリィがトーマに伝える。

「しかも魔力反応付きだ・・・! もしかして俺たちを呼んだ当事者か・・・?」

トーマはリリィを庇うように一歩前に躍り出た。

「ま、そうであってもなくても、最悪、急に襲われるっていうのも嫌だしなぁ。ホントは荒事なんて避けたいけど・・・。リリィ」

「うんっ・・・!」

トーマとリリィが顔を見合わせて、「リアクト・オン!」強く頷き合った。一瞬の発光、次に姿を見せた時、トーマはガラリと様変わりをしていて、リリィの姿はどこにもなかった。トーマが「モード黒騎士!」と自らの変わった姿の名称を告げた。
私服とはまるで正反対のその異様。髪や瞳の色も変わり、素肌を大きく露出した上半身には赤い刺青のような紋様が描かれている。左手には歯車のようにギザギザとした刃が左右に付いた籠手。右手には禍々しい凶器とも言えるほどの銃と一体化したかのような大剣が握られている。色合いや服装、武装からしてダークヒーローのようだった。

『ディバイダー、セット!』

ここで姿の無いリリィの声。聞こえてくるのはトーマの内側から。リアクト・オン。それはまるで騎士と融合騎によるユニゾン・インだった。モード黒騎士という戦闘形態に変身したトーマが「行こう、リリィ!」と自身の内に居るリリィに語りかけると、『うん、トーマ!』彼女も強く応えた。
そしてトーマは公園内で戦うわけにもいかないということで空へと上がり、海上へ向かって飛行。そんな彼らを追って飛んで来ていたのは・・・・

†††Sideはやて†††

マテリアルが復活、さらに異世界からの渡航者――アミティエさんとキリエさん、フローリアン姉妹まで加わって大混乱状態。とにかくマテリアル達とキリエさんの企みを阻止して、詳しく話を聞くために、わたしらは今、3チームに分かれて捜索を始めた。
わたしとリインフォース、あとで合流してくれる予定のルシル君を含めた八神班は、マテリアル達の捜索を担当。すずかちゃん、なのはちゃん、シャルちゃんはアミティエさんを。フェイトちゃん、アリサちゃん、アルフさんはキリエさんを。元は八神家の問題やったけど、あまりに大きくなり過ぎたから手伝ってもらうことにした。

「そやけどリインフォース、大丈夫やろか・・・?」

アリシアちゃんの観測に従ってマテリアルの反応のあった無人世界で捜索したんやけど空振り。そこから何度か世界を渡ってる内にリインフォースが疲労からか体調を崩してもうた。そやから後で集まるハラオウンのお家へ先に帰って休ませることに。それからわたし単独で捜索した結果、全部ハズレやった。そうこうしてるうちに時間切れ。一度集合するためにわたしは海鳴市に戻って来た。

「・・・ん? なんやろ、この感じ・・・?」

なのはちゃん達との合流場所である海鳴臨海公園に向かう途中、妙な感じを肌で感じた。アミティエさんやキリエさんとはまた違う気配。まだ他にも渡航者が現れたんかな。とりあえず確認やな。そうゆうわけで進路変更。反応は海へ向かって飛んで行く

「あの人たちやな・・・。って、なんや、あの悪者全開って格好は・・・。黒は黒でもルシル君やリインフォースとは違くて、禍々しい感じ・・・」

視界に入ったんは10代半ばと思う男の子。首と脇を護るための部分甲冑を付けた、ちょう露出の高い上半身。籠手や具足、持ってる剣はどれもゴツゴツしてて、デバイスって呼べるかも怪しい武器。古代ベルカ戦乱期に登場する騎士みたいな格好。それに側に浮いてるアレは、魔導書やろか。そもそも「魔力反応やない。また未知の何か、か・・・?」その辺も要警戒やな。

「あのー、すいません。お時間、少しだけよろしいですか?」

「??・・・???・・・っ! ええええっ!?」

その男の子がわたしを見て素っ頓狂な声を上げた。続いて、『や、八神司令!?』若い女の人の声が耳に――というか頭の中に届いた。目の前の男の子から2人分の声。女の人の声の持ち主はひょっとして融合騎やろか。とゆうことは、目の前に居る男の子は、ベルカ式の騎士・・・。それに、八神司令、って誰のことやろ。

「八神司令、小っさ! えっ、どうしたんですか、そんな子供の格好をして!」

『八神司令、とっても可愛いです! あ、じゃなくて! あの、もしかして八神司令がわたし達を呼んだんですか? なにか非常事態でも起きたんでしょうか?』

「えーと、どちら様でしょうか? 以前、お会いしたこととかありますか?」

そう訊き返すと、男の子は「何かのテスト? それに俺に敬語って、すごい違和感が」って呟いて、『それだと、なんの?ってなっちゃうよ』って女の人の声が漏れ聞こえてきた。んー、なかなか要領を得んなぁ。わたしのことを八神司令って呼ぶ男の子をよう見てみるけど、やっぱり知らん子や。女の人の声も聞いた憶えはなし。

「あのー、八神司令ですよね? 八神はやて海上警備部捜査司令・・・」

「へ? 確かに、わたしは八神はやてですけど、海上警備部捜査司令についてはなんのことかサッパリなんですが・・・」

そんなすごい肩書――役職になった憶えはあらへん。まだしがない研修生や。まぁとにかく、「今ちょっと非常事態中なので、詳しいお話を聞かせてもらいますね。お名前は?」まずは名前の確認。

「あの、トーマです。トーマ・アヴェニール。あの、ご存知ですよね・・・?」

『リリィ・シュトロゼック、です。これも何かのテストなのかなぁ・・・?』

「トーマさんにリリィさんですね。(んー、知らん名前や)。やっぱり聞いた覚えが・・・。とにかく、あのですね、ここは管理外世界ですので、渡航には許可が必要なんです。許可証、お持ちですか?」

名前は判った。男の子はトーマ君。融合騎らしい女の人がリリィさん。あとでアリシアちゃんに照合してもらおう。次に、渡航証明を持ってるかを訊ねてみる。無許可渡航は違法や。

「いっ! あー、あー・・・、すいません、持ってないです」

「あちゃあ、困りましたねぇ。じゃあ、ちょっと落ち着ける場所でお話をお伺いしますので、ついて来てくれますか」

返事はない。なんやホンマに困ってるって風に焦りの色が見える表情。見た目とは違くて、悪い人には見えへんなぁ。もう一度声を掛けようとしたら、「ごめんなさぁーい!」謝りながら反転、ものすごい速さで逃げてった。

「逃げたらアカンですよー!」

トーマ君を追い翔ける。魔法使い歴半年も経ってへんけど、それでも特訓の成果で徐々にトーマ君との距離を詰めてく。するとわたしの接近に気付いたトーマ君が「うわっ、八神司令、速い!? 恐い、恐い、すげぇ恐い!」怯え始めた。そこまで怯えられるとなんやショックや。

「あのー、止まってくださーい! 危ないですよー!」

停止するように呼びかけながら追跡してたそんな中、ゾワッと悪寒が奔った。3ヵ月前も、そんでつい数時間前にも感じた、あの子が放つ魔力反応。わたしは「止まって!!」トーマ君に向かって叫んだ。その直後、トーマ君の前の空間から膨大な魔力が溢れ出して、「王さま・・・!」が現れた。

「うわっと! な、なんだぁ!? 八神司令のそっくりさん!? 双子!? にしては顔つき悪っ!」

『下がって、トーマ! すごい嫌な感じがする!』

「いきなり我に突っ込んで来たかと思えば、言うに事欠いて我が不細工だと!? 無礼者めっ!」

――インフェルノ――

「言ってねぇぇーーー!」

王さまが“エルシニアクロイツ”を頭上に掲げると同時、魔力塊が複数と降って来た。トーマ君を「急いでこっちへ!」呼び戻す。そやけどトーマ君は「銀十字!」って本の名前らしい言葉を叫ぶ。と、「おお!?」本から勢いよくばら撒かれたページが、王さまの攻撃を防ぎきった。

「む!? なんだ今のは・・・!?」

「あっぶなぁ! いきなり攻撃とか・・・! 八神司令の妹さん? お姉さん? どっちか判らないけど危ないじゃないか! しかも不細工なんて言ってないし!」

「はあ!? この我と、そこの子鴉が姉妹だと抜かすか、下郎!」

『え、違うの? あんなにそっくりなのに』

「違うわ!・・・ん? 女の声?・・・ほう貴様、融合騎を従える騎士か? ふむふむ、見た目も存外に悪くない。ふむ。先程の無礼を許すゆえ、我が軍門に下れ」

何を考えてるのか王さまがトーマ君をスカウト。いきなりそんなことを言われたトーマ君は「え? これもテスト? 全っ然、事情が呑み込めねぇーー!」さらに混乱してしもうた。

「アカンよ、王さま。一般の人を悪の道に引っ張り込もうとするなんて、嘱託とは言え管理局員として見過ごせへんよ」

「よかろう。では、ならばその小僧を賭けて、我と子鴉で死合ってみるか?」

VS◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦
闇統べる王ロード・ディア―チェ
◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦VS

「なんか知らないけど、八神司令と王様?が俺を巡ってケンカ勃発!? 修羅場!? ひょっとしてモテ期なのか!?」

『落ち着いて、トーマ! どれも違うから!』

「トーマさん達は急いで離脱を!」

――バルムンク――

トーマ君に当てへんように剣状射撃を放射状に発射。王さまへ向かって弧を描くように曲がって殺到してく。王さまは軽やかに舞うように避けて、「そら、お返しだ」って同じ魔法――ドゥームブリンガーを、わたしと同じ軌道で発射してきた。トーマ君を挟んでの魔法の撃ち合いは危険や。

(まずはトーマ君たちから離れやな)

王さまの攻撃をシールドで防いですぐ後退。弧を描きながらトーマ君たちを回り込むように飛ぶ。そやけど、「ちょっ、王さま!?」も同じように飛んで、トーマ君たちがわたしらの間に絶対に入るような構図を崩そうとせえへん。

「どうした子鴉! 避けているだけでは我を討てんぞ!」

――エルシニアダガー――

「うわっ、うわっ、危ない!」

王さまの放つ魔力弾十数発がトーマさん達を掠りながらわたしに向かってくる。ならこっちも「ブリューナク!」同じ魔力弾で迎撃。すると「あの! 俺、どうすればいいですか!?」ってトーマ君が訊いてきた。

「逃げてください!」

「我の盾になれ!」

王さまのまさかの盾になれ発言に、「『えええええーーーーーっ!?』」トーマ君とリリィさんが驚愕。そんで「もしかして、俺、邪魔ですか!?」ちょう今さら的なことを言うてきたから、「出来れば避難してもらえると助かります!」って応じた。

「小僧は離れて観ておれば良い! 我がこの生意気な子鴉を討ち滅ぼした後、我が直々に調教して、我好みの兵にしてくれよう」

「そんなことさせへんよ、王さま!」

――ブラッディダガー――

トーマ君が急上昇したことで王さままでの射線を確保できた。すぐに短剣型の高速射撃魔法を20発と一斉発射。王さまは「そうそう貴様の思うままにいくとは思うな、子鴉!」急速後退した後、砲撃アロンダイトを発射して、目前にまで迫ってたダガーを一網打尽にした。それで一度仕切り直し。わたしと王さまは相対して、少し離れたところにトーマ君。

「八神司令。姉妹ケンカとかじゃなくて、これってマジな戦闘だったりします・・・?」

「ぷはっ。司令? 司令だと? 羽も生え揃わぬ子鴉が、司令などという大それた肩書を持てるような奴に見えるのか、小僧! あと、我は人間などという軟な存在ではない! それに我と子鴉は、ケンカなどとヌルイ関係ではなく、正真正銘の殺し合いをする敵対者よ!」

「わたしは別に殺し合いをしたいわけやないんやけどな、王さま。何を考えて、企んで、成そうとしてるんかをちゃんと話し合って、他人様に迷惑を掛けへんようなことなら手伝うし、迷惑になるんやったら止める」

わたしと王さまを交互に見てるトーマ君が「お手伝いします。八神司令」ってわたしの隣に来たから、「その司令ってゆうの、たぶん人違いと思いますよ。世の中、そっくりさんは3人は居るって話ですし」って、遠回しに避難するように言う。

『王さまの危険な発言を聞いた後で逃げるわけにはいきません!』

リリィさんの強い意志の籠った声に、わたしはもう言うことを聞いてくれへんなって観念して、「危なくなったら、何を置いても逃げてください」って言うてトーマ君とリリィさんの参戦を許可した。えらそうなことを言うてるな、わたし。まだまだひよっこ局員やのに。

「ふん。よかろう。2人掛かりで来るがよい。我は闇を統べる王、ロード・ディアーチェ。子鴉とチンピラの2人くらい、片手間で滅してくれるわ!」

――アンスラシスドルヒ――

わたしのブラッディダガーと同じ魔法を発動した王さまの周囲に40発と展開されて、「さぁ、踊れ!」射出してきた。トーマ君がわたしの前に躍り出て、「銀十字! 広域防御!」そう叫んだ。するとさっきみたく“銀十字”ってゆう本から無数のページが飛び出して来て、王さまの攻撃を防ぎきった。

「しかし不思議な使い方をするな、チンピラ。魔導書のページで防御など・・・!」

ページに防がれて爆発したダガーによって生まれた煙幕を突っ切って来た王さま。わたしは“シュベルトクロイツ”を王さまへ向け「クラウ・ソラス!」砲撃を放った。王さまはクルッと横に一回転して回避。“エルシニアクロイツ”に魔力を付加させての一撃、「アンサラーシュラークッ!」を繰り出してきた。

「おっと! 八神司令の家族じゃないって言うなら、こっちも手加減はしない!」

『今です、八神司令!』

王さまの一撃を大剣で受け止めてくれたトーマ君。

「そろそろ、その司令ってゆう呼び方やめてほしいかも・・・なっ!」

――クラウ・ソラス――

トーマ君と鍔迫り合いしてた王さまへもう一度、今度は至近距離で砲撃を放った。と、「猛れ、デアボリカよ!」って声を発した王さまがブワッと全身から魔力を放出した。それはまるでパンツァーガイストのような防御魔法で、真っ向から砲撃を防ぎきった。

「ポンコツ融合騎と融合しておらぬ子鴉の攻撃などでは、我が暗黒甲冑(デアボリカ)に傷1つとして付かぬわ!」

――インフェルノ――

トーマ君と一緒に左右に散開して降って来た6基の魔力塊を回避。王さまを包む魔力が消えたのを確認して「ブラッディダガー!」高速射撃魔法を発射。防御する前に着弾させればええ。王さまは“エルシニアクロイツ”に魔力を付加。そんでくるくるとバトンのように回して、「うそやろ・・・」全弾弾き飛ばした。

『銀十字!』

「シルバースターズ!」

王さまの全方位に並べられた10数枚のページの表面に魔力とは違うなんらかのエネルギーの球体が発生して、一斉に発射された。また王さまを包み込む魔力の鎧。そやけど弾数が多すぎたんか「むお!?」2、3発ほど直撃を受けた。

「小僧、貴様のソレは魔法ではないな!」

「そこんところは企業秘密ってことで! 司令! 俺が近接を担当します! 生意気言ってすみませんが、援護をよろしくお願いします!」

『お願いします!』

わたしがどうこう言う前にトーマ君たちが王さまと近接戦を始めた。トーマ君の振るう大剣の一撃を避けては逸らして捌いて、「墜ちよ!」砲撃アロンダイトを発射する王さま。明らかにわたしより遠近両方で強い。トーマ君が左腕に装着してるゴツイ籠手で防御した。

「いってぇーー! ディバイドがうまく働いてない!?」

『なんで!?』

「そらそら、どうした小僧! そんな情けないザマでは、戦闘特化の騎士と言った格好が泣くぞ!」

打撃アンサラーシュラークや高速射撃アンスラシスドルヒなどのコンビネーションでトーマ君を徐々に押してく王さま。援護しようにも2人が接近しすぎてて出来ひん。とにかくブラッディダガーをスタンバイ。2人の距離が少しでも開いたら撃ち込むようにしておく。そんでついに「うわぁっ?」トーマ君が鍔迫り合い中に王さまの魔力弾エルシニアダガーを受けて後退。

「アロン――」

「発射!」

砲撃の発射体勢に入ったその一瞬にダガーを一斉射出。発射寸前やから回避も防御も出来ずに「のわぁっ!?」直撃を与えられた。トーマ君がすかさず、「クリムゾンスラッシュ!」大剣を横に振って、エネルギーの斬撃を飛ばした。煙幕を切り裂いて王さまに到達する斬撃。

「まだまだヌルイわっ!」

“エルシニアクロイツ”で受け止めてそのまま逸らし流して対処――したところで、「うおりゃぁぁぁっ!」トーマ君の突進。直感的にわたしは王さまの背後へと回り込むように飛ぶ。そんで王さまは「む!?」突進からの直接斬撃を繰り出したトーマ君の一撃を“エルシニアクロイツ”で受け止めた。

「クラウ・ソラス!」

すかさず砲撃を発射。トーマ君は砲撃が到達するギリギリまで王さまを抑え込んでくれたおかげで「ぐわぁっ!」また直撃を与えられた。それでも決定打にはならへんようで、王さまは「猪口才な!」体勢を立て直して、「グラディウスレイン!」半物質化してる剣8本をわたしに向かって落としてきた。

「シルバーハンマーッ!」

降り注ぐ剣が白い砲撃によって迎撃された。王さまの表情がどんどん苛立たしげなものへ変わってくんを見逃さへんかった。そっからはわたしの射砲撃とトーマ君の中距離斬撃で弾幕を張っては、王さまに隙が出来たら「ディバイドエッジ!」トーマ君の直接斬撃でさらに隙を大きくした後、「クラウ・ソラス!」わたしの砲撃でダメージを蓄積させてく。

「おのれ、貴様ら・・・!」

「この王様、防御力がすごい高い!」

『ディバイドが上手く発動してくれたらきっとすぐに済むのに・・・!』

トーマ君とリリィさんに疲労が見え始めた。そうゆうわたしも疲労が出て来た。これ以上長引かせると、他のマテリアルに遭遇した時が辛い。それに、民間人と思われるトーマ君とリリィさんをこれ以上危険に晒せたないし。

「司令、俺が飽和攻撃をします。司令は攻撃力の高い魔法で追撃してください」

トーマ君からの提案を少し考えた末に「・・・判りました、お願いします」承諾。するとトーマ君は「丁寧語、やっぱ慣れないな」ってポツリと漏らした。

「作戦会議は終わったか? まったく、諦めの悪い奴らよ。我もこの遊戯には飽いてきたところだ。そろそろ幕とゆこう」

わたしひとりで発動できて、しかも高威力。さらに発動までそう時間も掛からへん魔法をスタンバイする。トーマ君に頷いて見せると、「行きます! リリィ、銀十字!」って頷き返しながら、リリィさんと本の名前を叫んだ。

『うんっ!』

リリィさんからの返答の後、“銀十字”の本から今まで以上のページが飛び出して来て、球体状に配置されて王さまを包囲。王さまは「くだらん」の一言を発して、魔導書のページをペラペラと捲った。

「我が敵を射抜く剣の兵よ。紫天の光の元、軍勢となりこの空を埋め尽くさん」

王さまの周囲、何十本もの物質化した黒い大剣が円形状に展開された。

「うおっ!? なんだアレ! まるで・・・!」

『ルシルさんのコード・チュールみたい・・・!』

「え? リリィさん、今・・・」

ルシル。ルシリオン君の愛称を言うたリリィさん。詳しく話を聞きたいけど、「受けよ」王さまがそれを許してくれんかった。

「レギオン・オブ・ドゥームブリンガーッ!」

それらが一斉に発射されて、王さまを包囲してたページを全て貫いて粉砕した。それでも「遠き地にて、闇に沈め! デアボリック・エミッション!!」魔法の発動直後で硬直してた王さまに、空間攻撃魔法を発動。バリア発生阻害効果を持った純粋魔力攻撃や。かなり堪えるはず。

「すげぇ・・・!」

『司令、こんなすごい魔法も持ってるんだぁ・・・』

しばらくエミッションの効果が終わるまで警戒しつつ待機。そんでようやく効果が切れて、「王さま・・・?」の姿を視認できた。俯き加減でその表情は見えへんけど、「やった・・・んですかね・・・?」トーマ君の言うようにやったようにも見える。

「くくく、あーはっはっはっはっはっ!」

そやけど王さまはまったく堪えてへんって風に大笑い。そんで「素晴らしいぞ、我が力! これだけ受けてもまだ動ける!」そう言うた。そんで“エルシニアクロイツ”をわたしらに向け、さらに魔導書を捲った。

「お返しだ。受け取れい! 紫天に吼えよ、我が鼓動! 出でよ、巨重!!」

王さまの前面に展開されたミッド式魔法陣が5枚。中央に大きなものが1枚、四方に4枚っていう風に。わたしが最近学んだ超長距離砲撃のフレースヴェルグみたいな配置や。シャレにならへん魔力がわたしらに襲い掛かってくる。

「これ絶対にまずい! ディバイド! リリィ、ディバイド!」

『えっと、えっと、やってみる!』

「ジャガーノートッ!」

離脱する前に5枚の魔法陣から砲撃が発射されたんやけど、砲撃はわたしらやなくて空に向かって発射された。失敗?って思った直後、直角に曲がって降り注いできた。何を考える間もなくシールドを張った。でもここでもまた予想外なことが。砲撃はわたしらに当たることなく海面に着弾。大きくドーム状に爆ぜた。アカン、強大な魔力に呑まれる。

「リリィ!」

『八神司令、もしかしたら、ごめんなさいかもです!』

トーマ君とリリィさんには何か秘策があるようで、足元から迫って来てる魔力に大剣を向けて「『ディバイド・・・ゼロッ!!』」剣先から環状魔法陣のようなモノを伴った砲撃を放った。と、「なんや・・・?」くらりと来た。なんや力を抜き取られるような感じ。それもすぐに治まったけど。とにかくトーマ君の放った砲撃が、5つの魔力爆発を相殺してくんが目に見えて判った。

「え・・・?」「なんだと・・・!?」

わたしだけやなくて王さままでもが驚愕。トーマ君が「た、助かったぁ・・・」って安堵。リリィさんも『上手くいったねぇ、トーマ』安堵。

「一体何をして・・・?」

「小僧! 貴様、一体何をした!今のはただの相殺ではないな! まるで魔力結合を強制的に解いたかのような・・・!」

王さまがトーマ君に詰め寄って来ようとしたんを「止まって」って前に躍り出て阻止する。わたしの目の前でにまで顔を近づけて来た王さまは苛立たしげに歯を噛みしめた後に反転して「まぁよい!」怒鳴るようにそう言うて離れて行った。

「はぁぁ・・・・。ふふ、ふはははは。貴様らとの戯れもここまでだ・・・!」

チラッと振り返った王さまの表情はさっきまでの苛立ちが完全に消えてて、その代りに喜色満面の笑顔やった。

 
 

 
後書き
ミンガラ・ネレーキンパ。
今話は第四期の片割れ「魔法戦記リリカルなのはForce」の主人公で、シリーズ初の男主人公でもあるトーマ・アヴェニール。そしてヒロインのリリィ・シュトロゼックを登場させました。彼らは後のエピソードのネタバレをたくさん引っ提げて来ています。さぁ大変。どうネタバレを回避しましょうかね。

 
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