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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epos42力のマテリアルL/雷刃の襲撃者~Levi The Slasher~

 
前書き
レヴィ・ザ・スラッシャー戦イメージBGM
魔法少女リリカルなのはA's-GOD-「レヴィ・ザ・スラッシャー」
http://youtu.be/7USyoup3seU
 

 
†††Sideアルフ†††

たく。せっかくゆっくりと過ごせると思ってたら、マテリアルっていう“闇の書”の闇の復活を企む連中がまた発生した。3ヵ月ほど前、みんなで阻止したんだけどな。何が理由で蘇ったのかねぇ。
ま、そういうわけであたし達は、マテリアルと一緒に要注意人物として認定された異世界からの渡航者、アミティエとキリエっつうフローリアン姉妹の捜索を始めた。アミティエはなのは達が。フェイトとアリサ、あたしはキリエを。マテリアル達ははやて達が担当することになった。

「見つかんないねぇ、それにしても」

キリエの反応を捉えたっていうアリシアからの報せで無人世界へとやって来た。そんであたしは平原の上を飛んでキリエの捜索中。フェイトは砂漠地帯、アリサは瀑布地帯を担当。分散して捜索範囲を広げる方が何かと楽だからねぇ。見逃しとかないし。

「・・・ん?」

あたしの耳(本来の狼としてのだよ)が意識せずにピクッと跳ねた。そんで遅れて魔力反応を捉えた。デバイスの無いあたしは、全部あたし自身の感覚に掛かって来るからね。反応のあった地点へと進路変更。そして・・・「え?」あたしは接敵した。

「・・・? アルフ・・・?」

「リニス・・・!?」

あたしの目の前に居るのは、フェイトとアリシアの母親プレシアの使い魔だった、リニスだった。リニスはフェイトの家庭教師であり、フェイトとあたしの魔法の師匠であり、“バルディッシュ”の製作者でもあり、すごく優秀な魔導師でもある。だけどリニスは、“バルディッシュ”を作り終えた後、主だったプレシアから契約を断たれて・・・もう居ないはず。

(幻術か?・・・いんや、違う。この感覚、憶えがある。・・・闇の書の残滓だ)

前回で拳を交えた残滓と同じ感じがする。懐かしさに気を緩めそうになるのを、本物じゃなくて敵――消すべき残滓だって強く思って耐える。

「アルフ。ここは一体どこです? そもそも私はどうして・・・? 解らない。頭も痛んで・・・。アルフ。少し休みたいんで、ここがどこか教えてください・・・」

リニスの声だ。フェイトにも会わせてやりたいけど、ダメだ。あたしは拳を強く握り締めて、唇を噛んで叫びたい衝動を必死に抑えた。そんで「ごめんよ、リニス」腕で溢れてきた涙を拭って、「大丈夫。すぐに・・・休ませてあげるから」リニスに向かって突進。

「アルフ!? 急に何を・・・!?」

「リニス。これは夢なんだよ。リニスは、夢を観ているんだ・・・!」

――ブリッツフィスト――

両拳に雷撃を纏わせての打撃魔法を、コンビーネーションでリニスへと繰り出す。リニスは「これが夢・・・!? 明晰夢というものでしょうか・・・?」なんて余裕で手に持ってるステッキで防御して来るから、「せいっ!」上段蹴りで意識断絶を狙う。

「あう・・・っ!」

頭が痛い。調子が悪いってことらしいから今の一撃でリニスの体勢を崩すことが出来た。ステッキで防御したその上からの衝撃に耐えきれずによろけたリニスに向かって「バインドシュート!」バインドリングを発射して、リニスを拘束する。

「こんな魔法、いつの間に覚え――・・・うぐっ!?」

――ブリッツフィスト――

リニスの腹に一撃を打ち込んだ。バインドが解けて、リニスがあたしにもたれ掛って来た。あたしは「リニス・・・、ごめんよ、ごめん、ごめん」何度も謝りながら抱き止めて、ギュッと抱きしめた。

「アルフ・・・?」

「リニス・・・!」

「・・・ふふ。夢の中でとは言え、まさかあなたに負ける日が来るなんて・・・」

リニスがあたしの方に流れる涙を指で拭って、そして笑顔を浮かべた。やっぱ無理だ。偽者だからって、やっぱりリニスはリニスだ。

「・・・ありがとう、アルフ・・・」

「リニスっ!」

そうしてリニスは、あたしの腕の中から崩れて消えていった。

†††Sideアルフ⇒フェイト†††

復活したマテリアルと、そのマテリアルと一緒に何かを企てている異世界からの渡航者、キリエ・フローリアンさんを捜索するために、私とアルフとアリサの3人でとある無人世界へとやって来た。
私のお姉ちゃんであるアリシアが、私たちが居候をしてるハラオウン家の中で一番設備の整ったエイミィの部屋で観測した限りだと、この無人世界にキリエさんが居るらしいんだけど。
夜空と岩山が幾つも切り立つ砂漠に挟まれた空を飛びながら、「なかなか捉えられないなぁ~・・・」ポツリと呟く。キリエさんの反応が捉まらない。分かれて捜索してるアルフとアリサからの発見の報告もないし、もしかしてもう居ないんじゃ、って思いもあったんだけど・・・

≪前方2時の方角に、力のマテリアルの反応を探知。距離1000ヤード≫

“バルディッシュ”から、私をオリジナルとしていた“力”のマテリアルの魔力反応を捉えたって報せが入った。どうしよう。マテリアル達の捜索は、私たちじゃなくてはやて達なんだけど。でもでも、ここで黙って見過ごすわけにもいかないよね。うん、そうだよね。

「よし。行こう、バルディッシュ。あの子からも話を聞かないと」

≪Yes, sir≫

“バルディッシュ”の案内に従って飛行進路を変更。約900m先に居るっていう“力”のマテリアルへと向かって飛ぶ。そして「あの後姿、間違いない」色は違うけど私と同じ姿形。3ヵ月前に私が撃破して、そして数時間前に復活を果たした、あの子がゆっくりと空を翔けていた。

「待って!」

「??・・・あ、あああああ! えっと、えっと、わぁーっはっはっは! 電光散らして、ボク、颯爽ふっかぁぁ~~~つッ!」

私に呼び止められたことで止まって反転したあの子がビシッと“バルフィニカス”を私に付き出して大きく笑い声をあげた。なんか雰囲気が違う。だから「なんだか前に会った時よりすごく元気?・・・だね。よかった?」とちょっと困惑しながら訊いてみた。

「え? あー、あれだよ、うん、ぶっちゃけるとさ、あの時は寝惚けてたわけ! なんて言うかなぁ、そう、夢の中で、ボクの憧れてるクールでカッコよくて頼りになって、でも正義のヒーローじゃなくて悪いボスのようなダーク的な姿を演じてた・・・かな?」

「そ、そうなんだ・・・。う、うん、確かに、カッコ良かった、かな・・・?」

「ホント!? じゃあ、今からでも戻して――」

「それはいいかな。やっぱり素の方が好きだから。君もその方が良いでしょ?」

すごく物騒な発言を繰り返していたし、アレが演技だったんならもうやめておいた方が良いと思う。だからそう言ってみたら、あの子は「う~ん・・・、うんっ! そうだね!」元気いっぱい、満面の笑顔で頷いた。自分と同じ姿形なあの子が元気いっぱいな姿でいると、なんていうかアリシアと重なるかなぁ。アリシアが私くらいの身長にまで成長するとああなる・・・?

「あ、そだ、ねえねえ、オリジナル! ほらほら、見てよ、見てよ! ボクのカッコきれーな魔力光! アクアブルー! すごいでしょ、きれいでしょ、かっくいぃー煌めきでしょ!」

「うん、綺麗だね、本当に」

以前は私と同じ金色だったけど、あの子の足元に展開された魔法陣は綺麗な水色で、「アリシアの色に似てる」ってポツリと呟いた。アリシアの魔力光は空色。うん、似てる。すると「アリシア? だれだれ?」ってあの子は興味心に突き動かされるままに私に接近してきた。身構えそうになったけど、あの子に悪意が無いのが判るから、構えを取ることなく接近を許した。

「私のお姉ちゃん。えっと写真データは・・・この子だよ」

「どれどれ・・・って、小っちゃ! 姉ってうっそだぁ~。妹じゃないのぉ~?」

「ううん。正真正銘、私のお姉ちゃんだよ。君の魔力光、アリシアの色と似てるんだ」

モニターに映し出したアリシアとアルフの3人で撮った写真を見せる。私たちみんな笑顔を、写真を撮ってくれたエイミィに向けてる。と、「ねえ、もしかしておねーちゃんとボク、似てたりするの?」って訊いてきた。

「う、う~ん・・・微妙に似てる、かも? どうだろう、元気いっぱいなところはそっくりかな」

アリシアの元気いっぱいの姿を思い返す。そしてアリサやシャルと一緒に、ルシルにイタズラをするあの困った悪さをするその姿も。やっぱり似てるかも。

「元気だけなら他のマテリアル達にも負けないよ! 元気は良いよぉー! 元気があれば、どんな好きなことも出来る! ブッた斬って、撃ち抜いて、楽しい楽しい襲撃――スラッシュも出来る! すっごい面白いこと、とっても楽しいこと、ちょーカッコいいこと、なんだって!」

うーん、元の性格でもやっぱり物騒なことは言っちゃうんだね。両手で握っている“バルディッシュ”の柄を握り直す。そして、元々そのつもりだったけど、「君のオリジナルである私は管理局員さんだからね、君たちのやんちゃな遊びを放っておくわけにはいかないんだ」改めてこの子たちの悪巧みを止める決意をする。

「ふっふっふ。その言葉、ボクへの挑戦と受け取った!」

VS◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦
雷刃の襲撃者レヴィ・ザ・スラッシャー
◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦VS

「見せてやるっ、生まれ変わって手に入れたこの力ッ!!」

――光翼斬――

私のハーケンセイバーをコピーした、斬撃を放つっていう光翼斬だ。でも以前とはちょっと違って、縦回転で、しかも私のものより速かった。しかも誘導性も高いようで、回避しようと横移動したらほぼ直角に曲がって来た。

「バルディッシュ!」

――ハーケンスラッシュ――

大鎌形態ハーケンフォーム時に展開される魔力刃の強度や攻撃力を増加した上での斬撃で、追尾して来た光翼斬を迎撃、弾き飛ばす。そのすぐ後、「電刃衝!」プラズマランサーを6発と発射して来たから、上昇して避けて「プラズマランサー、ファイア!」同じ魔法を8発と発射する。

「無駄、無駄っ♪」

――光雷斬――

あの子は魔力刃で全弾を弾き返した。けど、この魔法は「ターン!」のキーワードで、方向転換が出来るんだよ。四方八方に散ったランサーがあの子に向かって方向転換、「ファイア!」そして再発射。

「へっへーん! 前までのボクと違うんだぞぉ~!」

――雷光破走――

あの子はソニックムーブで急速後退して、左手を私に向けてきた。魔法陣が展開される。すぐに砲撃だと察してランサーの誘導操作を解除、その場から離脱する。直後「雷刃爆光破ぁぁぁぁッ♪」砲撃が発射された。足元を通り過ぎて行く砲撃をチラッと見て、あの子へと視線を戻した時、「あ・・・!」見失ったことに気付いた。後ろ・・じゃない。

「上・・・!」

見上げると、あの子はそこに居た。水色に輝く雷光の塊を頭上に複数基と展開していた。新技だってすぐに判った私は、迎撃でも防御でもなく、回避を選択した。明らかに私の防御力の上を行ってる。

(距離もある上での発動だ。おそらく範囲攻撃。私のようなタイプにはキツイかな・・・!)

急速降下してあの子から距離を取る。目指すは壁になってくれそうな分厚い岩山。頭上からはバチバチと放電している音が降ってくる。そして「パワー極限! 轟雷爆滅ッ!」そんな掛け声が聞こえてきたから横目で頭上を見る。あの子の頭上に有る複数の雷塊から雷光に繋がれた剣が飛んで来ていた。

(あんなの喰らったら本当に墜とされる・・・!)

すごい魔力を感じる。唯一の救いは、推測してた広域攻撃じゃなくて対人攻撃だったこと。避けきってしまえば大丈夫。避けれなかった場合は、最悪な撃墜。迫る雷剣を、岩山の中を翔けながら避け続ける。あと少しで追いつかれるというところで、目前にまで迫って来た岩壁を回り込むように急速旋回。

「受けよ、エターナルサンダーソード! その効果は、えっと、えっと・・・相手は絶対に死ぬッ!」

――雷刃封殺爆滅剣――

「勝手に殺しちゃダメだよっ!?」

岩壁を挟んだ向こう側に突き刺さったらしい雷剣が一斉に爆ぜたのが判った。非殺傷設定だとは思うけど、それでも私が背にしている岩壁を破壊していく様からして、そんなの関係が無いって思えるほどに本当に死んじゃいそうな威力。とんでもない放電に巻き込まれないために岩壁から距離を取る。

「バルディッシュ!」

上空に留まっているあの子の魔力反応を“バルディッシュ”に探知させ、エターナルサンダーソードっていう魔法の爆発で巻き起こった砂塵の所為で姿の見えないあの子の場所を探る。そして“バルディッシュ”の探知した通りに距離、方角、角度へ向けて左手を空へと翳して、「プラズマスマッシャァァァーーーッ!」砲撃を放つ。
砲撃は砂塵を吹き飛ばして、あの子へと真っ直ぐ飛んで行く。私は砲撃を撃ち終えてすぐに上昇開始。砲撃を避けたあの子へさらに「プラズマバレット、ファイア!」ランサーより威力や速度もないけど、誘導制御に優れた魔力弾を10発と発射。

「むぅ、何で死んでないんだよぉ、オリジナル! ボクの必殺技だぞぉ! 必殺技は必殺なんだぞぉッ!」

――雷光破走――

様々な方位からのバレットによる包囲攻撃を、ソニックムーブで回避して行くあの子にバレットで追撃させながら飛行ルートを制限、誘導させていく。

「そんな物騒なことを言っちゃダメだしやっちゃダメだよ!?」

――ハーケンセイバー――

“バルディッシュ”を振るってあの子の行く手へと魔力刃を飛ばす。バレットとセイバーの挟撃に「あわわわっ!」あの子は急停止して、バレットにはラウンドシールドで対処して、セイバーには「光雷斬!」斬撃魔法で迎撃をした。
両手が塞がった事を確認。カートリッジをロード。前面に魔法陣を展開した魔法陣をあの子へと向けてもう1つの砲撃魔法、「トライデントスマッシャァァァーーーーッ!!」を発射。三叉槍の名を冠してる通り、3つに分かれた砲撃が真っ直ぐ向かっていく。もう少しで直撃というところで、ドンッと強力な魔力を放ってその姿を光の中に隠した。そして見た。

「わーっはっはっはっ! 憶えているか、オリジナル! 前回、ボクがどうやってオリジナルに負けたのか!」

スマッシャーから逃れるように急降下した水色の閃光。あの子だ。魔力開放でバレットとセイバーを消滅させ、そして砲撃を降下することで回避した。その姿は間違いなく「ソニックフォーム・・・!」だった。

「そう! ちょー速く移動できるこの魔法をボクは持っていなかったから、追い詰められちゃったんだ! でも、今度はそうはいかないぞ! このスプライトフォームで、コテンパンにしてやるから覚悟しろっ! スプライト・・・ム~~ブ!」

あの子の姿が掻き消える。いいよ、じゃあ私だって「ソニックフォーム!」高速機動戦形態のソニックフォームへ換装して迎撃してあげる。

「せぇぇぇーーーいっ!」

――光雷斬――

「はぁぁぁぁぁーーーーッ!」

――ハーケンスラッシュ――

私とあの子、お互いに高速移動魔法を連続で行いながらデバイスを振るい続ける。ヒットアンドアウェイ。私と同じ戦い方がこうして返って来て苦戦しちゃうと、自賛になっちゃうかもだけど厄介だなって思えてしまう。
そして何度目かの鍔迫り合いの最中、「むぅ、やっぱりオリジナルは強いな!」あの子が私のことを褒めてきたから、「君も強くなってね。前回だったらもう終わってそうなんだけど」って褒め返す。ん? 褒め返せたのかな、これ・・・。

「えへへ♪」

「そう言えば、名前、有ったんだよね・・・?」

「うんっ、有ったんだよそれが! ボクの名前は、レヴィ! 元気いっぱい勇気全開の、レヴィ・ザ・スラッシャー!」

そう、レヴィ。満面の笑顔で自己紹介したレヴィが鍔迫り合いを自ら中断して後退して、「電翔弾!」プラズマバレットを10発と撃ち放ってきた。それらを回避して、「プラズマランサー!」を6発と発射。レヴィが紙一重で避けながら前進して来たから、私も前進。そしてまた、互いにデバイスを振るって斬り結ぶ。

「そして、カッコよくて頭が良くてメラメラなのがシュテル! 綺麗で、クールで、怒ると一番恐いのがアイル!」

火花が周囲に激しく散る。レヴィ、本当に強くなった。でも、私だってこの3ヵ月、なのは達と特訓を繰り返して、士官学校でも魔力運用技術を学んだんだ。負けるわけにはいかない。“バルディッシュ”を振るって、突いて、盾にして、レヴィに一撃を与えようと振るい続ける。

「アホだけど礼儀正しくて、シュテルみたいにメラメラなのがフラム! なぁんか偉そうですぐ怒るけどホントは優しい、実際にえらい王様なのがディアーチェ! ほら、みんなカッコいい名前だろー!」

「うん、みんな格好いい名前ばかりだね。それじゃあ、私の名前、知ってるかな・・・?」

「うんっ! ヘイトだろー! えっへっへー。ボク、ちゃんと憶えてるだろー?」

「えっと、フェイト、なんだけど。フェイト・テスタロッサ・・・」

「へいと・・・?」

「フェ・イ・ト」

「へ、い、と・・・。んもう、めんどくさいからオリジナルで良いじゃん!」

「あぅー、ひどい・・・」

フェイトよりオリジナルって呼び方の方が面倒だと思うのに。なのはとヴィータのやり取りを思い出しちゃった。ヴィータは始めの頃。なのはのことを、なにょは、って上手く発音できずにいた。今ではちゃんと呼べているんだけどね。でも、レヴィは今後もちゃんと呼んでくれなさそう。
僅かなショックで気が抜けそうだったのを耐えて、レヴィの猛攻を凌ぎきる。そして「せいっ!」今一番の全力振りでレヴィの“バルフィニカス”の一撃に応え、「なんでー!?」あの子を弾き飛ばした。

「プラズマランサー、ファイア!」

体勢を立て直す前にレヴィにランサーを4発と発射。レヴィはシールドで防御したけど着弾時の爆発で「うわぁー!」また吹き飛んだ。でもソニック――じゃなくて、スプライトムーブを発動してその姿を掻き消した。

「どっせぇぇーーーい!」

――光雷斬――

私の右横に現れたレヴィ。そして振るわれる“バルフィニカス”。まず縦に構えた“バルディッシュ”の柄で“バルフィニカス”の柄を受け止める。そして右手を上げ、左手を下げることで“バルディッシュ”を水平にしていく。と、押し切ろうとしている“バルフィニカス”はその力の所為で柄を滑って行き、スカッと空振ることになった。

「サンダーアーム!」

雷撃に変換した魔力を体の一部に集中的に発生させて、その部分に触れた相手の体や武器に雷撃を流す、攻防一体の防御魔法を発動。今回は柄から離した左手に付加。そのまま空振った勢いで脇腹ががら空きなレヴィへと「えーい!」パンチ。

「あばばばばばばっ!? バチバチするぅーーー!?」

そして感電するレヴィ。殴り飛ばすとレヴィは力なく落下を始めたけど、なんとか体勢を立て直して宙に留まった。だけど「けほっ。・・・なんか目の前に星がいっぱいあるぞぉー?」口の中から黒い煙を吐いて、静電気でボッサボサになった髪をそのままに両手を空に掲げて、わーい、とクルクル回り始めちゃった。

「どうしよう、自分の姿っていうこともあって、なんか恥ずかしい・・・」

激しい感電をしちゃったからなのかレヴィがおかしくなった。どうしようかと困惑してると、「隙ありぃぃーーーッ!」レヴィがくるっと一回転して光翼斬を放ってきた。高速回転しながら飛来してくる魔力刃を「今の嘘だったの!?」なんとか“バルディッシュ”の一撃、ハーケンスラッシュで迎撃、弾き飛ばすことができた。

「言ったろー! ボクは、悪役が大好きだ! けほっ、どうだ、騙されたかーっ?」

「えっと、うん、騙されたのは騙されたんだけど・・・大丈夫?」

本音を言うと演技に見えない。バチバチ言ってるし、咳をするたびに黒い煙が口から出る。電力は抑えたつもりなんだけど。失敗したのかなぁ。とりあえず「いろいろと話を聞きたいから、拘束させてもらうね」バインドを発動しようとしたら、「いぃーっだ! 絶対に捕まらないぞ!」レヴィがそう言って、“バルフィニカス”をサッと横に払った。

「ザ、ザンバーフォームまで・・・!」

“バルフィニカス”がザンバーフォームへと変形した。レヴィは「んんー、カッコいいーっ❤ ブレイバー!」って“バルフィニカス”をうっとりと眺めた後、「いっくぞぉー!」突進して来た。ザンバー、じゃなくてブレイバーは確かに強力な形態だ。
性能の大半は攻撃に振り分けられてる。無詠唱の結界破壊や砲撃・斬撃を可能とする。威力・範囲・距離の応用性能も高くて、さらに集団戦でも能力を発揮できるように設計されている。でもその反面、機動力を大きく殺がれるデメリットもある。

「雷刃・・滅殺・・・極光斬ッ!」

っていう名前のジェットザンバーだ。伸長した魔力刃による斬撃魔法。派手なことが好きみたいなレヴィには申し訳ないけど、元は私の魔法。メリット・デメリットくらいは把握しているよ。ソニックムーブで一気にレヴィへと接近。

「せぇーい、うりゃー、とりゃー、くらえー!」

ザンバーフォームの“バルフィニカス”をブンブン振り回してくるけど、雑。すごい雑。当たれ、っていう方が難しいかもだよ。とにかく斬撃を躱し続けながら、「ファイア!」プラズマランサーを6発と発射。レヴィは「あわわわ!」普通の飛行で回避した後、斬撃で薙ぎ払ってきた。

「バルディッシュ!」

≪Trident Smasher≫

ソニックムーブでレヴィの頭上へと回り込んで、前回の戦闘と同じ構図で砲撃を発射。レヴィは「またこの魔法なの!?」って慌てふためきながらも雷刃滅殺なんとかって斬撃で迎撃。効果を発揮する前に斬り裂かれた。けど、その際に起こった爆発がレヴィを襲って、あの子の視界を潰した。

「ザンバーフォーム!」

≪Load cartridge. Zamber form≫

“バルディッシュ”をザンバーフォームにして、煙の中から飛び出して来たレヴィへと向けた「ジェットザンバァァァーーーッ!」伸長した斬撃を振り下ろした。捉えたって思ったけど、「こんのぉぉーーー!」レヴィもまた雷刃なんとかで迎撃して来た。

「はぁぁぁぁぁーーーーーッッ!」

「うおおおおおおーーーーーッ!」

バチバチと衝突点から激しい火花と放電が起きる。僅かな鍔迫り合いの果て、「のわっ!?」レヴィの方のザンバーがへし折れた。その衝撃で吹き飛ぶレヴィへと、「プラズマ・・・スマッシャァァァーーーッ!」砲撃を発射して・・・「うそだぁぁぁーーー!?」直撃させた。
墜落して行くレヴィが体勢を整えて宙に留まったことを確認。周囲にランサー発射体のプラズマスフィアを5基と待機させながらレヴィの元へ降下して行く。

「そんなぁー、あーりーえーなーいー! ボクのブレイバーがポキられたー!」

刀身を失った“バルフィニカス”を涙目でまじまじと見つめるレヴィ。そんなレヴィに「今回も私の勝ちだね」って声を掛ける。

「むぅ、なんでボクの攻撃は全然当たらなくて、オリジナルのは当たるんだよぉー! ヒキョーだぞ、なんかズルしてるな! 正義の味方のくせに!」

「えっと、ズルじゃないよ? なんていうか、レヴィはまだ、使えこなせてないんだよ。ザンバーの攻撃力に任せて振るうだけじゃ当たらない。それに機動力も落ちちゃうから、使う場面も考えないと」

「ガーン! で、でも、ボクは慣れてないんだぞ! 慣れてる分、オリジナルはヒキョーだ!」

「えええーーー」

なんて理不尽。そもそも「慣れてないんなら使うべきじゃなかったよね・・?」と思うんだけど。するとレヴィは「ふんだ!」ってそっぽを向いちゃった。ま、まぁ、とりあえず大人しくなってくれたから良しとしよう。

「フェイトー!」

「あ、アルフ!」

アルフがこっちに向かって来ていて、そしてレヴィを見た瞬間「なんでコイツとのんびり構えてんの?」一気に不機嫌になって、ものすごい殺気を放った。牙をむき出しにして、グルル、って唸り声を上げる。

「な、なんだよ、やるか? オリジナルのペット! 殺すぞ、このアホ犬」

「上等だよ、フェイトと同じ姿だからって容赦しないよ! その首に牙を突き立ててやるよ!」

一触即発の雰囲気。私は「どうしたの、アルフ!?」ってアルフとレヴィの間に割って入る。アルフはそれでも殺気を放ち続けて、「あんたらなんだろ。闇の欠片をバラまいて、他人様に嫌な思いをさせてんのは!」って叫んだ。

「い、いや違うよ? 断片の発生は別にボクらの意思じゃな――」

「間接的にはそうなんだろうが! こっちはな、倒したくない恩人を、この手で倒すことになってイライラしてんだよ! アンタも、他の連中もとっ捕まえてやて、もう二度と、永遠に復活できないようにしてやる!」

「あ、あぅ、わわ、こ、怖いぃ~~~! なんなのさ、この犬!」

怯え始めたレヴィを「おら、相手になってやんよ。戦いが好きなんだろ! かかって来な!」ってさらに追い詰めるアルフ。私が「落ち着いて、アルフ!」って制止しても、「こればっかりは止められないよ、フェイト!」アルフは言うことを聞こうとしない。

「シャマル先生に教わった封印術式、アンタを実験台にして試してやる!」

「っ!・・・ぅ、うぅ、あう、・・・ぐす、ひっく・・・ひっく・・・」

「「え・・・?」」

レヴィが嗚咽を漏らし始めた。それでも泣かないように唇を噛みしめてる。だけどとうとう「うわぁぁぁ~~~~ん!」泣き始めちゃった。これにはアルフも困惑して、殺気を抑えた。

「なんだよぉー、ボクが何をしたっていうんだよぉー! 悪いことなんて、まだ何にもしてないじゃないかぁー! なのに、ぐす、えぐ、なんでイジめるんだよぉー!? 断片の発生は、ひっく、ボクらの、ぐす、所為じゃないぞ! 単なる副次効果なのに! ボクらがやってるわけじゃないのに! ひぐ、ひぐ、それにさ、会うのが嫌だっていうんなら、会わなければ良かったじゃんかよぉー!」

レヴィは駄々っ子のように四肢をブンブン振り回して、さらに「わわっ?」“バルフィニカス”や籠手に具足、手袋、髪を結ってるリボンもクシャクシャに丸めてポンポン放り投げて来た。それらをアルフとキャッチしながら、「もう、アルフ、泣かしちゃダメでしょ」って窘める。

「えー、えっとー、でもさぁー・・・」

「お前なんか嫌いだっ、犬なんか嫌いだ、獣なんて嫌いだ、きぃーらぁーいぃーだぁ~~~~!!」

「お、落ち着いてレヴィ! 大丈夫、大丈夫だから!」

レヴィの装備品を一旦アルフに預けて、私はあの子を抱きしめた。最初は「はーなーせー!」って暴れていたレヴィだけど、「ごめんね、恐かったね」って頭を撫で始めると、「うぅ・・・」ようやく大人しくなってくれた。

「ぐす、えぐ、ひぐ、ひっく・・・。聴いてたろ、オリジナル? お前のペット、ボクを永久封印して、さらに地獄の責め苦を無限に味わわせてやるって言った」

「言ってない」

「まあまあ、アルフ」

「フェイトぉ~~」

アルフまで情けない声を出してきちゃった。どうしてこうなったんだろ。とりあえず高度を落として、落ち着ける場所――岩山に移動。そこに座って「ほら、自分の装備品、大事にしないと。ね?」装備品を返して、涙を腕で拭いながらも装備品を装着してくれたレヴィの髪を結う。

「あ、そうだ。ねえ、アルフ。商店街で買い物をしたときに貰ったアレ、持ってたよね?」

「アレ?・・・ああ、うん。持ってるけど、どうすんの?」

「レヴィにあげようと思って」

アルフの持ち物の中から出て来たのは、ソーダ味の棒付きキャンディ。装備品を装着し終わったレヴィに「はい、良かったら食べて」って差し出す。レヴィはこういう食べ物とか知らないのか「くんくん。なにソレ? あ、なんだか甘い匂い・・・」って鼻をすんすんさせて匂いを嗅いで、そして興味を持ってくれた。

「キャンディだよ。ソーダ味。美味しいんだよ」

「・・・いいよ、貰ってあげる。・・・あーん。はむ。はむはむ。・・・む? むむ、むぅー!」

気に入ってくれたようでレヴィは目を輝かせてキャンディを咥えた。でも噛み始めたから「噛んじゃダメ。舐める食べ物だよ」って優しく注意。レヴィは「む」と一言。教えた通りに「はむはむ」舐め始めて、「不味くはない。・・・うん、おいしい! なにコレ、あまーい!」ってさらに笑顔を輝かせた。アルフと一緒にホッと一安心。

「あのね、食べながらでいいんだ。少しだけ、レヴィ達のことを教えてほしんだけど」

「はむはむ。なに? はむはむ、ぺろぺろ」

「ありがとう。君たちが探してる、システムU-D――砕け得ぬ闇、って何かな?」

「何?って、ボクらが生きてる理由、その全部だよ。ボクらマテリアルは元々、闇の書の構築プログラムの1つだ。んで、砕け得ぬ闇っていうのは、システムU-D・・・正式名称、アンブレイカブル・ダークのことで、闇の書が闇の書たりえるシステムのことだぞ」

「アンブレイカブル・ダーク・・・?」

「で? そのなんとかダークを手に入れると、アンタら、どうなんのさ」

「決まってるじゃん! ボクらが今以上に、ちょー強くなるんだ! 特定魔導力の無限連関機構。真正古代――エンシェントベルカの戦乱と狂気が生み出した、破滅の遺産! その力さえ手に入れることが出来れば、ボクらは誰にも邪魔されず、どこにも閉じ込められることがなくなる。そうさ、自由になれるんだ!」

「自由・・・」

そこまで教えてくれたところでレヴィはキャンディに意識を戻した。システムU-D。ナハトヴァールよりさらに危険な感じがする。そのことについてもうちょっと話を聞こうとしたら・・・

――イシュタル――

「「っ!?」」

足元の砂漠から氷の尖塔が幾つも突き出して来て、私とアルフはその場から急速後退。とここで「レヴィ! あなた、何をベラベラとお話ししていますの!」頭上から、レヴィを叱咤する怒鳴り声が降って来た。

「アイルだ。どしたの?」

「どうしたもこうしたもありませんわ! 砕け得ぬ闇の情報を敵に話すなんて、どういうつもりですの!?」

「むぅ、アイルうるさい。話したところで何もならないさ。ボクらのやることは変わらない」

氷の壁の向こう側から聞こえるレヴィと、すずかの姿をしたマテリアル――アイルの会話。2人の元へ向かおうにも、次々と氷の尖塔が突き出して来て向かえない。

「オリジナル! あとアホ犬! さっきの水色の丸っこい奴。なかなかに美味しかったぞ! ごちそうさま! そんじゃボク、行くからねー!」

「ほら、早く王の元へ戻りますわよ!」

そうしてレヴィは、アイルと一緒にどこかへと飛び去って行ってしまった。崩れていく尖塔に巻き込まれないように空へと上がる。うぅ、やっぱり居ないか。

「自由・・。閉じ込められずに、か。夜天の書が闇の書って呼ばれてた間、あの子たちはずっと外に出たかったのかな・・・?」

「だからってやり方もあると思うけどね、あたしは」

「うん。・・・大丈夫、その辺りを揺らすつもりはないよ。あの子たちとも向き合って、ちゃんと話をしようと思う。真っ直ぐに。なのは達がそうしてくれたみたいに」

「だね」

その直後、アリサのデバイスである“フレイムアイズ”から通信が入った。アリサが、アリサの姿をしたマテリアル――フラムと戦って動けなくなったって。私とアルフは完全に反応を失ったレヴィ達の追跡を中断して、アリサの元へ向かうことにした。

 
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