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IF―切り開かれる現在、閉ざされる未来―

作者:黒川 優
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序章 May―踊り始める現在
  What is Zins and IS hunting?/ Troublesome visitor

 
前書き


投稿が遅れてしまい申し訳ございません。
てっきり投稿してると思いました。
できるだけ10日間隔で投稿できるようにがんばります。


 

 




(シャルルside―IS学園、寮棟)


「これからルームメイトとしてもよろしくな」
「うん。こちらこそよろしく」

優と一緒に寮内を歩く。
一夏は箒といるから空きのある優の部屋になったからだ。

「優の部屋って言っても皆とそんな変わらないんだね」
「俺もここの生徒として借りてるからな」

違いと言えば、窓側のベットなどを撤去してその空いたスペースに中央にはソファと長机、壁側には金庫や本棚が置いてあるくらいである。

「そういえば優って仕事でここに来るの遅くなったんだよね。どこに行ってたの?」
「どこって…フランスだぞ。知らないのか?先日デュノア社が何者かに襲撃されたの」
「あぁ……」

知ってる。研究所の襲撃。っと言っても研究所を狙うのは亡国機業の特徴。
何にしろ、僕がしたわけではない以上あの人の会社なんてどうでもよかった。

「シャルル?」

じーっと顔を見られる。
(やっぱり怪しまれた?)

さっきの対応は社長の御曹司としてはあまりにも不自然過ぎたから。

くしゃ―――

「え?」

僕の頭に手を乗せて撫でてくれた。

「ゆ、優どうしたの?」
「シャルルって女の子みたいでかわいいなって」
「か、かわいい……」

かわいい。あまり男と関わりがなかった僕にはあまり言われたことのない言葉。
それに反応して顔が赤くなってしまう。

「僕、男なんだけど…」
「あれ?そうだっけ?」

冗談混じりの声。その声には悪意も何も無くてほっとした。

「まぁこれからよろしくな」
「うん」





「ところで僕はどこで寝ればいいのかな?」

ベッドは一個しかない。
やっぱりソファとか……。

「別に一緒に寝ればいいんじゃない?」
「え?」

一瞬、何を言っているのか分からなかった。

「別に大丈夫だろ。男同士なんだし」

(どうしよう……。
で、でも断ったら女ってバレちゃうかも……)
悩んでも仕方ないので意を決してベッドに入る。

「お、お邪魔します」
「なんで寝るだけなのにそんな畏まるの」

優は僕の気持ちなんか知りもせず笑っていた。
僕、こういうの初めてなのに……。

「じゃおやすみ」

横になった優はすぐに寝てしまった。

(近い!近いよ優!)

整った唇が無防備に目の前にある。
僕は壁側にいるから逃げ場所がない。

(ダメダメ意識しちゃ。別のことを考えよう)

別のことって言っても目にみえるのは優しかいないから
自然に目の前の優のことしか考えられない

顔にかかってる髪をそっと指で払う。
見た目的に僕より長い髪をして、部屋には女の子のみたいいっぱい色んな美容品があった。

(もしかしたら優も僕みたいに男のフリしてたりして)
というか、これで男とか言ったら根本的に、そう遺伝子的におかしいと言っていい。

肌や指など体を少しずつ触れて優が女の子である確証を得ていく。
そう思うと優がお姉さんに見えて……。


(あれ……胸がない………)
優が起きない程度に何度も胸を触っても
普通に少し鍛えられた胸板らしいものがあるだけだけだった。

(………………)
ってことはやっぱり優は男で、僕は勝手に女って思っていっぱい触ってて………。

ボンッて顔が赤くなる。
こうなってしまったら意識しないことなんてできない。
その後は横になっても寝ることできず気付いたら朝日が昇っていた。



(優side―IS学園、教室)


一夏が難しい顔で俺を見ている。

「国際IS委員会って言っても具体的にどこなんだ?」

一口に国際IS学園と言っても、その中は議会、裁判、AIFが三権分立の状態で存在していて、ひとつひとつの組織がデカい。

「俺が代用の利く議会や裁判なわけないだろ」
「じゃあAIFか………」

細かく言うとAgainst Infinite Features(対IF部隊)。
文字通り、亡国機業が作ったマルチフォームスーツInfinite Features、通称IFと戦うための部隊。
勿論、それだけじゃなくIS界の警察として活動している。
一夏とシャルルのIS適性検査、身辺調査などがその一例になる。

まぁ運命的(宿命的?どっちもイタイ表現か)なことがあり、俺も所属している。
ちなみに隊長は千冬さん。当たり前といえば当たり前。
IS狩りを止め、亡国機業本部を崩壊させた功績から就任しているからだ。

「前線に立つってことは危険も多いんだろ?」
「無いわけじゃないな。
けど……まぁこう言っちゃいけないんだがISを使っている以上、普通の軍人よりは危険は少ないと思う」

勿論、それはIS展開時に限る話。
だから俺や軍関係はISの疑似絶対防御「Pawer Wall」を内蔵したミリータを常備している。

「あの黒川さん」
「ん?」

振り返った先にいたのは昨日戦ったセシリアだった。

「なんでしょうお嬢様」
「セシリアで構いません。でその……」

やけにキョロキョロとして昨日の模擬戦前の威勢の強さが見られない。
けど意を決したらしく、更に一歩俺らに近づいた。

「もしお時間がありましたら、コンフリクトについて教えていただけませんか?」
「あぁそれなら今日からでも大丈夫だぞ」
「本当ですか?」

俺の言葉を聞いてぱぁっと笑顔になった。

「あぁ。じゃあ放課後でいいか?」
「はい!よろしくお願いしますわ」

セシリアは上機嫌で席に戻っていった。

(高飛車気味と聞いていたが意外と真面目なんだな)
それとも一夏が何かしたのか。

「………なんだ?」

こっちの方だな。一夏は見境なく女を落とすって鈴が言ってたし。
また無意識にやらかしたんだろう。

「全員席に着け。授業始めるぞ」

千冬姉と山田先生に皆は慌ただしく席に着いた。


(一夏side)

「さて、今日は最近物騒な事件を起こしたと思われる亡国機業について勉強する。
最初に……」

千冬姉は肘を付いて上手く寝ている優にチョークを投げて起こした。

「痛い……」
「いいから教科書を読め」
「…えーと。亡国機業はZ-ONEによって第二次世界対戦後に創設された組織である――」

簡単に言うと
設立当初は音沙汰はなかったが、6年前のIS狩りを皮切りに活動が活発化。
現在はISISによるISの強奪とIS研究室の破壊、情報工作が主な行為になっている。
目的は不明だが、創設者Z-ONE(ゾーン)がユダヤ人でナチスの虐待を受けていたこと、破壊している研究所が何かしらあると思われる。
と言ったところだ。

「織斑先生。そのIS狩りは文字通り、ISを破壊したことですか?」
「そうだ。第一回モンド・クロッソの上位者を狙った連続IS破壊事件。まぁテレビで見たことがあるだろう」

あの時期はどのチャンネルにしてもそのニュースで持ちきりだった。
特に、ISを展開していたにも関わらず操縦者が亡くなったときは不安を越え、恐怖するものもいた。
そのくらいこの次世代兵器の乱用は世界に大影響を与えた。

「では、亡国機業はどこでISを手に入れたのですか?」

世界でも希少なISをそう簡単に手に入れることはできないはずだ。

「亡国機業はISを使っていない。独自にマルチフォームシステムを開発したのだ。
委員会はこれを「Infinite Features」通称「IF」と呼称。またそのIS狩りに使われたIF一号機を「アインス」と呼称している。具体的には教科書を見た方が良いだろう」

見た目はISと遜色はない。
違うとすれば全体的にスリムな感じなのと装甲の下に羽織があることぐらいだろうか。

(あれ?)

「ちふ…織斑先生、あのアインスの機体数がやけに多いのですが…」

一流企業でもここまで多くの種類は作っていない。と言うより作れない。
だけど、アインス専用機は実験段階のものまで合わせると7機ある。
まだそんなにISを知らない俺でもこれは異常だとわかる。

「それはアインスがIF、ISIS(アイスィス)に対してのみだが現在も使用可能になっている。
実験段階の機体があるのは既成機の改良を行っているためだ。
それから数機体種類が増えるだろう」

大丈夫なのか?敵が使っていたもの使って……。

「それについてはお前のように不安視する声があるが、今のところアインスには存在してもらわないとならない理由がある。それは次の授業にしよう。そろそろ授業が終わるからな」

千冬姉は寝ようとしている優の監視を解いて教卓に戻っていった。

「さて宿題だか、次の授業までにアインス専用機は覚えておけよ。
あとIS狩りは試験によく出るから覚えとけ。以上だ」

チャイムの音と共に千冬姉と山田先生は職員室に戻っていった。

えーアインス専用機はっと……やっぱり多いよな。
能力、性能に一貫性ないし。
しかも、現段階で7機で増えるって…全部改良したら14機じゃねぇか。
覚えらんねぇよ。
俺は幸先の暗さにため息をついた。





(セシリアside)

「♪~♪♪~~」

セシリアは上機嫌で髪にブラシを通していた。
ふたりっきりでの訓練。
しかも、次の訓練も約束してくれてその時までにはコンフリクトに適したものを作ってくれるという。

訓練関連でなければデートになったのだが、まだ知り合ったばかり。
これでも上々だと思うことにする。

問題は……
(布仏さんですわね……)

大体食事の時は一緒だし、しかも彼女は食べさせてもらっているし、優本人も嫌がっているわけではない。
二人が特別甘い空間を作っているわけではないが、やはりあれが普通に成り立ってしまう関係は油断できない。

(ですが、このセシリア・オルコットの名にかけて落としてみせますわ!)
持っていたブラシを握り直し上に高々と挙げていた。


(シャルルside―図書館)



ボンっと集めた本を重ねる。
以前、授業で扱ったIS狩りと機体整備に関する書籍だ。
そのことでどうしても知りたいことがあった。

――Slave Mode
アインスが展開していた機体が強制収納、破壊された時に発動するシステム。
機体の操縦が強制的に人の意志からAIの制御によるものに移行する。

この状態になったアインスは非人道的な行動をとる。
IS狩りで死者を出したのがこのシステムのせいと言えばその残虐性がわかるかもしれない。

大まかにこんな感じの文章。
ここの記述にきっと少なくとも僕がシャルル・デュノアとしてここにいられる方法があるはず。
ただ絶望的なのはアインスが未だにそれを切り離していないこと。

この事実にあの人との会話が揺らめいて来る。

――――――――――――――――――

「『赤い靴』…ですか?」

「あぁ。アインスのSlave Modeに似たシステムだ。
お前がもしISで負けそうになった場合、搭載したAIが変わりに戦うようになっている。
勿論、私の意志でも移行できる。
言っておくが変な偽装はするなよ?
これにはお前を監視するシステムも搭載されている。
奴らを庇うようなことをすれば私が強制的に移行させる」

「そんな………」

「なに、要は仕事をこなせばいいってことだ。
ISがあれば男と女の力の差なんて変わらなくなる。それどころか女の方が有利だろう」
「………………」
「活躍に期待してるよ。成功すれば君が戻りたがっているあの家は返そう」
「………はい」

――――――――――――――――――――

(大丈夫……)

向こうだってコレがずっとリブァイブに入っているのは都合が悪いはず。
絶対に取り外しもできる。

そう、できるはずなんだ。
絶対に、絶対に………。






(セシリアside―食堂)

「ふぁ~」
「シャルルさん、よく寝れなかったのですか?」
「うん、優がベッドがないからって僕を同じベッドで寝かせるんだよね…」
「それはよかったですわね」

つんっと冷たく言い返す。最近わかったのだが一夏さんも優さんもシャルルさんには甘いというか何というか、とにかく自分達と扱いが全然違う。

「セシリアってもしかして優のことが好きなの?」
「シャルルさん!?いきなり何を言うのですか!?」
「あっ否定しないってことはそうなんだ。じゃあ――」
「シャルルさん!」

急いで彼の口を塞ぐ。

「(このことは誰にも言わないで!)」

他の人に聞こえないように小さな声で口止めにかかる。
だが、これが悪かった。

「おぉセシリア、朝から大胆だな」
「え?」

優さんに言われて今の状況を確認する。
よく見ると自分がシャルルさんを押し倒したようになっていた。
しかも、場所が場所で横になってしまうとまわりから見えない部屋の角の席に自分達がいた。

「優さん、これは…」
誤解ですと言おうとしたが当の本人は一夏さんの所に行ってしまった。



(シャルルside)


「どうだった?英国淑女さんは?」
「優!あれは誤解だって言ったでしょ!」

今日それのせいでセシリアと気まずかったんだから。
それでもそれが収まっているのは優が大人の対応をしてくれたおかげである。
こういうのを見ると見つけるとすぐに言いふらしていたクラスの子とは違うなぁと思う。

「はいはい」

くしゃくしゃと頭を撫でた優はシャワーを浴びに行った。

(いつも思うけど、優って僕のこと小学生ぐらいの子だって思ってるよね。)
確かに年下ではあるが頭を撫でるあたり、扱いは中、高校生ではない。

(…まぁいいけどさ。嫌じゃないし…)

ガチャガチャ――

「すみません。今、開け――」

ガチャリ――

(あれ?勝手に開いた)

部屋の鍵は最近新調したものみたいで鍵は僕と優しか持っていないはず。
織斑先生はちゃんと一声かけてから中に入る。

リヴァイブをすぐに展開できるように構えて、入ってきた人を見る。
その正体は……

「生徒…会長さん……?」
「え?」

互いに状況が読めずに目を見開いていた。


(シャルルside)

「なるほど。その子が転校生の一人で、男だから優君と同室なのね」
「そういうこと」
「それにしても…」

さっき優から紹介を受けた楯無先輩はまじまじと僕を見る。

「女の子の服着せたくなるわね」

楯無先輩は手をわきわきさせて僕を見ていた。
失礼だけど目がいやらしい。

「やめとけ。シャルルが引いてるから。それよりどうやって部屋の中に入った?」
「普通に鍵を使ってよ」

楯無先輩は当たり前のように答えたがそれはおかしい。
この部屋は優が大事な仕事の書類を扱う関係からドアは特殊なもので、鍵も僕と優と織斑先生しか持っていない。はずなんだけと…。

「お姉さんをないがしろしちゃダメだぞ★」
「はぁ……」

このやり取りで楯無さんの性格が何となく分かった気がする。

「で、何しに来たんだ?」
「あら。久々にここに帰ってきた元ルームメイトの様子を見に来ちゃいけないのかしら」
「優、楯無さんと同室だったの?」
「ちょっとトラブルがあってな。去年いっぱいまで同室だったんだ」
「へぇー」

って、部屋の感じからして去年もベッドひとつだけ。
この人の精神的なタフさは見習わないといけないかもしれない。

「シャルルくん、優くんの写真見たかったらお姉さんの部屋に来てね。
寝顔とかいっぱい撮ったから」
「はっ!?そんな話聞いてねぇぞ」
「今、初めて言ったもの」

楯無先輩は手品のように扇子を小槌のように振って写真を出してきた。
どれもブレてなくて見事なものだった。
よく見ようと思ったら優に取り上げられてしまった。ちょっと残念。

「楯無、ちょーっとお話しようか?」
「私を捕まえられたらね」
「待て!部屋からは出さん」

2人は忍者のように部屋を飛び回った。

………………………
…………………
……………

「じゃあねーシャルルくん」

楯無先輩は優が諦めてシャワー浴びている間に部屋を出ていった。


「優、大変だったんだね」

あのあと優は楯無さんを捕まえようと必死だったけど
結局、優本人の意志と関係なく猫のようにじゃれあうような形になってしまったのだ。

時々、楯無先輩が優を捕まえてたし。
布仏さんもそうだけど優の友達はこういうスキンシップが多い気がする。

「まぁ今回はいくらか楽だったけどな」

(楯無先輩、今まで優に何したんだろ……?)
どこか掴みどころのない人なだけに少し気になるところだ。

「さて、もう寝るか」
「そうだね」

ベッドは一つしかないので優の隣で横になる。

(別に楯無さんの部屋に行かなくてもいいよね)
話せば優しさを感じられ、手を伸ばせば顔が見えて、手を握れば温かさが伝わる。
そんなカラフルな今がここにあるのだから。

「おやすみ、優」

そんな世界が続くように祈りながら
くすりと微笑んで僕は夢の世界に飛び立った。




―――今回のワンポイントコーナー
(ここでは用語やキャラの説明をすることがあるよ)



レクス・ゴドウィン

身長:計れなかった、体重82㎏、歳:聞いたらはぐらかされた

国際IS委員会AIF長官
専用IS:なし

優、アリス、千冬の上司。
IS狩りの時、後のAIFになる組織を設立し対処した功績から男性ながら委員会の一柱のトップに立つ。

過去にEOSでISと互角に戦った。まさに超官。
立ちながらライディングデュエルはしないので今作でのデュエルマッスルの出番は無し。

モデル:遊戯王5D's様のレクス・ゴドウィン



ミリータ

軍関係者、委員会関係者が持つ身分証明書。

疑似絶対防御「Pawer Wall」が内蔵されている。
またISの武装と同じくミリータ内に拳銃などを収納、展開できる。



IF(アイエフ、正式名称『 Infinite Features』

亡国機業が独自に作りだしたマルチフォームスーツ

過去に現れた機体と操縦者から操縦者の性別に関わらず乗ることができると推測されている。
また、イメージインターフェイスもIFの方が充実している可能性があるという声が多い。

待機状態もISと同じアクセサリーなどになることが多いらしい。










 
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