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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第十九話『遠い日の約束』
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同日、夜の8時。
私と一夏の寮の部屋である1026号室に、いつもの顔触れがそろっていた。
違うところといえば、布仏がいないことと、修夜がいつも以上に怒りと失望の眼差しで一夏を睨んでいることだろうか。

「……阿呆か、お前は…」
事の顛末を聞いて、修夜は一夏に対して呆れ果てていた。
かくいう私・篠ノ之箒も、今回ばかりは修夜に同情したいし、さっきの凰鈴音(ファン・リンイン)の出ていったときの態度も、責め立てる気にはなれない。
「い、いや、そういう意味じゃなかったのか……?」
「ノーコメントだ、自分で考えろ……」
ほとほと呆れ果てて、もう軽い軽蔑のまなざしにさえ見るぐらい、修夜は一夏のことを睨んでつっぱねていた。
ホントに、何で一夏はこんなに“ニブイ”のだろうか……。

事の発端は、私と一夏が部屋に帰ってきてしばらくした後だった。

――――

「今日は疲れた……、マジで死ぬかと思った……」
食堂での夕食が終わった後、一夏は部屋着姿になって、自分のベッドにうつ伏せで寝転がった。
「こらっ、だらしがないぞ一夏……!」
「いやいや、あんなことやらされたら、こうもしたくなるって……」
私の注意を尻目に、顔を枕に突っ伏したまま受け答えをする一夏。
帰り道で聞いたが、今日は左腕を腰に巻き付けた縄で固定され、そのまま右腕だけでずっと剣の稽古を付けさせられたらしい。
私も白夜先生のやり方は修夜を見て知っていたが、修夜も修夜でいきなりここから始めるとは……。
なんというか、『(かえる)の子は蛙』とでも言い表せは良いのか……。
「とにかく起きろ、そのまま寝たら風邪をひいてしまうぞ」
「う〜〜ん……」
唸りながら、とりあえず顔を横に向けてみる一夏。それを見て、私は思わずため息を吐いた。
まったく、ISを操縦して真剣にしているときはあんなにカッコイイのに、気が緩むとすぐこれだ。
どうして一夏は、いつもシャキッとしていられないのだろう。
顔はそこらへんの男より断然整っているし、体つきも逞しいし、明るくて大らかで、私なんかより料理が出来て、織斑先生を大事にする姉思いで、武術の才能も今は衰えているけど本当はもっと強いし、なにより優しくて正義感も強くて…………。
――って、なっ……、何を考えているんだ私は!
お、落ちつけ、篠ノ之箒……、まずは深呼吸だ、それから、それから……、た…たしか奇数で足し算をするんだったか……?!

――コンコンッ

「誰だろ、こんな時間に?」
誰かがドアのノックする音と一夏の声で、なんとか私は我に返る。
と……、とにかく今は来客に応対だ。
「…私が出る。とにかく一夏は、一度体を起こせ……!」
よいしょという掛け声とともに、ベッドに腰掛けた状態になる一夏を見つつ、私はドアの前に向かった。
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