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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第十九話『遠い日の約束』
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「誰だ?」
「セシリア・オルコットですわ。そのお声は箒さんですわね?」
何とも珍しい来客だった。
本来なら最上階の上流階層にいるはずのセシリアが、わざわざ一般生徒の階まで降りてきたのだ。
ドアの覗き穴から外を見ると、確かに制服姿のセシリアが上品な佇まいで立っていた。
そうと分かれば、待たせるわけにはいかない。私をドアを開けて、彼女に向き合った。
「どうしたんだ、こんな時間に……?」
「夜分遅くにすみません」
軽く会釈したセシリアは、その手に何やら小さな紙袋を持っていた。
「この前のお鍋のことで、チェルシーさんが『修夜さんや皆さんにお礼を』と申しまして……」
そう言いながら、セシリアは私に紙袋を差し出してきた。
「あ……、いやこっちこそ、ただただ邪魔しに行っただけで、そんな大したことは……」
先日、一夏のワガママによって修夜は、セシリアの部屋で鍋パーティーを開催させられている。
ちなみに恥ずかしい話だが、私も勢いに便乗して付いて行っており、本来なら何か手伝うべきところを、板前級の料理の腕を持つ修夜に任せきりにした上に、自分はセシリアの部屋の格の違いに呆然とするばかりで、ホントにただのタダ飯食らいだった。
本当に女子として、情けないばかりである……。
「それに……、それをやるなら修夜が一番先だろうに……!」
あの鍋パーティーの一番の功労者は、間違いなく修夜だ。私たちが受けられる義理は、本来は無いに等しい。
「それが……、本音さんから聞いたのですが、どうやら今はお出かけになっていらっしゃるようでして……」
残念だったのか、セシリアは少し困ったような笑顔を浮かべる。
「それなら、俺たちの部屋で待つか?」
「え……?」
「ちょっと……、一夏っ!?」
唐突に一夏が馬鹿なことを言いだし、思わず私は一夏の方に振り向いた。
「なんなら、のほほんさんも呼んで、みんなでお茶でも飲みながら話そうぜ?」
「お……、おい、何を言っているんだ?!」
セシリアの部屋と私たちの部屋では、広さに数倍近くの差がある。こんなせせこましい、所帯じみたところに彼女を詰め込むなどもってのほかだ。失礼にも程がある。
それに折角、一夏と二人きりでいられる貴重な時間が……、ってそうじゃないだろう、私!?
「い……いえいえ、折角お二人でごゆっくりとしていらっしゃるのに、わたくしがお邪魔しては……」
ほ……ほら、セシリアも遠慮している訳だし、無理に勧めるのは……
「遠慮するなって。たまには狭いところで肩寄せ合って喋るのも、なかなか良いもんだぜ?」
あぁ〜っ、だから何で一夏はっ、そういうとこでっ、変に良い人精神を出してくるんだっっ?!
「ですが……」
そら、セシリアだって困っているだろ?!
……って、なんで私をチラッと見たんだ、セシリア……?

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