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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第十九話『遠い日の約束』
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はきびすを返して部屋を去ろうとしはじめる。
「お……、おい鈴、待てよ……っ!」
一夏の呼び掛けに対しても、何の反応もせずにドアへと一直線に向かう凰の背中は、酷く小さく見えた。
同じ一夏に強い気持ちを向けるものとして、同情を禁じ得なかった。
セシリアも、凰の寂しげな背中を見て、何かを感じているようだった。

「……っ、待てって言ってるだろ、この……貧乳!!」

ドアノブに手をかけようとした凰の手が、ピタリと止まった。
手だけじゃない、凰は一夏からの言葉を聞いた瞬間から、微動だにしなくなった。
「何に怒ってるか知らないけどよ、いきなりビンタは無いだろ、まな板鈴っ!!」
叩かれたことがよほど腹に据えかねているのか、打って変わって今度は一夏が文句を言いはじめる。
「なんか言えよ、ちんちく鈴!!」

――プツンッ

その言葉が出た瞬間、凰の気配が再び変化した。
同時に、何かが“切れた”音が聞こえた気がした。

ゆったりと、凰はこちらに顔を向けてきた。
ぞっとするほどの殺気を孕んだ、鋭い視線で睨みながら。
凰はその顔のまま、ゆったりと一夏へと歩を進めていく。
(……って、……い低のくせに……、……よ、アイツは……じゃない……あん……テー……一夏のはず……)
彼女の口からは、何やらうわ言を呟いていた。口ごもって聞き取りづらいが、聞いていると背筋に悪寒が走った。
「お……おい、り――」
一夏が彼女に呼びかけようとした、その瞬間。
鈴は放たれた矢のように一夏に向かって疾走し、いつの間にか部分展開していたISの腕で一夏に襲いかかった!
一夏を庇いに入ろうにも、凰の動きが早く、手の出しようがない。
一夏も突然のことに慌てて、後ろに倒れ込んでしまっている。
駄目だ、間に合わない――!!

――ざばんっ

突然、凰の背中に多量の水が浴びせられた。
「つめたっ……?!」
すると凰はさっきまでの鬼気がウソのようにうせ、正気に戻って水がかかってきた方を振り向く。
「誰よっ、あたしにこんなことして無事で済むと――」
頭から水をかぶって正気を取り戻しながらも、なおも怒る凰。
彼女の足元には、私が風呂あがり用に買ってきた2リットルのミネラルウォーターのペットボトルが、斜めに切断されて転がっていた。
「一夏をタダで済まさないようにしようとしたヤツの言うことか、この大馬鹿鈴……!」
凰の視線の先、それをおこなっただろう人物、自分のISを部分展開して実体振動剣を握る、修夜の姿があった。

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