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ドラクエX主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
二部:絶世傾世イケメン美女青年期
七十六話:ひとりでお買い物
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した。

「ねえ、君!今、その店から出てきたよね?オレのこと、覚えてる?」

 最初に町に着いた時の、ナンパ男でした。
 頭悪そうなヤツ。

「……さあ?失礼ですが、どちら様でしょう?」

 覚えてますが、面倒なのですっとぼけます。

「やだなあ、とぼけちゃって。そんな、女の子が行く店から出てきたし。やっぱ女の子なんでしょ?」

 本当に、面倒くさいことになった。

 いいじゃん、別に。男でも女でも。
 誤魔化そうとしてる時点で脈が無いくらい、わかろうよ。

「君ってちょっとさ……昔、好きだった娘に、似てるんだよね……」

 なんだその、ベタな口説き文句。
 似てるから、なんだと言うんだ。
 そんなに好きなら、その娘を探せばいいじゃない。

「たったの二回しか会えなかったんだけど、すごく可愛い娘でさ。もう、十年前になるかな。君みたいな、本当に可愛い娘だった……」

 遠い目で、自分に酔ったように語るナンパ男。
 だからその娘を探せば、って、ん?

「昔のオレって、悪ガキでさ。猫を虐めてたのを見たその娘が、泣きそうになっててさ。やめてくれって瞳を潤ませて懇願してくるのが、本当に健気で……」

 なんだか不穏な自分語りが始まりました。
 よし、今のうちに逃げよう、そうしよう。

 何処か遠くを、逝っちゃった感じでぼんやり見てるナンパ男の視界から逃れるように、そろりそろりと移動を開始します。

「……だから!あの娘を忘れられないオレの前に、君が現れた!これは、運命の出逢いだと思うんだ!」

 ヒイッ!
 振り向いた!
 戻ってきた!

「あれ?なんで、そんな遠くに。とりあえず、お茶でも。お互いをよく知り合うところから、始めようよ!」
「結構です間に合ってますさようなら」

 たぶん爽やかなつもりなんだろうニヤけた笑顔で歩み寄ってくるナンパ男に背を向け、脱兎の如く逃げ出します。

 ヤバい、怖い。
 戦ったら絶対に負けないけど、なんか怖い。
 全く話を聞こうとしないところが、すごく怖い!
 恐怖のあまりやり過ぎて殺してしまいそうな自分が、とても怖い!!

「待って!!大丈夫だよ、怖がらなくって!!手順は、守るから!!」

 進める前提で話すな!!


 宿屋に向かって疾走する私の前方から、何故かヘンリーが走ってきます。

 え?何で、いるの?
 ここは、頼っていいの?
 一人で出てきた手前、やっぱり一人でなんとかするべき?

 と思いながらスルーして走り抜けようとした私の腕を捕まえ、背後に庇ってくれるヘンリー。

 ああ、助かった。
 人を、殺めなくて済んだ。

「ハア、ハア……ああ、やっと追い付いた、って……なんだ、お前!」


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