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機動6課副部隊長の憂鬱な日々
第96話:父と子
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だったな・・・」

「別に。こんなのは慣れっこだから」

俺がそう言うと父さんはそうじゃないと首を振る。

「お前、エリーゼのクローンと戦ったらしいな。そして・・・殺したと」

俺は思わずぽかんと口を開けて父さんを見た。
口から落ちたタバコが屋上の床に跳ねる。

「どうしてそれを・・・」

「お前の上司・・・八神さんだったか・・・彼女に聞かされた」

父さんの言葉に俺は心の中で舌打ちをする。

(あいつ・・・余計なことを言いやがって・・・)

そんな心中を顔に出さないように気をつけながら俺は口を開く。

「そっか・・・。ま、仲間を守るためだったし、仕方がないよ。
 殺しちゃったのは俺の未熟さのせいだからね・・・反省してるよ」

俺がそう言うと、父さんは厳しい表情で俺を見る。
少し間があって父さんが再び口を開く。

「・・・何故お前は自分の気持ちにウソをつくんだ?」

「はぁ?」

間抜けな声を上げる俺に向かって父さんは言葉を続ける。

「クローンとはいえ人の命、しかも自分の姉と瓜二つの人物の命を奪って
 辛くないわけがない。何故お前はそれを認めない?」

「それは父さんの勝手な思い込みだろ?
 別に俺はもう辛いとは思ってないし、人の命を奪うのだって初めてじゃない。
 今父さんが言った出来事だってもうとっくに気持ちの整理はつけたよ」
 
俺は少し声を荒げて一息にそう言った。
俺の言葉を聞いた父さんは目を閉じて何かを考えているようだった。
ややあって、父さんは再び口を開く。

「ハンスが死んだときのことを覚えてるか?」

父さんは穏やかな口調で俺に向かって尋ねる。
ハンスというのは昔うちで飼っていた犬で、俺が5歳くらいのときに
病気で亡くなった。
俺が黙って頷くと、父さんは話を続ける。

「お前がハンスの遺体にすがりついて、いつまでも泣きじゃくっていたのを
 昨日のことのように覚えているよ。母さんやエリーゼがいくらなだめても
 ”僕はずっとハンス一緒にいる!”と言ってな。
 そんなお前がさっきお前自身が語って見せたように器用な生き方を
 できるとは私には思えんのだ」

昔のことを持ち出してまでそんな話をする父さんに俺は苛立ちを感じた。

「そんな昔の話はやめてくれよ。あの頃とはもう違うんだよ。
 俺はもう何人も人を殺してるし、それに慣らされてきた。
 今更一人増えたところでどうってことない。
 それが姉ちゃんのクローンだろうと関係ないね」

俺は荒い口調でそう言うとタバコを吸おうと胸ポケットに手を伸ばす。
一本をパッケージから取り出すと火をつけて、夜空に向かって煙を吐き出す。
父さんはそんな俺を見て力なく首を振る。

「お前はな
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