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機動6課副部隊長の憂鬱な日々
第96話:父と子
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(俺はなんで管理局に居るんだろう・・・)

そんな疑問が湧いてきて俺は答えに窮する。

(思えば管理局には失望させられっぱなしだったしな・・・。
 今回の件で管理局も変わっていくだろうし、姉ちゃんも戻ってきた。
 ひょっとすると、もう俺は・・・)
 
管理局に居続ける理由が無いのかもしれない。
そう思った時、ふと新しい疑問がわいてきた。

(なら俺は管理局をやめた後どうしたいんだろう・・・)

その時、2人の顔が浮かんだ。
俺にとっての最愛の女性と俺と彼女の大切な娘。

(ああ・・・そうか)

その瞬間ある考えがふっと降りてきて、俺の心に空いた隙間に
ぴたりとハマった。

「俺には愛する人がいる。その人たちと生きていく世界は
 平和であってほしい。だから俺は管理局に居続けるのかもしれない」
 
俺は思わず心に浮かんだ言葉をそのまま口に出していた。
ややあって、父さんは俺に向かって話しかけてきた。

「そうか・・・。そうまで言うなら、もうお前に管理局を辞めろとは
 言わないことにするよ」

父さんの言った言葉に俺は思わず父さんの顔を見た。
その顔には柔和な笑顔が浮かんでいた。

「いい顔をするようになったな。それならもう心配はなさそうだ」

「どういう意味だよ・・・」

「私も子離れをする時期が来たってことさ」

「はぁ?」

ワケも判らず混乱しているうちに父さんはベンチから腰を上げる。

「さて、私はエリーゼの病室に戻るが、お前はどうする?」

「あ、ああ。こいつを吸い終わったら行くよ」

「そうか、じゃあ先に行っているからな」

「ああ」

俺の返答を聞いて、父さんは屋上から降りて行く。
その背中はずいぶん小さく感じられた。

「ああ、それから」

そう言って父さんが俺の方を振り返る。

「お前の愛する人とやらは、近いうちに紹介してくれよ」

「は!?」

父さんはそれだけ言うとそのまま屋上から去っていった。
父さんの言葉に俺はもう一度自分の言葉を反芻する。
そして、口にくわえた煙草を吹かすと、夜空を見上げて小さく呟いた。

「こりゃ、あんまりなのはを待たせるわけにはいかなくなったな・・・」

俺は携帯灰皿に吸殻を入れると、姉ちゃんの病室に戻るべく、
ベンチから腰を上げた。

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