暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/WizarDragonknight
明晰夢
[1/7]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「……夢?」

 自覚があるということは、明晰夢というものなのだろうか。
 ハルト___今は可奈美の体だが___は、周囲の景色を見ながらそう思った。
 どこかの神社だろうか。長い登り階段と、それの門である大きな社。うっすらと霧で包まれたその場所は、ハルトには見覚えのないところだった。

「夢にしては殺風景すぎないかなここ。折角可奈美ちゃんの体なんだから、もうちょっと楽しい夢とか見たかったかも」

 まあ、彼女の見る夢など、剣のことばかりになりそうだが。と、ハルトは思い直した。 
 ならば、どこかに剣でも転がっているのだろうか。そう思いなおしたハルトだが、見渡す限り石のブロックばかりで、剣などどこにもない。
 誰もいない社。目覚めるまですることもなく、ハルトは階段に腰を下ろした。

「ふう……」

 大変な一日だった。
 可奈美と体が入れ替わり、様々な不便を経験した。
 それぞれ不意の会話から、不信感を何度も持たれ、トイレや風呂など性差によって勝手が分からない。願わくば、一連の出来事全てが夢の出来事であってほしいくらいだ。

「あれ? 可奈美じゃないの?」

 そんな声が、階段の上の方から聞こえてきた。
 見上げれば、髪を後ろでまとめた女性が降りてくるところだった。紫でぼさぼさの髪と、何者にも負けることはないという自信が表に出ている顔。黒いセーラー服から、中学生か高校生くらいだろうかとハルトは思った。

「えっと……誰? 俺の夢なのに、知らない人が出てきた」
「俺の夢? 可奈美の夢じゃないの?」

 女性は手に持った剣を左右の手で投げ合いながら尋ねた。
 剣を見て、ハルトは「ああ、これやっぱり本来可奈美ちゃんの夢か」と納得する。

「今、ちょっと色々あって体と精神が入れ替わっているんです。今は、俺の体に可奈美ちゃんが入ってます」
「へー。今時はそんなことも起こるんだ。すごいね」

 女性はまた剣を左右でキャッチボールする。何となくその剣を見ていたら、自然とハルトの口からその言葉が出てきた。

「……千鳥?」
「お? 知ってるの?」

 女性が目を大きくした。
 ハルトは頷く。

「まあ、可奈美ちゃんとは短い付き合いでもないし。何となく、そう思っただけだけど」
「おお。いいねいいね。よし、気に入った」

 女性はうんうんと頷きながら、千鳥を抜いた。

「ねえ。立ち合い……勝負しようよ」
「え?」
「アンタも剣の腕はあるんでしょ?」
「剣っていうか……俺の場合魔法だけど」
「知ってる知ってる」

 女性はまた剣をパスしながら言った。

「魔法使いさんでしょ? 可奈美から話は聞いてるよ。松菜ハルト君。強いんでしょ?」
「うーん、正直可奈美ちゃんからすればそこま
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ