第四章
間話 国王、平和への願い
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国王は神を見上げたまま一歩詰め寄り、ストレートな回答を促した。
「お前が生きている間に≠アの世界から国同士の戦争をなくすことは、不可能だ」
やはりそうなのか――。
神の答えに、国王は落胆を隠せなかった。
「……そうか。理由を聞いても構わないか?」
「そうだな。まずは、なぜ争いが生まれるのかという本質的なところから話をしようか」
「よろしく頼む」
「人間はグループを作り、定住する生き物だ。たとえ農耕で生きていようが、狩猟で生きていようが、それは変わらない。
そして定住する以上、そこには必ず利権が発生する。利権が発生すれば、やがてどうしても他のグループとの争いが発生することになる。
つまり、人間はもともと、争いとは無縁でいられない生き物ということになる」
国王は、手ではメモを取りながら、同時に頭の中にも神の話を映像化し、理解を進めていく。
「そして、文明のレベルが上がっていくにしたがい、グループもより大きなものとなっていく。広い範囲を支配できるようになるわけだな。そうなると、戦いのスケールも大きくなっていく。
小さなグループ単位だった戦争は、集落同士の戦争となっていき、集落同士の戦争は、都市同士の戦争になっていく。そして都市同士の戦争は、地方同士の戦争へ、さらには国同士の戦争と、より大きな単位で戦争することが可能になっていく。
現在は、国同士の戦争がおこなわれるフェーズに相当している。その運命から逃れる術はない」
戦争することが可能……。
いや、可能ということは、別にやらなくてもよいはず――国王はそう思った。
「いま神は『可能』という表現を使われたが……。可能ということは『やらない』という選択肢を取ることもできると思うのだが」
「いや、現状では難しい。それは過去の歴史において『戦争が無かった時代が存在しない』という事実が、そのまま証明となっている。そして現在も各国が戦争をおこなっているのは、お前も知るとおりだ。
仮に『全世界の人間の記憶を消し、ゼロからやり直す』ということをしたとしても、また戦争は発生してくることになる。何度繰り返したとしても同じだ。戦争の発生、そして戦争の発展、それも文明の発展の一部なのだ。その文明のステージに合った戦争は必ず発生する。
現に、リクの時代より後に一度文明が崩壊し、国同士の戦争はその瞬間だけなくなったが、文明のレベルが再び上がってくると国同士の戦争は復活している。
お前は『可能だがやらない』という選択肢もあると言ったな? 確かにそのとおりだが、残念ながらこの時代の指導者は、そのような考えを持つことができないのだ。
お前がいくら非戦を唱えようとも、他の国の指導者が異なる考えを持っていれば戦争は止められない。戦争は片方の意思だけで
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