第四章
間話 国王、平和への願い
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も発生してしまう」
神の言い方は容赦ない。
が、長く歴史を見続けた神がそう言うのであれば、残念ながら間違いはないのだろうと国王は思った。
やはりダメなのだ。
「そうか。では余が『戦争なんてなければよい』と考えるのは、無意味なのか……」
半分愚痴のように、国王の口からこぼれ出た。
しかし神はそれに対し、意外な答えを返した。
「いや、無意味ではない」
国王は混乱した。
「無意味ではない? どういうことだ?」
「わたしが言ったのは、今の時代では無理だということだけだ。
……そうだな。お前は『戦争ができるので、戦争する』と、『戦争をしようと思えばできるが、戦争しようと思わない』、この二つの考えは、どちらがよりレベルの高い文明の考え方だと思う?」
その神の問いに対し、国王は「後者だと思う」と即答した。
それを聞いた神は、ほんのわずかに口角を持ち上げた。
「そのとおりだ。後者の考えが文明としてより成熟していることは、おそらく間違いないだろう。
つまりお前は、現在の世界のどの指導者よりも、遥かに進んだ考えを持っていることになる」
「……」
「お前は頭がよく、そして優しさがある。それゆえに、現在の文明レベルにあっても、人道的な観点から、遥か未来の指導者が持つような考えにたどり着くことができた。
せっかくレベルの高い考えを持つことができたのに、周りに合わないからと、わざわざ自分のレベルを下げるのか? わたしの目にはそれは下策に感じる。そのレベルの高い考えを大切にし、周りのレベルが上がってこられるよう努力することが、お前のあるべき姿だ」
「……しかし、余がそう思ったところで戦争はなくならぬのだろう? 余が思うだけで、何も変わらない、何も変えられないのでは、無意味と同じではないか」
神の言葉が矛盾しているようにも感じ、国王はそう言った。
しかし、神はそれに対しても「そんなことはない」と断言し、続けた。
「お前が今『戦争はないほうがよい』と思い、そのために努力をすることで、ずっと未来の人間――お前の子孫たちが、戦争をなくすことにつながる」
「余が思うことで……子孫たちが……」
「そうだ。人間は、思いがそのときには叶わずとも、次代にそれ伝え、託すことができる。それが人間という生物の特長でもある。お前が今思わなければ、未来の子孫にお前の考えが伝わらない。
よって、今お前が思うことが、未来を変えることになるのだ。だから決して無意味などではない」
その神の言葉は、国王に強い衝撃を与えていた。
そして同時に、体中が希望で満ちてくるような、そんな感覚をおぼえていた。
「そうか……無意味ではないのだな」
水を得た魚のように元気を取り戻
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