暁 〜小説投稿サイト〜
Darkness spirits Online
最終話 おとぎ話と罪の終わり
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―若い主婦の間で、大いに話題となっていた。

 ――最近、アメリカ人の超美男子が従業員になった。

 その噂を耳にした主婦達が癒しを求め、昼下がりに森の中まで足を運ぶようになったのである。駐車場が少ないと知りながら、諦めることなく徒歩で来る客もいるほどだ。

「いらっしゃいませ、COFFEE&CAFEアトリへようこそ――」
「んまぁアレクサンダーさんお久しぶりねぇ! また来ちゃったわぁ!」
「アメリカの兄ちゃん、こんにちはー!」
「――えぇ、お久しぶりです。2名様ですね、どうぞこちらのテラスへ……」

 更にここ最近では子連れの主婦も来るようになり、ママ友の溜まり場としても利用されるようになっていた。それに応じて、小さな子供も足を運ぶようになり――現在経営側は、その客層に応じた新メニューを検討しているという。
 紳士服に身を包み、流暢な日本語で柔らかく接する、オールバックのアメリカ人美男子。その青年はたちどころに、女性層を中心に「COFFEE&CAFEアトリ」の存在を広く知らしめたのである。

「……売り上げも徐々に伸びているようだな、チーフ。これなら、子供向けのメニューを組む予算も問題ないだろう」
「はい。雑誌で特集したいって話も来てたし、アレクサンダーさんが入ってくれてから、もうずっと大盛況です」

 カウンターでコーヒーを淹れつつ、満席になっているテラスを眺めて。看板カラスに次ぐ「目玉」となった青年は、微笑を浮かべる。
 そんな彼の隣では、「チーフ」と呼ばれるポニーテールの美少女が、満面の笑みで注文された品を運んでいた。
 ――窓の向こうに止まっている一羽のカラスが、そんな彼女をじっと見守っている。子供達は、アレクサンダーが入る以前から「名物」となっているそのカラスに夢中のようだ。

「雑誌で取材、か。あの子が読んだら、さぞ驚くだろうな」
「……あの子?」
「ふふ、すまない。こちらの話だ」

 すると。青年の言葉に、少女は薄茶色の長髪を靡かせ――きょとんとした表情で振り返る。青年はそんな彼女に苦笑いを浮かべると、小さく首を振った。

「ねーねー、外国のおにーちゃん! また絵本読んでよー!」
「ぼくもー! ねぇ、アメリカの兄ちゃん!」
「……あぁ、いいとも。少し待っていなさい」

 するとそこへ、母親達の談笑に飽き飽きしていた子供達が、青年の元へ集まって来る。彼は子供達を相手にするために、幾つか自費で絵本を買い集めていた。
 幼い彼らを慈しむように微笑を向け、青年はカウンターの後ろにある、小さな本棚に手を伸ばす。

「今日は……これにしようか」
「あれ? その本、見たことないよ」
「新しく買って来たばかりだからね。このお話は――」

 ――やがてその手に一冊の本を取り、子供達の前
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