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至誠一貫
第一部
第六章 〜交州牧篇〜
八十五 〜再始動〜
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 翌日の早朝。
「歳三殿、失礼します!」
「疾風(徐晃)か、入れ」
「はっ!」
 愛紗は無論、寝起きのだらしない姿を晒すような真似はせず、身支度を調えに部屋を出ていた。
 私も寝間着姿のままだが、最低限の身だしなみは整えている。
「火急の用だな?」
「はい。長沙郡で、大規模な反乱が起きた模様です」
 長沙郡……荊州か。
 紫苑の前任地だった筈だが。
「だが、荊州ならば劉表が守っている。いずれ蹴散らされよう」
「いえ、それが殊の外大規模な反乱のようなのです。既に長沙郡太守の韓玄殿が討ち取られたとか」
「ふむ。では、此方にまで影響が出る可能性があるな」
「仰せの通りです。それに、劉表殿の手に余るとなれば、討伐の命が周囲の州牧に対して下りましょう」
「……わかった。疾風、皆を集めてくれ」
「畏まりました」
 疾風と入れ替わりに、愛紗が戻ってきた。
「戦ですか、ご主人様」
「うむ」
「是非、私もお連れ下さい。休んで皆に迷惑をかけた分、取り戻したいのです」
「ふっ、止めても無駄なのであろう?」
「当然です」
 これから皆と話してからの事だが、恐らくは然したる戦にはならぬ筈だ。
 愛紗の復帰戦としては格好やも知れぬな。

 揚州に向かっている朱里と、交趾郡にいる山吹(糜竺)を除く全員が顔を揃えた。
 そして、睡蓮(孫堅)と飛燕(太史慈)、それに明命も加わっている。
 このまま劉表の手に負えぬとならば、地理的には私か睡蓮に討伐の指示が出よう。
 ならば、直接顔を合わせての話し合いに何の不都合もあるまい。
「では疾風、まずは報告を」
「はっ。反乱の首謀者ですが、区星(おうせい)と言う者との事です」
「ふむ、聞かぬ名だが……紫苑、知っておるか?」
「いいえ、星ちゃん。少なくとも、荊州でそのような将がいるとは聞いた事がないわ」
「紫苑が知らないとなれば、賊の類であろう。大規模と言ったが、数はどのぐらいなのだ?」
「今のところ、数万という事しかわかっていない」
 彩(張コウ)の問いに、厳しい表情で答える疾風。
「でも、劉表もだらしがないのだ。鈴々達を攻めてくるような狡い奴なのに、反乱が抑えられないのか?」
「いえ、劉表殿はそもそもが朝廷の一族であるというに過ぎません。つい先日まで州牧どころか、州刺史ですらなかったのですから」
 稟の申す通り、劉表が荊州を掌握してから意外に日は浅い。
 前の刺史は王叡と言う者だったらしいが、黄巾党に連動した賊に討たれて命を落としたとの事だ。
 それに、劉表は荊州の豪族から支持を受けているとは申せ、軍としての統制は取れていないようだ。
 ……最大の戦力であった筈の紫苑が抜けた事が、事態を悪化させているとも言えよう。
「ところで孫堅さん。一つ、伺っても宜しいですかー
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