| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

Epos31-D砕け得ぬ闇の使徒~Lord of Darkness~

 
前書き
はやてと王さま、今の段階で使える魔法が少なくてホント苦労した・・・。そもそもはやては、前線組じゃなぁ~~~いッ! 

 
†††Sideはやて†††

リインフォースやシグナム達を何百年も苦しめてきた“闇の書”の闇――ナハトヴァールと防衛プログラム。わたしらは今、数日前に家族と友達みんなで頑張って倒したソレを復活させようとしてるマテリアルの討伐中や。

『お疲れ様、はやてちゃん、リインフォース。残滓の消滅を確認したよ』

つい今し方、リインフォースと一緒に“闇の書”の闇、その復活の要になるってゆう再生された記憶――残滓を打ち倒した。残滓は“闇の書”に蒐集された人やその記憶から再現される思念体ってことらしくて、そやから残滓はわたしら八神家やったりすずかちゃんたち友達やったりする。
さっき戦ったんはフェイトちゃんやった。本物のフェイトちゃんやったらきっと負けてたけど、残滓のフェイトちゃんは本物よりは遅かった。そやから格下のわたしでも勝つことが出来たんや。

『それでね。申し訳ないんだけど、最後のマテリアルの反応がはやてちゃんとリインフォースの近くで探知されたんだ。2人に頼めないかな? いま手が空いてる子が居なくて』

「了解です。リインフォースと一緒に向かいます」

「エイミィ執務官補。座標をお願いします」

リインフォースと頷き合って、エイミィさんから座標を受けとる。みんなが今も頑張ってるんや。それならわたしらも頑張らんとアカンよな。

「リインフォース。最後のお勤めや。終わらせに行くよ、闇の書の旅路を、今度こそ」

「はい。我が主はやて」

リインフォースと手を取り合って空を翔ける。わたしひとりでも飛べるようにシャルちゃん家に泊まった時から練習を始めてから数日。ルシル君との勉強会からすずかちゃん達との魔法練習会へと切り替えて練習してきた。そやからこうしてちゃんと魔法戦が出来る。まぁ、今のリインフォースとの2人がかりでやっと一人前って感じやけど。

「あれが最後のマテリアルが居ると言う結界のようですね」

空を飛ぶこと少し。最後のマテリアルが居るってゆう海上にある結界に辿り着いた。この中にマテリアルの最後の1基が居る。その子を倒せば、それでホンマに“闇の書”の旅路に幕を降ろせる。うん。最後の夜天の主として、この手できっと必ず・・・。

「よしっ。行こう、リインフォース!」

決意を改めて、いざ侵入、ってゆうところで、「え・・・?」目の前の結界がグンッと膨張するかのように広がって来て、わたしとリインフォースを呑み込んだ。視界が一瞬、暗転する。
次に視界が開けた時、そこは別世界やった。ついさっきまでは夕日が沈む黄昏時やったのに、ここは完全に夜。足元は底が見えへん程の暗闇。周囲と頭上は青暗い夜空で、数多くの星が瞬いてる。それはまるでシャルちゃんがナハトヴァール決戦で見せた、創世結界ってゆう魔法みたいや。

「ふふ・・・はは、ははははははッ!!」

リインフォースと背中合わせで周囲を警戒してる中、そんな笑い声が聞こえてきた。声のした方を見る。そこには「ビックリや。わたしが居る・・・」わたしと瓜二つの女の子が大笑いしてた。

「力が漲る、魔導が滾る!! 我が元にいざ集え、闇の欠片よ! 我が身に捧げる贄となれッ!」

そやけどちょうぶっ飛んだ性格の持ち主のようや。う~ん、他のマテリアルもまた変な性格をしてたんやろうか。そう思うと、ちょう見てみたい気もする。他の子はどんなふうにアレンジされてたんやろ。

「主はやて。お気を付けください! あの凶悪な魔力は只事ではありません!・・・っく。相手が悪い・・・が。主はやて・・・」

リインフォースに見詰められたわたしは「判ってる。2人でならきっと・・・!」って強く頷き返す。魔導師&騎士歴が数日のわたしでも判る。アレは今まで相手にしてきた残滓とはちゃう。特別な基体マテリアルってゆうんは伊達やないってことや。そやけどわたしとリインフォースの2人なら・・・。

「主はやては離れていてください。私ひとりで相手をします」

「・・・・え?」

「私のこの壊れかけの拳でアレを止めることが叶うかどうかは判りませんが・・・。いえ、止めます、必ず。主や騎士たち家族を守るため、そして雛鳥たちの空を開くために。私がこの身に、命に代えてでも・・・!」

何を言うかと思うたらリインフォースは自分を犠牲にしてでもわたしを逃がして、最後のマテリアルと戦うって。もちろんそんなん「アカン!」に決まってるやろ。家族を見捨ててわたしひとりで逃げるなんて出来ひん。

「とゆうかな、自分のことを壊れかけとか言うたらアカン・・・!」

自分を蔑ろにする発言をしたリインフォースのことを叱ってたら・・・

「先ほどからコソコソと喚いているのは誰かと思えば・・・。面白い獲物がかかったわ。我が映し身ではないか」

横顔を向けてたマテリアルがきちんとわたしらに向き直った。とゆうか、「わたしの方が偽者みたいな物言いやね、それ」そっちの方が偽者やのにな。

「それに・・・壊れて使い物にならぬ融合騎、と呼ぶのもおこがましい残骸ではないか。無様に生き恥を晒しおって。見るに堪えぬわ」

「っ!!」

聞き捨てならんことを言うたマテリアルをキッと睨み付ける。

「ほう。闇の書の主であることを、闇を統べる王の玉座を棄てた、羽根も揃わぬ子鴉が一丁前に敵意を放ちおる」

「わたしは王様になんて別になりたなかった。それに、人を殺して自分も死ぬだけの玉座なんて、意味がないやろ」

「あまつさえ、王位と玉座を棄てるだけに留まらず、そのような残骸を行かす為に貴重な機能の大半までも打ち棄ておった愚か者めが」

わたしの話を聴いてへんって風に話を続けたマテリアルはまた言うた。リインフォースのことを残骸って。“シュベルトクロイツ”をギュッと握り直す。と、色違いの“シュベルトクロイツ”と“夜天の書”を持ったマテリアルも臨戦態勢に入った。

「また言うたな。リインフォースのことを、残骸って・・・!」

「アレの言うことに耳を貸してはいけません、主はやて! ただの挑発です、乗ってはいけません!」

リインフォースがわたしを止めにくる。そやけど夜天の主として止めなアカンし、なにより家族を馬鹿にされて黙ってなんかおれへん。マテリアルが「はっ。何度でも言うてやろう。そこに居るのは、主と共に戦う融合騎とは呼べぬ、一欠けらの価値の無い、下らぬ残骸よ」そう鼻で笑ってきた。

「っ! 黙れ。うちの大事な子を、夜天を渡る祝福の風、リインフォースを穢すんは、絶対に許されへん! リインフォースはな、本の姿やった頃からずっと、いつもわたしを見守ってくれてた子なんよ」

何百年と悲しい運命に流されて苦しんできたのに、それでも優しく笑ってくれるリインフォースを想う。

「あんたら闇の書の闇との戦いを、大ケガをしながらも戦い抜いて、生き延びてくれた、大事な家族なんや、大切な宝物なんや! たとえ融合騎としての力を失くしても、わたしとリインフォースは一心同体の騎士と融合騎! そんなリインフォースを、祝福の風を傷つける者は、誰であろうとこの最後の夜天の主、八神はやてが許さへん!」

若干怒鳴ってた所為もあって「はぁはぁはぁ・・・」肩で息をする。

「ふふ、ははは! 許さない、とはこれまた子鴉ごときが大口を叩きおるわ。どう許さないかを見せてもらいたいものだ!」

わたしの話を聴いたマテリアルは大笑い。完全に馬鹿にされてるってゆうんが判る。その余裕はいま纏ってる気味の悪い魔力からくるようや。それでも今すぐにでも殴りに行きたい(あー、思考がちょう暴力的になってしもとる)思いに駆られる中、「主はやて・・・!」リインフォースがわたしの名前を呼んだ。また止められるんかな、て思うたから「リインフォース。わたしの役目はキッチリ務めなアカンのや」先手を打つ。

「ですが・・・!」

――ドゥームブリンガー――

「っ、危ない!」

――パンツァーシルト――

マテリアルが撃ってきた魔法からわたしを庇うようにリインフォースは前に立ちはだかって、ベルカ魔法陣のシールドを張って防いでくれた。そやけど威力が高かったんかリインフォースが「っく」呻き声を上げた。

「大丈夫かリインフォース!?」

「はい。問題ありません。ですが今のは・・・」

「うん。今の・・・わたしが練習してる射撃魔法、バルムンクや・・・!」

ここに来るまでに報告を受けた通りや。マテリアルは独自の人格、魔法術式名、デバイス名を持ってるって。このわたしの姿をしたマテリアルも、今のわたしが扱える魔法を全て使えるはずや。しかも威力がわたしのと比べると段違いや。

「何を驚いておる。我は闇の書の力の中枢、その頂点に立つ王のマテリアルぞ。理、力、義、律。王下4つのマテリアルとは一線を画しておってもなんらおかしくなかろう。それに、すでにいくつかの欠片を取り込んでおるのだしな」

“王”のマテリアル。名前からして確かに特別や。満足そうに笑みを浮かべるマテリアルにわたしとリインフォースは身構える。リインフォースはまだ何か言いたそうな顔やけど、わたしが折れることはないってわたしの目から察してくれたんか「ご無理はなさらないでください」ってようやくわたしの戦闘参加を認めてくれた。

「光栄に思うがよいわ。闇の書復活の宴の前奏として、王自らがうぬらと踊ってやろう。王と我が王杖、エルシニアクロイツの前にひれ伏すがいい! アロンダイトッ!」

“エルシニアクロイツ”ってゆう名前に変更された剣十字杖の先端から発射されるんは砲撃魔法、アロンダイト。わたしの魔法で言うクラウ・ソラスや。その砲撃をリインフォースに抱き寄せられるような形で回避。

『威力が尋常ではありません! 防御に回れば墜とされかねません!』

『うんっ。出来るだけ回避やな!』

「威勢が良いのは口だけか?・・・アンスラシスドルヒ!」

避けたばかりのわたしらに向かって放たれたのは、アンスラシスドルヒってゆう名前に変更されてる短剣型の高速射撃魔法、ブルーティガードルヒ(わたしの場合はブラッディダガーや)。その数8発。リインフォースが同数のドルヒを発射して全弾迎撃。

「主はやて! 支援射撃をお願いします!」

そう言うてマテリアルへ向かって行ったリインフォース。マテリアルがわたしと同じなら近接戦闘が出来ひんはずや。そんなリインフォースを助けるべくわたしは「バルムンク!」剣状の射撃魔法12発を放射状に発射。バルムンクは曲腺を描いてマテリアルを包囲するように襲撃。

「子鴉に出来ることは我にも出来るぞ。ドゥームブリンガー・・・!」

同じ数と軌道で発射された剣状射撃ドゥームブリンガーが、わたしのバルムンクを全弾迎撃した。でもそれでもええ。ただ「はぁぁぁぁぁ!」リインフォースの援護が出来ればな。すでに懐にまで入られてるマテリアルはまずリインフォースの一撃を防げへんはずや。しかもいま発動してるんはシュヴァルツェ・ヴィルクングってゆう、効果破壊の魔法を纏わせたパンチや。そやからたとえシールドが間に合っても砕けてしまう。

「壊れかけの残骸の拳など、注意するにも値せんわ・・・!」

マテリアルはひらりとリインフォースの真っ直ぐなパンチを半歩分横に移動して避けて、「アンサラーシュラークッ!」剣十字杖に魔力付加させての直接打撃魔法を反転することで遠心力を乗せた状態で繰り出した。アレもわたしが練習してる、クロイツシュラークと同じ効果や。

「うぐっ・・・!」

「リインフォース!」

咄嗟に腕を交差させて防御したおかげでマテリアルの打撃魔法の直撃は免れたリインフォースやけど、それは防御魔法無しでの受けや。そやからリインフォースは耐えきれずと言った風に大きく後退した。

「はっはっはっ! どうした子鴉、残骸! よもやこれで終わりとは言わぬだろうな!」

――アンスラシスドルヒ――

――アロンダイト――

体勢を整えたばかりのリインフォースに向かって射出されたアンスラシスドルヒ。そんでわたしには砲撃。リインフォースは体勢を崩したままの中、パンツァーシルトってゆうシールドを張って防御。

(アカン、避けきれへん!)

マテリアルの強力な砲撃は、今のわたしやと防ぎきれへんことは判ってる。そやけど回避能力が低いわたしやと避けきれへん。そやから魔力の大半をパンツァーシルトに回して防御したんやけど、「ひゃあ!?」やっぱりアカンかった。シールドがひび割れて、その衝撃で墜落する。

「主はやて!」

リインフォースがわたしに向かって降下しようとしたところで、リインフォースの背後にマテリアルがスッと姿を見せる。気付いてへんのかリインフォースはそのまま降下して来るから、「アカン、後ろや、リインフォース!」大声を上げて教える。

「塵芥が。管制プログラムである貴様を取り込み、我はさらなる高みへと昇る。いま喰ろうてやるぞ!」

――ドゥームブリンガー――

リインフォースが反転してマテリアルと相対した直後、マテリアルがドゥームブリンガーを放射状に発射した。リインフォースは避けずにさらに高度を下げた上でシールドを張った。どうして逃げへんのや?って脳裏に過ぎった瞬間、わたしが居るからや、って思い至った。
今のわたしらの位置は、一番下がわたし、一番上がマテリアル、中間にリインフォース。体勢を整え終えてへんわたしを庇うために、リインフォースはマテリアルの攻撃に晒されることを選んだんや。

――パンツァーシルト――

着弾寸前に発動したシールドでブリンガーを防いだリインフォースやったけど、「甘いわッ!」ってマテリアルはさらに砲撃のアロンダイトを発射してきて、リインフォースをさらに攻撃した。シールドに着弾する砲撃が爆発を起こすと、「うぁぁああああ!」リインフォースが衝撃に耐えかねて墜落してきた。体勢をようやく整え終えたわたしがリインフォースを抱き止める。

「っと・・・!」

飛行魔法もまだまだ上手く扱え切れてへんくて、さらに子供なわたしにリインフォースを抱き止め切ることなんか出来るわけもなく。ズンッと重いリインフォースと一緒にさらに墜落。

「かの管制融合騎はあまりに繊弱にして羸弱、脆弱と成り果て! 王位と玉座を棄てた子鴉はあまりに幼弱にして柔弱、さらに惰弱ときておる! うぬらを喰ろうて高みに上ろうとした我自身に嫌気が差すわ!」

なんや勝手なことを大声で言い放ってくるマテリアル。そんな中、「申し訳ありません、主はやて」ってリインフォースが謝ってきたから「わたしの方こそ足引っ張ってごめんな」って返す。やっぱりわたしはダメな子や。意志だけが先行してしもうてて強さが追いついて来てへん。そやからこんなにも・・・。

「私は嬉しかったです。主はやてが先程マテリアルに対して仰ってくれた言葉。だからこそ情けない。あなたの想いに応えることが出来ないのが・・・!」

弱音を吐くリインフォース。どうにかしたい。わたしとリインフォースの2人で、あの強大なマテリアルをどうにかして止めたい。その方法はホンマに無いんやろか。必死に知恵を絞る。と、数日前にシャルちゃんの家でミミルさんから貰った融合騎について、って資料を思い出す。

(確か、融合騎と主に融合についての注意事項に・・・)

もし、資料通りならわたしの考えがこの窮地をどうにか出来るかもしれへん。リインフォースの肩越しから「ユニゾンしよ、リインフォース」にそう耳打ちする。

「っ!? いえ、ですが、私にはもう融合機能が・・・」

「ううん。リインフォースも読んだはずや。ミミルさんの資料」

「っっ!! い、いけません! あなたに負担がかかり過ぎます!」

リインフォースも察したようや。リインフォースがわたしにユニゾンするんやなくて、わたしがリインフォースにユニゾンする。資料にあった融合事故って項目を思い返す。主の身体や意識を融合騎に全て乗っ取られるってゆうあれを。

「問題あらへん。魔法に目覚めてから今日までずっと魔力制御の練習をしてきた」

「そうですが・・・!」

「わたしら2人、一心同体って言うたやろ? すぐに片付ければ大丈夫や。わたしとリインフォースを甘く見てるあの王様に一泡吹かせたろ?」

律儀にもわたしらが反撃して来るんを待ってくれてるマテリアル。自分が優位やってことを信じて疑ってへんあの邪悪な笑み。今は素直に受けるわ。そやけどその余裕、すぐにバッキバキにへし折ったる。

「リインフォース。行こう・・・!」

「はいッ! 我が主はやて!」

体勢を立て直したわたしらは向かい合って手を取り合う。そんで「ユニゾン・イン!」を行った。わたしの意識がリインフォースの内側へと入り込む。リインフォースとリンカーコアが繋がってるからこそ出来る裏技や。

「っ!? ほ、ほう。随分と面白い芸当を見せるではないか、子鴉、そして残骸」

わたしらのユニゾンを見てもまだ余裕を崩してへんみたいやけど、さっきとは明らかに身構えが違う。どう見ても警戒してる。

『融合率96%・・・! これならいけます!』

『そうやろ! わたしらの絆の力があれば、どんな奇跡だって起こせる! さぁ、リインフォース。今度こそ終わらせるよ!』

『はいッ!』

リインフォースの内側から、リインフォースの見てる景色を見詰める。目の前には打倒すべき敵、マテリアル。その子が「面白い! 喰らう価値がようやく生まれたというもの! さぁ、我が糧となれ!」自分を鼓舞するように叫んで、砲撃アロンダイトを発射してきた。
対するリインフォースは避けようともせずに右手を砲撃に向けて翳してパンツァーシルトを発動。そして着弾して爆発を起こす。視界いっぱいが煙に包まれる中、リインフォースが動いた。

――ハウリングスフィア――

後退しながら魔力球を左右に設置。そんで「ブルーティガードルヒ!」短剣型の射撃魔法18発も一斉発射して、目の前の煙を穿ちながらマテリアルへ殺到させた。マテリアルは「これでこそ狩り。狩り甲斐があるわ!」そう言うて舞うようにしてドルヒを回避。

「ナイトメアハウル!」

そこでリインフォースが砲撃を撃つと、さっき設置された2基の魔力球ハウリングスフィアも砲撃となって、計3本の砲撃が回避し終えて止まってたマテリアルを襲撃。マテリアルはそれでも砲撃を避けきって、「アロンダイト!」負けじと砲撃を撃ち返してきた。リインフォースは砲撃を今度は避けて、そのままマテリアルに向かって突っ込んでく。

「エルシニアダガー!」

光の尾を引くダガー状の魔力弾を連射して弾幕を張った。それでもリインフォースは最小限の動きで弾幕の中を突っ切ってく。そんな中でリインフォースはドルヒ20発を一斉発射。マテリアルは弾幕を張るのを中断してシールドで全弾防御。着弾時の爆発と生まれた煙に包まれた。その隙を突いたリインフォースが一気に接近した。

――封縛――

リインフォースが発動したバインド魔法が煙の中で消えてすぐ、「おのれ!」煙の中からマテリアルの焦りの声が聞こえてきた。晴れてく煙の中からバインドに拘束されてもがいてるマテリアルが姿を見せた。

『この一撃で決めます!』

『おう! わたしなら大丈夫や、派手にやって!』

リインフォースの右手に発生する魔力をマテリアルに押し付ける。と、魔力球が大きく膨張してわたしらとマテリアルを内側へと取り込んだ。魔力球の中は雷雲と言ってもええくらいに雷が満ちてて、そんな雷を1つに纏めて相手に向かって放つ魔法。それが・・・

「おのれぇぇぇぇーーーー、塵芥がぁぁぁぁぁーーーーッッ!!!」

『『夜天の雷!』』

莫大な魔力を持った雷の直撃を受けたマテリアルごと魔力球が爆発粉砕。視界が光に満ちて閉ざされる。そんで次に開けた時、目の前には体の至るところにノイズを奔らせて崩壊寸前って風なマテリアルがわたしらを睨んでた。

「馬鹿な・・・、ありえぬ、我が、闇統べる王たるこの我が、かような不様を晒すとは・・・!」

『どうや見たか! これがわたしとリインフォースの・・・!』

「我らの絆の力! もう終わりだ、大人しく眠るがいい!」

「うぬぅ・・・! 認めぬ!」

触れれば崩れるってゆうところまでボロボロやのにマテリアルはまだ戦う気でおった。そやからこちらも最後まで付き合おうってなった時、「ふわぁっ!?」強制的にユニゾンが解除されてしもうた。浮遊感からすぐに落下感がわたしを襲った。けど、「大丈夫ですか!?」リインフォースがお姫様抱っこで受け止めてくれた。

「わ、わたしは大丈夫や・・・。そやけど・・・!」

「ふふ、ふはははは! 我の勝ちだぁぁぁぁーーーーッ!」

足元に魔法陣を展開して降り立ったマテリアルが、崩れかけの右手に持ってる“エルシニアクロイツ”の先端を向けてきた。リインフォースがマテリアルに背を向けた。わたしを庇って自分が攻撃を受ける気やってすぐに察した。

「アカン! やめて、リインフォ――」

「アロンダイ――」

――轟火之砲光――

リインフォースの肩越しからわたしは見た。マテリアルの直上から凄まじい炎の砲撃が降って来て、マテリアルを呑み込んだのを。その砲撃は海上に着弾して爆発、海面を大きく穿った。そんで二度と、あの“王”のマテリアル――闇を統べる王さまは姿を見せへんかった。

「一体何が・・・!?」

「上や、リインフォース!」

夕暮れから夜へと変わってた外の世界の空に、1人の女の子が居った。燃えてる火のように赤く長い髪をポニーテールにした女の子が。その子は右手に身長と同じくらいの黒い十字架を持ってて、その十字架を肩に担いだと思うたら街の方へ飛んで行った。

「あの子が、わたしらを助けてくれたんかな・・・?」

「おそらくは」

赤い髪の女の子を見送った直後、『こちら捜査本部のエイミィ!』から通信が入った。

『ごめん、はやてちゃん、リインフォース! マテリアル戦後で疲れてはいると思うけど、さっきの女の子を追ってもらってほしいんだ! どうやらあの子――テスタメントちゃんもマテリアルに近い特別な残滓みたいなの!』

『はやてがマテリアルを倒したら他の残滓が一斉に消えたんだけど、さっきのテスタメントだけは消えなかった。何かあるはずだよ!』

エイミィさんとアリシアちゃんの必死さが伝わって来た。そやから「リインフォース!」体が重くて、もう何も出来ひんようなわたしやけど、テスタメントってゆう子を追うようにお願いする。そやけどリインフォースはわたしの声が聞こえてへんようで「テスタメント・・・あれが・・・ルシルの言っていた」ボソボソとなんや呟いてた。

「リインフォース・・・? 何かあったんか?」

「え? あ、いえ、何でもありません。それでその・・・なんでしたでしょう・・・?」

「テスタメントちゃんってゆうあの女の子を追おうって・・・」

さっきまで様子がおかしかったリインフォースは首を小さく振って、「判りました。ですが、戦闘はいけませんよ、主はやて」ってわたしを注意。その表情にはさっきまでの様子はなかった。

「了解や。もう自分で飛ぶだけの魔力も残ってへんから、戦うなんて夢のまた夢や」

そうしてわたしとリインフォースは、テスタメントちゃんを追って街を目指して空を翔ける。

 
 

 
後書き
ドヴロ・ユトロ。ボーク。ドーブロ・ヴェーチェ。
「THE BATTLE OF ACES」を今話にて終了させる予定でしたが、思いのほか王さま攻略に手間取ってしまい、テスタメントとの邂逅を次話へ回す事にしました。


 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧