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魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~

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オリジナルストーリー 目覚める破壊者
StrikerSプロローグ エースとストライカー、それぞれの第一歩
  72話:The beginning of StrikerS side ???

 
前書き

早くもプロローグ的な話三話目です。
  

 





目が覚めると、そこは緑色の世界だった。
これが何なのかわからない内に、ボコボコと音を立てて泡が出てくる。

なんだ?俺が何かしたのか?
視線だけを下に向けていくと、何かが俺の鼻上まで覆われていた。呼吸を行うと、何かの先から泡が出てきた。

手は、足は?そう思って力を込めるも、動いている感覚がない。手足がない訳じゃなさそうだが、でも何かしらの原因で動かないようだ。

ダメだ…瞼が、重い……

そう感じたその時には、もう瞼が閉ざされていた。
そして俺の意識は……深い闇に消えた。







再び目を開けると、今度は人影が確認できた。
しかしどうやら俺は、何か透明な物に周りを囲まれているようだ。丁度手が少し動くようだったので動かすと、それに当たったからまず間違いない。

少し気になるのが、前回の時よりもはっきり物が見える点か。
首も若干動かせる。手足は基本指ぐらいしか動かせないが、時には動かせる事もあった。

鮮明になった世界で見えるのは、何本もの紐。それらが体の至るところに付けられるようだ。

見える人影は数人。黄緑色の服を着ている人々が、忙しなく動いていた。


「どうだ?今回の実験は?」
「バイタルなどの数値に異常は見られません。以前よりもいい成果が出ています」
「やはり〝あの科学者〟を引き入れたのは正解だったようだな。この世界の技術も悪くない…」


そう言って急に大きな声で笑い出す。他の人もそれに合わせて、それぞれ笑みを浮かべていた。


「しかしあいつは人格が可笑しいからな。そういう意味ではマッドサイエンティストの域にいるのは、間違いないだろうな」
「違いないです」


もう少し話を聞いていたいが、どうにも瞼を開いていられない。どうやらもう限界らしい。
体の力が抜けていき、瞼が自然と下りていく。








その後何度か目を開ける事はあったが、あの日の事は今でも思い出せる。
その日目を開けた時、黄緑色の人々は慌ただしくしていた。


「急げ、研究資料だけでも持っていくんだ!」
「しかし研究成果が…!」
「実験ならいつでもできる!そんな事より、研究の過程がなくなる方が困るのだ!」


いつも偉そうに命令していた人も、慌てた様子で指示を飛ばす。すぐさまに紙を束ねてその場を去っていく。
なんだかわからないまま、さっきまでいた人達がいなくなる。じゃあ俺はどうなるんだ?

しかし今回は限界が早かった。またもや目を閉じ、眠りに入った。








次に目を開ける時は、珍しく自然とではなく頬に痛みを感じた。
慣れない感触に違和感を感じながら、目を開ける。視界はいつもよりぼやけていて、はっきりとしない。

「お、意識戻ったか。よかったよかった」


そう言うのは視界に映る人。その輪郭はかなりぼやけていて、目の形もわからない。
腕も足も動かない、視界がぼやけるのと関係があるのだろうか?


「資料の殆どが持っていかれたようですが、何枚か取り残したものがありました」
「了解、それらを回収して帰ろう。とにかくこいつを一回病院に連れてってやらなきゃいけねぇ」


体が持ち上げられる感覚を感じた瞬間、またも体がだれてくる。今回も瞼が閉じていき、意識が消える。








今度目を開けた時は、白く彩られた壁だった。
見慣れない光景に目がはっきりと覚めて、思わず周りを見渡す。


「―――目が覚めたか?」
「わあぁあっ!?」

―――ゴツッ!!
「「いったァぁッ!?」」


急に視界の横から人の顔が飛び出してきた。いきなりの事に勢いよく体を起こしてしまい、俺の顔と出てきた人の顔がぶつかり、鈍い音を立てた。


「いっつ~…」
「痛みを感じるって事は…元気な証拠、だな…」


頭を抑えながら、さっきの人が言ってくる。
この人の話によると、俺はこの人に助けられたらしい。

だけど、俺は助けられたところで行く場所がない。
そう目の前の人に言うと、目を大きくしてこちらを見ながら、


「だったら、俺がなんとかするか」


そんなことをすらっと言った。なんとかするとは?とその時は首を傾げた。
しかしその後、この人が俺の後見人となり色々面倒を見られることになるなんて、この時の俺はまだ知らなかった。








あの人が連れ出してくれた世界は、色とりどりだった。
木々の緑、海や空の青、夜の黒さやその中で光る月の白さ。

今まで見たことのない色々は、俺の心に興奮をくれた。初めて見るものばかりで、目を輝かせていたことを覚えている。
因みに黄緑色の服を着たちょっと緑色の肌の人間っているのかと聞いてしまい、苦笑いと共に「いない」と言われてしまったのはいい思い出だ。

こんな世界に連れ出してくれたあの人の背中は大きく、たくましく―――〝漢の背中〟という言葉がぴったりだった。

だからこそ、俺はあの人に憧れた。あの背中に、あの優しさに、あの強さに―――あの人の全てに憧れた。

だからあの人と同じような力が欲しい。
そしてあの人の背中を目指して追いかけていきたい。

なんてったってあの人は―――俺の〝理想の漢〟なのだから!

















目の前に広がる火の海。村の建物を燃料として、轟々と燃えたぎっている。

息を整えつつ、周りを見渡す。全ての家々が、一つ残らず燃えている。
おそらく家々の中にはかつての友達も、その家族も。


「っ…くそっ!」


俺は道端に言葉を投げ捨てて、ある場所に向かって走り出した。

忘れもしない、自分が生まれ育った―――我が家へ向かって。






目の前の光景に、思わず息を呑んだ。

燃えているのだ。周りの他の家と同じように、ただただ赤い炎が燃え黒煙を空へと垂れ流す。
おそらく、我が家に住む俺以外の住人も、他と同じように中にいるんだろう。

それを俺は、見捨てるのか……?

だけど俺は諦めきれなかった。すぐに念話を繋ごうと必死に呼びかける。母さんでも父さんでも構わない、頼むから返事をしてくれ!


[そ、その声は……?]
[か、母さんか!良かった、無事だったか!]


返事を返してくれたのは、母さんだった。
母さんが無事だったことに安堵し、一息つく。落ち着け、まずは状況の確認だ。


[父さんはどうした?一緒じゃ…]
[わから、ないわ…あの化け物と戦って、いる筈だと…思うけど…多分……やられたと…]


化け物?なんのことだ、化け物が父さんを?
いや、きっと生きてる!生き延びている筈だ、ここの人達ははそういう奴らだ!


[父さんは後で探す、とりあえず母さんの位置を…!]
[無駄よ、止めなさい…]
[何でだよ!まだ息はあんだろ!?だったら今すぐに…]
[ダメよ…あなたが、こっちに来る前に…この家が潰れてしまう…]


母の言葉に言葉を詰まらせた。だったら余計に早くしなくてはと反論するが、母はいいから聞きなさいと俺を呼び止めた。


[なんだよ!こんな時に…]
[お願いが、あるの…よく、聞いて…]


母さんが言うには、弟と妹が側にいて無事なのだと。

だから今から二人をそっちに送るから、二人を連れて逃げろ。そう言うのだ。


[な、なんだよそれ!意味わかんな―――]
[あなたなら、わかるでしょ…?私達の転移魔法は、術者は転移、できない…]


だから二人を連れて……
そう続ける母に、ならやっぱり俺が母さんをと反論するが、


[言ったでしょう…?ここはもう、長くは保たない。あなたが私を探して、いる間に…あなたも巻き込まれるわ……]
[だけど、だからって…!]


[もう―――母親の最後のお願いぐらい…なんで聞いてくれないの?]


母さんの言葉に、思わず固まってしまう。念話からクスリと母さんの笑い声が聞こえてきた。


[思えば、昔から頑固な子よね]
「―――止めろよ…]

[いっつも、突っぱねてるところがあって…]
「―――止めてくれ…!」

[でもそんなところが、なんか可愛くて…]


止めろってんだよッ!何死に際みたいな話してんだ、ふざけんなッ!
そう叫ぼうと思った瞬間、俺の隣に魔法陣が現れる。これは何度見たことがある。母さんの―――いや、この地域に住む人達共通のレアスキルの一つ。

それは少ない魔力でも、多くの物を転移させる―――特殊転移魔法の魔法陣!

その魔法陣の上に現れたのは、俺の弟と妹。
どうやら気絶しているだけのようだ、息もしている。少し安心して息を吐いた。
だがすぐに思い出し顔を向けると、家にみるみるとヒビが走っていくのが見えた。


[身勝手なお願いだけど、私達の分まで…三人で、生きて…]


家が段々とボロボロになっていく中、母さんは念話でそう言った。
そして完全に崩れると思った、その瞬間、


[生きて……私達の―――]


母さんの最後の言葉を聞いたのと同時に、自分の家が崩れていき母さんとの念話が切れた。


「あ……あぁ……」


その光景に思わず膝から崩れ顔を手で覆う。俺は母さんを―――助けられなかった。



「あぁ…ああぁ…ああぁあァああアアああぁァあぁああアあああああアああアアァぁぁ!!」



俺の叫び声は、燃え盛る炎で明るく見える夜空に溶けていった。






家々が燃える街の道路を、悠然と歩く人影が一つ。
その頭上には紅の龍が飛び回っており、時折聞こえる咆哮は禍々しく、聞くだけで寒気を感じられた。

しかし人影の周りに生きてる物はすでになく、その寒気を感じる物はいなかった。


「まったく、意外と張り合いがなかったなぁ…」


人影は青龍刀のような刀を肩に担ぎ、残念がるように呟いた。
人影に月の光が当たり、その姿が露わになる。それは普通の人間の物ではなく、正に異形であり化け物。


「新しい力の試験運転で来たが…肩慣らしにもならん」


その言葉に反応して頭上の龍が吠えた。それはまるで退屈だと言わんばかりの物だった。


「わかってるさ、別世界にでも行ってもう一暴れするか?」


今度はその言葉に賛同するかのように吠える龍。
それを聞いて満足そうに笑う。しかしその笑みもビジュアルも含めて見れば、恐ろしい物だった。

そこへジャリッと地面を踏む音が響いた。
異形が振り向く先に、まだ幼さの残る青年が一人立っていた。


「ん~?まだ生き残りがいたか?」


俯きがちの青年に向き直ると、持っている刀を振り上げ、それに呼応するかのように口の中に炎を溜め始める。
しかし異形は青年が小さい声でブツブツと何かを言っていることに気がつく。

彼が何を言っているのかと聞き耳を立てようとするが、その前に青年が俯かせていた顔をバッと上げた。


「ほぅ…ただの人間にしては、いい顔をしているじゃないか」


異形が見た彼の表情は、正に鬼の形相そのままだった。
憎悪と怒り、嫌悪といった物が入り混じったそれを見た異形は、普通とは真逆の感情を感じ再び三日月のような口を作った。


「いいだろう…その表情(かお)に免じて、この俺自ら相手をしてやろう」


そう言うと異形は刀を下ろす。龍もその仕草が発射の意ではないことがわかり、溜めていた炎を霧散させる。
異形は刀を構え、青年は武装隊で支給された物を自分用に調整したポールスピアの切っ先を向ける。


「さぁ来い小僧…さっきの奴らよりも楽しませてくれよ」


その一言で青年の中の何かが壊れた。雄叫びのような、それでいて狂ったような叫び声と共に青年は走り出す。
異形はそれを見ても笑みを消さずにただ待つのみ。目の前の標的が、簡単に壊れぬよう願いながら。

そして遂に、青年のスピアと異形の刀がぶつかり合った。












目が覚めた時には、俺は病院にいた。
どうやら俺はあの化け物と戦って、負けて―――そして生かされた。
何故生きているかわからない。これは奴の気まぐれか、はたまた別の何かなのか。

そしてあの時に生き残ったのは、俺と弟と妹の三人だけだった。燃えた家々の中には焼けた死体のみ。しかし確認された死体の数とそこに住む住人の数が合わないらしい。
おそらくあの化け物が…父さん達を焼き殺したんだろう。骨も残らないぐらい、それこそチリになるぐらいに焼かれたのだろう。

なら何故、俺達はここに―――管理局が所有するミッドの病院にいるのか。
それは経過を見にきた医師から聞いたのだが、ある人物が俺達を見つけて助けてくれたらしい。

その人物は―――かの有名なあの〝英雄〟だった。

今ある事件を追っていると聞いていたが、あの化け物のことを聞いて来たのだそうだ。まぁ追っかけている事件も化け物関連だったから、今回もそうだと思って来たみたいだが……


だったらなんで……生きているのは俺達三人だけなんだ?


あの人は強い、そんなことあの人を知っている奴なら誰でもわかることだ。
なら何故、もっと早く来なかった?そうすればより多くの人を救えたかもしれない、もっと多くの人を守れたかもしれない。

なんで終わってからやってきたんだ…!



―――許さない……


俺は絶対に許すつもりはない。
あの龍を操る化け物。父さんを殺し、俺達の故郷を滅ぼした化け物を。

そして―――〝英雄〟と呼ばれるあの男。
俺達を救わなかった奴を、見捨てたあいつを。


―――絶対に許さないッ!!


今は無理でもいつか必ず、俺のこの手で……その為の〝力〟を……!!




 
 

 
後書き
 
この二人が出るのは、StrikerS編でも後半のオリジナルストーリーで出てくるので、登場はしばらく後になります。

今回までの三話は、StrikerSの四人には主人公との関係と、彼に対する感情や思いといったところです。最後の二人はまた別ですが。

これでやっと本編の方へ入れそうです。お待たせしました。
まぁまた待たせる事になると思いますが(笑)

感想など待ってま~す。ではでは。
  
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