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魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~

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StrikerS編
  73話:六課設立前 出会いと別れ

 
前書き

早くも最新話。
今回は若干短めです。
  

 
 




白い雲が流れる青空。
寂れたビル群には温かくなってきた春の風が吹き、ガラスのないビルの中を通って流れてくる。

そのビル群の内の一つ。その屋上に少女が一人、目を瞑って立っていた。
額に巻いた白い鉢巻が青い髪と共に風になびく。そして右手に付けた拳装着型アームドデバイス・リボルバーナックルを左手に打ち付ける。

そして目を開き拳を構え、シャドーボクシングのように拳を突き出し足を振るう。
その後ろではオレンジ色の髪をツインテールにまとめた少女が、自らのデバイス・アンカーガンをデリンジャーのように上下に折り調子を確かめていた。

「スバル。あんまり暴れてると、試験中にそのオンボロローラーが逝っちゃうわよ」
「え~?ティア、やなこと言わないでぇ!ちゃんと油も差してきた!」

そう言って今度は体を伸ばし始める青髪の少女―――スバル。
その後ろでデバイスの確認が終わったオレンジ髪の少女―――ティアナは、時計で時間を確かめる。

時計の表示が既定の時間になるとブザーがなり、空中にモニターが出現する。

「おはようございます!さて、魔導士試験の受験者さん二名、揃ってますか?」
「「はいッ!」」

モニターに映る銀髪のような少女に呼ばれ、二人は揃って返事を返す。
「確認しますね~」と言って名簿を開き、それぞれの階級と名前を告げ、二人も呼ばれると元気よく返事をする。

「所有している魔導士ランクは陸戦Cランク。本日受験するのは、陸戦魔導士Bランクへの昇格試験で間違いないですね?」
「はい!」
「間違いありません」
「はい。本日の試験管を務めますのは、私リインフォースⅡ(ツヴァイ)空曹長です!よろしくですよ~」
「よろしくお願いします!」

モニターに映る自分より階級の上な試験管が敬礼するのに、二人も同じように敬礼を返す。
それから二人は、リインフォースⅡから今回の試験内容を知らせられる。

「二人はここからスタートして、各所に設置されたポイントターゲットを破壊!あっ、勿論破壊しちゃダメなダミーターゲットもありますからね?妨害攻撃に気をつけて、全てのターゲットを破壊!制限時間内にゴールを目指してくださいですッ。何か質問は?」

その言葉に二人は一度顔を見合わせて、順番に「ありません」と答える。

「ではスタートまで後少し、ゴール地点で会いましょう…ですよ♪」

リインフォースⅡがそう言うと彼女の映るモニターが消え、代わりに三つの丸いシグナルがある物が現れる。
それらが音と共に一つずつ消えていき、それの度にシグナルの色が変わる。

そしてシグナルが一つとなると同時に二人が構えて、

「レディー…」
「「ゴーッ!!」」

そしてシグナルが全て消えてスタートという文字が出ると、二人が一斉に動き出した。










「おぉ、始まった始まった」
「お手並み拝見っと…」

二人が地上で走る様を、それを上空から見下ろす映像を見る二人の女性。
金髪のストレートと茶髪のショートの二人。二人が見る映像には、地上の二人がスムーズにターゲットを破壊していく。

「―――いいコンビだね」
「そやけど、難関はまだまだこれからやで」

そう言って茶髪の女性がモニターを展開、ある画像の映るものを取り出す。

「特にこれが出てくると受験者の半分以上が脱落する最終関門、大型オートスフィア」
「今の二人のスキルだと、普通なら防御も回避も難しい中距離自動攻撃型の狙撃スフィア…」

せやけど、とはやては背もたれに体を預けながら言う。

「士君も来れればよかったんやけど…絶対面白いと思うんやけどな~」
「まぁ士はこの間事件で別の世界に行ってたし、その事後処理もあるし…」

ま、しょうがないかと納得して再び映像を見る。

「このスフィアをどう切り抜けるか、知恵と勇気の見せ所や」
「これ、士が見たら何て言うと思う?」
「そやなぁ。まぁ多分言うだろうっていうのが一つあるんやけど…」

私も、とフェイトは笑みを浮かべて答える。それに対しはやても笑みを作り、フェイトと顔を見合わせる。
そしてお互いに人差し指を立てて、互いを差して、

「「とにかく一発入れる、考えるのはそれからだ(や)」」

二人一緒に同じ言葉を言って、考えた事が同じだということを確認して二人は大きな声を上げて笑った。
























「へっくしょぉいッ!!」

なんか鼻がムズムズすると思ったら、大きなくしゃみが出てしまった。

「なんだ、風邪か士?」
「いや、別にそんな感じじゃなかったんですけど…」

アイクさんが心配そうに言うが、まぁ大丈夫だな。

「―――ていうか、くしゃみが俺の顔にかかったのを誤ってはくれないんですね?」
「あぁ、悪いとは思ってる。―――だが私は謝らない」
「ひどいっすね」

先程正面に立っていた青年が、非常に嫌そうな表情で言う。
傍らの女性―――イーナさんからタオルを受け取り、俺の唾で濡れた顔を拭く。

「んで、しばらくの間出向の扱いになるんだが…」
「まぁこっちの事は任せてくださいよ!士さんがいなくとも、俺達二人がいれば!」
「…ウザいから離れろ」

タオルで顔を拭いた青年が近くにいたまた別の青年の肩を寄せそう言うが、肩を寄せられた方の青年はものすごく嫌な表情で肩から手を外し、離れていく。

「まぁそう言う事だ。お前さんは八神の嬢ちゃんとこで約束してたんだ、それを守るのも男のするべき事だろ?」
「は、はぁ…」
「それにこいつらも十分強いしな、そろそろ二人だけで任せても面白いと思っていたところだ」

それのどこが面白いのか、甚だ疑問ではあるが言っている事は一理ある。
ふと視線を巡らせると、先程肩を寄せられていた青年が眉間にシワを寄せて俺の事を睨んでいた。あぁ、そう言う事。

「大丈夫だ、お前との決着もちゃんとつけるよ」
「……それならいいんですが」

と言って青年はぷいっと顔を逸らす。その青年に覆いかぶさるように、首に腕を回す別の青年。
アイクさんはそれを見ながら俺に向き直り、口を開く。

「そういう事だ、しばらくは大丈夫だろうよ。危なかったら俺も前線に入るしな」
「それなら安心ですが……はぁ、もう何を言っても変わりませんね」
「勿論」
「胸を張って言わなくてもいいでしょうに」

はぁ、とため息をついて荷物を手に取る。

「意外と荷物少ないんだな?」
「えぇ。持ち出す荷物自体は少ないですから」

それじゃあ、と続けて俺は皆の方に向き直る。

「一年って少し長い間だけど、しばらくの間よろしく頼みます」
「おう、任せろ」
「皆さんと一緒に頑張っていきますから、ご安心を」
「俺、今よりもっと強くなりますから!」
「………」

いやはや、なんともまぁ頼もしいお言葉で。
俺はそれらの言葉をしっかり受け取って、その場を去った。

そういえばなのはの言ってたフォワード候補の二人の試験、そろそろ終わるか?結果はどうなったんだろうな~。
そう思ったら、携帯端末を取り出しメールを送る。宛先ははやてとフェイト。なのはは一応仕事中だし、見ている二人の方がいいだろう。
























ティアナとスバルは、今の状況にかなり困惑していた。
二人は管理局の建物のある部屋のソファに座っており、その目の前には八神二等陸佐とフェイト・T・ハラオウン執務官。それに先程試験官として紹介されたリインフォースⅡ空曹長。

そんな普通の局員なら一度は憧れる有名人を目の前にするこの状況に、かなり困惑していたのだ。
さらに言えば八神二佐が作る部隊の誘いを受けて、二人にとって自分達の夢への近道が示された事に、さらに困惑しているのだ。

まぁそれも一時区切られ、高町教導官の試験の結果を告げられる。結果としては不合格なのだが、それでも特別講習の推薦状をもらい最短でのBランク昇格の道を示してもらえた。

「あぁそれとな、うちの副部隊長からメールもらっとるで」
「副部隊長、ですか?」
「うん。部隊が設立すれば、前線での指揮を執ることになる人だね」

それでな、と端末を操作して文面を表示すると、コホンと一回区切ってから、

「『取りあえず半分合格おめでとう。君達二人がはやての誘いを受けるも受けないも、君達の自由だ。無理強いはするつもりはない。気楽に決めてくれ』―――ってなんやこれ!?」
「ほんと適当な扱いだね…」
「あの人らしいというか、なんというか、ですね…」
「あはは、酷い言われ様だ」

八神二佐がメールを読み上げると同時に、さっきまでの雰囲気が一気に壊れていく。
その光景に少し驚きながらも、スバルは疑問に思った事を口にした。

「あの~…副部隊長って誰なんですか?」
「二人は知っとるかな?」
「怪人対策の部隊、陸上特殊対策部隊に所属していて、陸上エース陣の一人と呼ばれる男」

ハラオウン執務官の言葉に、ティアナとスバルはあっという顔になる。それを見た四人は思わず笑みを浮かべ、高町教導官が続ける。

「―――門寺三等陸佐だよ」
























列車と人が行き交う駅の構内。その中で荷物を脇に置き時計を確認する赤い髪の少年が一人。
時計は予定の時間を過ぎており、少年は待ち合わせの人がいないか確認する。

すると側のエスカレーターからその人がやってきたのを見て、荷物を手に取って彼女の元に向かう。

「お疲れ様です!私服で失礼します、エリオ・モンディアル三等陸士です!」
「あぁ、遅れて済まない。遺失物管理部、機動六課のシグナム二等空尉だ。長旅ご苦労だったな」

やってきたシグナムは赤毛の少年―――エリオを確認すると、再び周りに視線を巡らせる。
約束していた人は二人。一人はこの少年だが、もう一人がいない。

「もう一人は?」
「あっ、まだ来ていないみたいで…あの、地方から出てくるという事で迷っているのかもしれません。探しに行ってもよろしいでしょうか?」
「頼んでいいか?」
「はい!」

シグナムに敬礼をして、エリオはすぐに踵を返した。

「ルシエさ~ん、ルシエさ~ん!管理局機動六課新隊員のルシエさ~ん!いらっしゃいませんか~!?」

構内を歩き回りもう一人の待ち合わせている人を探す。だが構内はそこそこ広く、人も多い。一人を探すのはそう簡単ではない筈……

「は~い、私です~!すみません、遅くなりました~!」

なんてこともなく、エリオが丁度エスカレーターの前までやってきた時、その上の方から声が聞こえてきた。
振り返ると上の階から降りてくる、白いフード付きのローブを着て大きめの鞄を持った少女がいた。

「ルシエさんですね?僕は―――」
「あっ!」

エリオが声をかけようとした瞬間、少女はエスカレーターを踏み外してしまう。

〈 Sonic move 〉

だがその瞬間、エリオが手首に巻くデバイス・ストラーダが魔法を発動。エリオは閃光のごとき速さでエスカレーターの壁を何度も跳ね、倒れ掛かった少女を抱えて飛び出した。
エリオはその状態で上の階に到達するが、勢い余って二人一緒に倒れてしまう。その際自分が下になるように倒れたのは、偶然か咄嗟にやったことなのか。

「あいててて……すいません、失敗しました…」
「いえ、ありがとうございます。助かりました……あっ…」
「え…?」

その時二人はようやく気づいた。エリオの手が丁度よく、少女の年相応の小さい胸に触れていたのだ。
なんというラッキータッチ。なんというラッキースケベ。エリオマジ許すまじ。

「あ、すいません今退きます」
「あぁ!あの、その…こちらこそすみません!」

少女はエリオの上から離れ、エリオも慌てて少女から離れる。
すると先程の騒動で地面に落ちた鞄が動き、その中から小さい白い竜が出てきた。

「あっ、フリードもごめんね。大丈夫だった?」
「キュクル~」
「竜の、子供…?」

普通は見ない竜の姿に驚いていたエリオに、少女はフードを外しながら声をかける。

「あの~、すいませんでした。エリオ・モンディアル三等陸士ですよね?」
「あ、はい!」
「初めまして、キャロ・ル・ルシエ三等陸士であります。それから、この子はフリード・リヒ。私の竜です」
「キュクル~」

そう言って桃色の髪の少女―――キャロはエリオに敬礼をし、白い竜―――フリードもキャロの膝の上に降りて元気に鳴いた。




  
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