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ソーセージ

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第三章


第三章

「どうしようもないわね」
「ああ。しかしな」
「しかし?」
「結構何でも詰め込めるんだな」
 ハギスの中にあるものを見ての言葉だった。挽肉だけでなく野菜や香草まで入れられている。本当に色々と入れられてはいる。
「そうなんだな」
「そうね。お肉や玉葱とかだけじゃなくてね」
「色々入れられるな。そうだな」
「どうしたの?」
「思い切ってみるか?」
 こう言うのだった。
「ここはな」
「思い切ってって」
「ああ、誰も考えなかったものを入れてみないか?」
 欣也は意を決した顔になっていた。
「何でもやってみないとな」
「そうね。何でもっていうけれど」
「とにかくやってみるぞ」
 彼は言った。そうしてであった。
 欣也と典子はとにかく色々なものをソーセージに入れ続けた。そしてある日だった。欣也は彼としては思い切ったものを入れたのだった。
 それはやたらと赤いソーセージだった。茹でられている。典子は白い皿の上のその赤いソーセージを見てだ。夫に対して問うた。
「何、これ」
「血を入れてみた」
 そうだと答える欣也だった。
「血をな」
「血!?」
「ああ、牛の血だ」
 それだというのである。
「それをソーセージに入れてみたんだけれどな」
「ソーセージにそんなもの入れるの?」
「普通は考えないよな」
「ええ」
「けれどな。これはどうかって思ってな」
「それで入れたのね」
 夫のその考えをここで理解したのだった。
「とにかく何でもやってみるってことで」
「そういうことなのね。それじゃあ」
「食べてみるか」
 彼もテーブルに着いてだ。そのうえで妻に対して言った。
「それじゃあこのソーセージをな」
「そうね。まずは食べてみないとね」
「何もわからないからな」
 何につけてもそうであった。そうして実際に食べてみるのだった。
 フォークで突き刺す。しかし血は出ない。典子はそれを見て欣也に対して言った。
「血が固まってるの」
「ああ、血漿でな」
「成程ね。それでなの」
「うん、それでなんだ」
 まさにそれだと言う。
「固まってるのは」
「血がどくどくって出て来るかしらって思ったけれど」
「流石にそういうソーセージはお客さんが気持ち悪く思うだろ?」
「それでこうした風になのね」
「血っていっても色々だからな」
 さらさらとしたものだったり固いものだったりする。欣也がここで使ったのはその血漿により固まる血の方であったのである。
「それでそれも考えたんだ」
「色々考えたのね」
「ああ、それで味はどうだ?」
 食べるように促す。
「食べてみてくれよ」
「ええ、それじゃあ」
 夫の言葉に応えて食べてみる。するとであった。
 
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