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ソーセージ

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第四章


第四章

「どうだい?味は」
「美味しいわ」
 こう答えるのだった。
「濃い味で。普通のソーセージともまた違った味で」
「そんなにいいのか」
「これ、いけるわ」
 具体的に店の料理としても話した。
「充分にね」
「そうか。じゃあ」
 欣也も自分から食べてみた。するとその味は。
 確かに濃い。そして他のソーセージともまた違った味だ。だが決してまずくはない。そのソーセージを食べてみて話すのであった。
「いけるな」
「いけるでしょ」
「ああ、いける」
 また話したのだった。
「充分な」
「そうでしょ。いけるわよ」
 彼はまた言った。
「これは成功よ」
「よし、決まりだな」
 妻の話を受けてだ。彼も決めた。
 そのうえでだ。この血のソーセージはメニューとして出されるのだった。
 これは客達にとっては好評だった。店の人気メニューの一つになった。
「美味いな」
「そうね」
「こんなソーセージもね」
「いいじゃない」
 そしてだ。欣也と典子はそのソーセージを二人で次々に料理していく。二人にとってはまさに自分の子供と同じにさえなっていた。
「いや、苦労した介があったな」
「そうね」
 厨房で料理をしながら笑顔で話す。
「それが食べてもらうのはな」
「いい感じね」
「完全にオリジナルメニューだしな」
 欣也はこう信じていた。
「余計に嬉しいよ」
「そうね。雑誌でも紹介されるみたいだし」
 典子はここでこんなことも言った。
「ネットでも口コミで評判が広まってるし。頑張ろうね」
「ああ、それじゃあな」
 こうして二人はそのオリジナルソーセージを笑顔で食べていく。しかしだった。
 日本にいるドイツ人の夫婦がだ。ネットを見ながらこんな話をしていた。
「へえ」
「どうかしたの?」
「いや、日本人もこれを食べるんだってな」
 夫がこう妻に話していた。
「少し驚いてるんだよ」
「驚いてるって?」
「血のソーセージだよ」
 言うのはこれについてだった。
「日本人も食べるようになったんだな」
「へえ、そうなの」
「ああ、日本人って普通のソーセージしか食べないと思っていたけれどな」
「最近は違うのね」
「そうみたいだな」
 こう妻に返す。
「どうやら」
「日本人は血は弱いって聞いたけれど」
 妻は首を傾げさせながら述べた。
「そうじゃないのかしら」
「ううん、本当に最近変わったみたいだな」
「そうなのね。とにかく血のソーセージが食べられるのなら」
 それならば、というのだった。こう夫に対して話す。
「行ってみたいわね」
「そうだね。じゃあ行ってみるか」
「そうしましょう。今度ね」
「この辺りだしね。そうするか」
「ええ、それじゃあ」
 ドイツ人の夫婦はこう話してそのうえで二人でその血のソーセージを食べてみる。するとその味は彼等も納得するものだった。ドイツの味であった。


ソーセージ   完


                  2010・6・29
 
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