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転生者物語・夜天の主とトラック運転手

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第一話


《ジンライSide》

謎の女から女の子を預けられた俺はひとまず知り合いの家に向かった。

「ホーク!居るか!!」

俺はそいつの家の扉を乱暴に開けて入った。

「どうしたジンライ。随分と慌てているじゃないか。しかもそんなずぶ濡れで。」

そこへ、一人の若い男が奥から出て来た。こいつの名前は“メタルホーク”。通称ホークだ。人間の姿をしているが、その正体は超ロボット生命体トランスフォーマーだ。デビルZを追って仲間と共にこの地球にやって来たんだが、戦いが終わった後も地球に住んでいる。何でも、この星に住む四つの種族“人間”、“天使”、“堕天使”、“悪魔”の四種族の持つそれぞれの素晴らしさに魅了され、いずれは四種族の架け橋になるべく残ったそうだ。もっとも、そのせいで三勢力の一部からは危険視されているが。

「ん?どうしたんだ、その女の子は?」

すると、ホークが俺が抱きかかえている女の子に気付いた。

「ちょっと、この子について話があってな。」

「分かった。玄関で立ち話と言うのも何だ。上がってくれ。」

俺はホークに誘われてリビングに上がった。

「しかしジンライ。君はそんなにずぶ濡れなのに、その女の子は何で濡れていないんだ?」

ホークが不思そうに言ってきた。そう。俺がずぶ濡れなのに対し、女の子は全く濡れていなかった。

「多分、こいつの力だと思う。」

俺はあの女が消えた後に残った十字架のアミュレットを取り出す。それは淡く光っていた。

「これは・・・どうやらこのアクセサリーが女の子を守るようエネルギーフィールドを張っているようだな。」

ホークが分析する。ったく、それなら俺も雨から守ってくれてもいいじゃないか。

「とりあえず、その子はソファに寝かせておいて待っていてくれ。タオルと暖かい飲み物を用意して来る。」

「ああ。よろしく頼むぜ。」

俺は女の子をソファに寝かせた。目覚める様子は無い。そんな中、アミュレットはまだ淡く光っていた。




濡れた身体を軽くタオルで拭いてから、ホークの用意したコーヒーで温まった後、俺は女の子との出会いについて説明した。

「空間の裂け目に、アクセサリーになった堕天使か・・・」

ホークは顎に手を当てながら考える。

「その女性は私たちの知る堕天使とは違う存在かもしれないな。」

「やっぱり、ホークもそう思うか?」

「と言う事は、君もか?」

「ああ。」

大抵のファンタジー作品では、悪魔とかは死んだ後消滅する事が多いが、このハイスクールD×Dの世界では消し飛ぶ程の攻撃でもしない限り、しっかりと死体が残る。

「しかし、だとしたらその女性は何なんだ・・・」

ホークは再び考え込んだ。俺も知恵を絞るが、全く検討が着かない。丁度その時だった。

「うん・・・」

女の子が目を覚ましたのは。

「あれ?ここは・・・?おじさん達、誰?」

「おじさん!?」

俺は女の子におじさん呼ばわりされてショックを受けた。まだ二十代だって言うのに・・・

「私はホーク。天文学者をやっている。こっちはトラック運転手のジンライだ。」

そんな中、ホークの奴が勝手に話を進めた。

「君の名前も教えてくれるかい?」

「私は・・・はやて。八神はやて。」

「はやてか・・・」

早速名前を聞き出す事に成功したホークを見て、慌てて俺は会話に加わった。

「で、お嬢ちゃんは一体何者なんだ?」

「私は・・・」

俺とホークははやての言葉を待った。だが、その口から出て来た言葉は・・・

「あかん。何も思い出せへん・・・」

「何だって!?」

「記憶喪失、と言う奴か?」

俺が驚く中、ホークが冷静に分析する。

「じゃあ、こいつについては何か覚えてねえか?」

俺は十字架のアミュレットを取り出して見せた。もう光は止んでいる。

「・・・分からへん。けど、何か懐かしい感じがする。」

「そうか・・・」

つまり、あの女はこの女の子と何らかの関係があったと考えて間違いないって事か。

「で、ホーク。この子はどうすんだ?」

とりあえず、俺はホークに聞いた。はやては記憶喪失みたいだが、空間の裂け目みたいなのから出て来た時点でただ者じゃあ無い事が分かる。

「そうだな。どうも訳ありのようだから我々で保護するべきだろう。」

「そう言うと思ったよ。けど、一体誰が面倒を見んだ?」

「ああ。問題はそこだ。」

子育てとはかなり大変なものだ。金銭面はもちろん、育てる側の精神面でも大変な事である。

「とりあえず、この子自身に決めてもらうとしよう。」

「そうだな。」

ホークの回答は何処か投げやりな感じだったが、俺もそれ以上のアイデアが思いつかなかったので、それに賛同した。




あの後、俺たちははやてに三勢力やトランスフォーマーについて説明した。だが、はやてはあまり驚いている様子じゃ無かった。ホークはこの子は元々ファンタジーやSFに関わっていたんじゃ無いかと推測している。
そして、俺とホークや他の知り合いの仕事や経済状況について説明した後、誰の世話になるか決めて貰う為に俺とホーク以外のメンバーの家に直接訪問する事にした。
だが、その前にまず俺の家に行く事になった。一応、俺もはやての世話役の候補の一人だからだ。だが、俺が選ばれる事は多分と言うか絶対無いだろう。

「さあ、ここが俺の家だ。」

トレーラーを止めて、はやてと付き添いのホークを案内した。俺が住んでいるのは家賃の安いアパートだ。だが、俺は大型トレーラーの運転手。つまり長距離輸送をメインとしているから、ここに帰って来るよりもトレーラーの運転に乗っている事の方が多い。

「ちょっと散らかっているが、そこは我慢してくれ。」

俺は部屋の鍵を開けてホークとはやてを中に入れる。前述の通り、俺はここに居るよりもトレーラーに乗っている時の方が多いから家具は必要最低限しか無い。部屋はリビング兼寝室が一つと小さなキッチンが一つ。トイレはあるが風呂は無い。

「とりあえず、座ってくれ。」

俺はそう言って二人のために飲み物を用意した。と言っても、キッチンに行って冷蔵庫の中にあるペットボトルのお茶をコップに注ぐだけだ。
俺は料理なんてしないから、冷蔵庫に入っているのはお茶やビールといった飲み物だけだし、コンロもカップ麺やレトルト食品を作る時に使うぐらいだ。
俺はお茶の用意が出来ると部屋に戻ろうとする。だが・・・

「って、おい。お前、なにしてんだ。」

いつの間にかはやてがキッチンを物色していた。食器棚はもちろん、流しの下のスペース、果てはゴミ箱の仲間でチェックしている。

「・・・ジンライさん。これはどう言う事や。」

「は?」

ゴミ箱の中を覗き込みながら何やら低い声で言うはやてに俺は間抜けな声を上げるしか無かった。

「せやから、これはどう言う事やと言うとるんや!!!」

すると、はやてがゴミ箱の中身を俺に見せた。そこに入っていたのは酒のツマミの袋にカップ麺やコンビニ弁当の容器だった。

「こんなんばっか食べて!身体に悪いやろ!!」

「いや、男の一人暮らしなんてこんなもんだろ?」

あれか?お前は俺の母ちゃんか何かか?

「こんなもんって・・・決めましたわ。ホークさん!私はここに住みます!そんで、ジンライさんのお世話をします!!」

「何を言ってんだお前は!?」

あまりにも予想外な展開に俺は思わず叫ぶ。そんな中、ホークの反応はと言うと・・・

「ふむ・・・はやてがそれでいいと言うのなら、私はいいが・・・」

「いや、良くねえだろ!」

「安心してくれ。彼女の生活費や教育費は我々サイバトロンが援助する。」

「そう言う問題じゃねえ!!」

俺の部屋に小学生の女の子が居る事をどう大家や近所の人たちに説明すりゃいいんだ!?

「わがままやな。ジンライさんは。」

「何で俺の方が責められてんだよ・・・とにかく!俺は無理だからな!!」

「強情やな・・・」

「当たり前だ!こちとら、小学生に世話される程落ちぶれてる積もりは無い!!」

堂々と俺はそう宣言する。すると、はやては不適な笑みを浮かべた。

「へえ・・・つまり、ジンライさんの方が私よりも家事スキルは上やと?」

「ああ。高いとは思わないが、少なくとも小学生よりはマシな積もりでいるぞ。そもそも、お前記憶喪失だろうが。」

「確かに、私には昔の記憶が無い。せやけど、私の魂が叫んどるんや!こんな生活をしとるダメな人をほっといたらあかんと!!」

「ダメな人って・・・」

本人の前で包み隠さずそう言う事を言うか普通?
それに俺には大人としてのプライドとか、周囲への説明以外にも不安がある。

「でもなあ、さっきも言ったが記憶の無い奴に家事とか出来んのか?」

記憶が無いのにテキトーにやられて、部屋がめちゃくちゃにされるのは困る。それに、それで大家の怒りを買うのは部屋を借りているこの俺だからな。

「その点については大丈夫だ。」

すると、そこへホークが口を出して来る。

「記憶喪失で失われるのは一般に『思い出』に関する記憶だ。だから知識に関する記憶はちゃんと残っている。そうでなければ、言葉を話す事も、立って歩く事も出来ないからな。」

なるほど。それは納得だ。けどな・・・

「だからって、安心して任せる事はできねえぞ。」

「なら、彼女の家事スキルを試してみればいい。そろそろ夕食には丁度いい時間だ。彼女に作ってもらって、その味を確かめてみればいいだろう。」

「なるほど、採用試験をやるって訳か。いいぜ。けど、台所はホークの家のを借りるぞ。うちにはロクな調理器具が無いからな。」

「ああ。分かっている。」

こうして、はやてが俺の世話役になるための採用試験が行われる事になった。



続く
 
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