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転生者物語・夜天の主とトラック運転手

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第二話


はやてが俺の世話役になる為の採用試験として、料理を作る事になった。俺はトレーラーを車庫に入れた後、はやてとホークを連れて食材を買う為にスーパーに来た訳だが・・・

「ちゃうちゃう!ジャガイモはそっちやなくてこっちや!!」

「どっちも同じように見えるぞ・・・」

「確かに・・・」

俺とホークは食材選びで散々はやてにダメ出しされていた。

「よう見てみい。そのジャガイモは芽が出とるやろ。」

「どれどれ・・・本当だ。芽が生えている。」

ホークがジャガイモの表面をじっくりと見て言った。むう、確かにそうだな。けどな・・・

「芽つってもめちゃくちゃ小さいじゃねえか。これぐらい切り落とせば大丈夫なんじゃないのか?」

俺がそう聞いた時だった。

「は?」

はやての身体から凄まじい怒気が放たれたのは。

「ははは。おもろい冗談やな、ジンライさん。」

「え?ちょ、ちょっと待て!何でそんな怒ってんだ!?」

「ええか。料理っちゅうもんは、作る腕や込める愛情と同じくらい食材選びも重要なんや。やから、一切の妥協は赦されへんのやで。」

「分かった。分かったから怒りを収めてくれ。」

「ホンマか?」

「ホンマホンマ!」

つい俺も関西弁になってしまった。すると、はやては何とか怒りを収めてくれた。これでもう大丈夫だ。と思った矢先、はやてがとんでもない事を言い出した。

「ほな、また今度このスーパーで生鮮食品の目利きのやり方講座をやりましょ。」

「はあ!?何でそうなんだよ!?」

「文句あるんか?」

「いえ、ありません・・・」

はやての放つ小学生とは思えない怒気に、俺は引き下がるしか無かった。

「あれ?ジンライさんだ!」

「ホークも居る!」

そこへ、二人の少年が走って来た。




《ホークSide》

私ははやてとジンライと一緒にスーパーで買い物する事になったが、はやての知識には驚かされた。
我々サイバトロンプリテンダーは地球に来たばかりの頃、この惑星で出会った『料理』と言う物のバリエーションの多さに大いに驚いた。
我々トランスフォーマーは活動するためのエネルギーとして『エネルゴン』と言う物質を摂取する。それにも固形物だったり液状だったりといったバリエーションはあるが、地球の料理には遠く及ばない。
我々プリテンダーは人間の姿ならば人間と同じ物を食べられるので、その様々な見た目や味に興味を持つようになり、さらには自分で料理をするようになる者も現れた。私もその一人である。
だが、調理してしまえばどれも同じと思っていた私にとって、はやての教えてくれた食材選びの大切さと言う物は衝撃的だった。
そんな風に私が衝撃を受けていると・・・

「あれ?ジンライさんだ!」

「ホークも居る!」

そこへ、二人の少年が走って来た。

「やあ、イッセーに秀太じゃないか。」

「お前達も買い物か?」

私とジンライは少年達に声を掛ける。
この二人はジンライの家の近所に住む小学生の“兵藤一誠”と“剛秀太”だ。秀太の方は私が働いている天文台の所長の息子なので、所長を通して知り合い、さらにそこから一誠とも知り合った。

「うん。晩ご飯の材料を買いに来たんだ。」

「そうか。偉いな。」

そう私が秀太を褒めていると、一誠がはやてをじっと見ている事に気付いた。

「ジンライさん。この子誰?」

「へ?ええと・・・」

一誠に聞かれ、答えに困っている様子のジンライ。確かに、事実そのままを伝える訳にもいかないし、助け舟を出すとするか。

「その子は八神はやて。ジンライの親戚で訳あってジンライがあずかる事になったんだ。」

「へえ〜。」

一誠は私の説明に納得した様子だ。その時、ジンライが私に耳打ちしてきた。

「おい。何勝手にこいつが俺ん家に住む事を確定させてんだ。」

「こう説明しておけば、はやてが君の家に住む事になっても説明がつくだろうそれに・・・」

私がその続きを言おうとした時だった。

「でも、ジンライって殆ど家に居ないじゃん?面倒とか見れるの?」

私の予想通り、秀太が疑問を口にした。そして、私は彼のその疑問に答える。

「ああ。だから最初はジンライの代わりに私か他のジンライの知り合いで世話をする予定だったんだが、ジンライの生活ぶりがあんまりだったから、彼女の方がジンライの世話をすると言い出したんだ。」

「ジンライさん・・・」

「小学生にダメ出しされる程の生活ぶりって・・・」

すると、一誠と秀太は憐れみの視線をジンライに向けた。

「べ、別にダメな生活なんかじゃない!むしろ男の一人暮らしならあれくらい普通だ!!」

当然、ジンライはそれに反論する。その時、秀太達が来てから今まで黙っていたはやてが口を開いた。

「普通?カップ麺やコンビニ弁当ばっかり食べる生活が普通なんか?」

「いや。別にそればっかりって訳じゃ無いぞ。むしろ、サービスエリアとかのレストランで食べる事の方が多い。」

「とか言って、栄養バランス考えんと好きな物ばっかり食べてるんとちゃいます?」

はやての指摘にジンライが視線をそらした。

「まあ、そう言う訳でだ。ジンライがはやての世話になるかどうか決める為に、ひとまず彼女の料理がどれ程のものか見せてもらう事になって、今その材料を買っている所だ。」

「なるほど。」

「はやて。ジンライさんの事、よろしくな。」

私が説明すると秀太は納得し、一誠ははやてにジンライの事を頼む。

「任しといて。ええと・・・」

「僕は剛秀太。」

「俺は兵藤一誠。よろしく!」

「うん。よろしくな、秀太君、一誠君。」

どうやら、はやては秀太達と仲良くなれそうだな。一人異世界に飛ばされてしまった彼女に友達が出来たのは嬉しい事だ。




《ジンライSide》

買い物を済ませた俺はホークの家に戻り、調理をはやてに任せてダイニングで待っていた。料理が趣味のホークははやてが料理する様を間近で見ている。
俺はたかが小学生がそんなレベルの高い料理を作れるとは思っていない。まあ、せめて食える物が出て来てはもらいたいと思っているが。

「出来たで。」

そうやって待っていると、はやてが料理を持って来た。内容は白米にワカメの味噌汁、肉じゃが、ほうれん草のお浸しと典型的な日本の食卓のメニューだ。

「ほな、皆座っていただきます。」

「「いただきます。」」

はやてとホークも座って同じメニューの前で手を合わせる。もちろん、おれも一緒にした。別にダメな大人って訳じゃ無いからな。
それはさておき、おれはまずワカメの味噌汁に口をつけた訳だが・・・

「こ、こいつは・・・!?」

めちゃくちゃ美味い!市販の出汁の素じゃなくて鰹節を買ってたが、ここまで違うとは思わなかったぞ!

「どうや、ジンライさん?」

衝撃を受けている俺にはやてがドヤ顔で言ってきた。
だがまだだ!結論を出すのは味噌汁以外も評価してからだ!
俺は次にほうれん草のお浸しを箸でつまんで口に入れた。これも美味い!出汁とほうれん草自体の苦味が上手いことマッチしている!!

「(ニヤニヤ)」

ふとはやての方を見ると、勝利を確信したかのように笑っていた。まだだ!メインの肉じゃがが残っている!!
俺は肉じゃがを肉とじゃがいもが程よい比率になるようつまみ、口に入れた。そして・・・

「俺の、完敗だ・・・」

「そやろ?」

もう疑う事は出来ない。こいつの料理の腕は本物だ!

「ほな、約束通りジンライさんのお世話、させてもらいます。」

「くっ・・・勝手にしろ!」

こうして、はやてが俺の部屋に住む事が決定した。



続く

 
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