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リメイク版FF3・短編集

作者:風亜
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キミがキライだから

 サロニアの宿屋ロビーにて────


「なぁレフィア……、イングズのことってスキなのか?」

「はぁ? ルーネス、何よ急に……。それって仲間として? それとも異性として聞いてるのっ?」

「う~ん………どっちも」

「そうねぇ………仲間としては申し分なく頼りになるし、異性としてはこれまた非の打ち所がないっていうか……? むしろあれって異常なくらいよねぇ」

「そうだなぁ………おかしいよなぁ」

「でもあたしとしては、その非の打ち所の無さがネックかしら。異性として隣にいたら、それこそ劣等感というか ────」

「そうか? レフィアってスタイルいいし、性格はキツいけどいい線いってると思うけどな」


「 …………、それって褒めてるつもりっ?」

「アルクゥはどうだよ?」

「は? ……アルクゥは頭脳派として頼りになるわよねぇ。異性としてはこれといってパッとしないけど、弟にはしたいかしら」


「じゃあ………おれは?」


「問題外っ!」


「うは、きっつ!? そりゃないだろぉ……」


「大体何であたしにこんな話させるのよっ。───じゃ逆に聞くけど、今図書館に行っててここにいないアルクゥとイングズの事、あんたはどう思ってんの?」

「え、レフィアは入ってないのか?」

「あたしの事はいいのよ! さっき褒められてもない事云われたじゃないっ」

「おれとしては、精一杯褒めたつもりだけど………」

「ふ~ん、あれで精一杯ねぇ……。いいわよもうっ。ほら、あたしは云ったんだから他2人についてあんたも云いなさい!」


「おれの事は問題外以外やっぱないのかよ……。う~ん、アルクゥはおれにとって守ってやんなきゃいけない弟みたいなもんだったけど、今はもう違うかな。おれの手から離れて、1人立ちしてるって感じ。アルス王子………もう王子じゃないか。サロニアの一件で、アルクゥはおれがいなくても大丈夫そおだもんな」

「へぇ……それってちょっと、淋しいんでしょっ?」


「まぁ………そうかも」


「 ────じゃあ本題、イングズの事はキライなのスキなの、はいどっち!」


「へ……? スキかキライしかないのかよ!」

「当然でしょっ、ほらどっち!?」

「そりゃ今は、キライじゃ、ないけど……?」

「はいスキなのねーっ! あんたが始めの頃反発したり苦手だとか云ってたのは、妬みからくるヒガミだったのよね~?」

「な、何だよそれ。分かったように云うなよな!」


「分かるから云ってんでしょ、てゆうか図星ねっ! ────で? どの辺りからなわけ? やっぱりあれかしら、炎の洞窟であんたが立ってる足場崩れて下の溶岩に落ちそうになったの、助けてもらった辺りかしらねっ?」


「何でレフィアが妙に楽しそうなんだよ……」

「あぁもう、じれったいわね! 知ってるのよ、あんたがアレ以来イングズを事あるごとにチラ見してるのっ!」

「す、するかよそんな事?! 大体、ああされたくらいでおれ別に────」

「 ………ほらぁ、ぼ~っとしちゃって。あんた今思い出してんでしょ、その時の事っ!」

「 ────へ? ちがっ……、別にそん時笑いかけられたとかそんなんじゃ………、ぁ」

「っはぁ~、やっぱりねぇ! 普段むっつりしてる人が笑うと来ちゃうわよね~? あたしもそうされてみたかったわ……! ルーネス あの時に戻ってあたしと代わんなさいっ!!」

「なに無茶苦茶なこと云ってんだよ! どうかしてるぞレフィア……!?」

「どうもしてないわよ。────とにかくなっちゃったんでしょ、好きに」

「だ、だから何でそういう話に持ってこうとするんだよ! 仲間としちゃそりゃあ………けどオトコだぞ、それ同士ってどうなんだよっ」

「偏見ってものよ、それ。好きな気持ちに男も女も同性もないわ」

「は……? いや、第一あいつにはお姫さまいるし……!」

「はぁ、あんたそんな事云ってるとほんとに手の届かないとこに行っちゃうわよ?」

「な………ならどうしろってんだよ!」

「そうね、素直になるしかないわね、自分の気持ちに」

「 ────あ~もう、訳分かんないこと云わないでくれよ! 付き合ってらんないぜ、外行ってくる!!………あ」

「……どうした、妙に騒がしいようだが」

「ただいまー、色んな本読んでたら遅くなっちゃったよ……。あれ、ルーネス? どこか行こうとしてたの……というか、紅いよ顔、大丈夫?」

「そうだな………熱でもあるんじゃないのか?」

「 ────!! ひひっ、人のデコ触んなよ?! そ、外行ってくるからどいてくれっ」

「……待て、もう夕刻だ。これから1人で何処へ行くつもりだ?」

「う……? 腕つかむなっての!? どこでもいいだろっ、武器屋とか、ブキヤとか、ぶきやとか……っ」

「ふふふ……! ルーネス、あんたイングズの前でどうかしちゃったんじゃないの?」

「うぅ、うっさい! 何でもないての?!」

「 ────あ~らら、行っちゃった……。分かり易いやつね~」

「ふむ……、何を話していたのか知らんが、あまりからかうのは良くないぞレフィア。あいつはすぐひねくれるからな」

「へ~え? よく分かってるじゃない。……なら追っかけてあげなさいって、夜も近い事だし。ついでに何か話してきたら? あたしとアルクゥは先に夕食頂いて即寝るからっ」

「 ────そうだな、あいつ1人ではサロニアで迷子にでもなりかねん。……では、行って来る」

「行ってらっしゃ~い、なんなら一晩帰って来なくてもいいわよ~」

「………ねぇレフィア、僕とイングズが図書館行ってる間にルーネスと何話したの?」

「別に~、あいつからあたしに変な事聞いてくるからしっぺ返してやっただけよっ。アルクゥだって、分からない訳じゃないんでしょ?」

「うん………まぁね。スキなんだろうね、仲間としてだけじゃなく────」

「そっちはそっちでどうだったの、イングズと何か話せたっ?」

「え~っと、お互い本に夢中になってたからあんまり話してないけど、不意に聞いてみたよ。僕らの事………イングズから見てどう思う?って」

「え、何て云ってたっ?」

「 ───僕の事は、頭の回転が早くていつも助かってるって云ってくれたし、レフィアは言葉が少しキツイ事もあるけど、それはいつも自分達を鼓舞してくれるってさ」

「それであたしの事褒めてるつもり……? で、肝心のルーネスはっ?」

「何か………放っておけない奴とか、云ってたよ」

「 ────それだけ? ううん、いいのよねそれで。けどこうなったら、サラ姫の襲来が怖いわね……!」

「でもそれって逆に盛り上がらない? 障害があればあるほど……とか」

「いいわ、それ!……って、何勝手にこっちが盛り上がってるのかしら。結局本人達次第なのにねっ」



 街灯が灯り始めた頃─────



「………捜したぞ、ルーネス」

「ぬあっ、か……勝手に捜しに来んなっての!」

「 ───レフィアに何を云われたか知らんが、あまり気に病むな。言葉は率直でも、レフィアなりに気を遣ってるんだろう」

「そんなんで気ぃ遣われても困るだろ……っ」

「何が困るんだ、云ってみろ」

「わっ、近寄るなって! それが困るんだよ……?!」

「フ……、まるで怯えた子猫だな」

「ああっ、頭に手ぇやるなよ! 子供扱い……ってぇか、そういうのやめてくれ!!」

 強く手を払いのけ、背を向くルーネス。

「 ───すまん、怒らせてしまったか」

「いいよ、別に………勝手にキレてんの、おれだし。大体オトコ同士でそういうの、アリなのかよ────」

「 ………、無くもない。兵の中にも、そういう者は居るぞ」

「うはっ、マジで?!」

「私も何人か、そちら側から誘われた事はあるが────」

「いいっ!? 行ったのか、そっち」

「………いや、一応全て断った」

「い、一応って何だ……っ」

「とにかく、そういう事もあるという事だ」

「 ────だったら、例えばもし、おれがイングズの事を………や、悪い! 違うんだ、やっぱそういうんじゃ……っ」


「悪くない」

「へ?」

「悪くはないさ。ただ、私は────」

「分かってるよ! おまえにはやっぱ、サラ姫だよ、な……。いいんだよ、それで………いいんだおれは、このままで ─────」


「 ルーネス 」

「………ん? って、何後ろ向いてしゃがんでんだよっ」

「背負ってやる。……ほら、おぶされ」

「ば、バカにしてんのか!? ガキ扱いもいい加減に……っ」

「なら、"姫様抱っこ"がいいか?」

「はあ?! 冗談云うなっ!」

「冗談のつもりはない。───夜になった事だ、人目を気にする必要もないだろう」

「だ、だからってなぁ……!」

「往生際の悪い奴だ」

「わっっと、おぉ?!」


 ルーネスはイングズに強制的に背負われる。 


「は、放せっ、下ろせバカ……!?」

「人の頭を叩くな、大人しくしてろ。───このまま宿に戻るのも何だ、もうひと巡りして戻るか」

「あ~もぉ、何だってんだよっ。こうなりゃおれだって………! ぎゅっ」

「むッ、首が苦しいだろう。……少し腕の力を緩めろ、バカ者」

「へん、やーだね! そっちが勝手におぶったんだろ。……ならおれはこれでもかってくらい後ろからぎゅっっとしてやるっ!」

「 ───まぁいい、気が済むまでそうしてろ」

「むぎゅ~~っっ。………やっぱキライだおれ、イングズの事」

「 ………、そうか」

「ずっとこのまま、時が止まればいいのに」

「 ────── 」

「ずっと一緒にいられる方法、ないのかな」

「あるさ、きっと。………今はただこの瞬間を、何より大切にしよう。この先もずっと、私達が私達でいられるように」




END 
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