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八条学園怪異譚

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第五十二話 商業科の屋上その十四

「あそこがね」
「マフィアですね、その」
「アメリカにも出ている」
「そうよ、もう何でもマフィアだから」
 シチリアの経済や社会に相当な影響を行使しているというのだ。
「根絶しようにも出来ていないのよ」
「ただ一人だけが抑えることが出来た」
 ここで日下部が二人にこう話す。
「まさにたった一人だけがだ」
「ムッソリーニね」
 ミレッラは日下部に応える形で歴史にその名を残す独裁者、ファシズムの創始者の名前を出した。教科書にも名前が出る程の有名人だ。
「あの人だけなのよね」
「そうだったな」
「そうです、ムッソリーニだけなんですよ」
 ミレッラは日下部が自分よりずっと年上なので彼には敬語を使うのだった、日本語で。
「あの人だけで」
「それを考えるとムッソリーニは凄かったな」
「イタリアの治安は実際によくなりましたから」
「そうした功績はあるな」
「はい、そうなんです」
 ミレッラも日下部のその言葉に頷く。
「何だかんだで凄かったんですよね」
「そうだな」
「そうです、確かに色々と問題はありましたけれど」
 独裁者だったとして悪名は高い、ヒトラーやスターリンと並び称されていることも事実だ。しかしそれでもなのだ。
「マフィアを抑えたんですよね」
「イタリアで唯一人だけ出来た」
「はい、本当に凄いです」
 無論カモラも抑えている、こうした功績があることも事実なのだ。
 そうした話をしてからだ、ミレッラは二人にこう尋ねた。
「それであんた達がここに来た理由だけれど」
「はい、泉を探しに来ました」
「ここにもあると聞いて」
「ああ、あそこね」
 ミレッラはその話を聞いて屋上の貯水タンクの方を見た、そこから一旦上にあがるようになっている。そこを見てだった。
 二人にだ、こう言うのだ。
「あそこのことよね」
「あっ、あそこですか」
「あそこが泉ですか」
「そうよ、若しかしたらね」
 ミレッラは二人にこう話す、それに。
 ついでにだ、校舎の傍にある空手部の道場も見て言うのだった。
「あとあそこもそう言われてるわね」
「空手部の道場もですか」
「あそこも」
「そうよ、あの道場もなのよ」
 泉ではないかというのだ、そして。
 その話をしてからだ、二人にあらためて言うのだった。
「それとあそこね」
「貯水タンクもですか」
「あそこもなんですね」
「そうよ、梯子で一段上に昇ってね」
 貯水タンクの上を指し示しての言葉だ。
「その上に行けばね」
「ひょっとしたらですか」
「泉かも知れないんですね」
「そうよ、本当にひょっとしたらね」
「それで空手部の道場もですか」
「あそこもなんですね」
「そうよ、じゃあいいわね」
 ミレッラは二人をその言葉で勧めた。
「貯水タンクの上にね」
「はい、じゃあ今から」
「今から行ってみます」
 二人もミレッラの言葉に頷く、そうしてだった。
 貯水タンクの方に向かう、そこから貯水タンクを昇る梯子の前に来た。愛実はここでふと聖花にこんなことを話した。
「ねえ、これから梯子昇るけれど」
「スカートの中ね」
「大丈夫よね」
「寒いから」
 だからだとだ、聖花は愛実に答える。 
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