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八条学園怪異譚

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第五十二話 商業科の屋上その十三

 それでだ、また聖花に尋ねたのだ。知識に関してはやはり聖花の方が多く持っているからである。
「何?それ。猛獣?」
「猛獣より悪質よ」
「じゃあヤクザ屋さんとかゴキブリとか」
「ヤクザ屋さんよ」
 それだとだ、聖花は愛実に答えた。
「イタリアのね」
「あれっ、イタリアの犯罪組織ってマフィアなんじゃ」
「マフィアもいるけれど」
 それでもだとだ、聖花は愛実にイタリアの犯罪組織事情について説明した。この辺りの知識も持っているのだ。
「カモラっていうのもいるのよ」
「どう違うの?カモラとマフィアって」
「やることは一緒よ」
 所謂裏社会での仕事だ、碌でもない仕事が多いのは言うまでもない。
「けれど地域が違うのよ」
「確かマフィアはシチリアよね」
 このことは愛実も知っている、マフィアといえばシチリアだということは映画でも他のジャンルでも有名だからだ。
「それじゃあカモラは」
「ナポリなの」
「地域によって呼び名が違うのね」
「ルーツも違うみたいだけれど」
 聖花は愛実にこのことも話した。
「日本のヤクザ屋さんはテキ屋さんとか賭場とか人足斡旋からはじまったじゃない」
「神戸でもそうだしね」
 愛実達のいる神戸は港町だ、だから愛実もこのことは知っているのだ。
「港の人足斡旋からね」
「そうでしょ、ヤクザ屋さんが出て来たでしょ」
「イタリアでもそうなの?」
「イタリアはテキ屋さんとかいないから、カジノはあるけれど」
 それでもだというのだ。
「非合法な賭博とかだけじゃなくて自警団とかね」
「自警団?漫画とかに出て来る」
「そう、それがマフィアとかカモラになっていったの」
「自警団は街の人達を助けてくれるんじゃ」
「それが変わるのよ、そこからお金とかが出て来てね」
 そして利権が出来る、それによってなのだ。
 自警団がマフィア化してくる、その他にもなのだ。
「他にもやっぱり人足斡旋とか」
「やっぱりそれからなのね」
「清掃業とか労働運動の仕切りとか」
「何かいいお仕事ばかりだと思うけれど」
「いいお仕事でもそこからお金が出て来たらね」
「それを仕切る人達がヤクザ屋さんになるのね」
「そうなの」
 まさにだ、そうなるというのだ。96
「それでイタリアはどうやら日本よりもね」
「ああ、日本のヤクザ屋さんなんか可愛いものよ」
 ミレッラもここで二人に話す。
「だって。街の裏方どころか表にも出て来て仕切るとかないでしょ」
「それは流石に」
「ないです」
 二人もそれはないと否定する。
「ヤクザ屋さんはヤクザ屋さんですから」
「その世界だけです」
「関わらないことが一番ですから」
「商店街でもヤクザ屋さんはお断りです」
「そうでしょ、けれどナポリやシチリアではね」
 イタリア南部では、というのだ。
「もう何から何まで出て来て利権貪って好きなことしてるから」
「酷いんですね」
「そうなってるんですね」
「特にシチリアがね」
 イタリア半島の南にある島だ、イタリア半島は長靴の形をしているのでその先の石であると言われることが多い。 
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