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鉄槌と清風

作者:deburu
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26部分:25:夜天の帰還


25:夜天の帰還

 白い光りと金の光り、その後ろには黒くよどんだ闇が大きくわだかまっている。 

 天に登った光りの中から現れたのは、金の巨剣を携えた少女…フェイト、それに気付いたのか、アルフが直ぐに向かって行く。

 白の光りから閃光…そして現れたの白のベルカ式魔法陣の上に白く光る魔力光…その4方に立つのは守護騎士達。

 「ヴィータちゃん?」

 「シグナム」

 驚いたように声が出る二人。

 「ザフィーラにシャマル」

 安心したように呼びかける良彦。
 そして

 「我ら、夜天の主の下に集いし騎士」

 静かにシグナムが口火を切る。
 続くのはシャマル

 「主ある限り、我らの魂尽きる事なし」

 「この身に命ある限り、我らは御身の下にあり」

 静かに力強くザフィーラ
 …そして

 「我らが主、夜天の王、八神はやての名の下に」

 ヴィータが主の名を告げる…魔力光が弾け、そこに居たのは二本の足でたつはやて、黒のワンピースに黒の指貫手袋、黒い靴、十字架に輪を組み合わせた大きな杖を持ち、傍らには夜天の魔導書が浮かんでいる。
 高らかに杖を掲げ、唱えるは新たな書の名前…

 「夜天の光よ、我が手に集え。祝福の風、リインフォース、セットアップ!」

 茶色だった髪が白にそまり、瞳は青く輝く…先ほどの格好に、腰から金色の腰飾りと黒いスカート、その後白の長袖ジャケットが展開し、頭には大きな白い帽子、背中には6枚の黒い翼…それがはやての騎士甲冑。
 そして4人の守護騎士の真ん中に降り立つ…

 「すみません」

 「あのはやてちゃん、私達」

 謝るシグナムに続き、声を掛けるシャマル

 「ええよ、みんなわかってる、リインフォースが教えてくれた」

 二人の声を止め…

 「そやけど、細かい事は後や、いまは…おかえり、みんな」

 静かに告げる。
 その言葉に耐え切れないようにはやてに抱きつくヴィータ、涙を流し、はやての名を強く叫ぶ。
 ゆっくりと近づく、良彦、なのは、フェイト。

 「おそようさん、ねぼすけ、ようやく起きたか?」

 「そやね、誰かさんたちが普通に寝かさへんから起きてもうた…ありがとな」

 近づきお互いの掌をパンっと打ち合わせる良彦とはやて。

 「よかったー、おかえりはやてちゃん、皆」

 「うん…おかえり、はやて、シグナム」

 嬉しそうに微笑むなのはとフェイト。

 「ほら、おちつけヴィータ」

 はやてに抱きついたままのヴィータの頭をぽんぽんと叩き。

 「それじゃまるで、子供みてーだぞ?」

 にやにやしながら、からかう様に声を掛ける。

 「なっ、誰が子供だ、あたしは大人だ!」

 「は、だったら涙と鼻水ふいとけ、後目真っ赤だ」

 「うっせ、嬉しいときはいいんだよ!」

 ぽいっと投げられるハンカチで顔を拭くヴィータ、苦笑するはやてと他の守護騎士、なのはとフェイト、アルフ、ユーノは一寸驚いている。
 それを見たはやてが、軽く説明。

 「あのふたりは、何時もあんなかんじや、仲ええよなぁ」

 「「仲良くねぇ!」」

 「ほらな?」

 同時に全く同じ言葉を発し、それを苦笑でながされ、なのはたちには頷きで返されて、二人とも少し赤くなってる。
 其処にもう一人空から近づく、黒いコート状のバリアジャケットに身を包んだクロノが近づく。

 「和んでいる所すまないが、時空管理局執務官クロノ・ハラオウンだ…あそこの防衛プログラムをどうにかしないといけない、今の所、此方が考えてるのは二つ」

 すっと指を二本立て

 「一つ、強力な凍結魔法で凍結する」

 「それは、無理だと思います、魔力がある限り無限に再生しますし」

 「再生が始まれば周りを取り込んで、どんどん増えるしね」

 シャマルとユーノがそれを否定する。
 クロノは軽く、頷き

 「二つ、アースラのアルカンシェルで消滅させる」

 「それもダメだろ、こんな所でうったらはやての家まで消滅しちまうよ」

 「アルカンシェルってそんな凄いの?」

 ヴィータが両手で大きくばってんを掲げる…となりでは、なのはが疑問をあげる。

 「撃てば半径百数十キロを反応消滅させる魔導砲っていえばわかるかな?」

 「消滅させたら、その周りもかなり影響があるのか?」

 「そうだね、影響は確実に出るよ」

 ユーノの応えに更に追加して問う良彦。

 「わたしも反対、それ危ないよ」

 「うん、私も反対」

 なのはとフェイトも反対し

 「はやてちゃんの家がなくなるのは困るわ」

 ピントがずれてるシャマル。

 「そういう事じゃないだろう、でもそれならどうする?」

 『はいはーい、あんまり時間無いから会議は早く終わらせてね』

 苦笑するクロノに、タイムリミットが迫る事を教えるエイミィ。
 空の上で胡坐をかき、両腕を組んだアルフが、いらいらした感じで

 「あー、めんどいね、ずばっとぶっ飛ばしちゃえばいいんじゃないかい?」

 「いや、それじゃ再生しちゃうから」

 暴言を吐いてユーノになだめられる。

 「凍らしても倒しても再生、アルカンシェルは効果範囲が広すぎる…てか?」

 どうしたもんか、と考え込む良彦。

 「ずばっと、ぶっ飛ばす…?」

 「何度でも再生する…」

 「アルカンシェルは、範囲問題で撃てへん…」

 なのは、フェイト、はやてがつぶやき、お互いの顔をあわせ何かに気付いたように顔を上げる。

 「ねぇ、クロノ君、アルカンシェルって何処でも撃てるの?」

 「何処でも、とは?」

 「たとえば、いまアースラがいる場所」

 「宇宙とかやな」

 なのはが確認する様にクロノへ問いかけ、フェイトとはやてが追随する。

 「何を考えてるんだ?」

 『撃てますよー、宇宙だろうと海中だろうと、何処でも』

 困惑するクロノの変わりに、エイミィが応える。

 「まさか…君達」

 「うん、防衛プログラムを倒して」

 「コアを捕らえて、アースラの前に転送」

 「アルカンシェルで、消滅っちゅーことやな」

 何かに気付いたクロノに、なのは、フェイト、はやての順に答え。

 「はっ、それは判りやすくて良いな、転送はユーノ、アルフ、シャマルの3人でならいけるだろ?」

 「そうだね、コアだけ捕らえられれば、いけると思う」

 「あぁ、そのくらい任せときなって」

 「コアの確保も私ができますね」

 良彦の言葉に、ユーノ、アルフ、シャマルが答え。
 考え込んでいた、クロノが顔を上げる。

 「個人の能力頼りで、大きな賭けだけど、成功すればそれが一番か」

 『とんでもない事を考える子達ね、でも…それでいきましょう、エイミィ時間は?』

 『後2分くらいです、艦長』

 『そう、それじゃ、皆…こっちはアルカンシェルを準備してまってるから、ずばっとやっちゃいなさい』

 リンディが、それに許可を出し、皆は自分のデバイスの確認などを始める。
 良彦も使い切った4発のカートリッジを取り出し、込めなおす。

 「うし…とりあえず、いけそうだ」

 「て、良彦君、なのはちゃん、フェイトちゃん、シャマルお願いや」

 「はい、皆さんの治療ですね…クラールヴィント本領発揮よ」

 『了解』

 「静かなる風よ、癒しの恵みを運んで」

 紡がれる言葉と共に、柔らかい風が3人を包み、怪我やバリアジャケットのほつれなどまで癒し、直す。
 なのはとフェイトが驚いているなか、良彦は安らいだ表情で風に身を任せている…リトの記憶のなか、何度シャマルの癒しに助けられただろうと、多少内心苦笑しつつ。

 「わ、凄い、ありがとうシャマルさん」

 「湖の騎士シャマルと、風のリングクラールヴィント…癒しと補助が本領です」

 なのはのお礼に嬉しそうなシャマル。
 その間小さい声で何処かと通信していたのか、会話を終えたらしく、一枚のカードを中で回転させる。

 『スタートアップ』

 声と共に青い光りがカードを包み一本の杖に姿を変え、それを手におさめるクロノ。

 「だから、今を戦って未来を変えます」

 決意の表情と共に言い放つ。

 「防衛プログラムのバリアは物理と魔法の複合四層式、それを壊して」

 「せーので全力砲撃!」

 「コアを強制転送で宇宙へ」

 はやて、なのは、フェイトも決意を固めるように言って。

 「なら、さっさと終わらせるか、折角のクリスマス・イブだしな」

 「だな、ケーキくわねーとならねぇ」

 「いや、別に絶対じゃなくても良いんだが」

 「はん、特別な日にケーキは常識だろ、馬鹿じゃねーのか良彦」

 「そこまでいうなら、一発でバリア壊せよ、そしたらケーキ奢ってやらぁ」

 「よし、言いやがったな、見とけよ」

 夏休みの頃のように言い合う、良彦とヴィータ、こつんッと拳同士を合わせ、お互いの指示位置に飛んでいく。

 防衛プログラム暴走まで後少し、プログラムを打ち倒し平和を勝ち取る為に、皆が全力を尽くす。
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フェイト、はやて、守護騎士復帰…久しぶりに良彦とヴィータの掛け合いをかけました。

次回は対防衛プログラム戦の予定です。
 
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