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偽典 ドラゴンクエストⅢ 勇者ではないアーベルの冒険

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第7章 終わりの始まり
  第陸話 勇者の帰還

大魔王ゾーマが、倒れた姿のまま俺に話しかけた。
「アーベルよ、よくぞわしを倒した」
だが、その表情に悔しさは少しも現れていない。

まさか、何か隠し玉でも持っているのか!
念のため、祈りの指輪を強く念じて、魔力を回復する。

「だが、光ある限り、闇も、また、ある・・・・・・」
俺の予想に反して、ゾーマは俺の知っている台詞を続けた。
これは、予想可能な範囲の行動である。

「わしには、見えるのだ。
ふたたび何者かが、闇から現れよう・・・・・・」
俺には見えないが、知っています。
「だが、そのときはおまえは年老いていきてはいまい。
わははは・・・・・・っ。ぐふっ!」
そうだな。
確かに生きてはいないが、勇者ロトの子孫がなんとかしてくれるのじゃないかな。

ゾーマは自分の最後の言葉と一緒に、全身が炎につつまれる。

「!」
「アーベル!」
セレンはその異様な状況に驚き、タンタルは視線を俺に向けて注意を促す。
ゾーマを燃やし尽くした炎は、周囲に飛び火している。
それに合わせるかのように、城が揺れ、天井から岩が落ちてくる。
おそらく、大魔王ゾーマが滅んだことで、その闇の力で産み出された城が維持できなくなったのだろう。

「さあ、帰るぞ」
俺は、無駄になると思いながらも、帰還呪文リレミトを唱えた。
だが、いや予想どおり、呪文の効果は現れなかった。

「呪文は使用できないのなら、歩いて帰るか。
頭上からの落下物には気をつけて」
俺は、全員に頭上への注意を喚起させる。
ルーラで洞窟の天井に頭をぶつけても、HPが減少しないことを考えると、身体的には問題ないと思われる。
だが、これからのことを考えると、念のために頭上に意識を向けた方が良いだろう。

揺れ続ける広間の中で、俺たちは慎重に歩いてゆく。
「!」
「床が!」
頑丈そうな床が、突如崩れ、暗闇に飲み込まれてゆく。
俺は、反射的にトベルーラを唱えて回避しようとしたが、我慢して落ちることに身をまかせた。



「・・・っ。ここは?」
俺が目覚めると、洞窟の床で横たわっていることを確認した。
「悪魔の爪か」
俺は、そばの床にある亀裂をながめながらつぶやいた。

ラダトームの住民の話では、すべてのものを拒むといわれ、ゲームでは一度落ちたらその場に戻されるという事だった。
ひょっとしたら、そこに本当の闇の力の根元が存在するのかもしれない。
それを破壊しない限り、このアレフガルドに平和は訪れないかもしれない。
とはいえ、進入出来ない以上どうにもできない。
それに、今の俺には急いでラダトームに行く必要があった。


そう、ここはラダドーム北の洞窟だったな。
たしか、魔法が封じられ、帰還呪文であるリレミトが使用できなかったはず。
それは、大魔王が倒されたあとでも続いているようだった。
「アーベル、無事だった?」
テルルが心配そうな顔でのぞき込んでいる。
「ああ、ほかのみんなは?」
「無事だ」
タンタルが自信をもった表情で返事をした。
そばにいる、セレンもゆっくりとうなずいている。

「そうか、なら急ごう。
呪文は使えないので、歩きにはなるが。
まあ、大丈夫」
俺は、仲間を見渡して。
「魔物の気配がない。
堂々と帰ろう」


かつての記憶を頼りに、洞窟を歩いてゆく。
ほどなくして、地上にたどり着いた。


地上にたどり着いたとき、空の上のほうで、何かか閉じたような音がした。
「光か・・・・・・」
セレンの言葉に全員が反応する。
大魔王の力で闇の世界に包まれたアレフガルドに朝が訪れた。
周囲を見渡しても、モンスターの気配を感じることがない。
ようやく、大魔王を倒した実感を得られた。

しかし、まだ終わっていない。
俺は、ラダトームの城へ向かうため、ルーラを唱えた。



ラダトームの街は、活気に満ちていた。
初めて訪れたときのような、絶望と憂いに満ちた表情はどこにもなかった。
さっそく、入り口の住民から声がかかる。
「おお!あなたがたはっ!
すでにここ、ラダトームまでも知らせは届いています!」
男は、喜びを爆発させていた。
大魔王を倒したことなど、現場にいなければわからないはずなのに、どのような知らせがあったのだろうか考えた。
どうやら、ラダトーム南の方にいた兵士が、対岸にあるゾーマの城が音を立てて崩れたことで、大魔王が倒されたことを知ったようだ。

男は、そのようなことを早口でまくしたてていたが、
「おや?勇者様がいらっしゃらないようですが・・・・・・?」
首をかしげながら質問する。

勇者は、三姉妹と一緒に冒険を続けているところだろう。
バラモスを倒してもおかしくないころだ。
だから、ここには存在しない。
「はい」
俺は、簡潔に返事する。

「なんと!勇者様抜きで大魔王を倒されたのですか!
それはすごい!」
男は非常に驚いた様子で、俺たちを眺めていた。


城に向かって歩いていると、今度は若い女性に声をかけられる。
どうして、俺たちが倒したことがわかったか気になったが、大魔王を倒すために行動していたのが、俺たちとオルテガしかいなかったのだろう。
住民はそのことを覚えていたようだ。

女性は、俺たちの周辺を眺めると残念そうな表情で質問する。
「で、勇者様は?
オルテガ様はどこ?」
首を左右に振る。
そうか、勇者がアレフガルドにいない今、勇者といえばオルテガになるのか。
「えーいないの?なんで、なんでぇ~?」
女性は、不満を俺たちにぶつける。

残念だったな、俺たちが大魔王を先に倒したのだ。
平和になったのだ、アレフガルド中を探し回れば、逢えると思うよ。



アレフガルドの城内へと急いだ。
テルルは、俺がなぜ急ぐのかわからない様子だった。
俺は、当初の目的である、父親が大魔王に殺されるのを回避することは達成できた。
しかしながら、その次の目的が終わっていない。
一応、手を打っているが、この目で確認するまでは安心できないでいた。


「お待ちしておりました。
大魔王ゾーマを倒されたと聞き我が王もお喜びですよ」
城内では、老人から声がかけられた。
「じゃが、ふたたびこのようなことがおこらぬともかぎらん。
そなたらの力と技を後の世に伝えよ!」
老人の不安は的中する。
それが、ドラクエ1の話である。
「さすれば、世界が再び闇に覆われたとき、立ち上がるものがあらわれようぞ!」
だが、イオナズンや魔法の玉とかは、封印した方が良いだろう。
人間同士が争った場合に、問題がでるだろうから。


そのようなことを考えながら、階段を登る。
そこは、王の間であり奥には玉座があり、奥にラルス1世が待ちかまえていた。

俺たちはゆっくりと歩いてゆく。

途中、で大臣の声が聞こえる。
「さすが、勇者オルテガが仲間と認めたものか」
俺たちは、勇者オルテガとの面識はなかった。
だが、上の世界から来たことから、俺たちのことをオルテガの仲間と勘違いしたのだろう。
俺たちは日焼けしていることから、上の世界から来た人間だとすぐにわかる。
そのようにして、生まれた勘違いだろう。

「勇者オルテガ様ばんざ、あれ、オルテガ様は?」
兵士の何人かは、オルテガが居ないことに首を傾げ、ひそひそ話をしている。
やはり、ラダトームでは勇者イコール、オルテガなのだろう。
オルテガはここでも敬意を払われている。
ということは、ここで何かしたのだろうか?
とはいえ、考えても答えはでないので、目的を果たすために王の前で片膝をつく。

別に、王に従うわけではないが、下手にいざこざを起こすわけにはいかない。
テルル達も俺の作法に従った。

「静まれ、皆のもの」
王は初めてあったが、低く渋い声で注目を集める。
「オルテガの仲間たちよ!
知らせを受け、そなたらの帰りを待ちかまえていたのじゃ」
やはり、俺たちは勇者オルテガの仲間と思われているようだ。
ゲームと話が違うが、特に問題はないので無視する。
「聞けば、そなたらのみで大魔王ゾーマを倒したというではないか」

どうやら、オルテガと一緒では無いことまで知っているようだ。
であれば、オルテガがどこに居るのか把握しているのだろう。
彼とは一度は話をしてみたかったところだった。
後で教えてもらおう。

「さすが、勇者オルテガの仲間達じゃ。
その力は誰もが認めるところじゃろう。
この国に朝が来たのも、すべて、オルテガとそなたらの働きがあったなればこそ!
心から礼を言わせてもらいたい。
ありがとう!」
王は、俺たちに礼をいった。
それにしてもと思う、勇者オルテガは何をしたのだろうか?
アレフガルドの各地を回っていたことは知っているが、勇者と認められるような何かをしなければこれほど王に信頼されることはないはずだ。
後で、誰かに確認しなければなるまい。

「・・・・・・して、オルテガは今どこに?
彼にはぜひ、受け取ってもらいたいものがあるのじゃが・・・・・・」
王は、当然オルテガも一緒に登城しているものだと思っていたらしい。
大臣は困惑し、兵士達は周囲を見渡していた。

まずい。
予定と違うではないか。
俺は一瞬冷や汗をかいた。

と、俺の周囲が一瞬輝いた。
俺たちは驚き、光の輝きから遠ざかる。

『お待ちなさい・・・・
勇者はここに居ますよ』
空のほうから、聞いたことのある声が聞こえる。
「精霊ルビス・・・・・・」

俺が呟いているうちに、光は大きくなり、やがて虹色の円柱状に変化する。
虹色の円柱状の光の中から、勇者が現れた。
勇者は、最後に見た時と変わらない様子で、周囲を見回していた。
その表情は、困惑の様子が見えるが、生死の危機に瀕した表情ではなかった。

「おお、オルテガ!?
……いや、だれじゃ?」
王は、その姿を見て一瞬オルテガが帰還したものだとおもったが、すぐに考えを改める。
周囲の大臣や兵士達も同様に困惑していた。
無理もないだろう。
彼らは、勇者オルテガが登場することを信じていたのに、若い男が突然登場したのだから。

俺は、勇者の姿を確認し、安心する。
三姉妹にひどいことをされていないか心配していたが、外見をみる限り問題なさそうだった。
あとで、確認する必要があるが。

「大丈夫か?」
俺は、勇者に優しく声をかける。
急に知らない場所に来たのなら、不安になってるだろう。
そう思って声をかけたのだが、

「!」
勇者は俺の姿に大いに驚き、そして俺に抱きついてきた。
つらいことがあったのだろう。

俺は、一回り背の低い勇者の頭をなでながら、王に説明をする。
「彼は、勇者オルテガの息子でサルファと言います」
母親が勇敢な男になって欲しいと、セレンの父親と同じ名前を彼につけた。
そのせいで、セレンの父親のサルファは冒険者をやめることになった。
もっとも、年齢的に引退の時期を過ぎていたので、問題にはならなかったが。

「彼は、父オルテガの意志を次ぐために、勇者として修行し、大魔王を倒すべく行動をしていました」
勇者の視線から、俺の説明に何か言いたかったようだが、しゃべれないからか、黙って聞いていた。


王は、しばらく考えていたが、
「なんと不思議な・・・・・・
いや、よくぞ来てくれた勇者よ。
今回のそなたと、そなたの仲間達の働き、本当に感謝している!」
王は、大きな声で宣言した。
「今一度言おう。
すべてはそなた達のおかげ。
そなたこそ、真の勇者じゃ。
そなたにこの国に伝わる真の勇者の証、ロトの称号を与えよう!
勇者ロトよ!
そなたのことはロトの伝説として永遠に語りつがれてゆくであろう!」

城内は一瞬静まりかえっていたが、ファンファーレが鳴り、歓声が城内を包み込んだ。




かくしてロトの称号を受けた勇者は、ここアレフガルドの英雄となる!
だが、祝いの宴が終わった時、勇者達の姿はもはやどこにも無かったという。

そして、勇者が残していった武器防具は、ロトの剣ロトの鎧として、聖なる守りはロトのしるしとして後の世に伝えられてたという。



そして伝説ははじまった・・・・・・!



TO BE CONTINUED TO
DRAGON QUEST Ⅰ 
 

 
後書き
次回、第8章そして、伝説へ・・・に続きます。 
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