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『曹徳の奮闘記』改訂版

作者:零戦
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第六話







「………なんだかなぁ……」

「どうしたんだ長門?」

 不審に思った俺に焔耶が声をかけてくる。

「いや、腹減ってきたなぁと思ってきてな」

「仕方ないだろう。メシを食べる暇なんて無かったからな」

 孫堅軍近くの林で孫堅軍に見つからないようにしながら隠れている。

「当分動きが無いなら小川で釣りをするんだが……」

 動かないでほしいけどなぁ。

 まぁ孫堅だから無理だろうな。なんせ孫策の親だからな。

「ん?」

 何か孫堅軍が騒がしいな。

「私に続けェッ!!」

 あ、単騎で誰かが山の方に向かったな。

「多分、あれは孫堅だろうな」

「……普通、大将は単騎で飛び出すか?」

 まぁ孫策の親だからな。

「とにかく追うとしようか焔耶」

「あぁ」

 俺と焔耶は孫堅を追った。





「ちぃッ!!罠だったわねッ!!」

 私はそう叫びながら黄祖の伏兵を斬り倒していく。

「もらったァッ!! 死ね孫堅ッ!!」

「なッ!?」

 伏兵に隠れていた黄祖が私に斬り掛かる。

 避けられないと確信した私は咄嗟に左腕で頭を庇う。

ザシュッ!!

「グアァッ!!」

 ……痛い……眼を開けると、私の左腕は斬られていて血が噴き出し、左腕は地面に落ちていた。

 こんな奴に私の左腕を斬られるなんて……。

「ゲヒャヒャヒャッ!! どうやらこれで終わりだな孫堅ッ!! 死ねェッ!!」

 高笑いをしている黄祖が私に斬り掛かろうとした。

 ……ゴメン祭。後は貴女に任せるわ……。

「そうはさせるかよッ!!」

ザシュッ!!

「ゲパァッ!!」

 諦めていたその時、黄祖の首が吹き飛んだ。

 黄祖を斬ったのは見慣れない男女ふたりだった。




「ふぅ、間に合ったか」

 まだ死んでいなかった孫堅を見て安堵する。

「焔耶ッ!! 思いっきり暴れろッ!!」

「初めからそのつもりだッ!! おぉりゃあァァァッ!!」

 焔耶が伏兵を散らしていく。

「大丈夫か孫堅?」

「あ、あぁ。お前達は?」

「なに、ただの旅人や」

 俺は切断された左腕に包帯を巻く。

「ウッ!!」

「少し我慢してな。止血しとかないと大量出血で死ぬからな」

 巻いたが、切断された左腕(二の腕辺り)から血が滲み出る。

「済まない……」

「気にするな。よし、これで左腕を斬られた以外は大丈夫やな」

「………左腕は仕方ない。戦場での傷なんだ」

 孫堅が笑う。

 てか本当に孫策を大人にしたバージョンだ な。

「堅殿ォーーーッ!!」

「あ、祭の声だ……」

 ……さて、俺達はそろそろずらかるか。

「焔耶。そっちは?」

「あらかた片付けたぞ」

「了解。それじゃあな孫堅」

 俺と焔耶は馬に乗る。

「あ、待てッ!! お前の名前は何だ?」

「姓は王。名は双や」

「……王双。助けてくれてありがとう」

 孫堅は俺に頭を下げた。

「なに、気にするな。んじゃぁな」

 俺と焔耶はそのまま立ち去った。




「堅殿ッ!!…無事であったか……と、それ は……」

「祭、済まなかったな。左腕を黄祖に取られ た」

「いや、堅殿が生きているだけでもよかった」

「………王双……」

 私は二人が立ち去った後を見ながら祭達と陣営に戻った。





「さぁて、次は何処に行こか?」

「私は何処でもいいぞ」

 馬に乗りながら考える。

 ………ん? 確か……。

「確か南陽大守は袁術だったよな?」

「あぁそうだが……」

「なら南陽に行って、袁術の元で客将でもするか」

「何故だ?」

「ん? だって袁家だと給金は高いだろ?」

「……納得した……」

 焔耶は苦笑した。

 そして俺達は南陽へ向かった。





「あれが南陽か……」

 あれから一週間の時が流れたけど、何とか路銀が底をつく前に到着出来たな。

 ………ん?

「何だあれは?」

「どれだ?」

 俺達から五百メートル程離れたところに百名程度の軍勢と少女と女性がいた。

「う~ん………あれはッ!?」

「お、おい長門ッ!!」

 俺は少女と女性を漸く思い出して馬を軍勢に走らせた。





―――??SIDE―――

 ……これは失敗しましたね。まさか文官の韓胤までもが裏切ってたなんて……。こんな事になるなら素直に零さんの言うことを聞いとけばよかったですね。

「さぁどうしますか張勲殿? 我等に従うと宣言すれば愛しい袁術様を返しますよ。くっくっく………」

 武将の雷薄が私に尋ねてくる。

「……………」

「おやおやだんまりですか? なら、袁術様は少し痛い目に会わないといけないですね」

 ニヤニヤしながら同じく武将の楊奉が美羽様に突き付けている剣を喉元に突き付ける。

 少し刃が喉に当たったのか血がツゥっと流れ出ている。

「な、七乃ぉ……」

「御嬢様ッ!!」

 くッ……やはりここは従うしかないのです ね。

 私はそう思い、構えていた剣を地面に突き刺そうとした時、御嬢様に剣を突き付けていた楊奉の首が飛んだ。

 そしていつの間にか妙な刀剣を持った私くらいの歳の男がいた。






―――張勲SIDE終了―――







 
 

 
後書き
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