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魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~

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Ep12ジュエルシード海上争奪戦~Final match~

†††Sideルシリオン⇒シャルロッテ†††

私はなのは達を部屋に残したまま、1人でブリッジに来ている。そうしたらエイミィに声を掛けられて、一緒にルシルやフェイトのデータを見ることに。

「フェイト・テスタロッサ。かつての大魔導師プレシア・テスタロッサと同じファミリーネームだ」

私の背後に来ていたクロノがそう説明した。クロノの話によると、一昔前に魔法実験の最中に次元干渉事故を起こし、その責任を負わされて追放されたという、結構な高位の魔導師だったらしい。

「じゃあ、このフェイトちゃんって子、そのプレシアって科学者の関係者か何かかな?」

「それについては判らない。本名を名乗っていない可能性もあるからな。ただ、偽名にわざわざテスタロッサとファミリーネームまで名乗る理由もないはずだ。プレシア女史と関わりがあると思ってもいいかもしれない」

私は2人の会話を黙って聞いていた。う~ん、それにしてもジャマー結界か。本当に便利なものね、魔法っていうのは。魔法に興味を持ち始めた。あとでユーノにご教授願おうかと考え、2人の邪魔にならないように退出しようとしたら、リンディ艦長が私を手招きしているのに気付いた。何かしら?と思い、艦長席にまで向かう。

「今日もお疲れ様、シャルロッテさん。戻ってから何も口にしていないでしょ? だから一緒にお茶をしようと思ったのよ」

いつもリンディ艦長が愛飲している変茶を勧められてしまったわ。ま、まずい。何とか理由をつけて逃げなければ・・・悶死必至。必死に逃げる口実を考える。あんな激甘そうなものを飲むと、いろいろとまずい気がするわ。体重とか体重とか体重とか。あと糖尿病とか。肉体を持ってしまったから、そういう健康にも気を使わないといけなくなった。それが嬉しくもあり、面倒でもあり。あぁ、でも今は厄介な種だわ(涙)

「え~と、お、お気持ちは嬉しいのですが、その~・・・」

俯きながらそう口にし、ゆっくりと顔を上げてリンディ艦長の顔を見る。

(や、やめて、そんな顔をしないで。罪悪感でいっぱいになりそう)

残念そうな顔をしているリンディ艦長を見て、心が折れそうになる。この世界に来るまではこんな感情は必要なく、消していたものだけど。くっ、諦めて飲むしかない、のかしら? いえ、結構美味しいのかも・・・? 覚悟を決めた私は「い、いただきます」笑顔で湯飲みを受け取る。

「ええ、どうぞ」

ごくりと喉に通す。飲んだ。飲んでしまった。

(甘っ!! 甘い!!ていうか甘い!! 違う! 甘いを通り越して苦い!? な、何でこんなものを飲んで平気な顔をしているの!?)
 
飲んでまず頭に浮かんだのは、甘さなんて優しいものではなく、歯から頭へ突き抜ける苦味。そしてリンディ艦長の味覚の異常性だった。

(やばい、なんか目の前が暗くなってきたような・・・?)

意識がブラックアウトしそうなところで鳴り響く警報。

「な、なんてことをしてるのあの子たち!?」

「何だあれは!?」

エイミィとクロノが叫んだ。何とか意識を繋ぎ止め、私とリンディ艦長もすぐさまモニターへと目を向ける。

(うそ! ルシルが異界英雄(エインへリヤル)を使っている!?)

12枚の剣の翼アンピエルを背に生やしたルシルの前方に浮かぶ金色の光の塊を見て、私は軽く絶望した。アレは確か、雷光の魔蟲ヴォルティエ。あの馬鹿ルシル。魔族の“エインヘリヤル”を召喚って本当に馬鹿じゃないの!

『なのは、ユーノ。急いでブリッジに来て。ゼフィとフェイト達が動いたわ』

『わ、判った!』

『すぐに行くよ!』

なのはとユーノに念話を送り、あの子たちを呼んだ。

「エイミィ。今のゼフィの雷撃の解析を」

「りょ、了解!」

キーを打つ音以外に会話はなく、アースラのブリッジは静まり返る。原因はもちろんルシルの放った雷撃。実際にアレを放ったのは先程消えた魔族の“エインヘリヤル”、黄金の閃光ヴォルティエだ。
ルシルに必要なのは召喚時の魔力のみ。あの雷撃に使用される魔力は、ルシルの精神世界で展開されている創世結界から現実へと召喚されたあの“エインヘリヤル”の魔蟲が受け持つことになっている。ううん、そんなことどうでもいい。問題は制限されている状態で、あんなのを顕現させられること。

「う、うそ、さっきの雷撃・・・SSランクに匹敵するよ」

エイミィが信じられないと言う風に声に出す。私だって正直信じたくないわ。ただでさえルシルひとりに苦労させられているというのに、そこに“エインヘリヤル”が加わるなんて。

「おい、シャル。君は本当に彼に勝てるのか?」

クロノが青い顔をして聞いてきた。さっきまでなら勝てると思っていたわ。だけど、ルシルが創世結界“ヴァルハラ”を使えると知った以上、勝率は確実に5割を切った。

「接近戦に持ち込めば3~5割、それ以外は0よ。それに、彼の魔術の出初めを叩くしかないという条件付き」

正直に話す。あれはもう私では勝てない。唯一勝てる方法は1つ。私の最強の魔術、真技を使うことだ。
接近戦に持ち込んで真技を使えば、今のルシルに防げる術はないはず。何せルシルが最強の一角とされていた大戦の最中の決闘で、防御全力状態だったルシルの利き腕を4分割に切り落としたこともあったのだから。
今のルシルには当時のような魔力はないも無いし防ぐ手立てもない。ただ問題なのは、真技が必殺の技ということだ。非殺傷設定なんて使えない私は、確実にルシルをバラバラに斬り殺すことになる。

「接近戦限定か。それでも3~5割の確立で勝てるというのはすごいな」

「その代わり、ゼフィが死ぬことになるけどね」

「・・・なに!? それはどういうことだ!?」

ゼフィが死ぬ発言でクロノが叫び、ブリッジが嫌な空気に包まれる。いつの間にか来ていたなのはとユーノも、それを聞いて青い顔をしている。

「私がゼフィに勝つ方法は1つ、私の最強の魔術で彼を殺すこと」

「だ、ダメだよ! シャルちゃん! ゼフィ君をこ、殺すだなんて!」

「さすがにそれは認められないわ、シャルロッテさん」

なのはとリンディ艦長からお叱りの言葉が飛び出す。もちろん「・・・私だって嫌よ、そんなことしたくない」と言う。ルシルを殺したくない。彼を今後のために味方に引き込みたいのよ。葛藤する私の様子を見て再び静寂に包まれるブリッジ。

「はぁ。まずはあの子たちを止めるのが先決だな。このままじゃ海中のジュエルシードを全て取られる」

クロノがそう言い、転送装置へと向かう。それを見たなのはが「わ、私も行きますっ!」と言いだす。

「危険だぞ。あの竜巻もそうだが、ゼフィは少なくともSSランクに匹敵する魔力の持ち主だ。何をしてくるのか見当がつかない」

クロノは怒鳴るようなことをせず、真剣になのはを見て忠告した。なのはも覚悟を決めているようで、これまた真剣な顔で返答する。

「判ってるよ。でもいつかお互いが持ってるジュエルシードを懸けて戦うことになると思う。だから、今でも後でも同じ結果なら、今行っておきたいの」

クロノは少し考え、「艦長・・・」とリンディ艦長に出撃の許可を申請しようとすると、「無茶だけはしないようにね、クロノ、なのはさん」と即許可を出した。その時のリンディ艦長の表情は上官ではなく母親の顔だった。クロノが決意の首肯。
そして「はい、いってきます。シャル、ユーノ、来てくれ」と言ってきた。さぁ、どうしようかしら。私は飛びたくない。というか飛べないのよね。ここはハッキリ言う方がいいでしょうね。たとえ笑われたとしても。

「ごめん、私・・・飛べないのよ」

「「「え?」」」

なのは達が目を点にしながら私を見る。だから知られたくなかったのに(涙)。ユーノが「えっとつまり、飛行の魔術は覚えていないの?」と聞いてくる。

「飛翔術式は習得しているけど、上手く飛べないというか・・・」

「それなら大丈夫だよ、シャルちゃん。私が手を貸すから」

なのはがそう言いながら私の手を引っ張り、転送装置へと入った。手を引かれ、「ちょっ、まっ――」心の準備もまだだというのに、私は強制的に転送させられた。

†††Sideシャルロッテ⇒ルシリオン†††

来た、管理局だ。予想より少し遅れていたが、その方が都合がいい。ふと視界に入る真紅。あれは「シャル・・・?」の姿を見た。こちらへ向かって来ていたのは、なのは、ユーノ、クロノ、そして真紅に輝く片翼アインス・ルビーン・フリューゲルを羽ばたかせ、空を翔るシャルの姿だった。間違いない。最悪なことにシャルは飛翔術式を克服してしまったようだ。

『フェイト、アルフ、管理局だ。相手は俺がするから、封印作業は続行してくれ』

念話で管理局の来訪を告げ、気にせずに作業を続けるよう指示する。

(しかし予定外だ。いつの間にシャルは飛翔術式を克服したんだ?)

陸戦限定の騎士だったシャルが、俺の領域の空戦にまで入ってきたとなると、戦術を全て変更しなければならない。頭を悩ませているところに、『判った、気を付けてね』というフェイトの返事だけ。アルフは残り1つの竜巻と格闘している。本当なら全ての竜巻を片付けたかったが、時間が掛かり過ぎた。

『すまないアルフ、任せた』

『あいよ、ルシルもちゃんと仕事しなよ』

『了解だ』

しかしどうしたものか? 現状魔力も接近戦技術もシャルが上で、シャルが苦手な遠距離攻撃はなのはとクロノ。俺の現在の最大魔力はAA+。2人の砲撃を防ぎきる術は複製の力のみ。“エインヘリヤル”を召喚するにはもう魔力が足りない。だが2人にばかり気をとられると、シャルが術の発動を妨害してくる。

「まずい、これは負ける・・・かもな」

負ける要素しか見つけられない俺はひとり呟いた。ただ願わくば、シャルの空戦スキルが大したものではないように。

†††Sideルシリオン⇒なのは†††

私はシャルちゃんを無理やり転送させて、空へと飛び出した。私は変身を終えてシャルちゃんの方を見て「すごい・・・」シャルちゃんの姿に目を奪われた。

「綺麗!」

――真紅の片翼(アインス・ルビーン・フリューゲル)――

シャルちゃんの背中には、片方だけど綺麗な真紅の、天使のような翼が生えていた。シャルちゃんがキッと私を睨みつけて、「なのはぁぁぁっ!? 急に何するの!? 死ぬかと思ったじゃない!」って怒鳴った。あまりの怒鳴り声に少し怯む私だけど、「え、えっと、私が手伝うから大丈夫だと」反論しちゃいます。

「それにシャルちゃん、ちゃんと飛べてるよ!」

「え?・・・本当だ。飛べる、飛べてる! 私飛べ――」

「感動は後だ!」

「・・・判ってるわよ」

シャルちゃんの感動タイムは、クロノ君によって終わらされた。でも、シャルちゃんもそれが判っているようで反論せずに頷いた。

「ジュエルシードの暴走はほとんど停止している。今なら封印できるはずだ。僕となのはとユーノは封印へ。シャルは、ゼフィを足止めする」

「うん、判った。気を付けてね、シャルちゃん」

「なのは、急ごう!」

「うん!」

私とユーノ君は、フェイトちゃんとアルフさんの元へと向うために飛ぶ。けど、それを邪魔しようとするゼフィ君が「待ってもらおうか」私たちの前に立ちはだかった。ゼフィ君が「悪いが行かせない」クリスタルのような穂を2つ持つ、大きな槍の先端を向けてきた。

――風牙真空刃(レーレ)――

そこにシャルちゃんが無言でゼフィ君に攻撃を仕掛けた。飛んでくる風の刃を、ゼフィ君は物凄い速さで避けて、私の前からいなくなった。

「今だ!」

――ブレイズキャノン――

「「うん!」」

回避しているゼフィ君に向けて砲撃を放ちながらクロノ君が私たちに叫ぶ。私はその隙にゼフィ君の横を通り過ぎることに成功。そのまま一気にフェイトちゃん達を目指そうとする。ゼフィ君がクロノ君の砲撃を避けながら、「しまった! フェイト! アルフ!」フェイトちゃん達の名前を叫んだ。

「それ以上は進入禁止だ!」

――ディバインシューター――

それでもゼフィ君は、魔力弾(色からして私のディバインシューターだ)で私たちの飛行を妨害してきて、私たちは急停止することに。

「ユーノ! クロノ! ちゃんとなのはを守りなさいよっ!」

――雷牙神葬刃(ブリッツ・エアモルドゥング)――

「判っている!! 君の方こそゼフィを抑えろ!」

シャルちゃんの放った雷の斬撃がゼフィ君を襲う。ゼフィ君は防御じゃなくて避けて対処した。その隙に私は飛行再開。ゼフィ君が「行かせるか!」と叫んで、「我が手に――」と唱え始めた。

「私を忘れないでよね!」

「ぬっ、おのれぇぇ・・・!」

ゼフィ君があの呪文を唱えようとしたけど、シャルちゃんの攻撃で中断された。

「余裕がないな、ゼフィ。ブレイズキャノン!」

「しま・・・っ!」

その一瞬の隙を突いたクロノ君がゼフィ君の背後に回りこんで、そして砲撃を放って直撃させた。至近距離からの砲撃の直撃を受けたゼフィ君がそのまま海へと落ちていった。シャルちゃんが「ほら、なのはは先に!」って言って、ゼフィ君の落ちていった場所へと向かったから、ゼフィ君の心配は要らないはずだ。

「(私は私の役目を・・・!)フェイトちゃん!」

私はみんなの協力のおかげでフェイトちゃんの元へと辿り着くことが出来た。

「っ!?・・・君は!? どうして・・・ゼフィは・・・!?」

フェイトちゃんは私の呼びかけで、ようやく私の存在に気付いてくれたみたい。そしてゼフィ君の姿が見えないことで、すごく焦ってる。

「大丈夫だよ、フェイトちゃん。ゼフィ君はあそこに居るから」

シャルちゃんがゼフィ君を抱えている場所へと指を指す。それを見たフェイトちゃんは「よかった・・・」安堵の表情を見せた。初めて見せてくれたフェイトちゃんの、優しい表情。ほら、フェイトちゃんは悪い子じゃないんだ。絶対にお話だけでも十分に仲良くなれる。そんな確信を得られた。

「ねえ、フェイトちゃん・・・私ね、ずっと思っていたことがあるんだ」

フェイトちゃんやゼフィ君、アルフさんと友達になる。今ならそれを伝えられるチャンスだ。シャルちゃんに抱えられたゼフィ君を見ているフェイトちゃんに「フェイトちゃん」声を掛ける。フェイトちゃんが私を見る。綺麗な赤い瞳。さっき見せてくれた優しい表情はもうなくて、やっぱり悲しそうな気がするんだ。

「私は、フェイトちゃん達と友達になりたいんだ」

「え?」

フェイトちゃんは信じられないことを聞いた、みたいな顔をしている。私は返事を聞くために待っていた。だけど「なに・・・!?」ゴロゴロと雷の音がし始めて、ただでさえさっきまで暗かった空が、さらに暗く・・・ううん、黒くなった。

「きゃあ!」

私たちの周囲に雷が落ちてきた。フェイトちゃんが少し怯えたような顔をして、「お母さん・・・?」って漏らした。どうしてお母さんに怯えるんだろう? そんな疑問が脳裏を過ぎった

「あああああああああああああ!!」

次の瞬間、フェイトちゃんはその雷を受けて、悲鳴を上げた。

「フェイトちゃん!!?」

†††Sideなのは⇒ルシリオン†††

「ん・・・?」

少し気を失っていたか。今の状況を確認すると、俺はシャルに抱えられている状態だった。

「し、シャル・・・」

シャルは勝ち誇るでもなく「私たちの勝ち、みたいね」と、ただ事実を告げた。俺は負けを認めようとしたその時、フェイトを襲う雷撃を見た。

「な・・・!? あれってどういうこと!?」

「フェイト! なんの・・・なんのつもりだ!? プレシアぁぁぁぁーーーーッ!」

俺はあまりの光景に、攻撃した張本人であろうプレシアの名を叫ぶ。俺はシャルの両腕を払い退けて、すぐさま落下しているフェイトの元へ飛び、気を失っている彼女を抱き止める。間髪いれずに「アルフ! ジュエルシードを!」と、アルフに“ジュエルシード”の捕獲を指示する。だが、それをクロノが妨害する。アルフは邪魔をするクロノを弾き飛ばすが、いくつかの“ジュエルシード”を彼に奪われていた。

「くそっ『アルフ、引くぞ。奪われたジュエルシードは後日にでも取り返そう。俺が時間を稼ぐ、先に行け!』」

『くっ、仕方ないね、判ったよ!』

念話でアルフに撤退を指示し、フェイトを一緒に連れて行かせる。クロノが追っていくが、行かせるわけにはいかない。

「ルシル! 話を聞きなさい! 今の雷撃は・・・プレシアって・・・!」

「我が手に携えしは確かなる幻想」

シャルが何か叫んでいるが、今は聞く耳は持たない。

貴き落涙(ディオサ・ラグリマ)!」

海水を汲み上げて造った巨大な水の塊を海に叩きつけ、大波を発生させてクロノ達を飲み込ませる。連中が波に呑まれて海に沈んだのを確認して、俺はその隙にこの場から去った。

†††Sideルシリオン⇒なのは†††

「4人とも無事でなによりです。よくやってくれましたね」

アースラへと帰艦した私たちは、以前アースラの人たちに紹介された部屋、ブリーフィングルームへ場所を移して、リンディさんから労いの言葉を掛けられていた。私とユーノ君は「はい!」って答えて、シャルちゃんだけは考え事をしてるようで返事はしないで頷くだけ。ゼフィ君のことを考えているのかも。

「艦長。今回の事件の首謀者と思われる人物を断定しました。エイミィ、モニターに例のデータを」

「はいは~い」

いつの間に調べたのか判らないけど、クロノ君は犯人が誰か判ったと言って、エイミィさんにモニターに映すように頼んだ。そして映し出されたのは1人の女の人。その女の人を見たリンディさんが「やっぱりそうなのね」って予想してたみたいに、少し残念そうにそう言った。知っている人なのかな?

「そう、僕たちと同じミッドチルダ出身の魔導師、プレシア・テスタロッサ。専門は次元航行エネルギーの開発。偉大な魔導師でありながら、違法研究と事故によって放逐された人物です。登録データとさっきの攻撃の魔力パターンも一致していますし、なによりゼフィがあの雷撃を見たときにプレシアと叫んでいました。そのことからあの少女、フェイトはおそらく、プレシア・テスタロッさの娘です」

「フェイトちゃん・・・あの時、母さんって・・・言ってました」

確かにあの時、母さん、って言っていたと思う。でも様子が少し変だった。

「そ、その驚いてたっていうより、何だか怖がってるみたいでした」

「ゼフィも随分と憤っていたしな。向こうは向こうで何かしら問題を抱えているのかもしれない」

うん。あの時のはゼフィ君、すごい怒ってた。フェイトちゃんを心配していることがよく判るほどに。それにフェイトちゃんも。普通ならお母さんに対して、あんな顔も声も出さないはずだ。あれはどう見ても怖がっているようにしか見えなかった。

「エイミィ。プレシア女史についてもう少し詳しいデータを出せる? 放逐後の足取りや家族関係、その他なんでも」

「はいはーい、すぐ探します♪」

私もよくプレシアさんの映像を見る。この人が、フェイトちゃんのお母さんなんだ。フェイトちゃんが恐がって、ゼフィ君が本気で怒るくらいの・・・。

『なのは。もしフェイトが母親を恐れるようなことをされているなら、私たちが助けてあげないと、ね?』

シャルちゃんが念話でそう話しかけてきた。

『うん。もしそれが本当なら助けてあげたい。そして友達になりたいんだ』

私はそう答え、エイミィさんからの新しい情報が来るまで待っていた。


・―・―・シャル先生の魔術講座・―・―・


シャル
「今回も来てくれたのね。第5回シャル先生の魔術講座へようこそ」

なのは
「早いことでもう5回目だね~♪」

ユーノ
「うん、そうだね」

シャル
「さて。では早速、今回使用された魔術を紹介するわ。

――真紅の片翼(アインス・ルビーン・フリューゲル)――

魔力で翼を創るという術式で、これを展開することで飛翔術式を扱えるようになるの。
アインスは数字の1。ルビーンは、宝石ルビーのドイツ語読み。フリューゲルは翼という意味よ」

ユーノ
「そう言えば、出撃前にシャルは空を飛べないって言ってたけど、結局飛べたよね?」

なのは
「というかシャルちゃんって練習してこなかったのずっと?」

シャル
「したわ、したわよ。練習をしてもダメだったの。どうやっても死にかけのような羽虫みたいになっちゃうのよぉ(号泣)」

なのは
「ご、ごめんね!? まさか泣くなんて思わなくて・・・」

ユーノ
「えっとえっと、今日はここまで!」 
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